SSR ビギンズ0   作:真田丸

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メモリー 0.3

「蒼矢!朝田さん!おはよ・・・う・・?」

 

朝の登校中、詩乃と並んで歩いていると背後から名前を呼ばれて振り返るとそこには学校で間違いなく詩乃の次に親しい親友、新川 恭二がいた。

途中から不思議沿いな感じになったのは間違いなくボクの格好に対してだろう。

昨日、血で真っ赤に染まった制服はその後の詩乃の努力も虚しく処分することになり改めて制服を発注している間ボクは学校指定のジャージを着て登校することになった。

 

当然のように周りからの視線を集めての登校になっていたわけだけど恭二が元気なあいさつをしたため更に視線が集まった。

 

「どうしたの蒼矢、その格好は?」

「あ〜・・・・うん、ちょっと制服を汚しちゃってね。学校にはちゃんと許可を取ったよ」

 

「そうなんだ・・・・大変だね」

 

「ほら二人とも何時までもしゃべっていないで速く行くわよ!」

 

 

ボクの渦季 蒼矢の日常はとても平凡なものだった。

幼馴染みや親友と毎朝一緒に登校して授業中ちょっと居眠りをして先生に怒られる。

昼休みには詩乃が作ってくれたお弁当を恭二と一緒に屋上で食べる。(詩乃は他の友達と食べている)

そんなごく平凡な日常だった。

それだけに昨日の非日常な出来事が頭の中に強く残っている。

 

 

 

「じゃあ今日はちゃんと真っ直ぐ帰るのよ」

友達と少し買い物をしていくという事で別れ際に詩乃はそう言った。

勿論ボクもそのつもりだった。今日は速く帰って残った宿題をやらなくちゃならないし何より昨日あんな目に遭ったんだから寄り道なんてする筈がない!

 

「そう思っていたんだけどなぁ〜・・・」

 

気付けばボクは昨日の神社に来ていた。

 

特に理由があった訳じゃない。気が付いたら脚を向けていただけだった。

「それにしても、昨日のままだなぁ・・・・」

 

神社の境内は昨日ボクが離れた時から何も変わっていなかった。

今に思えば不自然すぎる。

本殿が半壊するほどの強風が起こったんだ。その時の音は明らかに周辺まで届いていたはずなのに野次馬も警察の捜査さえもされた痕跡がない。

 

そしてもう1つ妙なのは今ポケットの中にあるUSBメモリの事だ。

 

昨日から何故だか手放す気になれない。別に思い入れのある物じゃない。昨日たまたま拾っただけの事なのにコレはボクにとってとても大切な物のような気がしてならない。

 

 

 

「見付けたぜ・・・・」

 

――ッ!?誰か来た?振り返ると鳥居の下にチンピラっていう言葉がこれ以上ないぐらいピッタリな男の人がいた。

金髪に染まった髪は剣山みたいに立っていてサングラスの奥から微かに見えるその眼は獲物を見つめる猛獣そのものだった。

そしてその手にはボクが持つのと同じ形状の茶色いメモリが握られていた。

 

「まさかお前もメモリ持ちだとは思わなかったけどなぁ〜俺は、一度目を着けた獲物は絶対に逃がさねぇ!!」《ハウンド!》

 

男の人はメモリを自分の首に挿すと四つん這いになり男の人の身体が徐々にその姿を変えていく。

全身から針金の様な体毛が無数に生え口からは鋭い2本の牙が飛び出る。爪は日本刀のように鋭く光を放ち地面に深く食い込んだ。

 

間違うはずがない、そこにいたのは昨日ボクに襲い掛かった狼の怪物だった。

 

 

「今度は油断しねえ、その喉元を食いちぎってやる!!」

 

大口を開け飛び掛かる怪物に反射的に横に跳んだ。怪物の牙はボクの後ろにあった御神木をまるでパンのように食いちぎる。直径の半分以上を失った御神木はゆっくりとバランスを崩し何百年もの天寿を全うした。

「ペッ!次は逃がさねぇ・・・」

 

ジリジリと近付いてくる怪物に対しボクは同じペースで後ろに下がるしか出来ない。

 

こんなことならちゃんと帰っておけば良かった。

今さら遅い後悔をしていると足元の何かに躓いて尻餅をついた。視線の端、地面には赤い機械みたいな物が落ちていた。

 

同時に怪物は地面を蹴りその牙を、その爪を大きく振り上げた。

 

「グオオオォォォォ!!」

 

『そのドライバーを腰に当てなさい!!?』

「――ッ!?」

 

何処からか声が聴こえた。思わず足元の赤い機械を手に取って腰に当てた。

 

機械からベルトみたいな物が出てきてボクの腰にピッタリ着いた。

『メモリを装填して倒すのよ!変身しなさい!!』

 

もうこの声が誰なのか何てどうでも良かった。ただ声の言う通りにメモリをベルトに挿して倒した。

 

《ヴォルテックス!》

「――ッ!?」

 

メモリが光だして骨みたいなデザインから一変、加工されたみたいにスッキリしたデザインに変わった。同時にボクの周囲を昨日と同じいや、昨日よりも更に激しい竜巻が吹いて怪物弾き飛ばした。

