「こらー!! 待ちなさい、変態共ー!!」
竹刀を振り上げて女子剣道部の部員が追いかけてくる。何故追いかけられているかというと、俺がエロ仲間の元浜と松田と一緒に覗きをしたからだ。ちらりと後方を見ればだいぶ遅れて走る二人の姿。多分あと少しで捕まってボコボコにされるであろう二人に心中で合掌し、更に速度を上げる。
「待てと言われて待つ奴は居ないぜ! 良いおっぱいでしたー!」
「糞ー! なんでお前はそんなに速いんだー!」
「このままだと捕まるぞ、元浜! 二手に分かれて……」
自分だけ助かろうとしたのか松田は逃げる作戦を口にしながら足を引っかけようとしたけど、元浜も同時に同じ事をしたので仲良く転んで追い付かれる。うっし! 陸上部顔負けの脚力の俺なら逃げきれるぜ! ぐふふふ。後は目に焼き付けた光景を脳内で再生して………うん?
「メール? げぇっ!? 先生からだっ!」
二人の悲鳴と助けを呼ぶ声を背中に受けながらグングン距離をあけていった時、ポケットに入れていた携帯電話がメールを受信する。この着信音が誰か思い出した瞬間、背中に冷たい物が走ったのを感じた俺は恐る恐るメールを開いた。
『彼女達に謝罪して罰を受けるか、今日の修行メニューを厳しくするか選ぶが良い』
「……終わった」
多分、一応用意したから厳しいメニューをこなせ、とか言われるんだろうが、僅かな希望を胸に俺は足を止める。荒い足取りで竹刀を持った集団が迫って来るのを俺は死刑執行を待つ囚人の気分で受け入れるしかなかった。
あっ、俺の名前は兵藤一誠、あだ名はイッセー。聖書の神に頼んでもいないのに伝説のドラゴンなんかを宿らされた高校生だ。
「では行くぞ。籠手の使用は三度までだ」
見渡す限りの草原で俺の師匠、ケイローン先生が矢を構える。俺と先生の間は百メートル程離れており、先生の手元には球状の鏃を付けた無数の矢が用意されていた。アレ、全部使い切るまで耐えきれるかな……。
俺は盾の持ち手を握り締める。マンホールの蓋位の大きさの丸い盾で、軽くて丈夫。その持ち手を掴む左腕には赤い籠手『
『くははははは! だから覗きは止めておけと言っただろう。まあ、もっと強くなれ。白いのとの戦いの為にもな』
「うっせぇよ、ドライグ。大体、俺は二天龍の戦いなんか興味ねぇって言ってんだろ」
さて、そもそも普通の高校生だった俺がどうしてギリシャ神話に名高い英雄達の教師の生徒になってるかというと、聖書の神が選びもせずに適当に宿した
一年ほど前、はぐれ悪魔に操られて無理矢理力を引き出された影響で神器が発現、暴走状態一歩手前だった俺はその悪魔を倒したヘラクレスに保護され、何とかその場は収まった。これで俺の神器が普通のだったら封印して記憶を操作して終わり……が良かったんだけど、生憎と十三個しかない神すら殺せる可能性がある
『目覚めた以上、封印してもまた発動する可能性がありますし、たぶん命を狙われますよ。……関わった以上、周囲の人間ごと殺される可能性も有りますし放置は気が引けますね』
俺の命を狙う可能性がある存在、まず堕天使。敵に回るかもしれない、暴走の危険がある、後者は力を知った今じゃ何となく理解は出来るけど(納得は出来ない)、前者の理由で命を狙われるのは気に食わないけど、実際に多くの強力な神器の宿主が殺されているらしい。
そして、俺が宿す赤いドラゴンと対をなす白いドラゴン『アルビオン』が封印された『
そして暴走の危険性。周囲を巻き込んで死ぬかもしれない。
結論として俺はこう叫びたい。ふざけんな! ってな。そんな平和な現代で何の役にも立たない物を押し付けられ、それで命を狙われるなんて冗談じゃねぇ。しかも家族や友達を巻き込むかもしれないなんて考えたくもねぇ。
だから俺は誘いに乗り、こうして身を護る為の力を身に着けるべく頑張っているんだ。ケイローン先生は今までの生徒と比べようがない程に出来の悪い俺を見捨てずに教えてくれている。力を、技を、精神を、その全部を鍛えて貰っていた。
『Boost!!』
籠手から音声が鳴り響き、それと同時に俺の力が倍になる。十秒ごとに力が倍増するってのが能力だ。もちろん動かすのは俺の体だから負荷に耐え切れないとヤバい事になる。格闘家やスポーツ選手が体を壊すのと同じだ。空を見上げれば降り注ぐ矢群。驟雨みてぇに強さも一度に来る量も違い、様々な角度から来るそれを盾で弾いて行く。一撃ごとに腕に負担が掛かり、盾を落としそうになった。
「正面から受けるでない! 受け止めるのではなく逸らせっ!」
「はいっ!」
