「ヒャッハハハ!!空だ、俺の空だぁ!!帰ってきたぞ〜!!」
高度2千メートルの上空を巨大な怪鳥【バードドーパント】が飛んでいた。
マッハを超えるそのスピードは横切っただけで旅客機に制御不能の衝撃を与えていき。
わずか2時間の間に3機の旅客機がその衝撃で不時着しており多くの負傷者が出ていた。
だが、そんな事は知ったことかバードドーパントこと【飯沼 マナブ】は飛び続ける。
元々空軍のエースパイロットであった飯沼だったが、ISが配備されたことで用済みとばかりに退役させられた。
もう一度空を飛びたい・・・
そう願い続けた飯沼はつい先日、見ず知らずのセールスマンから受け取ったのがバードのメモリだった。
またあの空を飛べる!!
初めはそれだけで満足だった。
だが、次第にこの空に自分以外のモノが飛んでいることが許せなくなった。
「この空は俺のモノだ!誰にも渡さねぇ!!次はアレだ!俺から空を奪ったISをぶっ壊してやる!!」
民間のヘリコプターやセツナ機更には旅客機やドクターヘリまでも襲ったバードドーパント・飯沼が次の獲物として選んだのはかつて自身が配属されていた空軍基地にあるISだった。
「やってやる・・・・・やってやるぞ!この空は、俺のモノだぁ!!」
何者も追い付くことの出来ない最強の翼を手に入れた飯沼にはもはや怖いものはなかった。
たとえ従来の兵器を凌駕するISだろうと今の自分にこの空で敵うものは居ない。そう確信していた。
次の瞬間までは・・・
「んん?何だアレは・・・」
前方からなにかが飛んできた。
そう認識した時には目の前に2本の光の矢があった。
「――ッグガアァァ!?」
回避するという考えが頭に浮かぶよりも早く矢はバードの右目と左の翼の付け根に刺さった。
「ナ〜イス、ヒット!ルーキーボーイ」
「いえ、刺さりが浅かったみたいです。来ます!!」
高度200メートルの上空で等身大の戦闘機の上に立ち迫って来るバードに向かい構える。
2本の矢を受けながらも向かってくるバードにはまだ余裕がありそうだ。
音速の速さで迫るバードに左手にもった蒼い弓【ボルアロー】の弦を引く。
弦の引きに合わせ弓の中心部にあるファンが回転し周囲の大気からエネルギーを集める。
弦を離すと集まったエネルギーが一気に放出され10本の矢となりバードに向かい飛んでいく。
しかし先程の不意打ちとは違ってバードは持ち前の飛行能力で全ての矢をかわしていった。
「クッ!やっぱり速い」
続けて何度も矢を放つがやはりバードに正面から当てるのは至難の技だ。みるみる内に距離が迫りすれ違いざまにバードの翼による一撃が胸に叩き付けられた。
「ウワアァァァ!?」
胸から走った衝撃は身体を後方へと押し出して戦闘機から突き落とされた。支えの足場を失ったボクの身体はそのまま2000メートル先にある地面へと真っ逆さまに落下していく。メモリの力で強化された身体でもこの高度からの落下の衝撃は洒落にならないだろう。
「ボーイ!!」
自分を呼ぶ声に視線を足の先、上空に向けるとさっきまで足場にしていた戦闘機が一直線に向かってくる。
追い付いた戦闘機に合わせるように身体を捻って体制を整え着地する。
「すみません。助かりました!」
手短にお礼を言う。まだ戦いは終っていない。上を見ればバードがこちらに向かって降下してくる。
「来るぞ!どうすル?」
「・・・あの機動力では生半可な攻撃では避けられます。ですから、特大の1発を喰らわせます!」《ヴォルテックス!マキシマムドライブ!》
ドライバーから抜いたヴォルテックスメモリをヴォルアローのスロットに挿す。
「ヒュ〜OK!それならボーイはそのビックアタックに集中シナ!」
戦闘機は次々と撃ち込まれてくるバードの羽や火球の攻撃を避けていく。
その複雑な動きに身を揺らされながらボクはヴォルアローの弦を限界まで引き続ける。
空気中の酸素や水素さらにはバードの火球を少しずつ弓へと吸収していく弓全体が白く青く赤く光輝く。
「ふぅ〜・・・・行きます!!」
