作者の文章力が無いせいで読み取れなかったら本当にすみません……
前回のあらすじ
マソラの家に惣右介と竜太郎が遊びに行ったら黒ずくめが出てきてついて来いって言われたよ!
SIDE・D
時々遠回りをしながらゆっくり、しかし確実に三人は進んでいた。”責任者”らしき大きな霊圧へと少しずつ近づいていくのを、惣右介は感じていた。
先程の状況を思い出して、惣右介は再び手を握りしめる。
”浦原”に担がれた竜太郎の側で銀色に光っていたモノ――あれは、針だった。
細い針が、竜太郎の肌に突き付けられていたのが見えた。
最初に思ったのは、毒針かもしれない、という事だった。惣右介が抵抗した瞬間、”浦原”は竜太郎を刺すつもりなのだと。だが、
これ見よがしに見える位置にある針は、本当にそんな用途なのだろうか?
あれはもしかしたら、意識を逸らすための小細工なのかもしれない。実は毒針に見せかけた唯の針で、竜太郎が嗅がされたのが毒だったのかもしれない。他にも何か見逃していないだろうか。もしそうなら、抵抗し、針を避けて逃げても竜太郎の命はない。
――そこまで考えて、ふと違和感を覚えた。竜太郎を人質にしたいなら、態々薬品を嗅がせる必要は有ったのだろうか? あの瞬間、竜太郎は完全に背後を取られていた。喉元に刃を突き付ければ事足りたはず。今だって、アレが毒針だろうがそうでなかろうが、”抵抗すれば刺す”とでも言えばいい。それをしない理由は何だ? というか、そこまでして自分を連れて行きたいなら、最初に声など掛ける必要は無かった。
(何だ? 何が狙いなんだ?)
”浦原”と名乗った隠密機動の瞳を見て、惣右介はその理由を悟った。
――試された。
惣右介が
”人質を取られたうえで冷静に周りを見られるか?”
”即断して行動する短慮さは無いか?”
”無謀な突撃をしないか?”
――寒気がした。
たった一本の針で、ここまで出来るものなのかと。
”浦原喜助”……怖いヒトだ。
さっき”大前田”は、惣右介に”責任者”に会うよう言っていた。
そこで話す内容を訊くに足るモノかどうか、という事だろうか。
尚も惣右介を連れ行く気が有るのなら、一先ずは合格、という事なんだろう。
――ならば、抵抗することに意味はない。
態々こんな手段を取ってくるような人物なら、いきなり如何こうされることはないだろう。
そして、今に至る。
「大前田です。入ります」
「浦原っス。連れてきましたよん」
マソラの家から少し歩いた所に天幕が張ってあり、その入り口の両脇に大前田と浦原が控えて布を支えた。中に入る様に促された惣右介は意を決して足を踏み入れた。
「よう来たの。お主が藍染か」
凛と通る声に顔を上げると、緩く足を汲み片肘をついた、褐色の肌に金色の眼をした女性が座っていた。その人物は、護廷隊士なら一度は聞いた事のあるヒトだった。
「四楓院夜一四席……⁉」
死神に貴族出身者は多いが、その中にも序列が存在する。
彼女の家は五大貴族と呼ばれ、尸魂界で最高位の正一位の大貴族が一。当主が代々隠密機動総司令を務め、”天賜兵装番”として特殊な祭具などを護り受け継ぐお家柄だ。
彼女自身も家の名に羞じぬ強さを誇り、近々初めての女性当主と成るなど話題に事欠かぬヒトだった。
そんな彼女は最近、何やら中央四十六室の命で、隠密機動と護廷十三隊両方に籍を置いていた。可憐な容姿もその話題性に相俟って、未だに様々な者達の口の端に登る存在である。
