デスマーチからはじまる隷族支配   作:南小谷あずさ

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前話の続きでリザ目線です。

多少ですが生々しい表現が有ります、ご注意下さい。


夜伽からはじまる旅情準備

彼(タイキ様)はいつまでも無言でした。

そして、まるで品定めをするように、私を見つめます。

 

「タイキ様?」

 

暫しの沈黙の後、どうしたら良いのかわからず、私は声を掛けました。

すると彼は立ち上がり、まず右手の甲をなぞるように触って来ました。

そして、そのまま右腕の鱗、肩、更には左腕へとゆっくり撫でていきます。

余りのくすぐったさに身震いして我慢していると、

 

「後ろを向いてくれないか?」

 

と言って手を離しました。

私はその言葉に従い、彼に背を向けるように、月明かりのする方を向きます。

すると彼は、私の髪をすくい上げ、

 

「綺麗な髪だ…まるで流れる川の様だ」

 

と言って、顔を埋めました。

私は恥ずかしさで、声が出そうになりましたが、グッと堪えました。

すると、今度は髪を丁寧にたくしあげ今度は背中の鱗に手を這わせます。

そして、肩、腰、尻、太ももから踵、更にはしっぽの先までもゆっくりと撫でると手を離し、今度は私の正面に向かい合いました。

彼は左手を背に回し、右手で私の顎を軽く上げ、瞳をじっと見つめてきます。

その瞳の中には、月明かりに浮かぶ私の姿がありました。

 

「覚悟は決めたって顔だな…」

 

その言葉に肯定も否定もせず、私はひたすら彼を見つめました。

 

「いい目をしている…美しい…実に美しい、まさに宝と呼ぶに相応しい!…いやまだその原石と言った所かな?」

 

そして彼は顔を更に近づけ小声で、

 

「…その流れる涙さえもまるで宝石の様だ…」

 

涙…?そんなもの流した覚えはありません…?

…しかし、私の顔はいつしか涙で溢れてかえっていました。

 

「もっ…申し訳ございません」

 

慌てて顔を拭って取り繕うとする私に彼は優しく微笑ます。

…そして、その溢れる涙を…優しく軽く舌ですくいとり、無言で私を抱き止めました。

ようやく触れ合った、お互いの胸の鼓動が早くなって行くのがわかります。

…そして優しく包みこむ彼の身体はとても熱く…うっすらと汗が浮かんでいます。

…その熱さが何を求めているのか私でもわかりました。

私はその熱さに覚悟を決め、今度はこちらから唇を重ねます…。

彼はそれを優しく受け止めました。

唇を離すついでに、少し舌で彼の唇を弄んだのは昨日のお返しです。

そのまま暫く彼との抱擁は続き、その温もりを感じていました。

しかし、その温もりは不意に私から離れました。

そして、

 

「…ありがとう…服を着たまえ…風邪をひく」

 

と言って、驚く私に背を向けました。

その言葉に何かしらの失礼を働いたと思い、その場に伏せ必死に謝罪します。

 

「申し訳ございません!タイキ様、なにか失礼をいたしましたでしょうか?」

 

しかし、彼はその問いに答えず無言で部屋を出て行きました。

私はどうすれば良いのかわからず、とりあえず彼に言われた通りに服を着るしか有りませんでした。

 

それから暫くした後、

 

「もう入ってもいいかな?」

「…はい、大丈夫です」

 

彼はご主人様の仲間の文官と共に戻って来て、再び部屋の灯りを灯しました。

そして動揺している私に、

 

「蜥蜴、君は暫くの間僕に仕えて欲しい」

 

と意外な言葉を投げ掛けて来ました。

急な言葉に返事に困っていると、

 

「君には選択の権利を与える、今から説明する事を理解した上で返事してくれたまえ…」

 

そう言うと、彼はじっと冷淡な表情で私を見つめました。

 

「僕はこれから一月から二月程度、少し厄介な仕事で旅団を率いて遠くに出なければならない。その間僕の身の回りの世話を君にして欲しい…正しこの任務には少々危険が伴う、勿論安全には十分配慮するが、命の保証までは出来かねると言うのが正直な所だ」

「…ご主人様は何と?」

「…普通、たかが夜伽に金貨は弾まないよ」

 

