蝙蝠侯爵と死の支配者   作:澪加 江

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先生と生徒2

 

 

 アルシェの成長の為に実戦訓練をしたいとエリアスに相談したのは、モモンガが師匠としての自覚を持った日の夕食の席だった。

 本来のこの時期なら晩餐会を開き社交をこなしながら多くの他人と食事を取るのが普通だ。領地から時間とお金をかけて王都まで来ているのだからただ無意味に過ごす者はいない。社交で人脈を作り、情報を仕入れ、それを自分の領の政治や家の今後に活かす。それが貴族としての義務だとモモンガはエリアスから聞いている。

 しかし、ここ10日ほどは昼間にエリアスとシェスティンが連れ立ってお茶会や昼食会などの軽めの社交に顔を出すくらいで、夕食は基本的に身内のみでとっている。

晩餐会を主催するのは社交の上でとても重要なことだとあのイエレミアスさんも言っていた。それをしないのだから他の貴族からエリアスは奇異な目を向けられるだろう。

 ごくたまにシェスティンの実父母や兄弟を招くこともあるが、それもここ数日は姿がない。

 しかし、これにはちゃんとした意図があるらしい。モモンガは政治的な話は疎いし、エリアスは必要なことならちゃんと伝えてくれるので、今の自分には必要のないことなのだろう。

 

 夕食は広い晩餐会場でとる。部屋の中央には長く幅の広い大きなテーブルに白いクロスがかけられており、壁紙は落ち着いた赤色で品よくまとめられている。高い天井から吊り下げられているのは豪奢なシャンデリアで、そこには当然のように魔法の灯りが灯っている。

 ゆったりとした優雅な所作で配膳されるのはジャガイモのポタージュだ。白い湯気が立ちのぼる少しだけ黄色がかった液体は、暖色の灯りに照らされて食欲をそそる。モモンガもその匂いを堪能した後、後ろに控えるアランに目配せすると彼は手付かずの皿を持ち去る。

 これは食事を摂れないモモンガが、それでも匂いや見た目を楽しんで、かつ下げ渡される使用人も温かい物を食べられるようにという配慮だ。マナーとしては王国でもかなり型破りであり、晩餐会はもちろん昼食会やお茶会でも外部の人間を招く場合は行わない。

 

 

 

 

 それは確か王都に来て間も無くのことだった。元ミスリル冒険者の面々を招いて食事をした時があったのだ。

忙しい日々が続く中で、王国でも独自の情報網で情報を集めてくれている慰労をこめた食事会。そこでチームリーダーのボリスがモモンガの食事に難色を示した。手をつけられていない食事が、誰に食べられることもなく冷めていくのは見逃せない、と。

 

「モモンガ殿はどうせ手をつけないんだから早めに下げ渡せばいいじゃないですか」

 

 それまで雑談混じりに会話があった場が凍る。その場にいたエリアスたちはもちろん、下げ渡される側の使用人達ですらその提案に眉を顰めて発言主であるボリスを見咎める。

彼らにとってマナーとは自らを平民と区別するための術であり、貴族の誇りでもあったからだ。

 和やかなはずの食事の場を緊張が支配する。

 

「そうだな。私もどうせ手をつけられないのだから冷めてから下げるのは料理長にも申し訳ないと思っていた」

 

 それを破ったのはモモンガで、モモンガが気にしないと態度で示すとエリアスはゆっくりと軽いため息をつく。そしてアランに料理を下げるように命じた。

 それ以降は身内だけの場であれば適当なタイミングで料理が下げられるようになったのだ。

 

 

 

 

 意識を戻すと目の前にある品が変わっていた。メインの肉料理が下げられ、食後のお茶とお菓子が配膳されている。お茶はモモンガを気遣ってか香りを重視したハーブティーであり、視線を巡らせるとイエレミアスがウィンクをする。どうやら彼の気遣いのようだ。

 軽くティーカップと掲げて謝意を表すとゆっくりと香り立つ匂いを嗅ぐ。いつもはすっきりとした柑橘系が多いのに対し、今日は甘い香りの強いものだった。

 

