SSR ビギンズ0   作:真田丸

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メモリー 0.5

喫茶店から飛び出したボクはマンションの部屋の前で立ち止まっていた。

その理由はボクたちの部屋からとてつもない怒気が溢れ出ていたからであった。

 

正直怖かったけど意を決して震える手でゆっくりと扉を開けていく。

 

「た、ただいま〜〜・・・・」

そ〜っと部屋の中に入ると扉の前には・・・

 

「おかえりなさい」

 

氷の女王が立っていました。

 

 

 

「でっ言い訳はあるのかしら?」

 

「ええっと・・・・すいませんでした!!」

 

腕を組み絶対零度の視線を向けてくる詩乃に対してボクは速攻で土下座しました。あの眼は不味い!あれは人を凍死させられる眼だ!!

 

「・・・・・ハァ、クレープと服で良いわ」

 

「えっ?」

 

「たがら次の日曜日に駅前のクレープと服を買ってくれれば許してあげるって言っているのよ。良いわね?」

 

「も、もちろん!じゃあ日曜日はデートだね!」

 

「デートじゃないわよ///!バカ言ってないで宿題を終わらせるわよ!」

 

顔を赤くする詩乃を眺めながら残った宿題を終らせていった。

気付けば心の中にあった恐怖が消えていった。

 

 

 

 

 

深夜の居酒屋で一人の男がカウンター席で浴びる様に一升瓶を飲んでいた。

 

「おい、オヤジ~もう一本持ってこい~~・・・」

 

「・・・お客さん、もうこの辺でやめといた方が良いですよ」

 

店の店主が心配するように男に忠告するが男はそんな店主を睨みつけながら身を乗り出し一升瓶を奪う様に取った。

 

「ウッセェェ~~!!どうせ俺がどうなってもどうでもいいことだろどうでもいいことだろぉ~~!?」

 

男ー【堀内 貴也】は元々都内の建設会社に勤めており現場監督を任され妻子も居るなどある程度の生活を送っていた。

ところがつい先日堀内は突如会社を解雇されてしまった。

 

理由を社長に問いただしたところ帰って来たのは到底納得できるものではなかった。

 

当時堀内はとある女性議員の新しい事務所の建設を担当していた。ある日、議員が現場の視察に来た時だった。たまたま休憩に入っていた堀内を見た議員は堀内がさぼっていると勘違いをし社長にクレームを言った。

 

堀内を解雇しなければ自分の権力を使い会社を潰すと。

 

自分には何の落ち度もない。そう抗議した堀内であったが堀内以外にも多くの社員を抱えている社長に選択肢などある訳は無くせめともと100万円の入った封筒を差し出したのだった。

 

長年勤めていた会社を理不尽な理由でクビになり更には妻も新しい男を作り子供を連れて出て行った。自暴自棄になった堀内は一日中店で酒を飲む日々を送っていた。

 

「・・・ナニガ、ISダヨ・・ナニガオンナダヨォ~~!!」

 

今の世の中の理不尽に怒る堀内だがどんなに叫ぼうが何も変わることは無い。結局は力のある者のいいように動くのが世界の常識だからである。

 

「ちょっと宜しいですか?」

「ああ!?」

 

そんな堀内に一人の男が声を掛けて来た。シワ一つない黒のスーツを着こなしたやり手のセールスマン風の男だった。

 

「何だよお前ェ~?」

 

「私こういうものです」

 

男が差し出した名刺を受け取る堀内に男は爽やかな笑みで続ける

 

「実は今のあなたにぴったりの商品がございまして、そう!まさに【運命】の様に・・・」

 

 

数時間後、都内に事務所の構える一人の女性議員の自宅が陥没しその中から議員の死体が発見された。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はむ、ん〜〜〜!」

 

普段のクールな印象から一変とても幸せそうな顔でクレープを食べる幼馴染みにボクの顔も自然と緩む。

 

日4曜日の今日、ボクと詩乃は二人でショッピングモールに来ていた。

連日、詩乃に心配をかけたことへのお詫びとして約束のクレープと服を買ってあげるためだ。

 

「あ、次はこれも良いわね」

 

その両手に食べかけのクレープを持っているにも関わらず詩乃は次にどのクレープを食べようかと看板に貼られたメニューを見つめている。

 

流石に財布が軽くなってきたためそろそろ勘弁して貰いたいんだけどなぁ〜

「まあこのあとに服も買って貰うんだし、クレープはここまでにしておくわ」

良かった、詩乃がちゃんと人の事を考えてくれる人で本当に良かった。

 

 

 

 

詩乃と一緒に2階に上がるとそこには多くの女性服の売り場があった。

 

多くある店の中から詩乃は迷うことなく1つの店に向かった。

どうやらはじめから目星はつけていたらしい。

 

「蒼矢、どうかしら?」

 

試着室から出てきた詩乃はとっても可愛かった。それは間違いないのだけど・・・・

 

「まだ・・・選ぶの・・・・?」

 

かれこれ1時間、詩乃の試着に付き合っている。

本当に女の人の買い物、特に衣類関係は長いなぁ・・・・

 

