それはさておき、どうぞ
暫くして目を覚ました私は、見慣れない部屋に一人で居た。訳が分からずに混乱していたが、行動あるのみという考えに至り、取り敢えず外へ出てみる事にした。
廊下らしき通路を歩いている時、ふと外を見てみる。すると、外は吹雪いているようで何も見えない。それだけでも別世界なのはよく分かる。一体何が起きたのか分からず、暫くうろうろする事に。
「……此処、何処なんだろ?」
思わずそう呟く。あの空間元い、さっきの部屋元い、自分の身に何が起きたのか謎が深まるばかりである。
誰か居ればすぐに質問出来るかもしれないが、見ず知らずの人に話しかけるのは中々に勇気が要る。実行出来るかどうか分からないが、すれ違ったらやってみようと思い、又歩き出した。
その頃、所長の怒りを買って自室待機となった藤丸立夏は、ロマニの愛称で親しまれている「ロマニ・アーキマン」と色々話していた。
ロマニはサボり癖があるようで、事あるごとにこの部屋に来ては仕事をサボっていたようだ。それでも何処と無く憎めないキャラがあるおかげなのか、咎める人物は多くない。
そんな時、部屋の照明が落ちる。何事かと思った矢先、警報が鳴り響く。何かあったようだ。
「君はそこに居て欲しい。僕はやるべき事がある!」
そう言い、部屋を飛び出すロマニ。だが、立夏は大人しくしている訳が無く。ロマニの後を追うように外へ飛び出した。
その時、見慣れない少女とすれ違う。少女はこちらに気づいたらしく、駆け寄って来た。少なくとも、自分が見た限りではこの少女を見かけた事は無い。
かと言って今は問いただす時間が無い為、自分の後を追うように言ってみれば、すぐに承諾してくれた。感謝の言葉を述べ、ロマニの後を追う。
「そう言えば……貴女は何処から来たの?」
ふと、何気ない疑問をぶつけてみる。時間が無い事はよく分かっているが、それだけは聞く余裕があった。
少女は悩む表情を見せた後、答えを出した。それを聞いた時、その答えには現実味が無いように感じられた。
「実は、違う世界から来たみたいで……」
「違う世界?」
「はい。私が覚えているのはそれ位しか……」
カルデアに来る前、好き好んで読んでいたライトノベルにそういうのがあった気がする。
異世界にやって来てしまった主人公が、その世界で過ごしながら元の世界に帰る方法を探すというもの。もしも、目の前に居る少女の言うことが本当であれば、文字通り異世界にやって来てしまったという事なのだろう。
「そうなんだ。じゃあ、名前は? 私は藤丸立夏。立夏って呼んでね」
「私はノエル=ヴァーミリオンと言います。ノエルでいいですよ、立夏さん」
「さん付けは固いかな…? ちゃん付けでいいよ。同じ女性だし、ね?」
「そうですか? では、立夏ちゃん…?」
「うんうん、それでいいよ」
なんて、呑気に自己紹介している場合では無い。急いで向かった先にあったのは、固く閉ざされた扉。男性でも苦労するだろうその扉を開けるには、女性の力では不可能だろう。
どうしようか迷っている最中、ノエルが数歩下がった。何をする気なのか眺めていると、何処から取り出したのか二丁の銃を手に持つ。それは、とてもじゃないが女性が持つべき物じゃない。
「ノエルちゃん、何を…?」
「緊急事態なのでこれくらいは許されますよね、多分…。立夏ちゃん、危ないので少し下がってください」
「う、うん」
言われた通りに下がると、マズルフラッシュが輝く。その瞬間、目にも留まらぬ速さで弾丸が撃ち出された。余りにも速く、肉眼では追いつけない。
少しして、大きな音と共に扉は人二人くらいならギリギリ通れる大きさの穴を開けた。それと同時に熱風が全身を襲う。何があったのか気になるが、今はやるべき事をしなければ。
