佐藤心が隣にいる日常   作:グリーンやまこう

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宅飲み

 とある日。俺は心と共にスーパーで買い物をしていた。今はその帰り道である。

 

 

「悪いね、買い物に付き合ってもらっちゃって」

「気にすんなって。どうせ俺も暇だったし、なによりこれだけの量、心一人じゃ持てないだろ?」

 

 

 今手に持っているレジ袋の中身を見ながら返事をする。中にはそこそこの量のお酒と氷が入っている。おつまみなどの袋は心が持っていた。

 なんと今日は心の部屋で宅飲みが行われるらしく、俺たちはその買い出しの為にスーパーで買い物をしていたのだ。メンバーは心、美優さん、瑞樹さん、早苗さんの計四人。

 いつもなら参加しているはずの楓さんは、残念ながらお仕事が入ってしまい参加を見送ったらしい。それでもこれくらいの量なら多分、飲み干せてしまうだろう。ただし、美優さん以外の三人で。

 

 

「流石にこの量を一人で運ぶのは無理だね~。だから助かったよ!」

「……いや、心の事だから頑張れば持てたんじゃ?」

「持てねぇよ☆ はぁとのか弱さなめんな☆」

 

 

 なめんな、とか口に出している時点でか弱さなんて微塵も感じないけど……。それに関してはいつもの事なので気にしないことにしよう。

 話してるうちに心の部屋の前に到着したので、俺は荷物を持って部屋に上がる。

 

 

「珍しく部屋が片付いてるな」

「人が来るんだし、いくらあたしでもちゃんと片付けるって」

「それなら、俺が来るときも片付けといてほしいんだけど?」

「大和は特別☆」

 

 

 何も嬉しくない特別を頂いたところで、お酒を冷蔵庫に、氷を冷凍庫ににしまっていく。うわっ、こいつの冷蔵庫の中、調味料と水以外何も入ってないじゃん。今度は俺が心に何か作ってやるか……。

 

 

「お酒と氷、冷蔵庫の中に入れといたぞ。そんじゃ、俺は部屋に戻るわ。宅飲み、楽しんで」

「えっ、何言ってるの? 大和も参加するに決まってるだろ?」

「えっ? 俺も参加しなきゃいけないの?」

 

 

 心の言葉に俺はキョトンと首を傾げる。

 いやいや、全く持って意味が分からない。その場に俺がいるとか邪魔以外の何物でもないだろ。アイドルだけで飲んだほうが絶対に楽しいと思うのに。

 

 

「当たり前じゃん! ……まぁ、早苗さんたちに頼まれたからってのもあるけど」

「早苗さんたちに……どうしてだろ? 俺、何かしたっけ?」

「さ、さぁね~。何でだろうね~? はぁと、わかんない☆」

 

 

 歯切れの悪く、俺から視線を逸らす心。彼女が視線を逸らした理由も分からないし、早苗さんたちが俺を誘った理由も分からない。分からないことだらけだ。

 

 

「ちなみに、大和に拒否権はないから」

「さいですか……」

 

 

 まぁ、今日は特にやることもないし暇だからいいけど……。ただし、明日が心配である。きっとたくさん飲まされるんだろうな~。

 こうなるんだったらスーパーでウ〇ンの力でも買っておくべきだった。飲む場所が居酒屋じゃないのがせめてもの救いである。

 それに休日であるにも関わらず、美優さんに会えるというのは大きなメリットだ。これは非常に嬉しい……。

 

 

「大和ってば、また美優ちゃんの事考えてたでしょ?」

「……だから、なんで分かるんだよ?」

「美優ちゃんの事を考えてるときの大和はニヤニヤしてるから分かりやすいの。全く……」

 

 

 呆れたような視線を向けられ、俺は心から顔を背ける。これから今以上に気をつけなければ。だらしのない表情を見られたら美優さんに嫌われてしまう。

 

 

ピンポーン!

