この可哀想なファフニールに優しさを!   作:まつ壱

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始まろうとする日常

「……はい。 確かに登録手数料は受け取りました。冒険者を希望でしたので少しお話を。 冒険者の役割は知っていると思いますがモンスターを倒すだけではなく依頼を受けてそれを遂行する物もあります。 スタイル的には依頼型が多いと思いますので最初はそちらからやり始めたらいいと思います」

 

さっきの事もあり女性職員は最初の辺りはたじろいでいたが、スグに調子を持ち直し内容を話してくれた。

 

ふむふむ、依頼型か……。 薬草収集とか荷物届けなどの雑用をする感じだろうか? それ以外に出すとしたらレアモンスターやレジェンド級のモンスター討伐……初心者には無理がありすぎるな。

 

「それもそうですね。 じゃぁ、まず初心者でも行けるクエストを教えてくれませんか?」

 

「分かりま……ちょっと待って下さい。 忘れている事ありませんか」

 

ん? 忘れている事か?

武器とか防具などを装備していないとかだろうか?

 

「あっ、大丈夫ですよ。 さっき程貰ったお金で多分買い揃えますから」

手を振り、相手の気遣いに遠回しで答える。

そうだよな、装備が無いとまた死ぬはめになってしまうからな……。

 

「お、おちょくっているのですか? 職業ですよしょくぎょう!」

困惑気味で言って俺とファフニールにカードを差し出した。

 

場違いの事を言ってしまって恥ずかしながらカードを見る。 カードには力、生命力と書かれている。 もしかしてこれは……。

 

「それは、あなた達のステータスが記されるカードとなります。 知っている思いますが、生き物誰でもその身に魂を宿しています。 その、魂を食したり殺したりすると経験値が貰えあなた達の力となります」

 

ゲームでいう所の経験値をゲットしてレベルアップしますよって事かな。 そこで解釈して思う事がある、ファフニールはどのくらい育っているのかを。

 

疑問気味の目をファフニールに向ける。

「どうしましたか? 疑問になる事でもありましたか?」

 

あるには、あるけど……どのみち、このカードを使えば分かることか。

 

「……あの、どうやったらいいのでしょうか?」

 

「その前にこの書類に記述を書いてくれませんか……」

女性職員は呆れたようにトントンとカードをつついている。

 

その方を見ると、名前や年齢を記入する欄が見受けられる。 書けって事だよな……。

 

二度目のミスを頬をかきながら流す。 そして、思う。 もっとこの世界の事を知ろうと。

 

「年齢は……17で。 これで、全部書けたかな。 ……ん? どうしたファフニール?」

書き終えてペンを置き、ファフニールを見る。 見られたファフニールは俺に戸惑いの顔で何かを訴えてくる。

 

「ここを……」

 

「ん? その項目はっと……。 名前を記入。 う〜ん、これはあれだファフニール。 本当にすまないと思っている」

 

そう、これはあの時に決めないといけなかった事だ。 『ファフニールの名前を』

 

「決めてない? 決めてくれない? ん?」

 

「いやいや、ちょっと待ってください。 言い訳になるけれど、決めていたは決めていたんだ。 でも、いいタイミングで言いたかったのだ」

と言いながら、手でファフニールを抑制する。

 

決めようと努力はしていたが、候補を出しては取り止めてを何回も繰り返し気付けば今になってしまった。 アクセルに向かう途中は何ともなかったが街に入った辺りからだろうか、ファフニールがむずむずとしてきたのは。

 

「なら今すぐにでも言えますよね? どうぞ、この場で……」

ファフニールは俺にさぁさぁと急かすかのように声を張り上げる。 その声に釣られたのか奥の方で飲食していた人達が顔を覗かせ始め、数分後には全員と言っていい程の人数にまで膨れ上がっていた。

 

……マジか。

 

その一言に尽きた。

 

いつの間にか外野から「おいおい、兄ちゃん。 それでもその子の保護者か」や「無名なんて酷いなぁ、兄ちゃんは」など批判の声が耳を通り過ぎていく。

 

まるで、地獄のようだ……。

 

語力の崩壊。

誰か俺を助けて下さい……。

 

震える身体を意地で保たせる。 こんな群衆に見られ、耐えれる方がおかしいものだ。 だから、この環境から早く抜け出す為に俺は大きく息を吸い込み、意を決する。

「ファッファフニール。 お前の名は、ティ、いや、シュ、いや違うな……。 ノ……あぁ、ノイレ。 お前はノイレだ!」

俺はキメ顔でそう言った。

 

言えたはいいが、元ファフニールも冒険者達も押し黙る。 この謎の静寂が俺を段々と不安に追い込んでいく。

 

 

