佐藤心が隣にいる日常   作:グリーンやまこう

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告白

 心たちと海に行った日から一週間が経過した。つまり今日は心とのデートの日。

 正直、デートに誘った日は色々起こり過ぎて記憶がパンクしかけていた。俺にとっても予定外の事だったし……。

 ちなみにその日の夜はベッドで悶えていました。理由はお察しの通りです。

 

 

「さて、着ていく服もこれでいいし、持ち物もこれで大丈夫か」

 

 

 男は女と違って、あまり準備に時間がかからないから楽でいい。やることもなくなったので俺は自分の部屋の前で心が出てくるのを待つ。

 別にここに集合じゃなくて最寄り駅集合でもよかったのだが、こっちの方が俺たちらしいということになったのでこうした。

 

 

(それにしても……心のやつ、絶対に今日の事早苗さんたちに話したな)

 

 

 これは事務所で感じたことなのだが、早苗さんたちから注がれる視線が妙に生温かかったのだ。あれは絶対に気付いてる。しかも詳細まで知っている顔だ。

 まぁ、他のアイドルたちには話していないようなので、その辺りはよしとしよう。それに、もしそういう関係になったら早苗さんたちに報告する場を設ける予定でもあるからな。

 他のアイドルの子たちにはいずればれるだろうし、報告しなくてもいいや。

 

 

「さて、集合時間になったわけだけど……」

 

 

 チラッと心の部屋の扉に視線を移すも、まだ出てくる様子はない。心が時間に遅れることは珍しい。

 むしろ、出かけるときは俺の部屋に押しかけて『遅い!』と文句を言ってくるからな。その後、待つこと約10分。

 

 

「ご、ごめん大和! 遅れちゃって」

 

 

 ばたばたと慌てた様子で心が部屋の中から出てきた。余程急いでいたのか、肩で息をしている。彼女が落ち着くまでの間、今日の服装を眺める。

 心はノースリーブのブラウスに、薄い水色のスカート。何というか、彼女らしくない格好に思わず心の事をじっと見つめる。

 

 

「…………」

「な、なんだよ、そんなにあたしのこと見つめて?」

「今日の格好、なんか新鮮でな。だって、いつもはそんな恰好しないだろ?」

「似合ってない?」

「いや、その逆。すごく似合ってるよ。……美優さんっぽくて」

「ば、バレてる!?」

 

 

 驚愕の表情を浮かべる心。一方俺は言ったことが当たってしまい、申し訳ない気分だった。

 まさかふと思ったことが当たるなんて……。さっきも言った通り、似合ってるからいいんだけど。

 

 

「大和の好みを考えながら服選んでたんだけど、気付いたら美優ちゃんっぽくなってた……」

「なんか悪いな、俺を気にして服を考えてくれたみたいで。別に気にしなくても、いつも通りの格好でよかったのに」

「そりゃ、自分の好きな服を着たいって思ったよ。思ったけど……好きな人には可愛いって思われたいじゃん」

 

 

 顔を真っ赤にしながらぼそぼそと心が呟く。その言葉を聞いて俺まで恥ずかしくなってきた。

 先日の件で、素直に自分の気持ちを伝えることに抵抗がなくなったようで……ほんとやめてほしい。俺は心の頭を少しだけ乱暴に撫でる。

 

 

「わわっ!? なんだよ急に!」

「今のままだと、目的地に着くまでお互い黙ったままになりそうでさ。髪形を崩したのは悪いと思ってる」

「ほんとかよ? 全く、今日必死にセットしたのに……」

 

 

 そう言って心は髪を手くしで直している。確かに心の髪は変装時のストレートではなく、少しだけ緩くウェーブがかかっていた。

 俺とデートするために色々やってくれて嬉しくなった俺は、今度は優しく心の頭を撫でる。

 

 

「ありがとう、心」

「……どうしたの急に? お礼の言葉なんて言われるようなこと、はぁと一切してないんだけど?」

「分かってないんだったらそれでいいよ」

「……分かってるから恥ずかしいんだって」

 

 

 何やらぼそぼそ言った後、心は誤魔化すように俺の右手に自身に左手を絡ませる。

 

 

「もうっ! 大和が変な事言ったから予定より大幅に遅れちゃった! ほら、行くよ!!」

 

 

