午後の授業が始まり生徒たちはそれぞれの教室で授業を受けていた。
先ほど詩乃からお金を取った女子たちもしかりだ。
「いや〜今日は大漁だったね〜〜!」
「こんだけあんだしさ、男でも誘ってカラオケ行こっか?」
「良いねぇ〜!!」
だがまともに授業を受ける気は無くお互いの机を向かい合わせながら周りの迷惑も考えず喋っていた。
男性教師の声も欠き消さんばかりの声で話す彼女たちが手に持つお金、それが誰のモノであるのか。このクラスで知らない者はいなかった。
数週間前、クラス内のあるライングループに妙な書き込みがあった。
ソレは今から数年前の地方新聞の小さな記事についてだった。
東北のある郵便局に強盗が押し入り客や職員を人質にとり立て籠った。
数時間の後、犯人が人質の一人である当時9歳の少女により射殺されたというものだった。
その書き込みに添付された画像に写っていたのが、幼馴染みの少年と共に写る朝田詩乃だった。
当初は誰もこの書き込みを信じてはいなかった。
クラスメイトから見た詩乃の印象はとても静かで真面目なまさにクールという言葉がピッタリでありそれでいて幼馴染の少年といる時に見せる年相応な女の子の顔のギャップから密かに人気があった。
そんな彼女が人を殺している筈がないとクラスの殆どが思っていた。
・・・・だが、物事にはきまって例外が存在するものだ。
自分のクラスに人殺しがいる。だったらそれをネタに脅してやろうと一部の女子たちが考えた。
彼女たちも始めは密かな人気者に対する単なる嫌がらせのつもりだった。
人気の無い所に連れ出し記事を見せて問い詰めた。するとあからさまに表情を歪めた詩乃に対しふざけ半分で指を銃に模して突き付けたところ、顔色を青くし震えだした詩乃は「やめて!」と叫びお金を差し出した。
それに味をしめた彼女たちはそれからほぼ毎日詩乃からお金を巻き上げていったのだった。
他の生徒は目を付けられ自分が次のターゲットにされないために。教師もまた下手に騒ぎにして学校や自身の評判が下がらないために見て見ぬふりをしていた。
誰も自分たちを否定しない。その事が彼女たちの行動に拍車をかけていたのだった。
授業中のため誰も居ない廊下を歩きながらも頭に浮かぶのは涙を流す詩乃の姿だった。
幼い時、一人ぼっちだったボクと一緒にいてくれたのは詩乃だった。
身体が冷たく死体、ゾンビと言われていたボクの手を握ってくれたのも詩乃だった。
詩乃が事件のあと周りから蔑まされ一人になった時今度はボクが詩乃の隣にいるんだと誓った。
絶対に詩乃を悲しませない。涙は流させない。そう誓った。
でも、今日、詩乃は涙を流した。
ならボクがやることは1つだ。
「詩乃を悲しませないヤツを潰すだけだ」
気付けば目的地である詩乃のクラスの前に着いていた。中から聞こえるのは教師の授業じゃなく数人の女子の下品な笑い声だった。
『どうせ金は幾らでも出てくるんならさ、海外にでも行こっか!』
『イヤイヤ、さすがにそこまで取ったら朝田も可哀想でしょ!?』
『何言ってんの。人殺しがあたしらの役に立ててるんだから寧ろ感謝されるべきでしょ!』
『そりゃそうだ!』
『『『『あ〜ハハハ!!』』』』
「・・・・・・・・ハァ」
教室から聞こえるその声でもう限界だった。荒れ狂う心を少しでも落ち着かせるために息を吐いたけどやっぱりダメだ。
「まぁ、どうでも良いか」
仮に落ち着こうともヤることは変わらない。
邪魔な目の前の扉に向け右脚を振るう。
ドシィャァァン!!
蹴り払った扉は直線上の窓へとぶつかりそのままガラスを突き破り地面へと落ちていった。
邪魔な扉が無くなっていざ教室へと入ると教師をを含む中にいた全員が茫然とボクを見てくる。
「き、君!いったい何をしているんだ!?」
教師が何か言っているけどそれを無視して教室を見渡す。
「あ、彼って朝田さんの幼馴染みの渦木くんじゃない?」
「えっ?・・・・そうだよ!あの写真でも一緒に写ってたし!」
「じゃあまさか、朝田さんを苛めた仕返しに?」
クラス中の視線が次第に一ヶ所に集まりだした。その視線を追うと数人の女子が授業中にも関わらず机を向き合わせていた。
机の上には普通の中学生が持っているには不釣り合いな金額が置かれていた。
彼女たちも視線が自分たちに集まっていることを感じ動揺していた。
「ちょっ!なに見てんだよ!?」
「あたしらが何かしたって言うのか!」
周囲に吠えるその姿はとても醜く見えた。
彼女たちに向け歩き出すと周りの生徒たちは関わらないためにか机ごと移動し彼女たちへと通じる一本の道が開けた。
その道を真っ直ぐに進んで彼女たちに近づく。
「なっ!何だよ!?」
「言っとくけど、この金は朝田が自分から渡したモンだからな!!」
お金は渡さないと言わんばかりに机の上のお金を自分たちの傍に移動させる。
「あ〜・・・うん、お金は・・・まぁ良いんだ。ただね・・・・詩乃が苦しんだ分は返させてもらうよ」
「ハァ?―――グヴゥァ!?」
ボクから見て右側に座っていた一人の顔面に裏拳を打ち込む。
「バァッ!?ア゛アアアァァァァ〜〜〜!!?」
椅子から転げ落ち鼻から血を流しながらのたうち回る耳障りな悲鳴が無音になった教室に響く。
「なっ・・・・・ナニすんだよテメェ!!」
「アタシらに手を出して無事に済むと思うなっ―ブゥゥ!!?」
思考が停止していた残りの二人が掴み掛かってきたから一人の顔面に頭突きを喰らわせた。
これまた血を吹き出し醜い悲鳴をあげながら倒れるその姿は滑稽で思わず笑ってしまった。
そんなボクとは対称的に周りは恐怖に刈られたような顔をしている。
・・・・まぁ、客観的に見れば異様な光景だろうね。いきなり教室に入って来て女子二人を血だらけで床に倒れさせるなんて・・・まぁ、どう見られようと良いんだけどね。
後は・・・・
「ヒィッ・・・・イヤアアアァァァ!!」
視線を後ろに向けると最後の一人が短い悲鳴を上げながら後ずさっていた。目が合うと途端に背を向けて廊下に向かい走り出した。
「ちょっと待ちなよ」
机に置かれていたシャーペンをその背に向かい投げると
「ギッ!?ヴァアアァァァァ!!?」
背中にシャーペンが深々と刺さり前のめりに倒れ込みながら汚い悲鳴を上げる。机の上の筆入れに手頃な三角定規があったからソレを手にその娘に近づく。教室に居る他の生徒や教師は目の前の出来事に未だに思考が追い付いていないみたいで呆然としたままだ。
ボクとしては都合が良いな。余計な横槍を入れられるとその人もヤッちゃうかもしれないからね。
対象はあくまでも詩乃を苦しめた彼女たちだから、ね
「ガッアアァッァァァァァ・・・・」
「・・・じゃあ、始めようか?」
ハハッこういう事すのは久しぶりだなぁ~