SSR ビギンズ0   作:真田丸

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メモリー0.14

蜘蛛の子を散らしたようまさにその言葉がぴったりだった。

 

立て籠り犯が変身した【アノマノカリスドーパント】の姿を見た瞬間、今までは恐怖から動くことの出来ないでいた人質たちは今度は恐怖から我先にと店から出ていく。

 

人が波のように押し寄せるなか、アノマノカリスは殺意のこもった眼でボクを見る。ボクも敵意の眼でアノマノカリスを見た。

 

スッと懐からドライバーを取り出して装着する。そしてメモリを起動させようとした時だった。

 

「・・・・・蒼也?」

 

「―――ッ!?」

 

背後からの声にメモリに伸びていた手を止めてゆっくりと振り向く。

ソコには恭二に支えられながら困惑の眼でコチラを見る詩乃の姿があった。

 

「―――詩乃っ!」

 

「余所見してんじゃねーよ!ガキィ!!」

 

油断じゃなかった。でも、詩乃のあの眼を見た瞬間ドーパントの事が頭から消えていたのは事実だった。

 

右肩に激痛が走りメモリを落とす。そのまま引っ張られるように身体が後ろに飛んだ。

 

銃撃かと思ったけど銃声や火薬の匂いなんかはしなかった。激痛は身体を貫通し同時に背後の壁にナニかが突き刺さった。

 

「――ッ!?コレは、歯?」

 

壁に刺さっていたモノそれはアノマノカリスに大きく開いた口の中に無数に生えた鋭い歯の1本だった。

 

「これだっ!この力だ!!今俺は人間を越えた超人の力を手に入れたんだぁ!!」

吼えながらアノマノカリスは歯の弾丸を見境なしに射ち続ける。

 

「――ッ〜!?詩乃!恭二!隠れてるんだ!!」

 

撃ち抜かれ血が流れる右肩を抑えながら近くのテーブルを倒してその陰に隠れる。

人体を容易に貫くその威力も注意だけどそれ以上にあの連射は厄介だな。しかも撃った側から新しい歯が生えていて弾切れの気配もない。

 

出入口の方では先に逃げ出していた人が数人アノマノカリスの歯が当り身体中から血を出して倒れていた。

 

 

「・・・・仕方ないかな。恭二!ボクが気を引くからその間に詩乃を連れて逃げて!!」

聞こえているのかは分からない、でも確認している暇はない。アノマノカリスの身体が反対方向を向き弾幕が緩んだ。

 

テーブルの陰から飛び出しアノマノカリスに向かって走る。

 

途中、ボクの接近に気付き振り返るがその口から歯の弾丸が顔に向かって発射される。ギリギリで顔を逸らして回し蹴りを放つ。

 

回転による遠心力が加わった蹴りはアノマノカリスの身体を仰け反らせスキを作ることが出来た。

 

「今だ、早く!!」

 

恭二は詩乃の腕を引っ張り店の外へと走り出す。2人が店から出る直前に詩乃の不安げな表情が見えたため《心配ないよ》と表現するように笑った。

 

「人が良い気分でいるのに、何度も邪魔しやがって!!」

「すみませんね。アナタみたいな人の邪魔が仕事なので」

 

話ながら既に血が止まった右腕で足元に落ちたメモリを拾う。

 

《ヴォルテックス!》

 

「・・・・変身!!」

 

メモリをドライバーに装填し傾けるとボクの周囲に旋風が吹く。

右手を握り締めて目前まで持っていき風を振り払うとメモリのエネルギーがボクの身体をへんかさせていき変化させてゆき仮面ライダーヴォルテックスへと変身した。

 

「お前っ!?そうかお前がアイツの言っていた仮面ライダーだな!」

 

アイツ、ていうのは多分あのセールスマンの事だろう。ボクの変身に一瞬の戸惑いを見せたモノのすぐに落ち着きを取り戻していった。

「お前を倒せばアイツはもっと強いメモリをくれるって言ってたからな!ぶっ潰させてもらうぜ!!」

 

アノマノカリスが歯の銃弾を撃ってくるが落ち着いてタイミングを合わせ受け流していく、そのまま距離を詰めていき回し蹴りを放つ。

僅かに怯むアノマノカリスにさらに連続で回し蹴りを放つ次第に威力を増していく蹴りは風を纏いアノマノカリスを吹き飛ばした。

 

店奥の調理場まで飛んだアノマノカリスに追撃する為ベルトの後ろに手を伸ばしそこに装着されているヴォルアローを構えながらゆっくりと近付いていく。

 

「ガアアァァァ!!」

 

するとアノマノカリスは怒号を上げながら調理場から飛び出してくる。鋭い鉤爪の様になっている腕を振る回し迫るその攻撃を弾きながらヴォルアローを振るう。

右脚を軸に回転しながら振り払った一撃がアノマノカリスの身体に火花を散らし仰け反らせる。

 