兎も角、惣右介が思わず溢したその名を聞いて、彼女は顔を顰めた。
「そうじゃ……うむぅ、
状況が分からず立ち尽くしていると、夜一の後ろに控えていた黒装束の一人が惣右介の後ろに椅子を置いて座るように促した。素直に従っておく。
「まあ前置きはこの辺にしておくぞ。本題に入らせてもらう」
入り口を閉じてから惣右介の後ろに控えていた二人が夜一のすぐ前に控えるように片膝をついた。夜一も足を組むのを止め、背筋を伸ばす。
「お主は“地下特別監理棟”なるものを知っておるか?」
惣右介には耳慣れない言葉だった。話の展開が読めないが、正直に答えるより他にない。
「いいえ。しかし言葉から考えるなら……収容所か何かでしょうか」
「うむ。話に聞いていた通り聡い奴じゃ。仕方ないのう……そこは特別檻理の名のもとに行われる、護廷十三隊内部の危険因子を調査・捕縛し、監視下に置くことを目的とした場じゃ」
「――ちょっと待ってください。危険
「その通りっス」
夜一が答える前に、その隣の浦原が声を出した。
「そこに収容されるのは、危険
「それって…………」
「喜助、お主は黙っておれ。……“護廷十三隊は高尚な組織。故に逸脱者など有ってはならない”――
「夜一サン、そりゃあ流石にぶっちゃけすぎですって」
「構わん。あ奴らの指示に従わされるのを儂が嫌っとることはお主も知っておろう? ――藍染、ここまでいいかの」
もっと話が見えない上に納得できないことが多々あるが、理解は出来たので惣右介は小さく頷いた。
「うむ。そして今日、そこに一名収監された者がおる。名を――涅マユリ」
「⁉ マユリさんがですか⁉ 何故!」
「儂に聞くな。じゃが相当のことをやらかした様じゃのう。通常そこでは行動を制限せんのじゃが、そ奴は足枷をはめるよう指示が出とる」
溜息を吐きながらそういう彼女に、浦原がヘラヘラ笑いながら顔を上げた。
「夜一サン、“儂に聞くな”じゃ駄目っスよ! ちゃんと資料に目ェ通してないんですか? 温室育ちの四十六室の面々が目を覆いたくなるような、あ~んなことやこ~んなことをやらかしちゃったんスよ」
「何じゃと! お主の言うておることと大差無かろう!」
鈍器で殴ったかのような低い音がして、四楓院が拳をゆらし、浦原が目元を押さえて涙目になった。顔面に拳を入れられた浦原を横目で見た大前田が”またか……”といでも言いたげに頭を抱えている。
「目が痛い! いやいや、夜一サンはホントに分かってなかっただけじゃ「まあまあ御二人とも、話を進めましょう」――そっスね」
大前田に促されて浦原がヘラッと笑った。不服そうな夜一も浦原から目を逸らして惣右介に向き直る。
「兎も角、涅マユリが地下特別管理棟に収容された。これを受けて儂らはここに来た。――
その瞬間、目の前が真っ赤に染まった。
マユリが護廷十三隊には不要と判断されたとして、貴族でもない親のマソラを護るものは今、あの場には居なかった。竜太郎は少ない休暇を惣右介に割いてくれていたからだ。
気が付くと、夜一の側に控えていた一人、大前田を組み伏せ、腕を取って締め上げていた。
「落ち着かんか、藍染!」
「まさか貴様ら、先生をッ」
「違いますよォ♪」
緊張感の全く無い声音で浦原はそう言うと、自身の斬魄刀を鞘に入れたまま地面に置いて離れた。そのままの足でゆっくりと惣右介の方に近づく。
