ではどうぞ
──────目が覚める。身体の感覚がある事を確認した後、周りを見渡す。やはり、私が知らない街だった。辺りは瓦礫が積み上がり、炎は消える事無く燃え盛っている。
あの時、何が起きたのか。断片的に覚えている記憶を手繰り寄せ、状況を把握しにかかる。
必死に思い出そうとした結果、分かった事が一つ。あの時、No.不明の〜等と変なアナウンスを聞いた後に何処かへ飛ばされる感覚があった。そして、気がつけばこの場に居る。そこから導き出した答えは……
「……又、異世界?」
最早それしか考えられない。変な空間に居たと思ったら見慣れない部屋に居るし、今は見知らぬ街に一人で立っている。
自分の運命が何処で狂ったのか気になる所ではあるが、それを考える暇も無い事は分かっていた。取り敢えず立夏を探すべく、歩く事に。
「……何処だろ」
それだけしか呟けない。身体が消滅していく感覚があったのは覚えているが、その前に何が起きたのかは分からないのが現状である。
闇雲に歩くしか無いが、これしか方法が無い為仕方ない所ではあるが。
─ ノエルsideout ─
─ 立夏side ─
目が覚める。周りを見渡すと、今まで見た事が無い景色が広がっていた。側に居た筈のノエルとマシュは姿が無く、私だけがこの場に居る。
「……何が起きたの?」
異世界と称するに相応しい景色ではある。おそらくノエルは二回目になるだろう。又もや変な事に巻き込んでしまった事に謝罪したい気分ではあったが、当の本人はこの場に居ない為無理である。
探した方がいいと考えた私は、未開の地を歩き始める。だが、私は何か重要な事を忘れていた。それはとても重要な事。なのに忘れている事に気づかず、私はノエルを探していた。すぐに会えるとは思っていないが、行動しなければ一生会えないのは分かりきっていた。
「……何処に居るんだろ」
成り行きとはいえ、マシュを助けようとしてくれた恩人には変わりない。魔術師でも無いのは確かな為、一般人でも平凡な魔術師である私が守らなきゃ話にならないと思う。
暫く歩くと、一度見たら忘れない金髪の少女を見かけた。間違いなくノエル本人だろう。慌てて合流しようとした時、空が一瞬だけ輝いた気がした。
「────────立夏!」
私に気付いたノエルが急いで走り寄って来る。でも、空から降ってきた大量の矢により、行く手は阻まれた。おそらく、超遠距離からの攻撃。こんな芸当が出来るのはと考える暇は無く、私はただただ身を晒す。
───だが、その矢は届かない。固い物に弾かれるように。
恐る恐る目を開けると、大盾を持った見慣れない少女が私の前に立っている。桃色の髪色に何故か見覚えがあった私は、その人物の名前を呟く。
「……マシュ?」
そう。私の記憶が確かであれば、桃色の髪を持つ人物は一人しか居ない。私を先輩と呼び、親しくしてくれた自慢の後輩。マシュ・キリエライト本人だと。
マシュと呼ばれた人物は私の方をちらりと見た後、いつも見せていた笑顔を向ける。それにより、今の私を守ってくれているのは本物のマシュだと確信が持てた。
だが、そこで一つの疑問が生じる。あの時、マシュは瓦礫の下敷きとなっており、今にも命が消えそうな状態だった。それなのに、鎧を纏い、大盾を構えて前に出ている。マシュに対しての謎が増えた瞬間である。
暫くして、敵が放ったと思われる攻撃は止む。その後すぐにノエルも合流し、三人が揃った。
私とノエルはマシュに疑問をぶつけたかったが、何時また攻撃が来てもおかしくない状況である。近場に避難するのが先と判断し、マシュの案内の元、先を急ぐ。
「変わっちゃったね……。マシュ」
「色々ありまして…。必ず話しますので、少しの間辛抱してくださいね、先輩」