 

 

「あっ、早苗さんたちが来たみたいだからちょっと行ってくるね」

 

 

 俺が顔を背けた直後、インターホンの音が部屋に響き、心が玄関へと向かう。しばらく待っていると、各自ビニール袋を持った早苗さんたちがリビングに入ってきた。

 

 

「いやー、ごめんね大和君。忙しいところ、参加させちゃって」

「確かに随分急でしたけど、大丈夫ですよ。むしろお酒がたくさん飲めるのでラッキーなくらいです」

「ふふっ、そう言ってくれると助かるわ。大和君の為にいいお酒も持ってきたから」

「ありがとうございます」

 

 

 俺は早苗さんと瑞樹さんに頭を下げる。そんな俺の様子を見ていた心がボソッと一言。

 

 

「さっき言ってた事と全然違うけどね」

「うるさいぞ、心」

 

 

 そこで美優さんがトートバッグの中からタッパーを取り出す。

「私はお酒ではないんですけど、肉じゃがを作って持ってきました。口に合うかは分かりませんけど」

「口に合わせるので安心してください。そもそも、美優さんの作ってくれたものでまずいなんてありえませんから。ほんと、作ってきてくれてありがとうございます。早速温めてきますね」

「はぁ……全く、美優ちゃんの前では相変わらずだな」

 

 

 心が呆れているけど、美優さんの肉じゃがを食べられるので何も問題はない。

 俺は肉じゃがを温めにキッチンへ。タッパーからお皿に移した肉じゃがをレンジに入れる。

 

 

「おーい、大和。肉じゃがを温め終わったらこっちも温めといて」

「了解。あっ、戻るついでに全員分のグラスを持っていってくれ」

「オッケー」

 

 

 俺は肉じゃがの他にもグラスやビールを持ってリビングへと戻る。既に机には三人が持ってきていた料理やおつまみが並べられていた。

 

 

「それじゃあ、料理も揃った事だし、乾杯しましょうか! 大和君、よろしく!」

「えっ、俺ですか? ……それでは僭越ながら、乾杯の音頭をとらせていただきます。本日はお日柄もよく――」

「かんぱーい!」

『かんぱーい!!』

「……乾杯」

 

 

 半分どころか、一割も言ってないうちに乾杯の音頭を心に取られた。確かに長くなりそうだったけど、それでも悲しい。

 

 

「まぁまぁ、拗ねてないで飲みなよ。大和の話が長いのは今に始まったことじゃないからさ」

「だから、何のフォローにもなってないって……飲むけどさ」

 

 

 俺は手元に置いてあった缶ビールのプルタブを引き、勢いよく喉に流し込む。一息で半分ほどを飲み干してしまった。

 

 

「おぉっ! いい飲みっぷりね大和君!」

「いやいや、早苗さんにはとてもかないませんよ」

 

 

 三人が持ってきてくれた焼き鳥を摘みながら答える。早苗さんも俺と同じく缶ビールを半分ほど一気に飲み干していた。ほんと、男の俺でも惚れ惚れするような飲みっぷりです。

 

 

「珍しいわね。大和君がはじめからハイペースで飲むなんて」

 

 

 隣で缶チューハイの入ったグラスを傾けていた瑞樹さんが驚いたような声を上げる。

 

 

「ここは居酒屋じゃなくて心の部屋ですし、別にどれだけ酔っても、迷惑をかけても大丈夫ですから」

「オイコラ、なにも大丈夫じゃねぇぞ☆」

「あ、あはは……」

 

 

 心が文句を言っているが、今日くらいは大目に見てほしい。いつもは酔っぱらって気分の悪い心を送らなければいけないため、そこそこ押さえて飲んでるからな。

 というわけで、あっという間にビールを飲み干した俺は次のビールに手を伸ばす。

 

 

「あっ、大和君。ビールもいいけど、こっちのお酒も飲んでみてよ」

「さっき言ってたやつですか?」

「そうそう。番組のプロデューサーさんに撮影のお礼ってことで貰ったんだけど、一人じゃ飲む気にならなかったから助かったわ」

 

 

 瑞樹さんが取り出したのは見るからに高そうな日本酒だった。居酒屋でもよく日本酒は頼むけど、これはそれらよりきっとおいしいだろう。

 

