ただ、あまりにも増え過ぎてどんな話だったか分からないことが間々ありますよね……
これ作者だけだったらちょっとツライ……
ま、まあ、あって損は無いと思いますので、そんな人の為のレビューをば。
遡ること二百数十年前。
遂に死神に依る滅却師の殲滅戦が始まった。
戦いが進むにしたがって、滅却師・石田宗弦と死神・藍染惣右介の心は揺れ動く。
滅却師と死神の思惑が入り乱れ、決戦の時はすぐそこまで迫っていた――
それっぽく書いてみましたが、結局よく分からないという。
何がしたかったのか分かりませんが、こんな感じでした!
それではどうぞ!
「コイツは……」
竜太郎が顔を歪めた。何事かと惣右介もそちらを見ると、丁度自分が拾われた時くらいの子供が弓を引いていた。その手は震え、おびえているのが分かる。
「惣右介。命令は……」
「分かってる。分かってるよ……」
五つに分かれた惣右介たちは、適宜連絡を行いつつそれぞれの拠点を落とすという選択をした。
ただし、余程事態が動かない限りは、攻略済みの部隊は他の部隊に合流せず、敵本陣へ向かうよう指示があった。
『二部隊合流した時点で、他班が各拠点を制圧可能と判断し次第敵本陣へ突入する。卍解で一気に落とすぞ。ただし、一番隊の奴らは知らねえだろうが、俺の卍解は周りを滅茶苦茶巻き込むからな……少数精鋭で行った方が良いんで、突入すんのは俺、真子、後はまあ臨機応変に選ぶかもしれねえのが数名、そんだけ。んで、周りに待機してる二部隊で周囲警戒とか攻略中の部隊の応援とか色々臨機応変にやる感じで』
――雑‼
その場に居た一番隊士は皆そう思った。
五番隊士の方を見ると、特に気にもしていない様子で話を進めそうになっていたのを、惣右介の先輩に当たる一番隊士が全力で止めた。
こんな指示が横行しているのだとぞっとした彼らが、終戦後総隊長に報告せねばと普段の三割増しで溜息を吐いたことは五番隊には秘密である。
兎も角、攻略速度、安全性共に異議は無いという事でその作戦で行くことになった。“早い者勝ちだ!”という寒鴉の煽りに、柄にもなくその場の皆が乗り気になったのが惣右介には意外だった。志波寒鴉の引力の様なモノの強さを感じた。
そして現在に至るのであるが、拠点に侵入してからというもの、彼は一抹の不安を抱えていた。
――拠点の滅却師が少なすぎる……
二番隊の報告から予測された人員数の半分も無いのではないかと思わされる様な人数としか、惣右介たちは交戦していなかった。此処から考えられる展開は四つ。
一、 二番隊の見積もりが甘く、これが今回の拠点の人員数で合っている。
二、 今惣右介たちが戦っているのは此処の拠点の上辺に過ぎず、未だ多くの滅却師が潜んでいる。
三、 本陣に抱える滅却師の数が予想より多く、拠点が手薄になっている。
四、 拠点の人員に
戦闘も行っているならば別だが、諜報専門となっている今の二番隊が敵兵数を感知し損なうとは思えない。兵の移動に関しても同様だ。だから二が最有力候補であってほしい。一なら尚良いが、あまりに希望的観測過ぎるだろう。三、四であったら、少々マズイ。というか四であったら最悪も良い所だ。今回の作戦では、各拠点に均等に死神が向かっている。此処の拠点の様な箇所が幾つもあって、一拠点に敵兵が群居している場合、其の部隊から包囲網的な今回の作戦が一点突破されてもおかしくない。
そうなれば、本陣を攻めるべく集まった他の部隊が挟み撃ちを喰らう事になる。
――急ぎ志波隊長に合流して、進言せねば。
そう気を急きながら惣右介は動き、効率を優先して少人数ずつに分かれて拠点の制圧に当たっていたのであるが、目の前に震えてこちらを見上げる少年を見て頭が真っ白になってしまった。
震えながらこちらを見上げるその瞳は、竜太郎たちに拾ってもらった時の自分に正しく重なった。
寄る辺の無い不安を
一人で立つ孤独を
戦場の恐怖を
知っている。
知ってしまっている。
死神を拒絶することに決めたのは大人の滅却師だ。子供たちは関係ない! もう一度共存の道を――もう何十年もやってきたじゃないか! それでも彼らは拒絶した! とっくにそんなことは考慮に入ってる! ――早く志波隊長に連絡をしなければ。使うなと言われたがやはり伝令心機が速いか――神崎君たちはどうなっている? ――周囲を警戒! 時間を使い過ぎだ――殺めたくない――命令は殲滅だ。一人も逃すな、と――
僕は、どうすれば……
震えながら惣右介が構えたその時、竜太郎が動いた。
「待て、惣右介」
「邪魔しないでくれ、兄さん!」
「もういい、俺がやる。下がってろ」
静かな声音だった。
剽軽ないつもからは想像もつかないような、低く、落ち着いた声。それはまるで青空に走った一条の雷。遠方で走る竜の如き光は、静謐なれど見る者に鮮烈な恐れを抱かせる。
初めてだった。
惣右介は、竜太郎が“仕事”をするところを今まで見たことが無かった。
当たり前と言えば当たり前だ。虚の脅威が殆ど全く無い土地で育ち、護廷十三隊入隊後は離れ離れの職場。されど惣右介が幼いころから彼は死神で、なんなら出会った時点で彼は何十年も戦ってきていたのだ。惣右介が接してきた竜太郎と今の彼は、ソレがいつも通り。普通の事。
だから忘れかけていた。
その
『何かの間違いです! 惣右介が、そんな……』
『諦めよ。これは掟なのじゃ』
断片的な記憶。
惣右介を苛み続けてきた父母との別れとは違う。
酷く取り乱してはいるが、両親は健在。
――お二人は、あの死神と知り合い……だったのか……?