 強引に俺を引っ張る心。そんな彼女の後姿を見ながら思わず頬が緩んでしまう俺だった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「いやー、着いたね~」

「着いたな~」

 

 

 某夢の国に着いた俺たちは、同じような感想を述べる。最寄りである舞浜駅からチケットを買って入園したのだが、やはりここはとんでもなく人が多い。

 チケットを買う前から人は多かったのだが、いざ入園してみるとその多さに眩暈がしてくる。

 

 

「うーん、どのアトラクションから乗ろうか迷っちゃうね!」

 

 

 しかし、心は一切戸惑いを感じていないようで、先ほど手に取ったパンフレットを見て目を輝かせている。

 

 

「大和は何か乗りたいアトラクションってあるの?」

「俺は何でもいいかな。ここに来るのが小学生の修学旅行以来だから、何に乗ってもほぼ初めて見たいな感覚なんだよ」

「それならやっぱり最初は、絶叫系のアトラクションからかな~。楽しいし、スカッとするし! 大和って絶叫系大丈夫だっけ?」

「お化け屋敷じゃなければ基本的に大丈夫だよ」

「あー、そう言えば大和ってお化け系が苦手だもんね。男のくせにっ☆」

「うるせぇ。苦手なものは苦手なんだ」

 

 

 顔をにやけさせる心の言う通り、俺はお化け屋敷など驚かせる系のアトラクションが苦手である。

 夢の国内にあるホーン〇ッドマンションくらいなら何とかなるが、ナガ〇パとかのお化け屋敷は論外だ。とてもじゃないけど、入る気がしない。お化け屋敷に入るのはよっぽどの物好きだと俺は思っている。

 

 

「じゃあ、まずはビック〇ンダーマウンテンからにしよっか。あっ! その前にちょっと寄りたいところがあるんだけど、行ってもいい?」

「大丈夫だよ。それじゃあ行こうか」

 

 

 俺はそう言って心に右手を差し出す。今日くらいは手をつないだって罰は当たらないだろう。

 心も俺の意図が分かったようでニッコリと微笑んだ。

 

 

「うん。ありがと大和」

 

 

 しっかりと指を絡めたところで、俺たちは目的のお店に歩き出す。心が行きたいといったお店はお土産などが売られているところだった。

 何となく目的が分かった俺は心に声をかける。

 

 

「もしかして、カチューシャを買いにきた?」

「おっ! 流石大和、冴えてるねぇ~♪」

 

 

 どうやら当たりだったらしい。確かにディ〇ニーで女の子がミッ〇ーやその他のキャラクターのカチューシャをつけているのはよく見る光景である。

 というわけでカチューシャを選び始めたのだが、

 

 

「ねぇねぇ、これはどう?」

「うーん、似合ってるんじゃね?」

「もうっ! 大和ってば真面目に考えてる?」

 

 

 さっきからこのやり取りを何度も繰り返していた。おかげで心が頬を膨らませてプンプン怒っている。

 しかし、似合っているものは似合っているので勘弁してほしい。そもそもどれをつけても似合っているのだから、比較の仕様がないというのも事実だ。流石は今をときめくアイドル様である。

 

 

「真面目に考えてるって」

「じゃあ、どれが一番よかった?」

「えっと……俺は最後に着けたやつが一番よかったと思うよ」

 

 

 これは適当でも何でもなく、本当に思ったことだ。最初の方につけていたのはどこか派手で、心の良さを消してしまっていると素人ながらに思ったからな。

 俺からの感想を受けて、心は最後の付けたカチューシャを手に取る。

 

 

「大和はシンプルなのが好きなの?」

「派手過ぎるのよりはって感じだな。それに、これが一番似合ってたと思うし」

「……じゃあ、あたしのはこれでいっか!」

 

 

 納得してくれたようで良かった。俺がホッと息を吐いていると、

 

 

「じゃあ次は大和のね!」

「……えっ?」

 

 

 驚く俺を他所に心は楽しそうにカチューシャを選び始める。心なしか、自分の物を選ぶ時よりも楽しそうだ。

 

 

「い、いやいや、俺のは要らないだろ? 男だし、身長も高いからつけても気持ち悪いだけだって」

「だからこそなんだよ! うーん、やっぱり無難にミッ〇ーのかな?」

 

 

