「お〜い、朝田ぁ〜悪いんだけど今日もお金の援助してくれるよねぇ〜?」
お昼休み私は校舎裏で数人のクラスメイトに囲まれていた。
彼女たちは電車で適当な男の人を痴漢に下手あげてはお金をむしり取ったり一部の生徒を奴隷のように扱っているなどの噂で学校内でも有名な不良グループだった。
そして、ここ最近は私がそのターゲットにされている。
「そう言えばぁ今日は彼氏と一緒じゃなかったねぇ〜?」
「あっ分かった。金遣いが荒くて捨てられたんだ!」
「「「「あっはははは!!」」」」
何が金遣いが荒くてよ!
彼女たちの言葉に怒りが沸いてくる。
この数週間、私は毎日のように彼女たちからお金を要求されている。もちろん初めは断ろうとした。
彼女たちとは特別親しいわけでもなくむしろ、関わらないようにしていた位だった。
それなのに彼女たちが私に狙いを付けたワケは・・・・
「・・・・いや」
「はぁ?今なんて言った?」
「もう・・・・貴女たちに渡すお金は無いわ」
今までは自分のお小遣いの中で何とかしてこれたけれど最近はそれでは足りなくなり蒼也との共用の口座に手を出してしまい気付かれ出している。
蒼也には・・・・蒼也だけにはこの事を知られたくない。いえ、知られるわけにはいかないわ!
「・・・・ふ〜ん。そういう態度をとんだぁ〜」
彼女たちは嫌な笑みを浮かべて何かを取り出して私に突き出した。
「アンタ、昔これ使ったんでしょ?」
「アッ!?―――アアッ・・・・!」
目の前に突き出されたモノ、それは一丁のモデルガンだった。
それを見た瞬間、私の脳裏に昔のあの光景が甦ってきた。
所詮はオモチャ、とても安物のそれこそお祭りの屋台で売っているようなモノだったけど関係がなかった。彼女たちは知っているんだ。私の過去を・・・・
「アアッ・・・ガッ!アガッ!?」
息ができない・・・・目の前が真っ暗になって立っていられない・・・・
「うわぁ〜〜その反応、噂は本当だったんだぁ〜この、人殺し〜〜」
「「「人殺し〜〜〜!」」」
・・・・・ちがう・・・・
「「「「人殺し〜〜!!」」」」
・・・・・ちがう・・・チガウチガウチガウチガウチガウ・・・・
「ちがう!!」
自分でもビックリするぐらい声を荒げて掴みかかろうとする。
「・・・・・あ・・?・・・・・あ、アアアッ〜〜〜!!!」
でも、不意に額にナニかが当たったのが分かった。
目の前の彼女たちの笑みでソレがなんなのかはすぐに理解できた。
理解できた瞬間、胃の中のモノが逆流してきた
「ウッ!?〜〜〜〜ウエェェ〜〜!」
膝を着き両手で口を押さえるけど駄目だった。口から溢れ出たソレは両手を押し出して地面へと飛び散った。
「うっわぁ〜〜バッチィ〜」
「きったないもの見せられて気分が悪いから慰謝料払いなさいよ!さもないとぉ・・・」
「ヒィッ!」
再び突き付けられそうになったモデルガンから逃れるために傍のカバンから財布を出して投げた。
「たくっ、最初ッから出せよな」
「おっ無いって言ってたくせに意外と入ってんじゃん!」
「んじゃぁ気分を悪くされた慰謝料と金が無いって嘘ついた罰金で全部貰ってくわね〜」
「「「キャハハハ!!」」」
中身を全部抜き取った財布を投げ捨て去っていく彼女たちを私はただ地面に這いつくばって見送るしか出来なかった。
悔しい・・・・私は、あの頃と同じで・・・弱いままだ!
強く・・・なりたい・・・!!
あの時、病院で感じた思いがまた芽生えてきた。
「・・・・・・・・詩乃?」
「・・・・えっ?」
不意に声が聞こえた。ソレはいつも私の傍に居て私が一番安心できる声、でも今は一番聞きたくなかった声・・・・
「そう・・・や・・?」
今日は用事があって学校は休むって言っていた蒼也が私服で立っていた。その首には先日私がプレゼントしたマフラーが巻かれている。
なんで?今日は来ないはずじゃ・・・
「変な噂が詩乃のクラスを中心に流れているって聞いてさ」
「まって・・・・違うわ・・」
「5年前の事件の事らしいんだけどね」
「私は関係ないわ、誤解よ「詩乃!!」―ッ!?」
蒼也はとても優しい顔で泣いていた。
「安心して、もう詩乃を泣かせはしないから」
「まっ・・・てっ・・ダメ、蒼也ぁ!!」
蒼也は私に自分の着ていた上着をかけると校舎へと歩いていった。
「ダメ・・・このままじゃ・・・・また・・」
すぐに追い掛けたくても力が入らない。校舎の外壁に手をついて何とか立ち上がる。
「このままじゃ・・・また・・」
『ウアアアァァァ!!?』『ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!!ゴメンナサイ!!!』『イヤアアァァァ!!タスケテェェェ!!』『警察だ!警察を呼ぶんだぁ!!』
私の脳裏にあの事件とは違うもう1つの出来事が甦る。
へこんだ扉に割れたガラス、折れた机や砕けた黒板、血を垂らしながら逃げ惑う男の子に折れた腕を押さえて泣き叫ぶ女の子。胸にハサミが刺さりのたうち回る教師。
『ダメ・・・もうやめて!渦木くん!!』
幼かった私の声は届くことなく一人の男の子の顔を殴り続ける蒼也、その顔は涙でぐちゃぐちゃに濡らしながら・・・
『・・・・ハハッ!』
笑っていた。