 

「あら、これすごくおいしいって評判の日本酒じゃない。これが飲めるって今日はついてるわね~」

 

 

 早苗さんも美味しい日本酒が飲めるとあってご機嫌だ。

 

 

「んじゃ、新しいグラスを持ってきますね」

 

 

 キッチンに向かい、新しいグラスを持ってくる。

 

 

「早苗さんたちはいいとして、美優さんは……やめといたほうがいいですかね?」

「すいません。お酒はあまり強くないので」

 

 

 そう言って美優さんが苦笑いを浮かべる。以前、日本酒をひとなめしただけで顔を真っ赤にして倒れたと心が言っていたので、これはやめておいた方がいいだろう。

 美優さん以外の四人分のお酒をグラスに注ぐ。

 

 

「それじゃあ瑞樹ちゃん、ありがたく飲ませてもらうわね。……あっ、美味しい!」

「ん~、意外と飲みやすくてこれなら何杯でも飲めそう!」

「ふふっ! 気に入ってくれたみたいで良かったわ」

 

 

 三人が話す横で俺も日本酒をぐびっとあおる。

 

 

「……ほんとだ、美味しいですねこれ」

「でしょ~? ほら、はぁとがお酌してあげるからどんどん飲みなって☆」

「おっ、悪いな」

 

 

 酒瓶を持った心が笑顔でお酒を注ぐ。

 

 

「大和君がこんなに飲むなんて、本当に今日は本気ね~」

「普段が普段なんで、今日は遠慮なく飲ませてもらいますよ。こんな美味しいお酒の飲める機会なんて滅多にありませんからね」

「あんま飲みすぎんなよ~」

「潰れたら心、介抱よろしくな」

「断る☆」

 

 

 そんな感じで楽しい宅飲みは進んでいくのだった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

 そして飲み会をはじめて二時間ほど経過した。アタシたちもさることながら、大和君はそれ以上のハイペースで飲み進めていた。

 アル中になる程のペースでないとはいえ、こっちがちょっと心配になるくらいに。料理もつまんではいるんだけど、大丈夫かしら? 

 はぁとちゃんも、少しだけ心配そうに大和君の事を見つめている。

 

 

「大和、あんまり飲みすぎんなよ。ほらっ、料理もあるんだからさ」

「まだまだ大丈夫だって」

 

 

 はぁとちゃんの忠告を聞くことなく、大和君はお酒の入ったグラスに口をつける。

 彼は顔色も変わっていなければ、呂律も回らなくなっているわけではない。ただ、言いようもない不安を感じているのも事実だ。何というか、私たちじゃなくてはぁとちゃんに被害が及ぶような気がする。

 

 

「ん~、ほんと美味しいですね」

 

 

 アタシが言いようもない不安を感じている間にも、大和君は黙々と飲み続けている。いくらお酒が強いとはいえ、そろそろまずいんじゃ?

 

 

 

「…………ふぅ」

 

 

 

 そこで大和君が飲み干したグラスをガンッと音を立てて机の上に置く。普段彼は、わざわざ音を立ててグラスを置いたりなんてしない。

 嫌な予感がして大和君の顔を見ると、妙に目が据わっていた。こんな表情の大和君は見たことがない。

 

 

「や、大和? 水飲む?」

 

 

 はぁとちゃんも異変に気付いたのか、慌てて水を差し出す。しかし、大和君はそれに手をつけようとせず、

 

 

「早苗さん、瑞樹さん、それに美優さん!」

『は、はいっ!』

 

 

 いきなり名指しされたアタシたちは思わず揃って声を上げ、次の言葉に身構える。い、一体、何を言われるんだろう?