 何がだからこそなのか、さっぱり分からないけど心はどうしても俺にカチューシャを着けたいらしい。まぁ、今日くらいはいいや。

 結局、俺もミッ〇ーのカチューシャを身に着け、お土産屋を出た。

 

 

「……や、大和、めっちゃ似合ってる……。ふふっ……」

「本当にそう思ってるのなら俺の目を見て話せ」

 

 

 笑いを堪えるように肩を震わせる心をジト目で睨みつける。

 さっきまで『可愛い可愛い』と言いながら写真を撮っていたのだが、今は現物を見て笑いを堪えていた。自分からつけさせたくせに失礼な奴である。

 

 

「取り敢えず送信っと……それじゃあ改めてビック〇ンダーマウンテンに向かおっか!」

「おい、送信とか言ってたけど、誰に送信したんだよ!?」

「レッツゴー!!」

「頼むから話を聞いてくれ……」

 

 

 ため息をつきながら心の後をついていく。そして目的の場所についたので、俺と心は最後尾に並ぶ。

 誰に送信したのかは後で問いただすことにした。大方、早苗さん、美優さん、楓さんあたりだろう。あの三人なら多分問題ない……と思いたい。

 なんてことを考えながら待っているうちに俺たちの番となったので、二人並んで座席に座った。

 

 

「こんな風に心と乗るのも随分久しぶりだな」

「中学生の遠足以来だっけ? いやー、あたしたちも年取ったもんだね~」

「その言い方、だいぶババくさいぞ?」

「昔を思い出す時くらい、ババくさくてもいいんだよ☆」

 

 

 話している間にもトロッコは少しずつレールを上っていき、

 

 

「きゃーーー♪」「うぉおおおーーー!!」

 

 

 それなりのスピードでレールを滑っていったのだった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「ふぅ~、なかなか面白かったな」

「だね! あたしも久し振りに乗ったけどめちゃくちゃ楽しかった!」

 

 

 ビックサ〇ダーマウンテンに乗り終えた俺たちは、二つ目の絶叫系アトラクションとしてス〇ースマウンテンへと向かっている最中だった。

 久しぶりのディズニーということで若干身構えた部分はあったのだが、このくらいなら楽しんで帰ることができるだろう。

 

 

「ところで、次のス〇ースマウンテンはどんなアトラクションなんだ?」

「簡単に言うと、星空みたいに暗いところを走るジェットコースターだよ」

「えっ、暗いところ?」

 

 

 ちょっと待って聞いてない。少しだけ焦った様子の俺を見て心がニヤリと悪い笑みを浮かべる。

 

 

「あたしも初めて乗った時はビビったよ。周りが結構暗いから次上がるのか下がるのかよく分からないし、結構スピードも出るやつだからね」

「……ちょっと俺、急用を思い出して――」

「ダメだからな☆ ほらっ、さっさと行くよ!」

 

 

 逃げられなかった。心に右手をがっちりとホールドされながら俺は連行されていく。

 くそっ、ス〇ースとついてるから暗いことはある程度予想してたけど、まさかそんなに暗いだなんて……。

 ま、まぁ、心が俺をビビらせるために誇張してる可能性が――。

 

 

「…………」

「ふふっ♪ 大和、暗くて怖いね~」

 

 

 しかしそんな事はなく、待機場所から結構暗くてビビっている自分がいた。隣の心がニヤニヤといじってくるのが腹立たしい。カチューシャを着けているせいか、ニヤニヤ顔も普通に可愛いのが余計に腹立つ。

 イライラしている間にも待機列はどんどんと前へ進み、とうとう俺たちの番となってしまった。

 先ほどと同じように隣同士の座席に腰掛ける。

 

 

「はぁ……ずっと目を瞑ってようかな」

「それだと逆に怖くない? だったらあたしが乗ってる間、手をつないでて上げようか?」

 

 

 何という屈辱的な提案。しかし、情けのない悲鳴を上げるくらいならそっちの方がましな気がする。というか、もう時間的余裕があまりない。

 そんなわけで俺は返事をする代わりに、心の右手を握り締める。

 

 

「……頼む」

「…………もう、仕方ないなぁ」

 

 