刹那そちらに気を取られた惣右介は、竜太郎が斬魄刀を構え直した金属音で意識を現実に引き戻した。
再度竜太郎の表情を見、そして惣右介は新たな胸の痛みを知る。
――兄さんだって、辛いんじゃないか……
先程幻視した死神などとは比較にならない、苦しげな顔をした竜太郎がそこには居た。
そういえば以前、竜太郎に訊いたことがあった。“何故、死神になったのか”、と。
“面白くもない話だぜ?”と彼は笑った後、普段の彼からは想像つかない程空虚な瞳で俯いた。
『センセ達に拾われるほんの少し前、オレの無力で、仲間が皆死んじまったのさ。もうそんなのは嫌なんだ。まだまだオレは力が有るなんて言えねえけど、せめて手の届く範囲の大切な奴だけは護れるように――もう、死なせないために、死神になったんだ』
ニカッと笑ってそう言った彼は、“だからお前も護ってやるさ”と話を締めた。
歯を見せていたのに寂しそうだった表情を思い出し、惣右介は首を振る。
――護られるだけじゃ、ダメなんだ。
――それで彼が傷ついていては意味が無い。
竜太郎へ一歩、惣右介が踏み出そうとした時――
「――――ごほ」
「え――――?」
竜太郎の胸に穴が空いた。
一瞬顔を顰めた彼はしかし、意外にも安らかな顔になった。
重力がとてつもなく小さくなったかのように、緩やかに竜太郎が地に伏す。
一転して重そうに頭を擡げた彼は、悪戯に失敗した時と同じ笑顔を惣右介に向けた。
「…………マズった、な。ハハ」
「にい、さん?」
「そぅ、すけ、ぅし、ろ」
高濃度の霊圧を感じて振り返りながら斬魄刀を振るう。
半ば呆然自失の状態で刃を振るいながら、認めたくない唯一つの事柄を必死に頭の隅に追いやった。
斬れた霊圧が凄まじい勢いで地面を抉る。地面から弾かれた大きな瓦礫が先程の子供の頭に当たり、小さな悲鳴と共に倒れた。気を失ったのか動かないが、駆け寄る余裕は無い。
「おっと、外しちゃったかあ。人情に厚い奴にはこれが一番早いねえ」
ニヤニヤと下品に笑う目の前滅却師は、余裕の笑みで次の矢を番えた。
その瞬間、目の前が真っ赤に染まる。
「人情、だと⁉ まさか……」
「その通り! ソレは囮だよ。出来損ないでも少しは役に立つだろう?」
聞かなければ良かった。
後悔と共に押し寄せるのは、身を内から焦がす様な圧倒的な熱量。入り
怒りでどうにかなってしまいそうだ。
なんて低劣で、下衆な一族なんだ。
何故世界の平衡を護れない?
何故出来損ないだなんだと簡単に斬り捨てられる?
何故兄さんの様なヒトが死なねばならない?
何 故 ?