その言葉に既にご主人様とは話はついている事がわかりました。

 

「でしたら、私に拒否する権利は…」

 

しかし、その言葉を遮る様に彼は手を広げ、

 

「これはただ単に主人と奴隷という関係だけでなく、お互いの理解の元に契約したい…なんせ命を預かる訳だからね…わかって貰えるかい?」

「はい」

「その上でこのままの生活を望むならここに残って貰っても良い、これは君の今の主人とも話がついている。これからもう少し詳しい話を…」

「タイキ様、お言葉を途中で遮るようで申し訳ございません。これ以上のご説明は結構でございます、この蜥蜴、タイキ様にこの命をお預けしたいと思います」

 

突然の私の言葉に彼は驚いたようでしたが、

 

「よろしくお願いします、ご主人様!」

 

と頭を下げると、

 

「金貨をムダにしなくて済んだよ」

 

と笑顔を向けてくれたのでした。

そして金貨をもう一枚、一緒に上がってきた文官に渡すと直ぐに契約は完了して、彼は私の何人目かの新しいご主人様になりました。

 

それから文官を下げさせると、

 

「よろしく頼む、蜥蜴」

 

と手を差し出しました。

私はその手をしっかり繋いで、

 

「こちらこそ、よろしくお願いいたしますタイキ様!」

 

と頭を下げました。

 

…その夜はそのまま新しいご主人様と過ごしました。

 

月灯りの寝室で私の手を取りダンスを求めて来ます。

しかし、その様な経験の無い私は上手く踊れず、ご主人様に身体を任せるだけでした。

 

「蜥蜴、仕事が終わったらまた踊ろう」

 

手を繋ぎ、そうおっしゃるご主人様に、

 

「…はい!それまでに少しは練習しておきます」

 

私のその言葉に、ご主人様は微笑んで左手の甲に優しく口づけをしてくださいました。

そして、その後は再び酒杯を交わし、暫しの二人だけの時間を過ごしました。

…結局その晩、ご主人様は夜伽を求めてくる事は有りませんでした。

 

翌朝…

 

私は部屋に入る朝日で私は目覚めました。

ご主人様との酒宴でいつの間にか寝てしまっていたようです。

久しぶりに寝るベッドの寝心地は良く、ついつい寝過ごしてしまいました、いけませんね。

しかも、目覚めたベッドにご主人様の姿は無く、ソファーで一人寝息を立てるご主人様の姿がありました。

私は目の前が真っ暗になりました。

奴隷がご主人様を押し退けて、ベッドで寝るなどあっては行けない事です。

 

「申し訳ございません、ご主人様!」

 

慌てて目を覚まされたご主人様に精一杯の謝罪をしました。

しかし、ご主人様は少しも気になさって無いようで、

 

「やぁ…おはよう蜥蜴、良く寝れたかい?」

 

と、少し眠そうな目で私に声をかけてこられました。

私は再度謝罪をしようとしましたが、ご主人様は頭を掻きながら、

 

「気にしなくていい、それより水をくれないか?」

 

と私に奴隷として最初の仕事を下さいました。

私は直ぐに水差しに手を伸ばしましたが、それよりも早く水差しに伸びる手がありました。

 

「…全く、奴隷の分際で主様(ぬしさま)の寝床を奪うなど…」

 

そう呟く手の先にはいつからいたのか、ご主人様に付き添う様に立つ人族の女性の姿がありました。

 

「…サツキか、手配は済んだのか?」

 

その言葉に、女性は少し不機嫌そうに水をご主人様に渡すと、

 

「物資など必要な物は全て完了しております…後は奴隷どもの到着を待つのみです…しかしながら、主様!なにもこの様な亜人奴隷な雇わずとも…主様の世話など私一人で充分です」

 

とこちらに不本意そうな視線を向けて来ました。

しかし、ご主人様は気になるする様子も無く、

 

「サツキ…何か問題でも?」

 

アクビをしながら答えます。

ですがやはり、サツキなる女性はやはり納得出来ない様で、

 