「今日のお茶は庭で咲いていた薔薇を乾燥させたものなんだよ。アルシェ嬢が帝国で飲んでいたそうだからたまには趣向を変えてみたんだ」

「そうか、アルシェの故郷の香りなのだな」

「おきづかいありがとう、ございます。」

 

 ぎこちないお礼の言葉に笑みを深くした友人はご機嫌にお茶を飲むと立ち上がる。「先に失礼するね」と言って彼が向かう先はきっとあの母娘の所だろう。今後の扱いが決まっておらず、不安定な立場にいるのを気遣ってか最近暇を見つけては二人のもとを訪れているとエリアスから聞いている。

 食事もほぼ終わり、会話の内容が今日一日の過ごし方に移る。家長からの業務確認の意味合いが強い内容に少しだけ緊張した空気になる。

 まずはシェスティンが昼間参加したお茶会の報告をする。突然社交を減らしたレエブン侯爵家に探りを入れる内容が多かったそのお茶会は国王派と貴族派どちらにも与しない中立派が多く、彼女達の動向が報告された。

 次はレイナースが王国のマナーをほぼ覚えたと言うとエリアスは満足気に頷き、その視線をアルシェへと移す。

 アルシェはモモンガから預かった巻物の解読がほぼ済んだこと、先生であるモモンガから実戦訓練に移ると言われたことを報告した。それに続くようにモモンガも今日一日の過ごし方、と言うより今後のアルシェの教育予定を伝える。

 

「実戦訓練か……。モモンガ、具体的にはどういったことをする予定だ?」

「今考えているのはモンスター討伐だ。まずはモンスター相手に魔法詠唱者としての立ち回りを学んでもらいたいと考えている。近場の森とかでいい強さの相手がいるといいのだが……。冒険者組合に出向いて適した狩場がないか探そうと思っている」

「冒険者組合で情報がうまく手に入ればいいが、さて、どうしたものか」

「心配はいらない。空振りに終わったらこちらでも召喚モンスターを使って狩場を探せばいいだけだ」

 

 そう簡単に考えていたモモンガは、翌日冒険者組合に行って門前払いをされることになる。

 奇しくも去年の秋から街道などのモンスター討伐は『モンスターを討伐したことを証明する部位さえあれば組合を通して王家から報酬を出す』という施策をされたばかりだったのだ。モモンガの考えるアルシェに丁度いい狩場とは、駆け出しの冒険者や少し階級が上がってきた冒険者の狩場と被ってしまう。

 貴族に縁のあるものとして慇懃な対応をされたものの、情報は何も教えてもらうことはできなかった。

 狩場自体は偵察に特化した召喚モンスターですぐに見つけられるのだが、そこにアルシェやレイナースを連れて行けるかというと……かなり場違いであり、買わなくていい恨みを買うことになるだろう。

 

(いや、そうだよな。低レベル層の適正狩場を荒らすことになっちゃうんだから、よくないよな)

 

 抜け穴として冒険者を雇って共に討伐に行くという方法もあるそうだが、なんとなく気が引ける。感覚としてはギルメンとパーティーを組んでの狩りを楽しみにしていたのに、野良のプレイヤーを入れないといけなくなった感じというか。

ともかく、最初の最初くらいはできれば部外者を考えずにいたい。アルシェにはPVPでの立ち回りも教えたいし。

 

(くそう。 モモンの姿なら……! ってそんなことできる訳ないんだけどさぁ)

 

 骸骨の姿も隠しているのに冒険者──しかもこの世界だと凄腕の近接職ということになっている──だなんて打ち明けられるわけがない。

 結局、モモンガが収穫なくレエブン邸に戻った後、エリアスが候補地を紹介してくれた。

それは王都近くの街道沿いで、なんでも最近、死者の大魔法使いが商隊を襲っているという。奇妙なところはその死者の魔法使いが狙うのは人間ではなく金目のものであり、金貨を投げつけて難を逃れたという被害者が複数人存在しているそうだ。

