SSR ビギンズ0   作:真田丸

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メモリー 0.6

下の階が騒がしいと感じたのはレストランに入ってメニューを見ていたときだった。

 

「何かあったのかしら?」

詩乃も下から聞こえる声に首を傾げた。

その時、建物が大きく傾きだした。

 

「詩乃!?」

「キャアアァァ!?」

 

バランスを崩して転びかけた詩乃の腕を引いて抱き寄せて座り込む。

 

周りの人たちも同じ様にその場に座り込んでいた。

 

「何なのよ一体?」

 

「地震・・・・じゃないよね?」

 

窓の外を見た感じだとこの建物以外は特に異変は無いみたいだ。

 

「お客さま!!急いで避難してください!!」

レストランの店長が大声で叫んでいる。次の瞬間には客や店員がこぞってレストラン横にある非常階段に駆け込んでいく。

 

「詩乃、ボクたちも行こ!」

「え、ええ分かったわ!」

詩乃の手を引いて非常階段に向かったけど出遅れたためボクたちは最後尾を進むことになった。

他の階の人も避難を始めたみたいで階段は人で溢れかえっていた。

 

「落ち着いて避難してください!!」「慌てないで!足下に気を付けて!!」

 

警備員の人たちが叫ぶけど周りは我先にと降りていこうとする人たちで混乱している。みんながみんな人より早く非難しようと押し合っていた。

 

 

三階まで降りたとき、また建物が揺れだした。さっきよりも大きな揺れで建物全体が悲鳴を上げているみたいだった。

-ピキッ-

「ん?」

 

人の悲鳴の中で小さな別の音が聞こえて来た。何だろう?と思って音の出所、上を見てみるとちょうど詩乃の真上に大きな切れ目が入っていた。切れ目は少しずつ大きく広がっていき次の瞬間に大量の瓦礫が詩乃目掛けて降り注いでいく。

 

「詩乃ぉ!?」

「えっ?キャアァッ!?」

 

瓦礫が詩乃を押しつぶす寸前、詩乃の腕を掴んで引っ張って庇うように抱きしめる。

 

先程まで詩乃が居た位置は降り注いだ大量の瓦礫によって完全に封鎖された。これじゃもうこのルートは使えないな。

 

「あ、ありがt!蒼也、背中が!」

 

「えっ?」

 

言われてみると何か背中がヌメッとしていた。手を当ててみるとその手にはべったりと血が付いている。どうやらさっき瓦礫の破片が背中に刺さったみたいだ。

 

「大丈夫だよこれ位、すぐに治るって」

 

「ッ!・・・ごめんなさい、私を庇ったせいで・・・」

 

「良いんだって、詩乃に怪我が無ければそれで」

 

さて、早く移動しないとな。もうこの非常階段は使えないとなると後は・・・・

 

「・・・確か反対側にも非常用の避難ルートがあったハズだからそっちに行こう」

 

「・・・ええ分かったわ」

 

何時まで建物がもっていてくれるか分からない。ボクたちはすぐに建物の反対側に走り出した。

 

 

 

 

「ウェェ〜ン!おかあさ〜ん!どこ〜〜!!?」

 

反対側の非常階段に向かうため建物内を走っていると女の子の悲鳴が聴こえてきた。

 

「今のは?」

「コッチからよ!」

 

2人で声の聞こえた先、おもちゃ売り場に向かうと小さい家庭用のジャングルジムの前で女の子が泣いていた。

 

「もう大丈夫よ。お母さんは?」

 

詩乃の問いかけに女の子はただ首を横に降るだけだ。たぶん避難の途中ではぐれたんだと思う。とにかくここもいつまでもつのかわからない状況だし早く移動しないと。

 

「さぁ、お兄ちゃんたちとお母さんの所まで一緒に・・・・」

女の子を背負おうと手を伸ばした手が途中で止まった。頭に浮かぶのは今まで僕に触れてきて驚いたら怯えたような顔をする人たちだった。それを思い出すとどうしてもこの子に触れる事が出来ない・・・・

 

「大丈夫よ蒼也、私が背負うわ」

 

「・・・・ごめん」

 

「良いのよ。さっき助けてもらったお礼よ」

 

そう言って女の子を背負う詩乃にどうしても申し訳ない気持ちになってしまう。

 

「さ、すぐにお母さんの所に連れていって上げるわね」

「うん!お姉ちゃんありがとう!」

 

 

女の子を背負った詩乃が立ち上がってオモチャ売り場から出ようとした時だった。売り場と売り場を仕切る壁にヒビが入り出した。

 

「まぁだ獲物がいたかぁ―!!」

 

壁からナニかが飛び出してきた。

それを理解する前にボクの頬から飛び出た赤が視界を閉ざした。

 

 

 

 

 

 

 

ザシュ  ザシュ  ザシュ

 

何か音が聞こえる・・・・

 

目を空けるとそこはの地下駐車場だった。隣を見てみると詩乃と女の子、他にも数人の人が倒れていた。そして目の前には大きな穴が開いている。

 

「ん?何だよ1人目を覚ましたのか」

 

穴の中から汚れた作業着を着た男の人がスコップを背負って出て来た。目の周りには大きなクマが出来ていてやせ細ったその顔は正直に言ってまともな生活が出来ているとは思えなかった。

 

「おかしいな、お前には一番きついのをお見舞いしてやったはずなんだけどな何でそんなピンピンしてるんだ?」

 

僕の顔を覗き込むように見てくるその人の眼は正気の物じゃなかった。瞳の奥から感じたのはこの世に対しての不満や怒りと言ったものだった。

 

 

「アナタは一体・・・・ボクたちを・・どうするつもりなんですか・・・?」

 

「決まっているだろ?埋めるんだよ!威張り散らした女共も、それに媚びる事しか出来ない腰抜けの男共もみんな!神が授けたこの力でなぁ!!」《モール!》

 

「ッ!それは・・・」

 

男の人が取り出したものそれは間違いなくガイアメモリだった。

スコップを持つ右腕に挿されたメモリが体内に消えていくと男の人の身体が穴からあふれ出てきた土が覆った。

 

「グウウウオオオォォォッ!!」

 

体を覆う土が剥がれ落ちるとそこにはもう作業着に身を包んだ男の人の姿は無かった。

黒い体色の見るからに強固な身体に両手には鋭い大きな爪、顔から飛び出ている鼻に当たる部分は鋭角に尖っていてドリルみたいに回転している。

 

ガイアメモリの音声からもその見た目からも間違いない、モグラの記憶を持つドーパント【モールドーパント】だ!