 

 

「こんな事、改めて言わなくても分かってると思うんですけど……心って、すごく可愛いですよね?」

「はぇっ!?」

『…………はいっ?』

 

 

 大和君の口からとんでもない言葉が飛び出した。

 

 はぁとちゃんは顔を真っ赤にして固まり、アタシたちは彼の言ったことを理解できずに固まる。……いや、理解はできてたんだけど、脳の処理が追いつかなかった。

 

 

「えーと、大和君。一応確認だけど、今の可愛いって、世間一般的な可愛いってことで大丈夫?」

「もちろんですよ。むしろ、他にどんな可愛いがあるんですか?」

「まぁ、そりゃそうだけど……」

 

 

 相変わらず脳の処理は追いついていない。ただ、一つだけ分かったことがある。

 

 

(大和君、だいぶ酔ってるわね……)

 

 

 顔は赤くなくて、呂律も正常だから分かりにくいけど、大和君は今確実に酔っている。酔ってなきゃ、アタシたちのいる前で『心が可愛い』なんて絶対に言わないもの。

 

 

「ねぇ、早苗ちゃん。もしかして大和君、酔ってる?」

「もしかしなくても酔ってるわね」

「大和さんがあんなことを言うなんて……心さんにとっては良かったかもしれませんけど」

 

 

 三人ではぁとちゃんに視線を移すと、相変わらず顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた。

 こういっちゃなんだけど、普段が普段だからギャップがあり、はぁとちゃんもやっぱり女の子なんだなと可愛く見えてくる。こういう姿を見せれば、彼女のファンはもっと増えるんだろうな~。

 

 

「み、みみ、みんな! 今の大和はちょっとおかしくなってるから、真面目に聞かないで――」

「いや、可愛いって言うよりは美人って言ったほうが正しいかな? ほんと、美人だよな心って」

「ふぇっ!?」

『…………』

 

 

 今度は顔どころか耳まで真っ赤にさせて固まるはぁとちゃん。今日、アタシたちは惚気話を聞きにきたのかな?

 

 もちろん、はぁとちゃんは誰が見ても美人とか可愛い部類に入ると思う。本人も撮影などを含めて、それなりに言われたこともあるだろう。

 でも酔ってるとはいえ好きな人に可愛いやら、美人やらって言われたら嬉しさのあまり顔も真っ赤になるわよね。

 特に、普段はそんな事絶対に言わない大和君なら尚更。酔ってるときに本音が出るなんて、実に大和君らしい。

 

 

「や、大和……やめてってば」

 

 

 はぁとちゃんは完全に女の子の表情になっている。……可愛い。ちょっといじめたくなってきた。

 それはアタシだけじゃなく瑞樹ちゃんたちも同じだったようで、

 

 

「ねぇ、大和君。具体的にどんなところが可愛かったり、美人だったりするの?」

「それ、私も聞きたいわ大和君。ここでしか言えないと思うから、思う存分言っちゃいなさい」

「わ、私も気になるので大和さん、お願いします」

「ちょっ!? み、みんな、酔ってる大和に変な事聞かないで! 大和も応えなくていいからね!!」

「可愛いところですか? もちろん顔は可愛いですから言うまでもないとして……」

「へぇ~、顔はもちろん可愛いねぇ?」

「や、やめて、早苗さん……」

 

 

 滅茶苦茶嬉しいけど、滅茶苦茶恥ずかしい……と言う表情を浮かべるはぁとちゃん。そんな彼女をアタシたち三人は微笑まし気に見つめる。

 普段のやり取りも十分微笑ましいけど、これはこれでアリね。

 

 

「可愛いところは沢山あるんですけど、やっぱり俺は笑顔が一番可愛いと思います。もちろんテレビとか写真集の笑顔もいいですけど、今みたいに少しだけ緩んだ笑顔が俺は好きです。なんか、元気貰えるんですよね、心の笑顔って。昔からそうですけど」

「ふぅ~ん。だってはぁとちゃん。大和君、はぁとちゃんの笑顔から元気貰ってるみたいよ。それも今だけじゃなくて昔から!」

「瑞樹さんまで……。ほんと、やめて下さい……死ぬほど恥ずかしいんですから」

「心さん、可愛い♪」

「美優ちゃんも!!」

 

 

 真っ赤な顔でプンスカ怒っても全然怖くない。ほんと、可愛い。はぁとちゃんのプロデューサー、こっちの方向で仕事を持ってこないかな?