「確かにボクらは
惣右介の正面に立った浦原は片手を差し出した。
「ウチの五席を放してくれませんか? ボクらは事を荒立てる気は無いんス」
「…………」
「危害を加えていない証拠に、彼女からこれを貴方に預かってます。一目見れば分かると言われたんスけど……」
そう言って彼は懐から木箱を取り出した。
それは惣右介が封じられていた、母の名残を感じられる唯一つのものだ。
”マソラの手から彼らにこれが渡っている”、その事実だけでも、浦原たちが
「先生……」
大前田の拘束を緩めて立ち上がると、浦原がそれを惣右介に手渡した。
「大事な物なんスか?」
「…………はい。とても……」
俯いて唇を噛んだ惣右介に、浦原の後ろから夜一の声が通った。
「にしても大前田を一瞬で組み伏せるとは、お主中々やるのう! 一番隊とは言え他隊の十席を遥かに凌駕しておる。一番隊が嫌になったらいつでも二番隊に来ると良い! 歓迎するぞ!」
「まだ夜一サン四席じゃないっスか。そんなこと簡単に約束しちゃ駄目っスよ」
「む……なら隠密機動じゃ! あそこならもう実質儂が長みたいなもんじゃろ」
「それ、千暁サンに言って大丈夫な奴っスか?」
「う……お主は言わんじゃろ?」
「…………藍染サン、実は話には続きがあるんス」
「おい、喜助⁉ 無視するでない!」
反応に困っていた惣右介に向き直った浦原は、再び夜一を無視して続けた。
「本来、地下特別管理棟に行った隊士の関係者には“その人物は
「……何故、僕にはそうしなかったんですか」
「ハイ。それは貴方が真実を探る可能性のある人物であり、かつ
「――‼」
思い至ったその過程に目を見開いた惣右介を見て、浦原は薄く笑った。
「やはり話しておいて正解だったっス。貴方は頭の切れるヒトだ。切れすぎると言ってもいい。そう、一般隊士程度なら、真実を探られるその行為自体は放置します。ボクらもプロっスから、そうそう暴かれる気は有りませんから。しかし席官クラスともなると行動の自由度が一気に上がる。それでも普通のやり方じゃあ、地下特別管理棟の存在は知れても内情までは知り得ません。……が、その次の一歩を踏み出されるのはマズイ。どうやっても霊法に抵触してしまうんス。そして、特に総隊長率いる
やっと話が繋がった。
マユリが収容されたとしても、本来なら”彼は脱退した”と称して放置されるべき案件だったのだろう。
だが、彼の母親であるマソラはあまりに死神に近かった。竜太郎とは殆ど毎日顔を合わせるし、惣右介も時々返ってくる。加えて、惣右介は会ったことが無いが、彼女の夫は四番隊に嘗て務めており、其処での知り合いもあったらしい。
されば、マユリの”脱退”の不自然さに彼女が気付くのにそう時間はかからない。
それでも流魂街の住人の言う事と捨て置けただろう――惣右介が居なければ。
四番隊士との繋がりがどの程度のものなのか惣右介は知らないから分からない。
その人たちがどうするかは置いておくとして、惣右介がマソラの為にマユリを探そうとするのは容易に想像できたことだった。育ての親の息子を探すのに、
邪魔なものは、遠くにやっておけばいい。
五月蠅いモノは、最初から手足を縛って口を閉じさせておけばいい。
そういう事なのだろう。
“護廷十三隊は高尚な組織”
それを護るためだけにこれだけのことが日々行われているというのか?