別の服を選び出した詩乃に気付かれないように静かにため息を吐いた。

 

「ちょっとソコの男!」

 

不意に後ろから聞こえた声に振り返ると。見るからに高そうな服に身を包んだ女の人が睨み付けてきていた。

 

「これ、払ってきなさいよ」

 

女の人の横には服が山積みになったカートが2つあった。

 

「えっと・・・ボクに言いましたか?」

 

「他に誰がいるのよ!待っててあげるから早く買ってきなさい!!」

 

面倒なことになったなぁ〜

この人は今の世の中では決して珍しい訳じゃない女尊男比の人だ。

8年前、女性にしか使えないパワードスーツ【インフィニット・ストラトス】通称ISが出来てから世界中で女性の社会的地位が上がり男性を奴隷の様に扱う女性がいる。

もちろん、すべての女性がそんな考えの訳じゃない。少なくても詩乃はそんな考えを持っていない。

けど、目の前のこの人はその思考に染まり切っているらしい。

 

「いつまで待たせるのよ!!早く持っていきなさい!!」

黙りこんだボクの態度が気に食わなかったのか女の人はカートの服を無理矢理持たせてきた。

 

その時、ボクの手と女の人の腕が触れた。

 

「ッ冷たっ!?」

 

女の人の小さな悲鳴が聞こえた。同時にボクの頭に昔の記憶がフラッシュバックのように浮かび上がって来た。

 

『や~い!死体ヤロォ~~!!』『氷男ぉ~!』『ゾンビく~ん!!』

「はぁ・・・はぁ!・・・・・はぁっ!!」

 

身体が震えてくる・・・呼吸が荒くなる・・目まいが・・吐き気がする・・・・!

 

違う・・・ボクは・・死体じゃない・・生きてる!ゾンビじゃない・・人間だ!・・ボクは・・ボクは・・・・ボクは!・・・・ボクハッ!!

 

「ちょっと、何してんのよ?」

 

震える手を温かいぬくもりが包んでくれた。過去の暴言が響く耳に優しい声が聞こえた。

 

「私の連れになにか用かしら?」

 

「ッ何よアンタの犬ならしっかり縄でも着けていなさいよ!」

 

女の人の声が遠ざかっていくと身体が包み込まれていった。

「ほら、もう大丈夫よ。私が側にいるわ」

 

詩乃が抱き締めてくれた。それだけで身体の震えも息苦しさも聞こえていた暴言もいつの間にか消えていた。

 

「う・・うう・・・!」

 

「蒼矢は私が護るわ。ずっと一緒よ」

 

 

 

 

 

 

「/////恥ずかしかった/////」

 

詩乃に抱き締められて数分後、落ち着きを取り戻して周りを見てみると周囲の人たちが暖かい視線を向けていた。

その事を詩乃に耳打ちすると途端に真っ赤になった顔でボクの腕を掴み音のようなスピードでその場を走り去った。

 

別の階に着くと近くのベンチに座り込んで顔を伏せたまま「恥ずかしい・・・恥ずかしい・・・」って呟き続けている。

「あ〜・・・ゴメンね。それと・・・・ありがとう」

 

自動販売機で買ったココアを差し出しながらお礼を言う。

もしあの時詩乃が来てくれなかったら何をしていたかボクにも分からなかった。

 

「もう慣れているから良いわよ別に・・・///」

 

まだ赤い顔のままココアを受け取った詩乃はそのまま口をつけた。

 

「このあとどうしょうか?ちょっと早いけど先にお昼でも食べる?」

 

スマホで時間を見ると11時半を指していた。

 

「そうね、混む前に入りましょうか」

 

レストランは最上階にあるため立ち上がった詩乃とエスカレーターに向かった。

 

エスカレーターに乗ったら丁度下の階から一人の男の人が昇ってきた。

 

「まだだ・・・・次はここの奴らだ・・・・埋めてやる・・うめてやる・・・・・うめてやるぞ・・」

 

「?」

 

「何してるのよ?速く行くわよ!」

 

買い物に来たとは思えない汚れた作業着姿でブツブツと呟き続けている男の人はそのままフラフラした足取りで婦人服売り場に歩いていった。

 

その言動や動きに若干の疑問は持ったけど上から詩乃の呼ぶ声が聞こえたためそのままエスカレーターを昇っていくことにした。

 

 

 

 

 

堀内が訪れたのはこの辺りでは一番の規模を持つ婦人服売り場だった。

当然のように客はほとんどが女性であとは付き添いの男性が僅かにいるだけだった。

そのため、男一人でやって来た堀内はとても目立つ存在だった。

 

「・・・・・・・」

 

周囲を見渡す堀内の視界には付き添いの男性を奴隷の様にこき使う女尊男比のクズとそれに従うだけの負け犬。

それとは対称的に笑顔で服の感想を尋ね同じく笑顔で称賛するカップル。

 

どれもこれも堀内にとっては憎悪の対象だった。

憎い憎い憎いにくいにくいニクイニクイニクイニクイ!

《モール!》

 

眼に写るすべてに憎しみを込め堀内はモグラの記憶を宿した【モールドーパント】へと姿を変えた。

 

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