デスマーチからはじまる隷族支配   作:南小谷あずさ

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リザ視点のお話です。
前話までとは毛色が違います、リザ以外はオリキャラのみです。

注:少し性的な表現があります。又、オリジナル様の進み方によっては将来的に削除するかもしれません。


ご主人様と若旦那様

まるで強烈な睡魔に襲われたように、意識がどんどん遠くなります。

 

先程まで、必死に抵抗してましたがご主人様のお言葉に従い一切の抵抗を止め、身を委ねると身体の痛みも消えていきました。

 

そして我が身は、まるで底なし沼にでも落ちて行くようにどんどんどんどん闇へと沈んで行きます。

 

…果たして再びご主人様に会うことは出来るのでしょうか?

 

…いえ、愚問ですね。

当たり前すぎる疑問です。

そもそもご主人様が口にした事を信用出来ない様じゃ、家臣として失格です。

今はそのお言葉通り、この身を委ねるとしましょう。

 

…ご主人様、今回の失態に対する罰はたとえどんな物であっても受ける覚悟は出来ています。

 

ですからもう一度…もう一度だけでもこの御身を貴方の前に…。

 

 

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気づくと私は森の中の木陰にいました。

 

…何かとても楽しい夢を見ていた気がします。

 

傍に転がる水桶とかつぎ棒…

 

そうでした、水汲みの仕事中なのに暑さと疲労でいつの間にか倒れていたようです。

 

…倒れてからどれくらいの時が経ってしまったのでしょう…

 

折角、汲んだ水も全て地に還ってしまいました。

また泉まで汲みに行かないといけません。

奴隷ですから…

 

再び、棒を担ごうとしますが身体が思うように動きません…目もチカチカして良く見えません…しかし、私は仕事を止める訳には行かないのです。

私のご主人様はお客様の為に、森の奥の泉の水をご所望しています。

まだ半分の水も運んでいません、早く…早く行かなければ…

 

その時でした、

 

「無理は止したまえ」

 

いつからそこにいたのか、人族の男性が近くの切り株に腰掛けて私に声を掛けて来ました。

 

「…いえ、私は…」

 

その声に、返答しようとしますが上手く声が出ません…

ふらふらと弱々しく立ち上がろうとした私を、その男性は支え、再び木陰にそのまま寝かせたのです。

きっと倒れていた私をここまで運んでくれたのもこの方なのでしょう。

 

「若旦那様、私の様な物に触るとお身体が汚れます…どうぞお捨ておき下さい」

 

なんとか絞り出した私の言葉でしたが、その男性は聞く耳を持たず、湿らせた布を私の額に置くと、そのまま私の鼻をつまみ強引に口を塞ぐように水袋をくわえさせてきました。

 

「慌てて飲んじゃダメだ…ゆっくりゆっくりと…ね!」

 

私は急な男性のその行動にビックリしましたが、その言葉に従う様にゆっくりと身体に水を受け入れました。

そして、ようやく少しだけ身体が落ち着いた時、視点が落ち着いてその男性の姿をじっくり見ることが出来たのです。

 

…その男性は成人としては少し幼い感じでした。

髪は黒くこの暑さの中、青い厚手の上等なローブを身につけています。

 

…どこかで見たような気がしますが思い出せません。

 

「…ありがとうございます、ですが奴隷にこのような親切は…」

 

ちょっと困惑して出したその言葉に、彼は横を向いて頭をかきながら、やれやれという表情を見せました。

 

「それにしても奴隷が倒れているのに…君の主人は?」

「ご主人様は街にいらっしゃいます」

「ふーん、ここには一人で?」

「…はい…」

 

本当は見張りも一緒だったのですが、森の入口で休んでいるとは言えません…

 

「…そう…か…」

 

それだけ言うと、彼は水桶を担ぐと歩き出しました。

私は慌てて立ち上がり、止めようとしますが手足が痺れて動けません。

 

「若旦那様、どうぞ…構わずおいて下さい!」

 

必死に声を上げますが、彼はこちらも見ず、右手だけこちらに振りながら行ってしまいました。

 