 そう言って俺の顔を見る心の顔はいつもより優しい感じがした。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 さて、今現在あたしたちは自分たちのマンションまでの帰り道を歩いている最中です。さっきまで夢の国での思い出話にふけっていたのだが、その話もしつくして丁度無言の時間になっていた。

 大和となら無言の時間でも気まずくならないのが一ついいところだ。

 

 

(それにしても、大和からまだ何も話を振ってこないな~)

 

 

 さっきから考えているのはそればかりである。ス〇ースマウンテンを乗り終えた(大和があまりに力いっぱい手を握り締めてくるからめちゃくちゃ痛かった)後は、ス〇ラッシュマウンテンにのったり、他のアトラクションにのったり、パレードを見たりした。

 しかし、その最中では何も起こることなく今に至るというわけである。アトラクションに乗っている時はともかく、パレードを見ていた時は密かに期待していた。

 それだけに、何事もなくパレードを見終えた時は少しだけがっかりした。パレードは凄く綺麗だったからよかったんだけどね!

 

 

(ただ、大和は約束を破るようなことはしないし、これは部屋に戻ってからってことだよね?)

 

 

 隣を歩く大和は少しだけ思い詰めたような顔で歩いている。勝手な妄想なのだが、もしかするとこの後の事を考えているのかもしれない。

 

 

(と、取り敢えずどんなことを言われてもいいように心の準備だけはしておかないと)

 

 

 そのまま歩いているうちにマンションへと到着した。流れで大和の部屋へと入ると、

 

 

「……よし」

 

 

 後ろから何かを決意するような大和の短い声が聞こえてきて、心臓が飛び跳ねた。これは多分いよいよだと……思う。

 リビングで買ってきたお土産などの荷物整理をし、あたしと大和は並んでソファに腰掛ける。

 

 

『…………』

 

 

 沈黙が辛い。あたしもだけど、大和の方が明らかに緊張している。こんなことを言うのもなんだけど、緊張しすぎのような……。

 そんな空気のまま約10分ほどが経過し、

 

 

「……し、心!」

「は、はいっ!」

 

 

 ようやく大和が口を開いた。遂に、とあたしも身構える。

 

 

「えっと……、その、まぁ……、なんだ」

「う、うんっ……」

 

 

 い、言うなら早く言ってほしい。緊張して心臓が口から飛び出そうになる。

 更に5分ほどが過ぎたところで、意を決したようにもう一度口を開いた。

 

 

「ごめん、なかなか言い出せなくて。だけどもう大丈夫だから。ちゃんと、俺の気持ちを伝えるから」

「……分かった」

 

 

 来るべき言葉に備えてあたしは目を瞑る。大和は大きく深呼吸をすると、

 

 

 

 

 

「心…………俺は心の事が好きです。だから、結婚を前提に付き合ってほしい」

 

 

 

 

「うん、こちらこそ……って、えっ? ちょ、ちょっともう一回言ってもらえる?」

 

 

 

 

 

 とんでもない言葉が付き合ってほしいの前に挟まっていた気がする。いや、多分気のせいだ。気のせいに違いない! じゃなければ大和の口から『結婚』なんて――――

 

 

 

「だ、だから、結婚を前提に付き合ってほしいって言ったんだよ」

 

 

 

 間違いでも何でもなかった。大和は間違いなく『結婚を前提に』と言った。

 

 

 

「けけけけけけけけけけけけ、結婚を前提!?」

「んだよ、嫌なのかよ?」

 

 

 頬を赤らめた大和は拗ねたような表情を浮かべる。しかし、あたしはそれどころではなかった。

 

 

(結婚、結婚……。あたしが大和と結婚……)

 

 

 大和の口から飛び出した『結婚』という言葉に、頭の中はショート寸前だった。付き合うまではもちろん想像してたけど、まさか結婚まで出てくるなんて想定外もいいところだ。

 身体全体がフワフワとした感覚に襲われる。とにかく『結婚』という二文字が頭の中で踊って――――。

 

 

「ちょっと落ち着け」

「はっ!」

 

 

 軽く頭を叩かれてあたしは我に返る。

 妄想が爆発して、ウエディングロードを歩いて子供を産み、我が子の成長を見守る姿まで想像していた。

 そんなあたしの様子を見て、大和は困ったように頭をかく。

 

 

「いきなり結婚なんて言ったのは悪かったよ。でも、俺はそれだけ本気なんだ。俺は心と結婚したい」

 