 

 気になったモモンガは自室に戻ると骨のハゲワシを呼び出して偵察に向かわせる。

 召喚モンスターを呼び出して夕闇に紛れて王都から延びる街道を辿り、森の間を抜けるようにひかれた道を辿る。件の街道近くに差し掛かると、丁度その死者の魔法使いが商隊を襲っている光景に出くわした。

商隊は冒険者の護衛を雇っていたようだが、相手が死者の大魔法使いと見ると、雇い主らしき男を連れて逃げ出した。死者の大魔法使いは捨て置かれた荷馬車を漁っていたがしばらくした後またのそのそと街道脇の森の中へと消える。

 もっとよく見ようと近寄らせると、流石に相手も気がついたようで<火球>を連発される。弱点属性なこともあり、三発目であっけなく繋がりが切れる。

モモンガは自室の安楽椅子で天を仰ぐ。

 

「まぁ、見た目通りの強さみたいだし、問題ないか」

 

 そう呟くと呼び鈴を鳴らして控えの間にいる侍従のアランを呼び出し、エリアスへの面会依頼を頼む。

 モモンガはさらに隠密性能の高いモンスターを街道沿いに送り情報を集め、万全の準備を持ってアルシェの初戦闘訓練へと向かった。

 

 

 

 

 

 天気は快晴。

初夏の日差しが照らす道は人が行き来することで土がむき出しになって轍ができているだけの、これと言って特徴のないもの。場所は王都からエ・ランテルに続く街道の脇道だ。今は度重なるモンスターの被害のせいで行き交う人はおらず閑散としている。

 モモンガの調査によって現在標的はこの近くに潜伏していることがわかっている。というか現在進行形で監視をつけており、木々によって目視はできないが1kmも離れていない所にいる。

 

 今日のモモンガの装備はしっかりと戦闘向きのもので固めている。

流石にユグドラシルでいつも身につけていた神器級ではなく遺産級のものだ。

 ローブは艶のあるオーク材を思わせる濃い茶色で金色の刺繍が服の中央と側面に入ったもの。効果はモモンガの弱点属性である聖属性の物理攻撃を半減させるものである。代わりに闇属性の魔法攻撃はダメージが倍になっているが、モモンガの魔法防御は高いし弱点属性ではないのでほぼ気にならないだろう。ユグドラシルのイベントボス戦用に作ったものなので汎用性はないが、そこそこの物理・魔法防御力もあるため似た系統のモンスターにはこの装備で向かっていた。

 杖はローブよりさらに一段劣る最上級のもので、琥珀が先端についた木の杖だ。これはたっち・みーにクランに誘われてしばらく経った後に作った思い出の品であり、まだまだ弱く、パーティで行動する時、火力役などのわかりやすい役割を持てずにいた時の迷走の品だ。当時の手持ちで一番上等なデータクリスタルに考えつく限りのバフ魔法を詰め込んだもので、外装なんてこだわっていない地味なものだ。

それでも初めてクランのみんなとエリアボスに勝利した時の装備だったのでずっとインベントリで眠っていた。今日はアルシェが主役なのだからこれで十分だろう。

 他の装備はアルシェやレイナースに体を触られても誤魔化せるように分厚い布地のものを選んでいる。全体の雰囲気に合わせた仮面だけはイエレミアスに選んでもらったので、チグハグにはなっていないはずだ。

 

 

「今回の目標は死者の大魔法使いの撃破。こちらの消耗はないのが望ましい。ではアルシェ、死者の魔法使いについての注意点は?」

「死者の大魔法使いはアンデッド。高い知性を持っている。弱点は殴打武器。冷気と電気に完全耐性があって闇を見通せる。攻撃で気をつけなきゃいけないのは<火球>の魔法。第三位階のそれを連続で使ってくる。難度は60以上で一体だけならミスリル級冒険者で十分対処ができる」