「─────先行きます!」
「えっ、ちょっ……!?」
何故か先陣をきられたが、ノエルの後を追う形で私も内部へ向かう。眼前に広がるのは、地獄絵図と称した方がいい程、炎によって真っ赤に染め上げられた管制室だった。
顔面だけでなく全身も熱風に晒される中、ノエルは何の躊躇いもなく先に進んでいた。私も後を追うと、唐突に通信が入る。相手は、Dr.だった。
『立夏ちゃん、何故来たんだ!?』
「いてもたってもいられなくなって…! すみません、Dr.! 生存者を確認次第、すぐに離脱します!」
『……無茶だけはして欲しくなかったんだけどね。分かった。生存者が居たらその人と共に逃げるように!』
「……了解です!」
通信は切られ、機械的なアナウンスが流れ続ける管制室をひたすら走る。爆発でもあったのか、瓦礫が積み上がった部屋。瓦礫を器用に渡り、先に進んでいったノエルと合流すべく、急ぐ。
暫くして、カルデアの中心部に到達する。中央に鎮座する地球儀のような物は真っ赤に染まっており、何処と無く禍々しい。
その近くに、一際大きい瓦礫に挟まった少女と瓦礫をひたすら攻撃するノエルの姿があった。駆け寄ってみると、少女の顔に見覚えがある事に気づく。眼鏡を掛けた少女は私を先輩と呼び、親しくしてくれた少女〈マシュ・キリエライト〉だった。
「……マシュ?」
「先、輩……? 来てくれたんですね……」
駆け寄ろうとした時、見えてしまった。瓦礫の間からマシュの血と思われる赤い液体がとめどなく溢れていた事に。その瞬間、マシュはもう助からない事を悟る。だが、此処で見捨てる訳には行かない。
せめて側に居てやろうと考えた私は、疲れてその場に座り込んだノエルと共にマシュの側へ。差し出された手を優しく握り、寂しくない事を教える。
「私は、幸せ者ですね…。こうして、先輩の温もりを感じていられる…」
「……生きられない、の?」
「私の体の事は私がよく知っています。ノエルさん、すみません。その手に持つ銃で、私を救おうとしてくれたんですよね……?」
「……うん。私も誰かに助けられたから、今こうして生きてる。罪滅ぼしや恩返しって訳じゃないけど、この手で誰かが救えたらって思ったの。だけど、私じゃ力不足だった……。ごめんね」
「そんな事ありませんよ。ノエルさんが謝る必要は無いです。その気持ちだけでも嬉しいですよ。見ず知らずの人である私に対して全力を尽くしてくれた事、私はずっと覚えていますから」
マシュの命は最早風前の灯である。誰かを救えなかったという想いは、ノエルの心にいつまでも染みとして残るだろう。
爆発は止む事を知らず、どんどん酷くなっていく。Dr.には生存者を見つけ次第撤退すると伝えていたが、もう間に合わない。唯一の退路を瓦礫に塞がれてしまったからだ。
こんな事に巻き込んでしまったノエルに謝罪をし、寂しくないように最後の最後まで三人で話していた。その後、どうなったのかは分からない。だが、最後にこんなアナウンスを聞いた気がした─────
《マスター、再登録。No.48、藤丸立夏。No.不明の人物。二人を特異点Fにレイシフト。システムオールグリーン。レイシフトを実行します》
今、この時を以て二人は何処かへ飛ばされた。そして、コレは果てしない旅の始まりでもあった。果たして二人は何を思い、そして何を見ていくのか。
今、誰も経験した事の無い聖杯戦争が幕を開ける。
その戦争は、大規模且つ数々の陰謀が交わるもの。
そして、聖杯絡みという事もあり、立ち塞がるのはサーヴァントと呼ばれる者達。
彼等を相手に、立夏とノエルの二人は人類史を守れるのか。それはまだ、先のお話。
もう少し長くてもいいかな…?
(*´∇`)ノ ではでは~