それから暫くした後、私が汲みに行くより遥かに早く戻って来ました。

桶になみなみの水を汲んで。

 

「これで良かった?そこの川で汲んで来たんだけど?」

「…ありがとうございます…若旦那様…ですが申し訳ありません、奥の泉から汲んで来るよう命令を受けていますので」

 

すると彼は笑顔を向けて、

 

「かまいやしないよ、元々泉から流れてる川だし、味なんてどうせわかりゃしない」

「しかし、それでは命令違反になってしまいますので」

「いや、これは俺が勝手にやったことだし、君はちゃんと命令通り泉の水を何度か運んだろ…まあちょっとは大地に飲ませた訳けどね。その証拠に首輪も閉まって無いだろ?」

 

…確かに泉の水を汲んでくるようにとは言われましたが、何杯とは言われませんでした。

しかし、それではダメなのです。

 

「申し訳ありません、若旦那様」

 

私は必死に頭を下げました。

すると彼は水桶を持ち上げて、突然、私にその水を浴びせました。

親切を無下にした事にさぞかしお怒りだったのでしょう。

ですが私は、どんな罵声や暴力を受けても自らの仕事をこなさなければいけません。

要領が悪いのかもしれません…しかし奴隷であったとしてもそれが私の信念です。

 

私は覚悟を決め、彼を見ました。

しかし、彼は怒ってなどいませんでした。

それどころか私に笑顔を向け、

 

「しーっかし暑いな、こんな日は水浴びでもしないとやってられないよなー」

 

そしてもう一つの水桶を自分の身体に被ったのでした。

 

「少しは休めたかい?」

「…若旦那様、ありがとうございます」

 

私が返事にならないような言葉を返すと、

 

「仕事残ってるんだろ、せいぜい頑張りたまえ」

 

と水桶を返して来ました。

 

「ありがとうございます、若旦那様」

 

私は立ち上がってお借りした、まだ少し入った水袋と布をそれを交換するように手渡しました。

すると、彼は水袋だけを受け取り、

 

「布は常に湿らせて首に巻いておきなさい、ぼろ切れだから気にしなくていい」

 

と言って、更に私に小さな白い塊を渡してこようとしました。

 

「ついでにこれ…塩の塊だけど」

 

しかし布だけでも贅沢なのに、塩なんてそんな貴重な物まで私ごときが頂く訳には行きません。

 

「若旦那様、お言葉ですが私の様な奴隷には勿体無い物でございます、どうぞご自身の為にお持ちください」

「…そうかい、余計なお世話だったかな?」

 

ちょっと渋い顔をした彼のその言葉に対し、私は即座に大声で否定しました。

 

「若旦那様!そんな事はありません!この布は有りがたく頂戴します、その上、この様なお心遣いまで大変感謝しています」

 

すると彼はまた笑顔になって、その塩の塊を口に入れました。

その表情に安心して、私もようやく彼に本心からの笑顔を向ける事が出来ました。

そして彼は先程お返しした水袋の水を口に含みます、そして私をじっと見て…

 

「!!!」

 

それは一瞬の出来事でした…

彼は私を抱き寄せて、強引に唇を合わせると口に含んだ水を私の中に流し込んで来ました。

私がその突然の出来事に唖然としていると、彼は唇を少し離し私の口の周りの溢れた水滴を舌で優しく舐め取った後、顔を離しました。

そして肩にポンと手を置くと耳元で、

 

「また会おう」

 

と囁いてそのまま立ち去って行きました。

私は情けない事に、返事すら出来ず口を両手で抑えてその場にしゃがみ込むのが精一杯でした。

 

今日の仕事はその後、散々でした。

…しかし、何故か悪い気分ではありませんでした。

 

 

その次の日の夜…

 

「おい!蜥蜴、今日は上客が来る。先方がお前をご指名だ!その客を満足させる事、これが命令だ!わかったな!」

「…かしこまりました」

「ちゃんと身体をキレイにしておけよ」

 

…ついにこの日が来ましたか…

奴隷になって覚悟はしていましたが、初めての夜伽のご指名です。

 

亜人である、私達に夜伽の命令が来ることは滅多にありません。

ご主人も勿論、亜人になど夜伽を求める事はありませんでした。

 

