楽園の予言者  暫し凍結   作:ケツアゴ

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原作キャラが名前だけ

地蔵菩薩さんへの投稿キャラを使わせて頂きました


プロローグ

 ギリシャ神話において冥府の神とされるハーデスだが、彼の支配地は三つに分けられる。大罪人が行き着く先である地獄『タルタロス』。永遠の飢餓や大岩を転がして坂道を上り、やがて転がり落ちるなど多岐に渡って罪人を責め立てる。

 

 次に特に罪を犯していない者が暮らす『アスポデロス』。ハーデスの膝元で、特に娯楽もない退屈な場所だ。

 

 この二つは地下に存在すると伝わっているが、最後の一つは天の国、雲の上に存在する。優れた英雄など、本当に選ばれた者のみが暮らすことを許された美しい場所。白い花が咲き乱れるその場所の名は『エリュシオン』。

 

 現在、その地はとある魔女が管理を任されていた……。

 

 

「……そう。もう下がって良いわ。今日は帰って子供の相手でもしていなさい」

 

 エリュシオンで最も立派な屋敷の奥、女主人である自分の執務室で部下からの報告を受けた彼女は書類から目を離さないまま微かに笑みを浮かべる。輝く銀の髪を肩まで伸ばし、知性と慈愛、そして幸の薄さを感じさせる彼女の名はメディア。コルキスという国の王女であったが、国の至宝をイアソンという男に渡したがった神々の手で偽りの恋心を植え付けられ、数多くの不幸や裏切りの末にこの地の管理を任された。

 

「はぁっ!?」

 

 分厚い報告書の束を読み進めていた彼女だが、不意に眉をしかめて一枚の書類を凝視する。先程までの優雅さは消え去り、不快感を微塵も隠そうとしない彼女の手は机の端に置かれたベルに伸びた。取っ手を持って揺らすこと数度、メディアの手持ちのベルは無音のままだが、屋敷の一角に存在する部屋の壁に取り付けられたベルが鳴る。するとクッションで寝転がっていた者が起き上がり、朝日を想わせる黄金色の疾風が部屋から飛び出した。

 

「こらこら。廊下を走っちゃ駄目よー」

 

「誰かにぶつかったり転ばないようにねー」

 

 途中、屋敷の侍女達が()()()通り過ぎていった疾風に声を掛ける。内容は注意だが、声色には甘さが混じっており、聞こえてきた返事に嬉しそうにしていた。ベルが鳴ってから十数秒後、執務室の扉がノックもされずに外側から開き、勢い良く扉を押し開いた黄金色の疾風はメディアへと向かっていく。

 

「はい、落ち着いて」

 

 だが、その登場を心の何処かで予想していたのかメディアが指を鳴らすと動きが遅延して姿が露わになる。メディアによってそのまま抱き留められたその正体は子犬。小型犬ほどの大きさで、太陽の輝きの如き黄金色の体毛をした愛嬌のある顔立ち。抱っこされているのが嬉しいのか尻尾を盛大に振っている。

 

「もう。扉を乱暴に開けたら駄目だって言ったでしょ、ジーク」

 

「あっ! ごめんなさい、メディアさん」

 

 そして、その子犬には頭が三つ有り、何より喋っていた。地獄の番犬ケルベロス。冥府より逃げ出そうとする死者を食う凶悪な魔獣であり、本来は醜悪な顔立ちの上に毛の色も違えばそもそも言葉も発しない。ジークと呼ばれたこの幼体が何故通常の個体とは違うのかは後ほど明らかになるだろう。

 

 メディアのそれほど厳しくない口調の叱責にジークは謝ると共にうなだれる。耳を垂れさせ尻尾も元気がないが、その頭を順番にメディアの手が撫でた。

 

 

 

「所でゼオンは何処に行ったのかしら?」

 

「お兄ちゃんならヘスティア様とお茶しに行くって言ってたよー。僕も行きたかったー」

 

「……今日は屋敷に居ろって言ってたのに、あの馬鹿息子」

 

 お茶会で出るであろう甘いお菓子を羨んで残念そうにするジークを抱っこしたままメディアはスッと目を細め、帰った時にどの様な仕置きをするか考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし君も物好きだね。こんな所に来ても退屈だろうにさ」

 

 少し呆れたような嬉しいような笑みを浮かべながら一人の女神が焼きたてのアップルパイを取り出す。紅茶の為のお湯も既に沸いており、中学生位の少年が準備をしていた。

 

「何を言いますか、ヘスティア様! 貴女のような美女が居るだけで、例えガラクタ置き場であっても黄金の宮殿の如き輝きを放ちます」

 

 女神の言ったように二人が居るのは飾りっ気のない地味な小屋。特徴と言えば大きな竈位だろうか? だが、少年が言うとおりに女神は美しかった。服装こそ煌びやかさは無いが、彼女の美しさは暖かみのある見る者を安心させるもの。他の女神のように触れることさえ躊躇われる美と違い、親しみが持てる家庭的な雰囲気を発している。

 

 

「ああ、そうだ。今度の休みにペガサスで遠乗りに出掛けませんか? ヘスティア様とご一緒出来る時間はきっと黄金の如き輝きを放つでしょう」

 

 だからと言って歯の浮くような台詞を平気で投げ掛けるのはごく少数だろうが。枯れ草色の髪を後ろで短く束ねた少年はもう少しシャキッとすれば精悍な顔立ちの美丈夫なのだが、言動からにじみ出る軽薄さが台無しにしている。このまま調子に乗って手の甲にキスでもしそうな印象の彼だが、ヘスティアが向ける瞳には嫌悪感は微塵も宿らない。

 

 