「なんて、く「言うな、藍染」――!」
“くだらない”と吐き捨てようとした惣右介が、夜一に制された。彼女は片眉を上げて腕を組み、溜息を吐くと、惣右介を視線から外した。
「誰が聞いているとも知れぬのじゃ。滅多な事を言うでない。気持ちは分かるがのォ。じゃがここまでくればもう分かるの? 此度のことは全て他言無用・口出し御法度じゃ」
「……兄さ、いえ、藍染竜太郎にはどのように?」
「竜太郎? 誰じゃ」
視線を戻し首を傾げた彼女を見て、浦原が意地の悪そうな笑みをその顔に貼り付けた。
「やっぱり資料読んでないんじゃないっスかぁ。しょうがないっスねえ、夜一サンは「何じゃと⁉ お主、先程から儂が上司じゃという事を忘」藍染竜太郎サンには涅マユリサンの“脱退”と涅マソラサンの転生を別々に伝えるつもりっス。もし我々が伝えるより先に彼に訊かれた場合はそう伝えていただけると助かります」
夜一にぎゃいぎゃい騒がれながらにこやかに浦原はそう言った。
「そろそろ目が覚める頃だと思いますんで」
天幕から出されるとき、惣右介の耳元で彼はそう言うと引っ込んでいった。
急いでマソラの家だった建物に入ると、思った通り寝室に竜太郎は寝かされていた。駆け寄ると、彼の瞼がピクリと動く。ホッと一息ついて、竜太郎を揺すった。
「兄さん?」
「……そー、すけ? ……惣右介ッ⁉」
ゴンッ
急に起き上がった竜太郎の頭が、惣右介のものと激突して派手に火花を散らす。二人とも暫く痛みに悶絶してから、竜太郎が勢いづいて口を開いた。
「惣右介ッ! あの後、何もなかったか⁉ 何もされなかったか!!?」
「う、うん! ちょっと説明を受けただけ」
竜太郎の剣幕に気圧されながら彼につられていつもより大きな声で惣右介が答えると、竜太郎は心配そうに首を傾げた。
「説明? 何のだ?」
「マソラ先生について……先生は転生なさったんだって」
「転生……」
尸魂界と現世は緩やかながら魂魄の行き来が在る。現世からの移動は即ち死後の成仏と呼ばれるものだ。そして尸魂界からの移動は転生と呼ばれ、輪廻の輪に乗ることで現世に生まれ直すことが出来る。だがその転生の資格を持つ流魂街の魂魄は数が多いため、何十年たっても転生できないことなどザラだった。
「そうか……最後に一言ぐらい話しておきたかったな」
視線を下げた彼は、力強く首を横に振ると努めて明るく言った。
「でも、お前に何もなくて良かった。俺はてっきり、お前が連れて行かれちまうのかと思って、焦って……」
連れて行かれはしたのだが、そう言う意味ではないのだろう。
隠密機動とは、尸魂界における諜報や標的の抹消などを行う組織だ。どんな任務がどれ程の頻度で行われているのか、殆ど情報が巷に回ってこない。それを煙たがった四十六室が、隠密機動と護廷十三隊を引っ付けて今より開けた組織にしようとしていたというのは余談であるが、そんな組織が名指しで自分に用が有るなどと言えば、潔白な身の上でもたじろぐのが普通だ。
だから、結局惣右介の過去に付いて全く情報が無い今、突然隠密機動に呼びだされれば過去の刺客か何かが再び来たのかと思うのは当然のことだった。
竜太郎が咄嗟にそう判断して惣右介を逃がそうとしてくれたことを嬉しく思いながら、そんな彼に嘘を吐かねばならぬ惣右介は自身を嫌悪した。
「そういう事は何も無かったよ。これを手渡されたくらいだから」
そう言って惣右介は懐から先程浦原に渡された木箱を見せた。
竜太郎の目が驚愕に見開かれる。
「これは……そうか、センセ……」
悲しそうな眼をした竜太郎はその顔を見られまいとしたのか惣右介から顔を背けた。
傾いてきた夕陽が辺り一帯を染める。
その美しさは、主無きこの家にも木霊するように家の中を紅で侵した。
いつの日か彼女と共に見たこの景色は、彼女が居なくなっても繰り返すのだと思い知らされた。
それは二人が心の整理を付ける間もなく夜闇へと姿を変え、取り残された二人はただ茫然と立ち尽くすしかなかった――
物凄く書き辛かったです。
皆様も読み辛かったかと思います。
本当にすみません……
考えていることを書くのって難しいですね。
どう書いたら誤解が無いのか分かりませんでした!
こんなポンコツ作者の作品が、お気に入り五十突破、評価赤バー頂けるのは本当に身に余る光栄ですありがとうございます‼
そして今回でマソラ先生は戦線離脱です。
彼女無しで惣右介たちは大丈夫なのか……
今更不安になってます。
今後とも彼らを見守ってやってくださると嬉しいです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!