「そうだ。さて、では我々はそんな死者の大魔法使いを倒せる戦力はあるだろうか?」

「十分ある。むしろ先生一人で倒せる相手」

「……まあ、それはそうだが」

 

 それを言われては返す言葉がない。なんと言ってもモモンガのレベルは100なのだ。一方モモンガの見立てではアルシェが20レベルに少し届かないくらいか、レイナースはその少し上だ。これは覚えている魔法の種類や試合の結果から導き出したものであり、そう間違ってはいないと思う。

 しかし、ここで圧倒的に強い人がいるから気を抜いてもいいなんて思わせてはいけない。

 モモンガは気を取り直してアルシェに次の問いを投げかける。

 

「んんっ。まあ、その戦力差があるからこそ目標は無傷での勝利なわけだが。アルシェはどうやってこの敵に対して戦いを挑む?」

 

 アルシェには事前に情報収集をするように伝えている。

これはモモンガ自身が友人のぷにっと萌えから受けた教えだ。本当は他人に教えてはいけないと言われているが、きっと弟子にちょっとヒントとして伝えるくらいなら許してくれるはずだ。

 アルシェは実戦訓練の相手が死者の大魔法使いだと聞いたその日にエリアスにお願いして部下である元オリハルコン冒険者に話が聞けるように根回しをしていた。冒険者としての立ち回りも少しは聞いているのだろうかと気になったのだ。

 

「まず、今回はレイナースさんが前衛なのでレイナースさんに<下位炎防御>や<下位筋力増加><下位魔法防御>をする。後衛が多い時は前線を維持する前衛がとても大事」

「なるほど、確かにそれは大事なことだ。前衛の有無は魔法詠唱者にとって死活問題だからな。アルシェがもっと魔法を覚えたら一体ぐらいは前衛を召喚できるようにした方がいいぞ」

「はい!」

「さてと、バフ関係は私がかけよう。アルシェだとまだ一人一人バフをかけなければいけないが、私なら<集団化>ができるからな」

「え。でも先生、これはわたしの実戦訓練。支援魔法もわたしがかけなきゃ意味がない」

「いいや、意味ならある。今回はアルシェが作戦立案と火力役をする練習だ。魔法詠唱者が火力役をする場合に最も気をつけなければいけないのは魔力不足だ。支援魔法まで手が回るようになるにはまだ力不足だろう?」

「は……い」

「今のように間違っている所があれば指摘するし、必要ならそれ以外の手助けもするが、今回私はただのパーティメンバーにすぎない。火力役をアルシェに任せるのだから、補助は私の仕事になるわけだ」

 

 戦い、特にPVPにおいて大事なのは一に情報収集、二に情報収集、三四は相手に自分の能力を過小評価させつつ虚偽の情報をつかませ、いざ勝負の時には持ちうる全て、考えうる全てを以って敵に勝つことが大事だ。というのがぷにっと萌えに叩き込まれた基本理念でモモンガの持論だ。モモンガはこれを、“戦いは始まる前に終わっているのが理想なのである”、と解釈した。

 今回はモンスターとはいえ知性があるらしい死者の大魔法使いが相手だ。疑似的なPVPになるだろう。一対多数、レベルもこちらが上なので相手にとってはやってられないだろうが、だからこそ相手も必死で考えを巡らせるはずだ。きっと精一杯考えて抵抗してくれることだろう。

 とはいえ、流石に命の危険がある戦いを幼い女の子にさせるわけにはいかない。レイナースもそれには同意してくれている。なのでいざとなったらモモンガが前に出て戦うことになっている。

 何はともあれ、圧倒的戦力差の中で安全にアルシェに経験を積ませることが今回の主目的。

 ゆくゆくは一対一での立ち回りの訓練もしたいところだが、まずは敵を倒すという練習を積ませるのが先決だろう。

 それにモモンガには気になっていることがある。この世界でもレベルアップの概念がユグドラシルと同じなら、ラストアタックをしたアルシェには沢山の経験値が入るはずだ。少しだけとはいえ格上に勝った場合、ひょっとするとレベルアップをして第三位階の魔法を覚えられるようになるかもしれない。