 

 

「じゃあ次は美人なところについて聞いちゃおうかしら?」

「もちろん、髪をおろした姿です」

「即答っ!? うぅ……」

 

 

 あまりのレスポンスの早さにはぁとちゃんが壊れかけている。本当に酔っているのかしら? いや、酔っているからこそ反応速度が速いのかも。

 

 

「ほんと、あの姿は反則ですよね。いつもはキャラ作ってツインテールなのに、髪をおろした途端、美人で御淑やかな女性になるんですから」

 

 

 大和君の言葉にアタシたち三人はうんうんと頷く。髪下ろした時のはぁとちゃんはものすごい反響だったからね。

 

 

「……というわけで、心には可愛さと美人さが融合されているんです。つまり、最強です」

「いや、その理論意味わかんないから」

 

 

 赤い顔ではぁとちゃんが大和君にツッコむ。先ほどよりも酔いが回ってきているのだろう。若干、大和君の瞳がトロンとし始めていた。

 

 

「……あっ! それともう一つ話してないことがありました」

「うげっ!? ま、まだあるのかよ。もうこの辺で――」

『是非!!』

「…………もういいです。こうなったらあたしも最後まで聞きます。今日は厄日だなぁ……」

 

 

 はぁとちゃん遠い目をしても諦めたところで大和君が口を開く。

 

 

 

「俺、心が隣にいる今がすごく楽しんです」

 

 

 

 優しい瞳をはぁとちゃんに向ける大和君。その瞳を見て酔っぱらいの適当な発言ではなく、多分本気なんだなと思うことができた。

 

 

「幼馴染ですし、ちょくちょく連絡を取ってたんですけど、やっぱり隣に引っ越してきてくれた時からですかね。普段の日常がすごく楽しいものになったのは」

「…………」

 

 

 拗ねたような表情ではぁとちゃんがそっぽを向いている。しかし、私たちは分かっていた。

 

 あんな表情をしていないと嬉し過ぎて表情が緩んでしまうからだろう。

 ほんと、酔った時にしか本音を言えない大和君も、はぁとちゃんも不器用なんだから。

 

 

「心とどこかに出かけたり、家で過ごしたりするのがすごく楽しいんですよ。隣に引っ越してきた理由はよく分かりませんけど、それでも感謝しています。隣に来てくれなかったら、こんな気持ちを知ることはなかったですから。……だからですかね。撮影とかで心に会えないとすごく寂しくて…………」

「……あれっ?」

 

 

 急に言葉が途切れたので大和君の方を見ると、自分の腕を枕にして気持ちよさそうな寝息をたてていた。

 

 

『…………』

 

 

 何というか、もの凄く気になるところで話を切られた気がする。アタシたちはその「寂しくて」の後を聞きたかったのに。

 瑞樹ちゃんと美優ちゃんも同じような表情を浮かべていた。でも、

 

 

「はぁとちゃん。今の大和君の言葉、どうだった?」

「…………嬉しいに決まってるじゃないですか」

 

 

 ぽつりとはぁとちゃんが呟く。

 すぐに右手で顔を隠してしまったけど、直前の彼女は泣き笑いのような表情を浮かべていた。

 

 

「私も二人のような恋をしてみたいです」

「わかるわ」

 

 

 二人が羨ましい表情で大和君たちを見つめている。気持ちが分かりすぎて辛い。

 

 

「取り敢えずはぁとちゃん……結婚式にはよんでね?」

「っ!? け、けけけけ、結婚なんてしにゃいですから!!」

 

 

 盛大に噛んだはぁとちゃんをアタシたちは優しい瞳で見つめる。必死に否定してるけど、頭の中では結婚式の様子がありありと想像されていることだろう。やっぱり可愛い。

 

 その日は色々な意味で大満足(ただし、はぁとちゃんを除く)な宅飲みだった。

 

 ちなみに大和君は話したことを一つも覚えていなかったらしく、それもあって余計にはぁとちゃんをヤキモキさせたそうです。




 
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