ボクの叫びに合わせ戦闘機はバードへと向かう。バードも迎え撃つつもりかこちらに一直線に飛んできた。
1キロあった距離は少しずつ短くなっていく。
900・・・800・・・700・・・・
「ヴォル・ジャベリン!!」
弦を放すと弓からは炎の矢が放たれた。
タイミングはバッチリだ。先ほどとは比べ物にならない速度で翔ぶ矢はバードに回避行動を取る間も与えずその身体を貫いた。
空中で起こった爆発の中から一人の男の人が落下していく。
事前に爆発の下に回り込んでいたボクが男の人をキャッチすると戦闘機はそのまま近くのビルの屋上に向かった。
屋上に降りたボクは男の人を屋上に置いてあったベンチに寝かせドライバーを外した。
メモリによる肉体変化が解かれた身体に冷たい夜風が吹く。
「すみませんでした。せっかくの休暇で日本に来ていたのに」
後ろを向くと一緒に戦った戦闘機が低空でホバリングしていた。
「ノープログレム。ルーキーを助けるも大切な仕事サ」
戦闘機は少しずつその形を変えていき人形になった。
「それに、ナイトフライも中々エキサイティングだったシナ」
腰に巻いたドライバーからメモリを外し人の姿に変わる。
金髪のオールバックにサングラスをかけた外国人の男の人
【仮面ライダーターボ】マイル・ジャレッドさんは笑いながらサムズアップをする。
「サァ後のことはミーに任せてホームに帰りナ」
「えっ?そんな悪いですよ!後の処理ぐらいボクがやっておきますよ」
本来、今回の戦闘はボク一人で行うはずだったのをたまたま近くにいたからと手伝ってもらった事だしこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
でも、マイルさんは笑いながら
「ボーイが遅くまで出歩いてるものじゃないだロ?それに、カワイイガールフレンドは待たせるものじゃないゾ」
マイルが見せてくれた腕時計は既に夜の9時を回っていた。バードの動きが速くて思っていた以上に時間が掛かっていたみたいだ。
携帯にも詩乃からの着信が10件近くあった。
これは・・・・確かに不味いかも・・
「すみませんマイルさん!このお礼はいつか必ずしますから!!」
マイルにお礼を言いビルの非常階段を降りていく。
「グッバ〜イ、ルーキーボーイ」
ボクがギルドに所属し正式に仮面ライダーになってから3ヶ月が経った。段々とドーパントとの戦い、ヴォルテックスの力の使い方にも慣れてきていた。
『昨夜、都内上空に謎の怪物を目撃したとの情報が多数寄せられております。目撃者の証言では怪物は2体でまるで戦っていたようだとのことです』
テレビのキャスターのバックに夜空を舞う二つの影が映された映像が流れる。
スマホで撮影されただろうその映像は若干の荒れはあるが間違いなくそこに映っているのはマイルさんとバードドーパントだった。
まさか撮影されていたなんて・・・・
背中に流れる冷や汗を感じながらお椀の味噌汁を飲む。
「怪物ねぇ・・・・」
テーブルを挟んで向かい側では詩乃が興味深そうにテレビに視線を向けていた。
「し、詩乃は本当にいると思う?そんな怪物なんて・・・」
「どうかしらね。あんな映像だけじゃなんとも言えないけど・・・ねぇ、3ヶ月前のショッピングモールの時、本当に事故だったのかしら?」
汗が背中だけじゃなく身体全体から溢れでるのがわかった。
世間ではあれは老朽化による事故として片付けられたけど詩乃はその事に未だに納得していないらしい。
一瞬とはいえドーパントを目撃したためだ。
「ここ最近、怪物を見たって話をよく聞くし・・・やっぱりアレも怪物の仕業だったんじゃないかしら?」
「考えすぎだよ。そもそもホントに怪物が居たならボクたちだって無事じゃすまなかっただろうし」
「そう・・・よね・・」
「ほら、もう時間だし早く学校に行かないと」
多少強引だったかもしれないけど詩乃にはドーパントの事は知らないままでいてほしい。詩乃には平穏な世界で静かに笑っていてもらいたいから。