 

 こいつ、またそんなド直球に……。彼の向ける本気の視線、言葉に、私は少しだけたじろぐ。こっちの気持ちも考えろって。

 もちろん、嫌なわけじゃない。……嬉しすぎて何も考えられないだけだから。

 

 

「……えっと、冗談とかじゃないんだよね?」

「冗談なんかでこんなこと言うかよ」

「で、ですよね……。うぅ……」

 

 

 嬉しいやら信じられないやら、様々な気持ちが心の中で交錯する。頬が熱い。

 

 でも戸惑ったって焦ったって、あたしの気持ちは初めから決まっていた。先ほどの大和と同じように大きく深呼吸すると、改めて彼に向き合う。

 

 

「……ごめん、少しだけ取り乱しちゃって」

「いや、今のはいきなり言った俺も悪いわけだし……それに、いま無理に答えを出さなくても――」

「ううん、もうあたしの中で答えは決まってるから。だからね大和……」

 

 

 顔を見て言うのは恥ずかしかったから……あたしは大和の胸に飛び込むようにして抱き付く。

 そして、

 

 

 

 

 

「あたしも大和の事が好き。こんなあたしでよければ……よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 そう答えると大和の身体からこわばりが抜け、安心したようにあたしの身体を優しく抱き締めてきた。

 

 

「良かった……」

「良かったって、はじめから結果は分かってたでしょ?」

「そりゃ、分かってったっちゃ分かってたけど……やっぱり緊張するって。結婚を前提にとか言ったわけだから」

「あははっ! 確かにそれもそうだよね。……あれっ? もしかして大和が色々と準備とか必要って言ってのは?」

「もちろん、プロデューサーさんへの報告やら色々だよ。いくら幼馴染とはいえ、相手はアイドルだからな。結婚を前提とかはきちんと事務所に報告しないと、後でもめる原因になるだろ?」

 

 

 な、なるほど。大和はちゃんと考えてたんだ。あたしは何も考えてなかったから、大和様様である。大和と付き合えて嬉しい、くらいにしか考えてなかった。

 

 

「ちなみにプロデューサーはなんて?」

「結婚を前提にって言ってる時点で分かってるだろ? もちろん、許可してくれた。むしろ、歓迎すらしてくれた」

「きっと裏ではよからぬことを考えている気がする……」

「実はそれが大当たりなんだ。心って確か三日後くらいにイベントがあっただろ?」

「う、うん。それなりに大きなイベントだけど……えっ、まさか!?」

「そのまさか。プロデューサーさんはその場で心に報告させるみたいだ」

 

 

 一瞬、目の前が真っ白になった。10秒くらいかけて状況を飲み込んだあたしは大和の胸倉を掴んでグラグラを揺する。

 

 

「な、何であたしが直接報告しなきゃいけないの!? そういうのって事務所から報告したり、勝手に情報が漏れたりするよね!?」

「今回は幸いにも情報も漏れてないし、直接本人の口から言ったほうがファンも納得するというのがプロデューサーさんの意見だ」

「……本音は?」

「心の恥ずかしがる顔を見たいからだそうです。それに、大きなイベントで報告すればより注目が集まるからって」

「あのプロデューサー!!」

「文句はプロデューサーさんに言ってくれ。あと、そんなに強く揺らさないで。脳震盪が起こりそうだから」

 

 

 取り敢えず大和を揺らす手を止め、あたしは頭を抱える。あのプロデューサーは有能だけど、こういう所は全く尊敬できない。

 ほんと、明日辺りにぐちぐち文句を言ってやらないと……。ただ、文句を言ったところで話が無くなるわけではないので暖簾に腕押しである。

 

 

「……まぁでもいっか。こうして大和とも付き合えたわけだし」

「なんか全然実感わかないな」

「あたしも。だけど、これから付き合っていく中で実感も沸いていくんじゃない?」

「そうだといいけどな」

「そうなるんだよ☆」

 

 

 最後はいつも通りのやり取りで笑い合うあたしたちだった。

 

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

 その後はしばらくイチャイチャしていたのだが、

 

 

「なぁ、今日は俺の部屋に泊ってくよな?」

 

 

 泊っていくという言葉に心臓が飛び跳ねた。チラッと大和の方を見ると、わざとらしくテレビに視線を移している。

 つまりこれは……そういうことだろう。

 