回転の勢いで再び正面に向き合った時ヴォルアローの弦を引きゼロ距離から矢を放った。

螺旋状に回転する矢はアノマノカリスの身体を押し出し弾き飛ばした。

 

所詮は力を手に入れたばかり、力の差は歴然だった。

 

「もう諦めてメモリを捨ててもらえませんか?アナタじゃボクには勝てませんよ」

 

うずくまるアノマノカリスに近寄りながら降参を進めが、後に思えばこの時のボクは完全に油断していた。

 

「ふざけるな!ようやく手に入れたこの力、簡単に手離せるかよ!」

 

ショットガンのように大量の歯が一斉に撃ち出された。不意打ちに対処しきれなくて何本かが身体に刺さり壁に磔にされた。

 

ーやられる!ー

 

だが、アノマノカリスはボクに追撃することなく道路に面した店の窓に向かった。

 

10数本の歯の弾丸が1度に当り窓やその周囲の壁をコナゴナに破壊し巨大な穴を開けた。

 

 

「別に無理にお前を倒す必要もない。俺はこの力で満足なんだよ!」

 

そのままアノマノカリスは外へと跳んだ。すぐに追いかけようとしたけど壁に突き刺さっている歯がなかなか抜けないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

外では店から出て来た人質たちが警察に保護されていた。マスコミのフラッシュに照らされて次々と誘導されていく人質たちの口からは共通の言葉が出ていた。

 

「怪物が出た」と。

 

初めのうちは警察もマスコミも野次馬も恐怖から錯乱しているのだろうと考えていたが1人

、また1人と同様の事を言う人が後を断たない。

そこに、凄まじい破壊音と共に。窓ガラスやコンクリートの破片が降ってきた。

 

飛び散った破片が店から出てきた直後の人質女性の顔に直撃し顔の右半分が潰れた。

 

「ウアアァァァァ―――アブッ!?」

 

女性を保護しようと駆け寄っていた警官が悲鳴を上げるがその悲鳴は新たに降ってきた100キロ以上の物体、アノマノカリスドーパントによって身体ごと潰れてしまった。

 

ブチャッ!とトマトを潰したような音が止むと暫く、数秒の間一切の音がしない静の時間が流れた。

2人の無惨な死体から拡がった血がビルの外壁、パトカーの車体、人々の身体を塗り潰していたが誰一人としてその事を瞬時に理解することが出来ないでいた。

「アッ!アアアッ・・・・・」

 

やがて一人の女性が自身の身体を染める生暖かい液体に気付く。

 

先日、夫に買わさせたばかりの白い毛皮のコートは真っ赤に染まり震え出した唇はより濃さを増した。

 

「イヤッ――ブッ!?」

 

女性が叫ぶよりも早くその顔に無数の穴が開いた。

 

「ウワアアァァァァ!?化け物〜〜!!?」

ある者は腰を抜かしながらも這いつくばるように

「邪魔だ!!退けよ!!」

ある者は目の前のお年寄りを押し退けて

 

「待ってヨシ君!?」「離せよ!!」

ある者は恋人の手を振り払い自分1人だけでも助かろう逃げ出す。

阿鼻叫喚の中、アノマノカリスは目に写る全てに自らの力を知らしめようと暴れだす。

 

「撃て!撃てぇぇ!!」

 

警官隊が発砲するがそんなものが通用するハズもなく、勇敢な警官たちは次々と体中に風穴を開けられ物言わぬ骸へと変わり果てていった。

 

「本部!本部!!軍に要請してISぶたいびょっ――――!?」

 

パトカーの無線で応援を要請していた刑事は最後まで言い切ることなく顔の上半分が吹き飛び車内に転がった。

 

 

「ヒャッハ、ヒャハハハハ~~!!」

 

 

誰もかれもが自分の力を恐れ逃げ惑っている。それがアノマノカリスにとってとても愉快であった。

思い出すのはかつて社畜としてこき使われていた忌々しい過去だった。どれだけ血の滲むような努力をしても男という理由で評価されなかった。手柄は何時も無能な女共やそんな女に取り繕っているイケメン共の取られ続け見下されていた。

 

「だが俺は変わった!この超人の力で俺をないがしろにしてきた世界を壊してやる!!」

 

新たな獲物を求めアノマノカリスは周囲を見渡す。するとビルの出入口に見覚えのある顔を見つけた。婦警の影に隠れながらこちらを見ている少女、確か喫茶店で吐いていた奴だ。

 

そう認識したとたんあの時のゲロの匂いを思い出しイライラして来た。

 

「次はお前だぁ!」

身体を少女に向け大きく口を開く。少女やそばの婦警が恐怖で顔を歪めるのが見えた。その顔を肴に一杯やれそうだ。そう思いながらアノマノカリスから無数の歯が飛んだ。

 