「貴様っ……!」
「まっ、この程度の奴ら、囮なんて要らなかったかなあ?」
超高密度の矢が放たれ続ける。
ヤツの余裕は悔しいが確かに実力相応のモノだった。
じりじりと遠距離から削られ続け、こちらの間合いに入れられない。
――早く退いて、竜太郎を四番隊に運ばなければ。
その一心で焦燥がかり立てられるほど惣右介の集中が荒くなり、隙が生まれていく。
”期せずして”、と言うとあまりに皮肉な言い回しになってしまうだろう。戦場に於いて敵を攻撃するのは至極当然の事。されど滅却師が射抜いた死神は、もう一人の思考を、動きを、止めてしまうには過分に過ぎた。
惣右介は、未だ始解を修得していない。にも拘らず一番隊で十席という高位を任されているのは、偏にその実力が圧倒的だからだ。死神の戦闘法を司る”斬挙走鬼”の内、斬魄刀の能力を駆使する”斬”のみ剣術に留まっているが、模擬戦などの訓練にてそのバランスの取れた高レベルの戦闘センスは、自身より高位な死神とも互角に渡り合うだけの力を示していた。
斬魄刀の始解とは即ち、個々の魂を形にして反映する千差万別の異能。直接攻撃系と呼ばれる攻撃力重視の斬魄刀から軌道系と呼ばれる特殊な能力が付与されたものまで様々有るが、それらと渡り合うためにはあらゆる事態に柔軟に対応することが必須。知略と技術を駆使して戦闘するに当たって重要な事項の一つは、
今回の戦いでは、数こそ死神に軍配が上がるものの数日に渡って戦闘が続いている。これは、滅却師達の間合いの長さに苦戦している点が大きい。幾ら斬魄刀でも、結局は刀をベースにしている。間合いは精々近距離から中距離だ。対して滅却師は遠距離以上。懐に潜りこめば斬るのは容易いが、問題は
勿論手段はある。”走鬼”にあたる瞬歩と鬼道だ。間合いを急激に詰める歩法の瞬歩と、遠距離に居る敵への攻撃手段としての破道及び縛道。保有霊力量によってその能力は変わってくるが、惣右介のそれらは当然一級品だ。
しかし現在、彼にはそれらが使えない。
間隙無く放たれる霊矢は、簡単に放っているように見えて鏃の先端が霊子を巻き込むように回転しているため、滅却師と惣右介の霊力差があろうと直撃すれば唯では済まない。そんなものを放置して間合いを詰めると、もし流れ矢が竜太郎に迫った時に対処できない。瀕死の彼にこれ以上の怪我を負わせるのは即、死に繋がる。かといって現状維持していてはそれでも死んでしまう。
遠距離攻撃の主軸たる鬼道を用いて反撃すればいい話なのだが、この攻撃方法には一つ問題があった。それは、言霊を霊力に乗せるという作業が必要であることだ。言霊によって自身の霊力に形を与え攻撃の手段とする戦闘法であるため、それなりに繊細な技術。生来性格的に向いていないものが間々いるのはそのせいだ。
端的に言えば、惣右介は今、圧倒的に精彩に欠いていた。集中力の欠片も無い状態。竜太郎の負傷によって戦闘どころではない程に動揺していたのである。本来の彼であれば、目の前の滅却師など詠唱破棄の三十番台の鬼道で捩じ伏せることもできた。しかし現状では、鬼道など練れる筈はない。それどころか、意識の向き様がムラだらけになっていた。
当然、大きな隙を見せることは戦場で即命取りとなる。
一つ、避け切れない矢が目前に迫った。真っ直ぐに自身の頭に迫るそれは、貫通せずとも脳を抉るには十分な威力。
――しまっ……
着物の裾を引っ張られて、体勢がブレる。
そのおかげで矢を回避した。
足元を見ると、竜太郎が惣右介の裾を掴んでニヤリと笑った。
「あと、まかせ、たぞ」
竜太郎の瞳が光を失うのに、秒と掛からなかった。
「任せるって……勝手だ! そんな、僕を置いて……父と母が見つかるまで一緒に居てくれるって言ったじゃないか!」
嫌だ、だって、僕がどれだけ兄さんに――
『気が付いた?』
景色が変わる。
いつもの空間。
其処は絶壁で、反対側の地面は見えない。
夢で母さんとの最後の記憶が途絶える場所。
今日は一面白化粧で、深々と雪が舞っていた。防寒などは一切していないのに、寒くもなければ雪が冷たいとも感じない。吐息は白い。不思議な情景だった。
道化の仮面をかぶった、男とも女とも分からない不気味な斬魄刀の本体が正面で斜に構えて立っている。大仰に首を傾げ、手を広げて促すようにこちらに向けていた。不思議と今は、ソイツに対してそれ程感情が動かない。
『ねェ、気が付いた? アンタの最後の鍵。このままじゃ負けちゃうよ?』
「鍵……」
『そう。私はアンタの魂の一部。アンタが自分を理解してなきゃ、私を使ってもらえない。アンタは、どんな人物だい?』
「僕は……」
ここで、前と同じ問答をする意味はない。
何故ヤツは今ここに自分を呼んだ?
