翌日のニュースは予想通りにドーパントのことで持ちきりだった。
-銀行強盗が怪物に変貌?-
-二体の怪物により人的被害多数!ー
ー死者、数十人!怪物の凶行!ー
中でも注目を集めているのはIS部隊が怪物を取り逃がしたという事だった。その取り逃がした怪物は十中八九ボクの事なんだろうけど、ドーパントと同様に扱われるのは納得できないなぁ・・・そもそもボクは人、殺してないし・・・
まぁそのことは置いといて、今まで最強の兵器と思われていたISが4機あったにもかかわらず取り逃がしたという事実にISに存在意義に疑問の声が各方面から上がっているらしい。
曰く『4機もいて取り逃がすなんて本当に最強の兵器なのか?』『仮にまともに戦っていても勝てたのか?』『こんないざという時に役に立たない物に国家予算を裂くのは無駄なんじゃないのか?』
それに対して一部の強硬派の女性から反発の声が上がっている。
『怪物は勝てないと思ったから逃げだしたんだ!』『そもそも今回これほどの被害があったのは現場にいた警官たちが無能だったせいだ!』『無能な警察の予算こそ無駄遣いだ!』
どのチャンネルを回してもそんな討論ばかりだ。正直に言ってくだらないと思った。
テレビを消してご飯に納豆で簡単な朝食を済まして部屋を出る。詩乃は念の為に昨晩は病院に泊まることになったため放課後に迎えと一緒に着替えを持って行くことになった。
詩乃のタンスから適当な着替えを用意してバックに詰める。
・・・今更だけどいくら幼馴染とはいえ異性のタンスを探るってやっぱり恥ずかしいな・・・しかも下着もだし・・///
恭二にも一緒に行かないかと誘ったんだけど『今日は気分が悪いから、ゴメン・・・』と返って来た。
まぁ恭二も事件に巻き込まれた当事者の1人なんだから無理ないかな。
「詩乃、お待たせ」
病室に入ると詩乃はベットの上で昨日買ってあった本を読んでいた。
その顔からは昨日の出来事を引きずっている様子はなくて思わず安堵した。
「はい、着替え持ってきたよ」
「ごめんなさいねワザワザ」
「ううん。ボク、ちょっと先生に挨拶してくるからその間に着替えておいてね」
着替えの入ったバックをベットの横の椅子に乗せて病室から出る。
診察室に行くと担当医の人がカルテを片手に簡単な説明をしてくれた。元々大して怪我をしたわけでもないから通院の必要も無いらしい。
「特に外傷も無いですからね。明日には学校の方に出ても心配ないでしょう」
「そうですか、ありがとうございます」
「ただ・・・彼女は過去に何か大きなトラウマを抱えてませんか?」
「ッ!?・・・・はい確かに詩乃には一つ大きなトラウマがあります」
「やはりそうですか、今回の事件でそのトラウマが刺激されたようでしてね。今後しばらくは注意しておいてください」
「・・・分かりました。ありがとうございます」
診察室から出て病室に戻ると着替えを終えた詩乃が荷物をまとめていた。
「詩乃、お待たせ。特に通院の必要もないし明日からは学校に出れるってさ」
「そう良かった、私が休んだらアンタは丸一日教室で寝ているかもしれないしね」
「ははは・・・流石にそこまで寝ないよ」
「あら、この前昼休みに寝ていたら移動教室に気付かないで1人ボッチになっていたのは誰だったかしら?」
「いや、アレは〜・・・・はいボクです。あの時はご迷惑をお掛けしました」
「うん、よろしい」
病院を出るとすっかり夕暮れになっていた。部屋まではそんなに離れてはいないけど今日はどこかで食べて行った方が良いかもしれないね。
「詩乃、晩は近くのファミレスで良いかな?」
「そうね、病院食はちょっと薄味ばっかりだったから濃いめの物が食べたいかも」
丁度近くに大手ファミレスチェーンのステーキ店があるからそこに入ることにした。
ボクはサーロインステーキを詩乃はハンバーグステーキをそれぞれ注文した。
注文した料理が来るまで
「ところで、いい加減話してもらえるわよね?」
「え、何のこと?」
「惚けないで!アンタが最近、コソコソ私に隠れてやっていることよ」
その目は真っ直ぐボクを見据えていて決して逃がしはしない!と言っているようだった。
「・・・・・わかったよ。でも、ボクも何でも話せる訳じゃないから言える範囲までだよ」
さすがにはぐらかすことは出来ない。そう判断してボクがなにをやっているのかを話すことにした。但し少しばかりの内容を偽ってだが・・・
「・・・・つまり、半年ぐらい前に偶々指名手配犯を見つけて懸賞金をもらったのにはまって街で指名手配犯を探すようになったと」
「まぁ・・・大雑把に言うとそうです・・・ね?」 パキッパキッ
「「・・・・・・・・・」」
・・・・沈黙が痛い・・・納得してくれたのか?していないのか?詩乃は黙ったまま真っ直ぐにボクを見る。
いつの間にか来ていたステーキの鉄板のジュッーという美味しそうな音が2人の間から流れ続ける。
「あの・・・詩乃さん?「はぁ〜〜」ッ!?」
詩乃は大きなため息を漏らすとそのまま目の前に置かれたハンバーグにナイフを入れる。
「ええっと・・・・」
「早く食べないと冷めちゃうわよ」
黙々と食べ続ける詩乃に習いステーキを食べるが正直言って喉を通らない。それほどに詩乃から圧力を感じた。
結局、その後は一言も話さないまま食事を終え店を出た。部屋に向かう際もお互いに距離を取っていて顔も合わせないでいた。
「「・・・・・・・・・・」」
「・・・・・あのッ!・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
いつまでもこのままじゃいられない。なんとか会話をしようとするけど言葉が最後まで出なかった。
「・・・・・蒼也」
「・・・・エッ!?」
不意に詩乃の方から話し掛けてきて驚いた。
詩乃は鋭い眼のまま近付いてくる。
「正直に言って私はアンタの言ったことの半分は嘘だと思っているわ」
・・・やっぱりバレていたみたいだ。
詩乃には隠せないなぁ・・・
「でも、いいわよ。無理に言わなくても」
「・・・・・えっ?」
てっきり本当のことを言えと追及されると思っていたから少し拍子抜けだった。
「どうせ本当のことを言うつもりなんて無いんでしょ?だったらいいわその時まで待つから」
そして詩乃は手に持った紙袋からマフラーを取り出すとボクの首に巻いた。
「それとコレは昨日のお礼よ」
「えっ昨日のって?」
「最後の方はめちゃくちゃになっちゃったけどそれ以外は楽しかったわよ」
「でも、それならボクじゃなくて恭二に・・・」
「もちろん、新川君にも改めてお礼はするわ。でも、一番にはやっぱり蒼也にって思ったのよ。これから寒くなっていくし首元も隠しておいた方が良いでしょ?」
改めて首に巻かれたマフラーを見てみる。
青い生地に白い二本線が引かれている。
どこか、ヴォルテックスのマフラーに似ていた。
「ありがとう詩乃、大切にするね」
「ッ!?///とっ当然よ!むしろ、ずさんに扱ったら承知しないから///」
「うん!」
今はまだ、本当のことは話せない。だけどいつか詩乃がずっと笑っていられるようになったら・・・・
「・・・・やはり『運命』に導くにはもう一押しが必要みたいですね」
男はパソコンの画面にある文章を入力した。
-2BのSAさんって昔、人を殺したらしいよ-
このたった一つの書き込みが蒼也と詩乃そして恭二の『運命』を決めることになる。