不自然な間に耐え切れなくなった俺はファフニールの目を見て語りかける。

「もしかして、嫌だったか? プルプルと震えて……すまない」

 

申し訳なく、頭を下げる。 あの時は何でもいいと言ってくれたが、誰にも気に障るものがあるのだ。

 

そして、俺はゆっくりと頭を上げる。 そこでファフニールの顔を見た。 見たんだ。 あのとびっきりの笑顔を。

 

「あれ? ……ファフニールさん? 怒っているのではないのですか?」

 

「ご主人様は何を言っているんですか? 私は嬉しかったのです。 初めての名前。 私だけの名前。 この嬉しさの感情の度量が分かりますか! あっ、それと、私はノイレですよ!」

本当に嬉しそうにピョンピョンと跳ねている。 そして、止まったかと思うと次は尻尾を叩きつけ始めた。

 

バシン、バシンと鈍い音がギルドに響き渡る。

 

そうか、そうだったのか……。 嬉しかったのか。

湧き上がる気持ちを抑え込む、本当にこの世界は不思議で謎が深い。 まぁ、それが良いのだが。

 

「よし、ノイレ。 その項目を書いて次のステップに進むぞ」

 

「はい、お任せ下さい!」

再び、ペンを持ち『ノイレ』と書いていく。 正式な名前なので問題はないだろう。

 

「やっと、俺達のステータスが判明するんだな。 どんな能力があるのだろうか?」

やっと、異世界ファンタジー感が出てきて、ワクワクが止まらないでいる。

 

なのだが、少し気になる点がある。

 

「なぁ、ノイレ。 ギルドに俺達以外にも人が居るだろ? なのに何故、周りの冒険者達は無言のままなんだ?」

さっきまで、俺を煽っていたのにどうしたのか?

 

ノイレも首を傾げ、周りを見る。

「異様な空気を感じますね……」

そう呟き、焦点を俺に向けチョンっと裾を握る。 安心するのか握ったと同時に表情が朗らかになる。

 

いつまで経っても誰も話す事なく時間だけが過ぎていく。

 

結局、痺れを切らした俺は女性職員に尋ねた。

「あの……どうしましたか? 皆さん黙ってしまったのですが、何か問題でもありましたか?」

 

聞かれた職員もキョトンとしていて、無言の数秒が過ぎていく。

 

………

 

「あっ……。 すみません、ちょっと言ってはいけない言葉が聴こえましたので、少しフリーズしていました」

 

フリーズって……。 ロボットかよ。

そんな、くだらない言葉を思い浮かべる。

 

「なら、周りのこの状況も?」

 

「多分……そうなりますね」

 

曖昧な答えだが、やっと話してくれる人が居て少し安心していた。 無言状態が続き謎の異様感で溢れていた。 ノイレが感じていた事と似ているだろう。

 

そして、疑問になる点を見つけた。 言ってはいけない言葉とは一体何なの?

 

俺は『ん?』と言いたげに女性職員を見る。

「……気付いていなかったのですか? あなたがさっき言った事ですよ。 『ノイレ』と名ずけましたよね?」

 

あぁ、確かに『ノイレ』と名ずけたが……禁句の言葉だったのか?

 

「もしかして、唱えてはいけない禁呪の呪文とかなのか!?」

 

「すみません、何が言いたいのか理解できません」

即答だった。 他の黙っている人も『何だこいつ』みたいな目で見てくる。

 

……ねぇ、何? この空間?

 

「えーと……ですねぇ。 世間知らずのあなたでも分かるように説明するとですね。 昔、ノイレと呼ばれていたドラゴンが存在しました……」

 

「今、何で世間知らずと言った!?」

 

「………」

 

おい……。

 

「……ノイレと言う名は、数千年前の勇者が付けた名前と言われています。 それで、勇者とノイレは奇跡的な出逢いをしました。 その出逢いの最中に一つの契約をしたのですが、問題はここなのです!」

 

俺の目の前にビシッと人差し指を突き出してきた。 ここからがメインと言いたそうに勢いでしてきたのでビクッと身体が反応した。

 

「問題とは?」

 

「えーと、その先に関する情報が曖昧で色んな説があり、イマイチなんですよ」

 

……え?

 

「……うん、そのノイレと勇者の出逢いは分かったですが、『ノイレ』が言ってはいけない言葉となった理由は?」

そう伝えると、アワアワと焦り始めた職員は考え込み始めた。 それに釣られるように他の人達も考え込む……。

 

「「「「「理由は知らない」」」」」

 

…………どゆこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とても遅れました。
言い訳はしません。 本当にすまない。

これからは、もっと早く書いて投稿します。(フラグ)

それでは、また次回。
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