 

 

 

 

店から出た詩乃と恭二は途中、救助にやって来た警官隊と出会った。

 

「彼女をお願いします!」

 

恭二は警官隊に詩乃をお願いし店に戻ろうとした。

 

「恭二くん!?」

 

「君、戻ったら危ないぞ!」

 

「すみません、友達がまだ残っているんです!!」

 

制止しようとする警官を振り払い恭二は階段を登っていく。すぐに警官も後を追うために一緒にいた婦警に詩乃を任せた。

婦警と共に降りた詩乃の視界には地獄が拡がっていた。

 

砕けたアスファルトに薙ぎ倒された街路樹、穴だらけのパトカーそして・・・視界を埋め尽くす程の死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体

 

その真ん中には店で見たあの怪物が立っていた。

何で外にいるのか?蒼也はどうしたのか?詩乃にとって分からないことばかりが起こる。ただ1つ分かることは自分は今から死ぬんだということだった。

 

怪物はゆっくりと身体を向け口を開いた。びっしりと生えている鋭い歯が自分に向けて飛んで来。るそう理解しせめて少しでも恐怖を和らげようと眼を閉じカバンを抱く。

 

 

「・・・・・・・・・?」

 

しかし、いつまで経っても痛みは感じなかった。

かわりにどこか優しい風が自分を安心させるように撫でてくれているような感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グッ・・・グアッ!」

 

思っていたよりも深く刺さっていた最後の1本がようやく抜けた。

磔にされている間にアノマノカリスは破壊した窓から外へと逃げ暫くの間は外から悲鳴や銃声、爆発音なんかも聞こえていたけどそれも今は止んでいる。

 

 

ヴォルアローを拾って外を見るとビル前の道路は予想以上の惨劇になっていた。

転がる死体の殆どが穴だらけであり中には上半身が吹き飛んでいる者や顔に大きな穴の開いている者までいた。

だけど幸いな事にアノマノカリスはまだその場にいた。ここで倒せばこれ以上の被害は出ない。

 

今まさにビルの出入口に向かい歯を撃とうとするアノマノカリスの前に降りた。

 

迫る歯を切り払い逆に大きく開けた口に向かい矢を放つ。

 

「グギャァァァァ!?」

 

どうやら口の中が急症だったみたいだ。アノマノカリスは叫び声をあげながらのたうち回る。

 

「今のうちに逃げてくださ――!?」

 

振り返ると婦警さんとそして、詩乃が眼を見開いて呆然としていた。

 

・・・・アレ?いまボクはこの2人に向かっていた攻撃を弾いたんだよね?

もしボクが間に入らなかったら間違いなく2人は死んでいたよね?

 

・・・・・ダレガ?シノガ?シンデタ?

シノガ?シノガ?シノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガシノガ・・・・・シンデイタ?

 

 

「ググゥ〜〜・・・!何度も、何度も邪魔すんじゃ――ッ!?」

 

汚い口が開きそうになったからその前に手で塞いだ。あんな汚いモノを詩乃に見せて良いハズがないからな。

ソレにしても・・・・

 

「オマエさぁ今ダレを狙ってタんだァ?」

 

口を塞いだまま近くのパトカーに叩き付けた。ガラスが割れて身体に刺さったみたいだけど関係ないな・・・

次は口に手を入れて危なっかし歯を殴り砕く。

なにか騒いでいるけどナンダヨ?

 

「どうせすぐに生えてくるんだろ?」

 

全ての歯を砕き終えたら空高く蹴り上げる。

 

《ヴォルテックス!マキシマムドライブ!》

 

メモリをヴォルアローのスロットに挿し弦を引く、周囲のエネルギーを収束し狙いを空中で暴れるアノマノカリスに定める。

 

「・・・ヴォルジャベリン」

 

螺旋回転しながら飛ぶ矢はアノマノカリスのを貫き爆散させた。

 

 

「ガギィャ・・・・アアッ・・・・!」

 

爆発の中から砕けたアノマノカリスメモリと一緒に男が落ちてきた。

幸い下にパトカーがありアスファルトに激突、て事にはならなかった。

「そん・・・な・・・・ようやく・・・・・ようやく手に入れた・・のに・・・・!」

 

砕けたメモリに手を伸ばす。そんな哀れな姿を見るとさっきまでの怒りもスッと抜けていったが

 

「本当の絶望はこれからですよ。アナタはあまりに殺しすぎた。ほぼ間違いなく死刑になるでしょうね」

どんなに哀れであろうともやったことは何一つ許されない。アレだけの目撃者がいる以上どんな弁解も通用することはないだろう。

 

 

「アアッ・・・メモリィ・・・オレノメモリィガァァ!」

 

・・・・聞こえてないか、これがメモリの力に魅せられた末路だと思うと少し同情もしたくなるのかな?

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