 

まるで全身に纏わり着く様な感覚と一緒に自分の身体が生まれ変わるのを感じた。

 

弾けるように竜巻が消えた時、腕がいや全身が今までのボクのモノとはまったくの別物になっていた。

 

蒼をベースに緑色の線が螺旋をいや渦を巻くように引かれている。

手の甲と脚には換気扇みたいな羽根が付いて首からは2本の銀色のマフラーが伸びていた。「・・・・・・・」

 

傍に落ちていた本殿に置かれていた鏡の破片を見るとその顔は白い大きな二つの目を持って額からはVの字のアンテナがある。

 

まったく違うものに変わった自分の姿に言葉が出なかった。

 

 

「ガアァァァァ!なんなんだそれは!?」

 

あの怪物が起き上がって叫ぶけどそんなことボクが聴きたい。

 

「ウワゥゥゥゥ〜!ガアッ!!」

「ウワッ!」

 

遠吠えをあげてまた襲い掛かってくる怪物に思わず身体を捻って蹴った。

足の軌道を描くみたいに空気の切れ目が見えたその蹴りは迫る怪物の顔を捉えた。

 

「ギャウゥゥ〜!?」

悶える怪物の様子に今のこの身体が持つ凄まじい力を理解した。

 

「この力なら、勝てる!」

 

悶える怪物が起き上がろうとしたところにすかさずパンチを打つがさっきの蹴りと比べて怪物にはあまり効いていないように見えた。

 

怪物の爪がボクの身体を切り裂き身体から火花が散った。

 

「ウウッ・・・なんでさっきより効かないんだ?」

 

蹴りの時は条件反射の様なものだったけどパンチはちゃんと力を込めて打ったつもりだ。

 

なのにパンチはあまり効いていない、何かが違うのかな?

 

考えている間にも怪物の爪と牙が迫る。何とか直撃しないように避けているけど時折かすったように身体中から火花が散る。

負けじと反撃のパンチやキックを繰り出してもやっぱりあまり効いている様に見えない。

さっきのは偶然だったのかとさえ思い始めたとき

「ウアァァ!?」

 

怪物の突き出した爪を左肩に受けた。

崩れたバランスを立て直そうとするとそのまま左足を軸に回転しその際伸ばした左手が怪物に当たった。

 

「グギィァァ!?」

 

さっきまでの攻撃がまるで効いていなかった怪物が悶えた。

 

ふと足元を見ると左足の地面に円が出来ていた。

 

「・・・もしかして」

 

頭に過った仮説を確めるため怪物に向かい走り出す。タイミングを見て地面を蹴り跳びながら身体を捻る。

空中で回転しながらその勢いを乗せたキックは怪物を数メートル飛ばした。

 

「やっぱりだ」

 

ボクは確信した。最初の一撃もさっきのもそして今のキックも回転の勢いがあった。

変身の時の音声【ヴォルテックス】確か渦って意味だったと思う。

渦だから回転すれば強い力を得られるって事か・・・それなら!

 

ボクは怪物との距離を詰めると足を軸にして回転しながらの攻撃を当て続ける。

でも怪物もただではやられてくれない。パンチをかわされたと思ったら突き出した腕に怪物の牙が突き刺さった。

そのまま引き千切ろうとする。

引き離そうとすると噛み付く力が強まる。

 

腕が悲鳴を上げ始めた時だった。

 

ズキュンと銃声が聞こえて怪物の右目に一発の銃弾が当たった。

 

不意の一撃に怪物の噛み付きが弱まった。

すかさずキックして引き離す。

 

『今よ!ベルト右に付いているスロットルにメモリを挿しなさい!』

 

またあの声が聴こえた。

声に言われるままメモリを右腰にあるスロットルに入れてスロットルのスイッチを押した。

 

《ヴォルテックス!マキシマムドライブ!》

 

「ウッ!?」

身体中の羽根が急激に回り出した。それと同時に身体中から力がみなぎってくる。

 

「ウッアアアアァァァァ〜!?」

 

身体のそこから悲鳴が上がるみたいな激痛が走った。骨が砕けて肉が千切れて血が蒸発しそうだった。

 

でもその痛みが増すほどに力が溢れ出る。

必死にその痛みに耐えて走り出した。

怪物も溢れ出る力に気付いたらしく狼狽えている。怪物に向かい跳びながらドリルのように切り揉み回転しながらキックをした。

 

 

「グギィァァァァ!!!?」

その一撃は今までとは比べ物にならない威力があった。

怪物の身体を貫きその身体を爆発させた。

 

地面に着地して爆発地点を見ると怪物はチンピラの姿に戻って倒れていた。その傍らには砕けたメモリが落ちていた。

 

「ハァハァ、やった・・・・倒した?」

 

『お見事だったわ』

 

ハッ!?またこの声だ。周りを見渡すと背後から人の気配を感じる。

振り替えるといつの間にかそこには全身を黒い服に包み込んで黒い帽子をかぶった包帯の人物がいた。

 

『始めての変身であれだけ戦える。やはり地球に選ばれただけはあるわね』

その声は間違いなくベルトの事を教えてくれたあの声で間違いなかった。

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