取り敢えず今回は所長&ロマニ、ノエルと遭遇回という事です、はい
それではどうぞ(⊃ ´ ꒳ ` )⊃
暫く歩くと、私の内にあるもう一つの力が呼応し始めた。それは、他の三人には分からない微々たるもの。だけど、私には分かった。
確証は無い。だが、蒼の残滓を近くに感じた気がしたのだ。私以外に誰かが此処に居る可能性がある。流石に誰とまでは分からないが、発生源がある筈なのだ。それを探そうとしてぼーっとしていた所、立夏に声をかけられる。
「ノエルちゃん、どうしたの?」
「う、ううん。何でもないよ」
「そう? 何かあればすぐに言ってね?」
「うん。ありがとう」
無闇矢鱈に心配をかけては駄目だと思い、蒼の残滓を探すのを止めた。おそらく、近いうちに逢える筈だと確信していた。
何故確信出来たのかは謎だが、蒼を感じたという事は向こうも同じく感じた筈だと思った為である。引かれ合うという訳では無い筈だが…
「キャスター、何時まで歩くの?」
「まぁ、そう焦んなって。盾の嬢ちゃんは兎も角、ノエルと立夏の二人は生身の人間だろ? 此処では奴の攻撃を凌げない。我慢してくれ」
キャスターの一言に対し、立夏は渋々歩き出す。キャスターが言う奴の攻撃とは、この世界に来て最初に受けた矢の嵐を指すだろう。
とてつもない量の矢を凌ぎ切ったのがマシュであり、その後は邪魔が入ったのかあっさりと止んだのだ。おそらく、邪魔をしたのはキャスターだと思う。キャスターはルーン文字で攻撃する為、それが書ければ何処からでも攻撃可能なのだ。
「もう少し歩けば、俺が根城にしている廃屋に着く。たどり着いたらそこで体制を立て直した方がいいだろ?」
「一理ありますね…。先輩、頑張りましょう」
「マシュが言うなら、頑張るよ…」
と、立夏が倒れそうになったその時。小さな声で悲鳴が聞こえてきた。誰の声なのか確認する間も無く私は走り出しており、後ろからキャスター達の静止の声が響く。
だが、そんな事を一々気にしていられる状態では無かった。収納していた銃を構え、ただひたすらに走る。あの時のマシュのように、目の前に救える命を救えない事態になったとしたら、今度こそ私の心は潰れてしまう。
嘗て、あの男の手によって覚醒させられた力は使えなくてもいい。あの力はレイチェルさんの御指導でコントロールが出来るようにはなったが、出来るならこの手で救いたいのだ。
「(……! 居たっ!)」
『眼』の力の影響か、遥か遠くまで見えるようになった私の視界に、白い髪の毛を持つ女性を捉えた。その女性は骸骨─ スケルトン ─に襲われている。
走っても間に合わないと判断した私は一か八か、遠くから狙撃してみる事に。ベルヴェルクには認識した場所に攻撃出来るという能力が備わっており、所有者の私が認識さえすれば壁などの遮蔽物など関係なく攻撃可能という訳だ。
敵の数は凡そ五十。その全てを認識した為、躊躇う事無くベルヴェルクの引き金を引く。幾つか取り逃したが、女性までの道は拓ける。そこを目掛けて一直線に突っ切った。
その女性の前に出た時、とある感情が渦巻いているのが分かる。怖いのだろう。無理も無い、あんな状況になって冷静でいられる方がおかしいと思う。
「だ、誰よ貴女…!?」
「安心してください、私は味方です。もうすぐ増援が来ますので、その間は私の後ろに───」
「じょ、冗談じゃないわ! 何処の馬の骨とも分からない奴に守られるくらいなら戦って命を落とした方がマシよ!」
相当パニックに陥っているのは分かる。だが、この女性が言った一言が許せなかった。それは禁句というもの。"私"が最も聞きたくない言葉だった。
私は心の内に滾る怒りを抑えながらその女性を見据える。すると、その女性は縮こまった。
「な、何よ…! 何か言いなさいよ!」
「命を棄てる。貴女はそう言いましたか?」
「そ、それが何よ…!」
「そんな簡単に命を棄てると言わないでください。生きたくても生きられない人達だって沢山居るんですよ?! 貴女は、生きる努力をしてください!」
それだけを言い放ち、私は再び敵陣に突っ込む。少しして、立夏達の声が聞こえてくるのが分かった。無事に追いついた事を確認した後、最後の一体を倒す。
立夏達に合流し、先ずは先走った事を謝罪する。悲鳴を聞いて、いてもたってもいられなくなったと言えば、なんとか納得してくれたようだ。
後、さっき偉そうに説教地味た事を言ってしまったが、私が助けた女性こそカルデアの所長であり立夏の上司(?)に当たる人物〈オルガマリー・アニムスフィア〉らしい。慌てて頭を下げ、出過ぎた真似をしてしまった事を後悔する。
(所長の怒りを買ったの、ノエルちゃんで二人目だね)
(えっ。じゃあ…)
(……うん。一人目は私。目の敵にされてるから)
(そうなんだ…)
依然として私達を睨んでいるオルガ所長。立夏に対しては何でアンタが此処に居るの的な感じで、私に対してはさっきの事が原因だろう。知らなかったとはいえ無礼な事をしてしまったのだ、仕方ない。
ここに来て一気に緊張感が増した。自分の失態を恥じていた時、雑音混じりの通信が入る。所長が繋げると、白衣を着た男が投影された。術式通信かと私は思ったが、どうやら違うらしい。
『あぁ、よかった! やっと繋がった……! 皆無事かい!?』
「ロマニ! 何でアンタがそこに居るのよ!! レフはどうしたの!?」
『……って、しょ…所長!? 何故そこに居るんですか!?』