「大有りです!この様な亜人が傍仕えなど主様の名にキズがつきます。第一このような細い身体で長旅に耐えうるとは思えません!」

「…たかが靴職人の息子の名につくキズなど無いだろう。それに身体検査は十分させてもらったが問題無いよ、少々栄養面で足りない部分は有るが筋肉量はかなりの物だ、体力も環境に注意さえ払えば問題は無い、仕事に対する態度も真摯で一途…そこら辺の者よりよっぽど信用がおける…」

 

…成る程、昨晩私の身体をあれほど真剣に御覧になっていたのはそういう事だったのですね…。

 

「お前は僕の代わりに前線で指揮を任す事も有る、その時、靴紐さえ満足に結べない僕の世話を誰がしてくれる?」

 

…いやいや…ご主人様…靴紐くらいご自分で結びましょう…。

 

「しかし…」

「…サツキ、これは僕の決めた事だ何か文句でも…」

 

尚も食い下がる彼女に、ご主人様は突然、先ほどまでとは違う鋭い眼光で厳しい表情を見せました。

それを見た彼女は、

 

「…わかりました…」

 

と頬を少し膨らましていましたが、口先ではようやく理解してくれた様でした。

そして、

 

「…ですが、私は貴女を認めた訳じゃ有りませんからね!」

 

と、私を睨みます。

しかし、私はその言葉に臆する訳には行きません!

 

「よろしくお願いします、ご主人様、サツキ様!」

 

しかし、私の挨拶をサツキ様は気に入らなかった様で、

 

「主様と私を同格で呼ぶのは止めなさい、サツキで結構」

 

と仰ります。

ですが流石に奴隷ごときが、ご主人様の傍仕えの人族の方に呼び捨てなど失礼です。

私は彼女の面目も考え、

 

「…ではサツキさん…でいかがでしょうか?」

 

すると、その呼び方に納得してたのか、

 

「わかったわ蜥蜴、今日から厳しく主様の傍仕えとして教育するのでそのつもりで…」

「はい、よろしくお願いします。サツキさん!」

 

そんな私達のやり取りに、ご主人様は安心したのか再び、気の抜けたと言ったら失礼ですが…少し眠そうな顔で、

 

「ん、わかって貰えて嬉しいよサツキ…蜥蜴…アイシテルよ…」

 

と言って、そのまま再びソファーに横になりました。

しかしそんなご主人様の様子に、彼女はいよいよ我慢出来なかったのか肩を震わせ…

 

「主様ぁ!!!」

 

と屋敷中に届く様な大声を上げました。

私は、そんな二人の様子を微笑ましく見つめたのでした。

 

そんな、いつもと違う朝を迎えたその日は特別空が綺麗でした。

 

ご主人様がご用意してくれた、今までより少し立派な奴隷服と外嚢に身を包むと心が引き締まる想いです。

 

今回、ご主人様と同行する旅団はほとんどが私の様な亜人奴隷で少しばかりの人族に奴隷はおらず、魔法使いや神官などが数名程度の、思ったよりは小規模な物でした。

 

2頭の馬にご主人様とサツキさんが騎乗します。

私は荷物を背負って、他の奴隷と共にそれに着いて行こうとしましたが、サツキさんに止められました。

 

「蜥蜴お前は馬車に乗れ、そして主様の様子を良く見て置くのだ、そして命令が有ったら直ぐに動ける様にしておくのが仕事だ」

「はい、わかりましたサツキさん」

 

その言葉に、ご主人様を良く観察して見ます。

奴隷の前でキリっとしているようですが…靴の紐が…ほどけてます。

 

「ご主人様、失礼ですが靴の紐がほどけてます」

 

しまったという顔をしているご主人様を制し、私はサッと靴の紐を結びます。

そんな私をサツキさんは黙って見守ってくれました。

 

そして、私達の旅は始まりました。

 

 

 

 

 

 

 




3話の続きは?(爆)
それにしてもタイキ…キモいですね。
アリサならグーパン+全力全開コースです。
当初はリザを救おうとするサトゥーにフルボッコにされるハズでした…(笑)
リザは人族の気持ちは解りませんし、夜伽も仕事として真面目にこなそうとします。(多分)
ただし未だリザは綺麗なままです。
何故ならばリザはサトゥーの物だからです。私の中ではそう決めています。(キリっ!)
次回はオリジナル様のように旅行記っぽくなれば良いですね。
6/16 秋葉原デスマカフェにて
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