わたしのかんがえたさいきょうのあいしかた   作:九仏 夕

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しあわせなふだん

私の世界はいつもくすんでる。

くすんだ世界の中で輝いているのは、幼馴染のゆう君だけ。

ゆう君は優しいから私といてくれるけど、私はいつまでゆう君と一緒にいられるんだろう?

 

ピピピッピピピッピピピッピピピッ

 

目覚まし時計がやかましく鳴るけど、私はそれどころじゃない。

「ゆう君、起きたかなぁ。」

ねぐせがついてしまったかみをすきながら、ぼんやりしている頭のリブート作業をすすめる。

部屋に飾ってるゆう君の写真を見ると、体の奥からじんわりと熱が広がる。

ゆう君の笑顔が好き。オドオドしていていじめられてた私にほほえんでくれたその時から私にはゆう君しかいない。ゆう君しかいらない。

そんな“当たり前”の事を再確認しながら出かける準備を進める。

「いってきます。」

返事はいらない。浮き足だちそうな体をなんとか抑えながらも急いで走る。

「ゆう君!」

「おはよう、なずな。」

こうやって声をかけるだけで、私なんかをそのやわらかな眼で見てくれる。私なんかにあいさつを返してくれる。それが嬉しくて、私は顔がゆるむのを抑えるのに必死になっていた。

「えへへ、お、おはよう。」

ゆう君はすごい。その一挙手一投足で私を幸せにしてしまう。

ゆう君はずるい。本当は私がゆう君を幸せにしてあげなきゃいけないのに、ちっともお返しをさせてくれない。それどころかお返ししなきゃいけない幸せばかり増えていく。やだな、どうやったら私なんかがゆう君の役に立てるんだろ。お返し出来ないなんていやだな…どうしよう…

「それじゃあ、行こうか。」

「へ?あっ、う、うん!」

せっかくゆう君が私と登校してくれているんだ。ゆう君の前でいやな気持ちになりたくない。だからこの事は後で考えよう。ムッとしてるとゆう君を心配させちゃう。気をつけなきゃ。

「なずなは、昨日の番組見た?」

「えっと、昨日はちょっと忙しくて見れなかったんだ。」

「あー、それは残念だったね。昨日のは凄く面白かったよ。」

「あっ、でもね、録画はしてあるから今日見ようかなって…」

「それはよかった!本当に面白かったから夜にでも見るといいよ。」

毎朝登校の時にするこの何気ない会話が好き。この時間は私だけがゆう君と話せる。この時間だけは誰にもゆずりたくない。

このままずっと一緒に歩いていたいけど待ち合わせ場所の十字路から学校まではたったの十分だ。

くつ箱の前までが至福の時間。至福を手放すことほど辛いしゅんかんはない。

「じゃあ、またお昼にね。」

「う、うん。また、またね!」

うらめしい事に私とゆう君のクラスは違う。本当は一秒たりともゆう君と離れていたくないけれど、ゆう君が学校に来ることを望む以上、さけることのできないことだ。

お昼になればまたゆう君に会える。私なんかとゆう君がまた会ってくれる。そう思わなければ私はどうにかなってしまいそうだ。

教室に入っておとなしく席について授業の準備をしていると、一人の女子生徒が近づいてくる。

「なーずっなちゃん!」

「李蘭ちゃん…おはよう…」

「おはよう!相変わらず花菱君がいないと元気がないねぇ!」

「ゆう君と離れてて元気が出るわけないでしょ…」

「アハハ!言うねぇ!」

李蘭ちゃんはとっても可愛い子だ。美人さんだけど、言動のせいで可愛いという印象の方が強い。人の輪の中心にいるのくせに中心から飛び出してきて私の事をかまって、面白がってるような子だ。中学校からの付き合いだが、未だにこの子の考えていることはよくわからない。

「なずなちゃん、眉間にしわができてるけど、なんかあった?」

「そうだね…李蘭ちゃんが来たね。」

「私かー!原因私かー!アハハハハハ!」

何が面白いんだか…

李蘭ちゃんはいつも楽しそうにしている。李蘭ちゃんみたいに顔立ちもかみもきれいで話が面白い人になれば人生が楽しくなるとみんなは言う。けれど、私にはそうは思えない。

「なずなちゃん、なずなちゃん!わたし暇だよ!」

「私は忙しいんだけど…」

「わたしが暇なんだからどうにかしてよ!」

「今日提出の数学の宿題やった?」

「あぁぁぁぁ~キコエナイキコエナイ~」

そう言いながら李蘭ちゃんは別のクラスメイトの所に逃げていく。

李蘭ちゃんにはたくさん関わり合いがあって、どこにいても輪の中心にいる。すごいことだ。だけど、うらやましいと思ったことはない。

李蘭ちゃんのまわりには代替品しかない。えらそうに言っている私も代替品の一人だろう。

それでもいい。いや、そんなことはどうでもいい。

私にはゆう君がいる。全世界でただ一人の愛しい人。代替品なんか存在しない唯一無二の人。

私は李蘭ちゃんみたいに可愛くないし人と話すのも上手じゃない。だけど、人生をつまらないと思ったことは一度もない。

ああなれば、こうなればとぼやく人は見つけてないのだ。自分にとってゆずれないものを。どんなぎせいを払ってでも守りたいものを。

私は見つけた。絶対的で本能的な宝物を。

 

キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…

 

チャイムが鳴る。これを後七回ほどくり返せばゆう君に会える。

はやくお昼休みにならないかなぁ…

 

 

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