何発か食らった時に先生から指示が飛ぶ、やって来る矢の軌道を目や空気の流れ(これはまだ全然読めないけど)で予想し、軌道をずらす様に弾いて行った。
「これで最後だ、心して受けよっ!」
最後の一撃は空からじゃなくって正面から。先生は弓を引き絞り俺に向かって矢を放つ。足を踏ん張り、三回目の倍化で強化された肉体で盾を構える。激突と同時に体が浮きそうになり盾も弾かれそうだ。
「だらぁああああああっ!!」
咆哮と共に盾を動かし、矢を弾き飛ばす。体力をゴソッと持っていかれ、膝から崩れそうになるも何とか堪えて前を見ると先生がほほ笑んでいた。どうやら合格みてぇだな。
「これにて準備運動は終了。五分休憩の後に訓練だ」
「……うっす」
先生は優しいけど……スパルタだ。
「……先生に覗きの件をバラしたのお前だろ。おかげで今日はハードモードだったんだぜっ!」
訓練終了後、よく冷えた水を飲みながら俺は兄弟弟子であり友達のゼオンに抗議する。少しチャラい印象を抱くけどイケメンで、本命が居るのに女神様やら一般人の美少女をお茶に誘う奴だ。曰く、ほかの輝きが眩むほどの宝石があっても、それ以外の宝石の価値が下がる訳ではない、だとよ。
「君は分かっていないな、イッセー。レディの下着や裸が見たいという意見には賛同しよう。だが、無理に見るのは宜しくない。想像してみてごらん。可憐なレディが羞恥心に耐えながらも柔肌や下着を自ら見せてくれる光景を。……最高だろう?」
下ネタを堂々と語る姿は逆に清々しい。ぶっちゃけ、俺と同等のスケベだ。ちょっと昔までの俺なら気に食わなかったが、俺が暴走した時に助けてくれたのは此奴だし、ケイローン先生を紹介してくれたのも此奴で、友達だと思ってる。
あっ、ちなみに本命には他の人との時間の三倍の時間デートするのとハグやキス以上は禁止という事で話がついたらしい。彼女曰く、惚れた弱み、だとの事だ。爆発しろっ!
「ああ、そうだ。今度、アフロディーテ様が開くお茶会に招待されているのだが、君もどうかな?」
「友よっ!」
あっ、因みに俺が魔法や何やらの存在を信じた理由は此奴にある。説明されても信じなかった俺を転移させて上空三百メートルからの強制紐無しバンジーをやらされたら魔法の存在を信じるって。
俺の日常はこんな感じだ。……あーあ、彼女欲しいな。ドラゴンのオーラは異性を引き付けるって聞いたけど、戦いも引き寄せるからコントロールしてたら全然彼女出来ねぇし。
「兵藤一誠君ですね。付き合って下さいっ!」
そんな事を思ったのが昨日の事、見知らぬ美少女に告白されました。他校にまで変態の噂が広まっている俺にです。
彼女の名は夕麻ちゃん。黒髪の胸が大きめの子で、俺は人生初めて受ける告白だったので思わずオッケーを出しちゃいました。そしてデートの日程もその場で決まり、彼女が去った後にゼオンとヘラクレスが俺の背後からやって来た。
「ドンマイ」
「何か奢りますよ。にしても告白して油断させて襲おうとは性格が悪い。……まあ、出掛けた先で襲われて家族が友人が一緒に襲われるのを考えれば」
二人の手が俺の肩に置かれ、慰めの言葉が掛けられる。あの子、堕天使です。赤龍帝だと知られれば厄介事を引き寄せるからって、この街を管理しているらしいリアス先輩(俺が巻き込まれたのは何らかの目的で無能のふりをしているせいらしい。ゼオンでさえ目的が全く読めないってどんな智謀だよ)には暴走の危険がある神器だとしか伝えてないし(俺の素行か態々勧誘には来ない)、ギリシャ神話(っていうかエリュシオンを管理するハーデス様)の管理下にいるってのも非公表だ。
だから堕天使に一般人として狙われたんだろうな。ドライグを宿しているからって。
「この機会に正式に加入しますか? ゼウス様達も昔はド屑でしたが、近年は丸くなっていますし、ハーデス様は姪っ子を攫って嫁にした以外は偏屈で頑固で少々粘着質な所以外は頼れる方ですし、ただ、一度加入すれば一般人には戻れない。それは知っておいてください」
「……少し考えてみる」
元々は死にたくないからって始めた修行で、強くなっていくのは楽しかったし、ドラゴンを宿す影響か戦いへの忌避感も薄らいでいる。でも、踏ん切りがつかねぇ。だって高校生になるまで平和な世界で生きてたんだから……。
戦うとはどんな事か それを教えられたからこそ平和な一般社会のありがたみを理解している一誠でした
感想お待ちしています
盾を持たせたのは原作で防具とか一部しか着ないなっておもったのと、マーベルにはまったから