…しかし、無い訳ではありません。

それは分かっていました…分かっていましたが、いざとなると心の準備がいるものですね。

しかし、それが命令である以上それに従わなくてはなりません。

 

そして私は身体を清めるように磨いた後、用意されたきらびやかな衣装に包み、軽い化粧などされてお客様の部屋へといざなわれます。

扉の前で一つ大きく深呼吸をして覚悟は決まりました。

 

軽くノックをして、

 

「蜥蜴です、失礼します」

 

ハッキリと挨拶します。

…声は震えていないでしょうか?ちょっと不安になります。

 

「蜥蜴か、入れ!」

 

ご主人の声に促され扉を開きます。

そして入った部屋の中には…

 

「やあ!君が用意してくれた水は水割りにあう!なかなか美味だね!」

 

と、木製の酒杯を上げて笑顔を向ける彼の姿がありました。

 

「良い奴隷を持ってるようだな」

 

と彼は言うと、ご主人様に金貨を一枚放り投げ、私に横に座るよう促しました。

 

「それじゃ失礼しますね…」

 

ご主人様は頭をペコペコと下げながら金貨を受け取ると、いそいそと部屋を出て行きます。

入れ替わる様に私は、彼の横に座りました。

 

「若旦那様、昨日は有難うございました」

 

最初に頭を下げて昨日のお礼を言うと、彼は苦笑いを浮かべ、

 

「大した事じゃ無いよ、それにああでもしないと受け取って貰え無かっただろうしね…」

「…はい…すみませんでした」

 

何を謝ってるのかわかりませんが、その言葉に少し恥ずかしさを感じます。

 

「それにしても若旦那様は勘弁してくれないか」

「失礼しました、では何とお呼びすれば?」

 

すると彼は顎に手を当てふむ…と言った表情を見せ、

 

「タイキだ、良ければ君の名前も教えてくれないか?」

「かしこまりましたタイキ様、私は蜥蜴で結構ですご主人様もそう呼んでいますので」

「名前は無いのか?」

「…いえ、ありますが人族の方には発音が難しいらしく覚えづらいらしくて…氏族の方なら」

「ならばそちらを教えて貰おうか」

「キシュレシガルザです」

 

すると彼はやれやれという顔をして

 

「それも難しいな…」

 

結局、彼は私を蜥蜴と呼ぶことにしたようだ。

そして立ち上がり、

 

「蜥蜴、何か飲むかい?」

「いえ、結構です…タイキ様、用意なら私が!」

 

しかし、彼…タイキ様は私の遠慮を気にも止めず、酒杯をもう一つ用意すると、

 

「晩酌位付き合って貰うよ」

 

と言うと、果実酒を水で薄めたものを手渡して来ました。

そして軽く酒杯を合わせると、

 

「乾杯」

 

と言ってグラスを飲み干したのでした。

私もそれに合わせる様に、

 

「乾杯」

 

と小声で言うと、果実酒を飲み干しました。

その様子を見た、タイキ様はちょっと笑顔を浮かべました。

 

その後、少し沈黙が続いた後、タイキ様は無言で部屋の灯りを落とします。

そして、窓の暗幕を開けると部屋に月明りが浮かび、幻想的な雰囲気となりました。

そのまま無言で再び座るタイキ様に、私はその意味を理解して、月明りに照らし出される様に彼の前に立ち、ゆっくりと服を脱ぎ始めます。

 

その様子をタイキ様は、今までに見せた事の無いような厳しい顔でじっと私を見つめていました。

 

…怖くないと言えば嘘になります。

でも半面、タイキ様で良かったと言う安堵した気持ちもあり、私自身が思うより素直に受け入れられる気もします。

そうして私は隠すものも無く全裸となった姿を、タイキ様の前へと差し出しました。

 

 

 

 




6/12加筆修正
もう少し入れようかと思いましたが、文字数合わせでキリの良いところで。
既に予定よりちょっと迷走してる感があります。
夜伽に金貨一枚は多いですが、これには理由があります。

ところで、リザの過去って凄い興味があります。
いつかコミカライズしてくれないかな?
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