 

「……うん。そのつもり」

「分かった。それじゃあ俺は先にシャワー浴びるから」

 

 

 そう言って大和は足早に浴室へ向かってしまった。しかし、あたしにとっては都合が良かったので一度部屋に戻る。

 

 

「……よしっ!」

 

 

 とあるものが入った袋を持って気合を入れたあたしは、もう一度大和の部屋へ。数分ほど待っていると大和が髪を拭きながらやってきた。

 

 

「お待たせ。タオルは着がえと一緒に置いてあるから」

「ありがと」

 

 

 大和の気遣いを感じつつ、浴室へ向かう。この後の事を考えて念入りに身体を洗い、タオルで身体を拭く。

 そして、袋の中から今日の為に新調した下着を取り出して身に着けた。いわゆる勝負下着というやつだ。

 

 

(へ、変じゃないよね?)

 

 

 鏡で自分の姿を確認する。一応、大和が色々と喜びそうな下着を選んだつもりだ。早苗さん程胸があるわけじゃないけど、バランスの取れた体型をしていると思う、多分。

 

 そんなわけで5分ほど自分の姿を鏡で確認し、あたしはリビングへ向かうことにした。大和の用意してくれたパジャマを棚に残して。

 

 

「……お待たせ」

 

 

 流石に明るい状況で見られるのは恥ずかしかったので、照明の明るさを落として大和に声をかける。

 

 

「お、おいっ! いきなり電気を落としてどうしたんだ……って!?」

 

 

 大和が戻ってきたあたしの姿を見て目を見開いている。突然暗くなったことにもだけど、それ以外の事にもっと驚いているようだった。

 それもそのはずだろう。

 

 

 

 だってあたしは下着しか身につけていなかったのだから。

 

 

 

「何で驚いてるの? どうせするんだし……いいでしょ?」

「そりゃそうかもしれないけど……ったく、お前は」

 

 

 頭をかきながら大和が立ち上がる。そしてあたしの腕を掴むと強引にベッドのある寝室へ。

 ベッドに押し倒されるや否や、大和があたしの身体に馬乗りになるとそのまま唇を合わせてきた。

 

 

「んむっ!?」

 

 

 間髪を入れずに舌が咥内に侵入してきたため、あたしは目を白黒させる。しかし、大和はキスをやめない。

 まるで抵抗できないまま一方的に咥内を舌で犯される。息をするのもままならない。何とかして息を吸おうとすると、艶っぽい嬌声が自身の口から上がりそれが余計に大和の興奮を煽る。

 本当に限界が近い……そのタイミングでようやく大和が口を離した。つつっと絡み合った唾液が糸を引く。

 あたしは息も絶え絶えになりながら、馬乗りになる大和に視線を移す。

 

 

「や、やまと……激しすぎだって」

「誰のせいだと思ってんだよ。……そんなエロい下着だけをつけてリビングに出てきやがって」

「興奮した?」

「……聞くんじゃねぇよ」

 

 

 大和はそんな風に言ったけど、その言い方がほぼ答えみたいなものだった。嬉しくなったあたしは大和の首に腕を絡みつかせ、軽くキスをする。

 

 

「大和、今日は大和の好きなようにしてくれていいから」

「……そんな事言われると多分、止められなくなると思うんだけど?」

「いいよ別に。明日の仕事は午後からだし……そもそも一回だけじゃあたしが満足できないと思う」

「サラッととんでもない事口にするなよ……まぁ、それは俺もだけどさ」

 

 

 視線とチラッと下に移すと、パンツを押し上げるように大和のアレが反応している。臨戦態勢と言っても過言ではない。まぁ、それはあたしにも言えることだけど……。

 

 

「それじゃあ……シよっか?」

「おう、なるべく優しくするから」

「うん」

 

 

 その後はお互いの気が済むまで身体を重ねた。分かったことはあたしも大和も人並み以上に性欲が強かったことです。

 

 そんなわけであたしたちはただの幼馴染から、彼氏彼女の関係になりました。




 謝辞などは活動報告で述べさせていただくので、興味のある方はそちらを見てみてください。アンケートなども行っています。
 取り敢えず、ここまでこの作品にお付き合いしていただきありがとうございました。
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