「分かってる。兎に角今は───」
と、何か言いかけた所で質量を持った影と接触する。何となく、嫌な予感が駆け巡った。目の前の奴とは戦ってはならないと、頭の中に危険信号が走る。だけど、身体が動かない。恐怖で支配されてしまっているからだろうか。
「……立夏ちゃん?」
「先輩?」
ノエルとマシュ、二人が心配してくれているが、それでも身体は動かない。このままじゃやられる。対策を練らないと、と考えても固まったように動かない。
そんな事をしている間に、ノエルが前に出る。あの時、ノエルの戦闘力を垣間見たから分かる。彼女ならこの状況を覆す事が出来るだろうと。
「マシュ、立香ちゃんを御願い」
「わ、分かりましたっ」
あらゆるものがゆっくりと見える中、ノエルは二丁の拳銃を構える。さっきまで可憐な少女だったのに、銃を持った瞬間に軍人のそれに様変わりする。
おそらく、彼女は元の世界では訓練を受けた軍人だったのだろう。私と歳は変わらない筈なのに。
そもそも私の故郷を含めた国自体、戦争とは無縁の世界だった。ノエルがどんな戦場を見てきたのかは分からない。だけど、数多の死線をくぐり抜けねばあの表情にはならない筈である。
先に仕掛けたのは影。その手に持つ大鎌に似た武器を振り回し、ノエルに致命傷を負わせようとしている。対してノエルはそれを紙一重で躱していき、銃撃を浴びせていく。空薬莢が宙を舞い、常人には到底不可能な速度で弾丸が撃ち出されているのが分かる。
「フェンリルッ!」
ノエルがそう叫ぶと、二丁拳銃は姿を変える。その風貌は機関銃と呼ぶに相応しい。それを両手で軽々と持ち、さっきとは比べ物にならない速度で空薬莢が宙を舞う。それに比例しているのか、撃ち出される弾丸は夥しい量になっていた。
まさに弾幕である。さっきまで攻勢に出ていた影は一転して防御に徹するようになった。遠距離攻撃に特化していると言えばそうなる。
投げ捨てるようにフェンリルを手放し、再び二丁拳銃を手にしたノエルは一気に距離を詰め、まさかの接近戦を始めた。それは予想外だった為、私とマシュは驚きを隠せない。
そうして、少し経った後。水を差すように炎が飛び、二人は戦いを強制的に中断され、その上分断させられた。新手、そう思うしかない。突如現れた人物、その姿を見た時は敵と思わざるを得なかった。
なんと言っても此処は見知らぬ世界。いつどこで誰に襲われるか分からない。ましてや、新たに登場した人物が味方だと確信出来る訳も無い。
「嬢ちゃん、その細い身体でよく戦えるな? 正直に言うと、驚いたぜ」
「……えっ?」
「嗚呼、安心しろ。俺は味方だ。奴とはちょいとした因縁があってな、いがみ合ってるって訳よ」
「は、はぁ……」
「なんだ、信用出来ないって顔だな?」
「え、まぁ……はい」
ノエルが警戒するのも仕方ない。突如現れた人物に"味方だ"と言われても信用出来ないのは当たり前である。いくらフレンドリーに話しかけられても、知人では無いのは確かだ。
そもそも、傍観を決め込んでいた事自体タチが悪い。凡人より戦闘経験を積んでいるから戦えるとはいえ、ノエルは少女だ。男(見た目からしておそらくそうだと思われる)ならすぐに助けるべきだと思うのだが。
「ま、そのままだと分が悪いだろ? 俺も手伝うからよ」
「あ、ありがとうございます……」
果たして、魔術師風の服装で身を固めるこの男は本当に味方なのだろうか。その答えが出るのは、少ししたらすぐに出る事だろう。
そして、謎の男の正体もその時に分かる筈だ。その場の状況もあり、状況を覆す為に一時的に協力関係を結んだが、これから先、この男が敵になる事も考えられなくはない。
画して、この世界に来て初めての戦いが幕を開けた─
(*´∇`)ノシ ではでは~