直前にあったのは――――
一つの答え。
今彼の胸を最も占有しているもの……
「僕は兄さんに、依存……してたんだ……」
声が揺れる。
寒いわけでもないのに、唇が上手く動かない。
本当は分かっていた。
母さんも、父さんも、きっともう会うことは出来ない。
それを分かっていて、兄さんにも、先生にも言わなかった。
二人は優しいから、困らせると思った。
――――そう、思いこもうとしていた。
違うんだ。僕はそんな奴じゃない。純粋に優しい兄さんたちとは違うんだ。
僕は唯、怖かっただけ。
両親を探すという名目が無くなって、二人が離れていってしまうかもしれない。心のどこかでそう思ってしまった。
一緒に探そうとしてくれるその優しさに甘えて、微温湯に浸かっていただけなんだ。
二人はそんな人たちじゃないって分かってる。――いや、分かっていたつもりだった。結局僕は、何もかも喪ってから……
僕は、卑怯で、独りよがりな奴だ。
目の前の斬魄刀が、仮面の奥で表情を動かしたのが分かった。
『大正解ィ! アンタを独り置いていくなんて、なんて酷いオニーサンだろうねえ? お蔭でこぉんなにここの天気は影ってしまった!』
「兄さんを悪く言うな‼」
耳を塞いで俯いた惣右介の隣へ、音も無く斬魄刀が立つ。惣右介の右肩に両掌を添えて、淡々と耳元に言葉を置いていく。
『そろそろ正直になりなよ。私はアンタの魂の一部だって言ってんでしょ? アンタが思う事、思ったことが私の思想にも繋がってる。確かに彼は酷いよ。同じ状況なら、アンタ以外じゃあ立ち直れなかった』
「うるさいッ!」
目の前の斬魄刀の首に手を掛ける。細くも太くもない、特徴の無い首だ。だがそこから伝わる生暖かい温もりは、生きているわけでもない斬魄刀のモノだと思うと妙に気持ち悪かった。
「良いからサッサと名前を言うんだ! あの滅却師を殺す力を寄越せ‼」
『ふふ! いいねェ、いいよォ! 意志の籠った素晴らしい目だ! でもちょっと落ち着いてよ。私の力は、”普段の”アンタにこそ相応しい』
「どういう……意味だ」
『ククッ! 知れば解るよ、我が主‼ なんなら、全ての滅却師だって滅ぼせる力さ! 私の名は――――』
「
刀身を逆さまにし、敵の眼前に掲げる。
斬魄刀の形状に変化はない。
「手品でもするつもりか? 大層な度胸だな! 悪あがきも大概に――」
「そんな程度の低いものじゃない」
「――何?」
「道化は、所詮道化ということだよ」
直後、滅却師の口元から滝のように紅い液体が溢れ出る。
惣右介が自身の左手を前に出すと、其処には心臓が握られていた。
「……⁉」
「何が起きたかも理解できないまま、地に伏して死して逝くがいい。君の心臓は、ここに置いていくよ」
ぐちゃ、という音を立ててそれが地面に落ちた。
惣右介の掲げる腕の先に瞠目した滅却師は、その表情のまま地面に伏す。倒れた弾みで滅却師の血が一筋伸びた。惣右介の後方に倒れる影に向かうのを草履で止めた彼の瞳は、凪いだ水面のように静かだった。
『私の名は、〈鏡花水月〉! 能力は、始解を一度でも目にしたものにアンタが望むままに物事を知覚させる“完全催眠”。言ったでしょ、意思が無きゃ意味がないって。さあ、アンタは私をどう使う?』
今は単純に、
滅却師には、掛けた”完全催眠”によってその事実を偽装し、棒立ち状態の惣右介を見せた後、掲げた右手に心臓が握られているよう錯覚させた。
あの反応を見る限り、〈鏡花水月〉は機能しているらしい。
……自身の胸に穴が空いた感覚さえ、知覚できていなかったのだから。
「――――ッ⁉」
眩暈がして立ち止まる。
『そォら、開くよ』
シンと静まり返った室内で、頭の内から笑みを含んだ声が響く。
血、滅却師の気配、死神……
『やっとだね。待ちわびたよ! 記憶の戸が開く――おはよう、我が主‼』
三つの要素が、彼の記憶を喚び起こした。
鏡花水月の解号”誘え”は勝手に付けました。
”砕けろ”って多分、催眠を解く時の解号なんですよね。一角みたいに二段階の解号がある人と同じと解釈しています。
砕けてほしい人ゴメンナサイ!
多分本作で砕けることはないかと……
戦闘シーンを何とかしたい……
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!