「君は相変わらずだね。この前はアテナを釣りに誘って、その前はアルテミスをお芝居に誘ったそうじゃない。女神にちょっかい出し過ぎたら後が怖いよ?」

 

 但し、彼に向ける感情には異性への好意も宿っていない。年の離れたやんちゃな弟にでも向けるような好意のみだ。やや心配している様子のヘスティアだが、女神に愛されると禄な事がないのはギリシャ神話の特徴だ。だが、少年、ゼオンは軽薄な笑みを保ったまま真剣な声で言った。

 

 

 

「無論理解していますとも。だから私は絶対に付き合ってとか無責任に言いません。私と遊んでくださいとちゃんと言っています。あっ、この後遊びに行きませんか?」

 

「逆に清々しいね、君はっ!? って言うか恋人居るんじゃなかったっけ?」

 

 その言葉によってゼオンの軽薄な表情に初めて罅が入る。あからさまに目を逸らして誤魔化す気が見え見えだ。

 

「ハ、ハニーとはちゃんとデートを重ねていますよ? ただ、それはそれ、これはこれで……」

 

「はっ! 貴様は相変わらずだな。いや、実にギリシャ的だ。小さい頃からは想像できん」

 

 突如、背後から威厳のある女性……と思われたいのが伝わってくる少女のような声が聞こえてくる。だが、振り向いたゼオンの視界には誰の姿も映らなかった。

 

「おや? いい歳してかくれんぼですか? 師しょ……大叔母様」

 

「おいっ! 何でわざわざそっちに言い直すっ!? って言うか気付いているだろっ!」

 

 少し視線を下に向ければ立っていたのは小柄な少女。格好付けた登場をしようと腕を組んで不敵な笑みを浮かべていたが、いかんせん距離が近すぎた。彼女が転移して来てから一部始終を見ていたヘスティアは見ていなかったフリをするが下手すぎた。彼女のプライドはズタズタだ。

 

「わ、私は凄い魔女なんだぞっ! 貴様も、貴様の母も私が鍛えたのを忘れたのかっ!」

 

 銀髪を腰まで伸ばした少女の身長は小学生低学年程で、人形のように可愛らしい。だが、見た目通りの年齢ではない。まだ神と人が密接に関わっていた時代から生きる大魔女だ。名をキルケー。ハーデスの補佐である女神ヘカテーに師事し、姪であるメディアに師事させた経験を持つ彼女だが、会話からしてゼオンの師匠でもあるようだ。今の姿には威厳もヘったくれも無いが……。

 

 

 

「そう言えば母さんが家に居ろと言っていましたが、師匠が来る予定でしたね」

 

「覚えていたなら家に居ろっ! 貴様といいメディアといい、どうも私の身内兼弟子は困りものだ!」

 

「まあまあ。君もアップルパイを食べて落ち着きなよ。紅茶とコーヒー、どっちにする?」

 

「……紅茶」

 

 ぶつぶつと文句を言っているキルケーを見かねてヘスティアが差し出したパイに視線を向けたキルケーは渋々といった風に椅子に座るが、テーブルの下では落ち着きのない子供のように足をバタバタ動かしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「予言? ……師匠の番でしたか?」

 

「……冥府関連だ。お前達の顔を見るついでに、ハーデス様の使いでわざわざ来たのだから忘れていたら困るぞ? 何せ貴様の予言はテティスの物よりも数段強力だからな。欠点もあるが、他の神話やフリーの魔術師も注目しているぞ」

 

 アップルパイを食べ進める中、口元に食べカスをつけたまま伝えられた来訪理由にゼオンは首を傾げた。それが気に入らないのかキルケーは威圧するも、その姿では意味がないのに気付かない。

 

 彼女が言うテティスとは海の女神で、アキレス腱の元になったと伝わるアキレウスの母である。息子の戦死を予言した彼女はアキレウスを女装させて島に隠したが、結局は予言の通りになってしまった。結局、予言は避けられない運命を予知するだけなのだろう。戦死前に殺すなどの特例を除いて。

 

「ああ、ならば早速予言しましょうか。冥府に降り懸かる厄災を防ぐ方法を」

 

 ゼオンの目から光が消え、時間が止まったかのように微動だにしなくなる。約一分後、スイッチが入ったかのように口が開いた。

 

 

「聖なる槍を宿す者に力を貸すべからず。さもなくば大勢の死神の命が無駄に散るであろう」

 

 この時、ゼオンの意識は混濁して自分が何を言っているか分かっていない。この力が発覚したのも幼い頃に父親と遊んでいたときに偶々発動したのだ。だが、この予言が外れた事は無い。どの様に、どうして、等は分からず、一度使えば一定期間使えないが、目的にたどり着くための回答を指し示してくれるとして女神を中心に予約で一杯だった。

 

 

 

 

「毎回毎回使う度に疲れますよ、この力。ですがヘスティア様の笑顔を見るだけで癒されます」

 

「だから彼女にだけ言ってあげなよ、そういうのはさ。所でキルケーはわざわざ私の小屋まで来るなんて珍しいね。何時もならメディアの屋敷で待っているんじゃない?」

 

「ああ、忘れていた。前にギリシャ神話体系の発展の為に何をすべきか予言して、日本のとある地方都市に才有る若者達を送り込むようにとなっただろう? 予言された時期だし、それが決まったので急いで伝えに来てやったのだ。メディアは気に入らないのか伝えたがらなかったからな」

 

 そう言ってキルケーはゼオンを指差した。

 

 

 

 

 

 

 

「お前とヘラクレスをグレモリー家の次期当主が管理する土地に派遣することになった。張り切って行ってこい」

 

 




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ヘスティア ほんわかお姉さん系

キルケー 偉そうなロリババァ
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