 

「・・・ドーパント」

 

ボクは無意識に上着のポケットに入れてあったヴォルテックスメモリを握り締めた。

 

「せっかくだ面白いモノを見せてやるよ」

 

モールはボクから離れると隣で気絶している女の人の身体をその巨大な爪で持ち上げ穴に向かい歩き出した。

 

「ちょっ!何するつもりですか!?」

 

穴はどう見ても数十メートルの深さがある。もし落ちたらまず助からない深さだ。

「決まっているだろ、埋めるんだよ。そのために掘った穴だからな」

「なっ!?止めろ!!」

 

「邪魔すんな!!」

 

モールを止めようするが生身で敵うわけがなく糸も簡単に投げ飛ばされた。

 

やっぱり生身じゃ無理だ。変身しないと!

 

背中のバックからドライバーを取り出して腰につける。

続けてメモリを起動させようとした時目の前にあの光景が・・・・身体中にあの感覚が・・・甦ってきた。

 

骨を砕く感触が・・・肉を抉るスリルが・・・・相手を・・叩きのめす快楽が・・・!

 

「・・ハハッ!」

気付いたら自然と笑い声が漏れて来た。今、目の前で人が殺されそうになっているのにボクはっ!・・・・戦えることに・・・メモリを使えることに喜びを感じてしまっているのか?

「―――ッ!?」

 

ダメだダメだ!!もうメモリは使えない!次に使ったらもう戻れなくなるかもしれない!二度と詩乃と一緒に居れないところまで堕ちてしまうかもしれない・・・

 

頭の中の光景をかき消すように千切れんばかりに頭を振る。

そうしているとグシャリといやな音がした駐車場に響き渡る。

 

グシャリグシャリと何度も聞こえてくるその音の正体はすぐに分かった。

人が・・・・叩き付けられて潰れていく音だ・・・

 

ボクがメモリを使うことを躊躇している間モールは何人もあの巨大な穴に放り込んでいた。

 

その度に聴こえるグシャリという音をモールはまるで一流のオーケストラの演奏を聴くかのように浸っていた。

そして暫くしたらまた他の人を穴に投げていくその動作には一切の躊躇も無かった。まるでごく当たり前のことを行っているかのように・・・

 

 

「さ〜って次は・・・・コイツにするかな」

 

モールが次に穴に落とすと決めたのは詩乃だった。

 

「――ッ!?や・・・ヤメロォォォ!!」

 

持ち上げられた詩乃の姿を見た瞬間再びモールに向かっていく。

詩乃を掴む腕にしがみついて必死に止めようとするボクにモールが苛立ちを覚えたように舌打ちをした。

 

「チッいい加減にしつこいんだよ!!」

 

モールの爪がボクの身体を貫いた。力がフッと抜けていきまぶたが重くなっていく鉄に似た不快なにおいが

鼻に纏わりついていく・・・

 

「馬鹿な奴だな、大人しくしていれば少しは長生きでいたってのにな。まぁ良いこの女と仲良く埋まってな」

まだ目は閉ざされているけど身体が宙に投げ出された事は分かった。数秒後には重力が重くのしかかるように落下していく。

ようやく軽くなったまぶたを空けると目の前には気を失ったまま一緒に落ちていく詩乃の姿があった。

 

「・・し・・・の・・」

 

必死に手を伸ばして詩乃を抱き寄せる。

 

もう迷ってなんて居られない。

迷っているうちに詩乃が笑顔を失うくらいなら・・・詩乃が幸せになれないくらいなら・・・ボクが堕ちた方が何千倍もマシだ!

 

《ヴォルテックス!》「変身!!」

 

 

ヴォルテックスメモリをベルトに挿して倒す。

つむじ風が巻き起こすエネルギーが身体に纏われていくのを感じる。

 

 

 

 

 

 

蒼也と詩乃を落としたモールは次に落とすものを選ぼうと踵を返したが穴から聞こえたボルテックスと言う音声に振り返った。

 

「な、何だコレは!?」

 

モールが見たモノそれは自らが掘った穴全体を覆うほどの巨大な竜巻だった。

 

引き込まれそうな身体を必死に踏み止まらせていると竜巻が徐々に治まっていきその中に浮かぶ人影が見えた。

 

「何なんだお前は!?」

 

「・・・・・・・・」

 

狼狽えているモールの目の前に降りたモノはその腕に抱く少女をそっと寝かせる。

 

「無視してんじゃねぇ!!」

返答が帰ってこないのを無視されたと感じたモールが怒りに任せ爪から斬激を放つがそのモノは腕を振り払い斬激を弾いた。

 

「・・・・・アナタに何があってこんな事をしたのかは知らない。でも、どんな理由があろうと詩乃の未来を奪おうとすることは絶対に許さない!!」

 

「お前は・・・一体!?」

 

「ボクは、仮面ライダー・・・ヴォルテックス」

 

 

大切な人を守る為、仮面ライダーヴォルテックスは立ち上がった。

 

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