「質問を質問で返さない! いいからレフを出しなさい!」
繋がったと思った矢先、所長とロマニと呼ばれた男の口論が始まった。まるで子供の口喧嘩のようにギャーギャー騒いでいる。このままでは埒が明かないと思った私は、二人に割って入った。
当然、二人は口論を止める。私に注目が集まっているのが嫌でも分かってしまう。
『えーと、君は誰だい? ここらでは見かけない顔だが…』
「わ、私はノエルといいます。そ、それよりも先ずは情報共有が先なのではないでしょうか? このまま言い争っていては解決する事も解決しないと思いますが…」
『それもそうか…。では、所長。此方の状況をお話ししますので、心して聞いてください』
「急に改まったりして何よ。何が起きたのか簡潔に話しなさいよね」
『だから今から話しますから…(相変わらずせっかちだなぁ、所長は…)』
ロマニの口から、カルデアの現在の状況が語られる。それは、四十八人の魔術師を招集した所長にとって絶望に叩き落とすには十分な出来事だった。
ロマニの状況報告が終わった直後、所長は膝から崩れ落ちた。ロマニが語った事は紛れもなく真実なのだろう。だが、所長は信じたくないと言わんばかりに耳を押さえて首を振り続けている。
それもそうだ、四十七人の魔術師の命を預かっていたも同然の状況の中、あの事故が発生し、立夏以外の魔術師は意識不明の重体。所長とはいえ、若い。全責任を負うなんて事は経験が無い筈だ。
「ロマニ、今すぐ冷凍保存に移行して。四十七人の命なんて背負える訳が無いじゃない…! ほら、とっととやる!」
『言われなくても、今スタッフ総出でやってます! それよりも、そこがどんな場所なのか説明したらどうですか? 立夏ちゃんは知らないようですから…』
「あ、それならなんとなく分かってますよ。Dr.」
『そ、そうかい? 特異点の説明の手間が省けたという事で…。ノエル君には説明を頼みたいんだが、大丈夫かい?』
「……はい。話さないと駄目だなと思っていた所なので。先に言っておきますが、私が言う事は全て本当の事です。怪しんだり疑ったりするのは自由にして構いません」
『分かった。じゃあ、頼むよ』
ロマニと呼ばれた人物を含め改めて自分に関する情報を話す。先ずは敵では無い事、立夏と同じ人間だと言う事、元の世界に帰る手段を探している事等を洗いざらい話した。
と言っても、ベルヴェルクの事は説明しない。異世界の技術で作られた物を解析される訳には行かないと思ったからである。
仮に作成出来たとしても、ベルヴェルクを含めた十一の事象兵器〈アークエネミー〉はとあるものが必要になる。それが無ければ例え形だけ出来てもアークエネミーでは無い、単なる兵器でしかないのだ。
そもそもアークエネミーの作成方法自体、非人道的な所もある。彼等が人理を守る立場にあるとしたら、コレは話すべきでは無い。
「という訳です。し、信じて貰えたでしょうか?」
先に疑ったりするのは御自由にと言ったが、やはり信用してもらえないと厳しい所がある。自分の情報を公開したとはいえ、怪しい人物には変わりないからだ。
だから、或る意味賭けではある。信用が無かったら自力で帰る手段を探さないと駄目だろう。とはいえ、出会ったばかりの怪しい少女を信用しろというのは些か…いや、かなり難しいが。
『まだまだ信用出来ない所はある。だけど、今は協力しよう。君が無事に帰れるよう、カルデアは全力でサポートをするつもりでいるよ』
「ちょっ、ロマニ! 貴方はそれでいいかもしれないけど、最終的に決めるのは私よ!?」
『それでもですよ、所長。貴女はノエル君を見捨てるおつもりですか? いくらなんでもそれは人としてやってはいけない事だと思いますが…?』
「くっ…! はぁ、いいわ。非常に不本意だけど、助けられた恩もあるし。カルデアは貴女に協力します。ですが、貴女が無事に帰るまでという事をお忘れなく」
「あ、ありがとうございます! 後、私は男じゃないので…」
『……えっ!?』
「……まぁいいです。宜しくお願いしますね…」
承諾を得られたという事で、私は訂正を付け加えて頭を下げる。だが、コレはまだ序章に過ぎない事をこの場に居る誰もが知る由もない───
同時刻、とある寺の庭。そのど真ん中に見慣れない人物が立っていた。その人物は自分が置かれている状況が分かっていないらしく、頻りに辺りを見渡している。
見た目から分かるのは、黒髪の男だと言う事だけ。その男は自らの得物である大剣を担ぎ、あちこちウロウロし始めた。挙動不審とも、人を探しているようにも見える動きをし続ける男は独り言を呟く。
「……しっかし、一体此処は何処なんだ? 魔素も無ぇ、術式も使えねぇと来た。こりゃあ、ピンチって奴か…?」
誰も居ない寺で、男はその場にどっかりと座る。そして、又もや独り言を呟いた。やる事が無いらしく、仕方ない事かもしれない。
「急に現れた渦っぽい奴に吸い込まれたと思ったら、異世界と称するに相応しい場所に来ちまうし…。ん? 確かマコトが言ってたな? "のえるんが蒼い渦に吸い込まれた"って…。まさか、此処にノエルちゃんが居たりするのか?」
ぶつぶつ呟く、ノエルを知る謎の男。彼が立夏達カルデアメンバーと邂逅するのはまだ先になる。果たして、彼は何者だろうか。それは、彼とノエルが出会った時に分かる事だ。
最後に出た人物、分かる人には分かるかと。
では(・ω・)ノシ