 レイナースにモモンガが召喚したモンスターと戦ってもらうことはしばしばしていたが、はっきり言ってよくわからない。信仰魔法を使うとはいえ、基本的にレイナースは前衛だ。強くなったと本人も周りも言うが、いまいちパッとわからない。

 それに比べアルシェは魔力系魔法詠唱者。モモンガと同じ後衛で同じ魔法詠唱者。レベルアップの実験には最適だ。

 まあ、喫緊の目標は聖王国にモモンガが行くまでにレイナースとアルシェがパーティとして立ち回れるようにすることだ。なので今回はパーティでの立ち回りを優先して鍛えなければならない。

 

「それで、レイナースにバフを盛った後はどうする?」

「その次は私が<魔法の矢>で攻撃する。レイナースさんは攻撃しない、でいい?」

「そうだ。今回の戦闘訓練はアルシェのためだからな。レイナースにはタゲ取りと防御に専念してもらう。私も補助魔法以外は手伝いをしないのでそのつもりでな」

「ん。なら<魔法の矢>で攻撃しながら相手の出方を見る。多分人数差もあるから<飛行>で逃げるか後衛の先生かわたしを狙うはず」

「それはいけないな。逃げられるのも後衛を狙われるのもどちらも避けなければいけない状況だ。では、そうやって<飛行>を使われた時はどうする?」

「レイナースさんに<大地の束縛>をして拘束してもらう。その後に地上に落ちてきたところをわたしが<地面揺らし>で攻撃する。<地面揺らし>は殴打属性だからアンデッドは嫌うはず」

 

 ちゃんと相手のするだろう行動を読んで次の行動を決めているようだ。モモンガは満足し頷く。

 

「それは心強い。逃げられないことを悟った相手はどんな行動に出ると思う?」

「わたしだったら自分の一番強い魔法でなんとかできないかと連発すると思う。だから<火球>で沢山攻撃される」

「<火球>で何度も攻撃されたら大変だ。いくら火に対する耐性をつけているとは言っても絶対ではない。レイナースの体力が心配だな」

「そうならないようにわたしが<衝撃波>で迎え撃つ。少しは<火球>の威力を減らせるはず。それにレイナースさんには沢山ポーションを持っていてもらう」

「心配いただかずとも多少の怪我は自分で回復できますわ」

 

 ニコリと微笑むレイナースに今日の格好はいつものドレス姿と違い全身鎧だ。そこに武器として盾とショートソードを持っている。盾はモモンガが貸し出した火耐性を上げるものだが、それ以外はレイナース自身の装備だ。

 全身鎧はエリアスが御前試合に出るからと揃えてくれたもので、この世界ではそこそこいい装備だと言っていた。確かに魔法の付与こそされていないが、使い込んでいる割に大きな傷や歪みはない。

 

「それは心強いな。できれば次善の策も欲しいところだが……」

「次善の策?」

「流石にそれは経験が少ないアルシェには厳しいでしょう。何かあったら私かナインズ様が対応すれば良いかと」

 

 それもそうかとレイナースに頷き、街道に沿うように広がる森を見る。

 時刻は昼を過ぎ、太陽の光が柔らかさを伝えてくる。初夏とはいえまだ日が沈むのは早い。できれば日が沈まないうちに王都まで帰りたい。ゆっくりと意識を召喚モンスターに移すと、目標をこちらへ追い込むように指示を出す。

 レイナースに辺りを警戒する様に指示を出しながら追い込み先である街道の奥の方へと移動するように言うと、アルシェは顔を強張らせたまま歩き出す。震える肩に手を置き、心配するなと声をかけるがまだまだ緊張は解けない。

 

 大きく街道が曲がり先が見通せなくなる位置に来た時、森の方から木々をかき分けながら何かが近づいてくる音が聞こえる。

 いよいよかとモモンガも杖を構えたその時。

 

 

────森から巨大な火の玉がモモンガへと飛んで来た。

 

 

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