伏線は、前回の最後に(。・ω・)ノ
それではどうぞ(⊃ ´ ꒳ ` )⊃
所長を加え、五人で先を急ぐ中。自分の内に眠るもう一つの力が再び呼応し始めた。何者かの波長を受け取っているらしく、それを頼りに探してみるものの、感じ取っている波長は不完全な為か場所までは分からない。だけど、私以外の誰かの波長である事は確か。立夏達にそういう波長を感じる気配は無い為、確信出来た。
(間違いない。私と同じ方法? で、こっちに来た人だ。それも、蒼を知っている人。あの世界から来た人に間違いないかも…)
立夏達は色々話している為、私がぼーっとしている事に気づいていない。これなら気が済むまで探せると思い、精神を研ぎ澄ませる。
研ぎ澄ませた瞬間、今まで聞こえてこなかったものや見えなかったものが見えてくる。『眼』の力も最大限に引き出されているようにも思える。この世界に"蒼"は無い筈なのに、此処に来てから無意識でも分かるくらいに鋭くなっている気がするのだ。
(なんだろう…? 身体の底から力が溢れるような感覚…。こんなの、今まで体験した事無い…)
今、ノエルに起こっている事は、元居た世界では破れなかった自らの殻を打ち破ろうとしている事だろう。言い換えれば、ノエルにはまだまだ伸び代があるとも言える。
そして、精神を研ぎ澄ませる事数分。謎の波長を発している場所を見つける。そこは、とある寺の中庭に当たる場所だった。そこまで行く方法が分からない為、キャスターに聞いてみる事に。
「寺だぁ? んなとこ行ってどうすんだよ?」
「私の知り合いが居るかもしれないんです。道案内、お願い出来ますか?」
「ったく、俺としちゃあ……寄り道は出来るだけしたくねぇんだがな」
「お願いします…!」
再度頼み込むと、流石に折れたようで。渋々道案内をしてくれた。後で何かしら御礼をしなければならないだろう。
もしかしたら、あの人かもしれないと考えたのだ。私の恩人が。何度も助けてもらっているにも関わらず、そんなに御礼をしていない。あの人は気にしていないかもしれないが、私は結構気にする派なのだ。
(会えたら嬉しいけど、そんな事無いか…。多分、あの人じゃない。違う人だ…)
もう、どんな姿だったのかすら思い出せない恩人。そんな人に会える訳が無いと割り切った私は先を急ぐ。恩人じゃなくても、同じ世界から来た人であれば頼れると思ったからだ。
おそらく、敵では無い事は断言出来る。仮に敵だとしたら、一握りの人達しか思いつかない上に、皆が強い。味方だったら頼もしいかもしれないが、そんな人達が私の味方になる筈も無い。皆が皆、私にとって嫌な人ばかりだからだ。
それはさておき、どうか知っている方でありますようにと淡い思いを抱きつつ、先を急ぐ。
ノエル達が寺へ向かっている頃。寺の中庭に当たる場所にて、二人の男が戦っていた。一人は、褐色肌に白髪の弓使い。もう一人は、黒髪の大剣使い。遠距離攻撃が可能な弓使いが有利かと思いきや、戦況は大剣使いの方に傾いている。
それは何故か。大剣使いの男は自らの得物である大剣を盾にしつつ、放たれる鏃を弾きながら、特殊なエネルギー弾を放っていた。それにより、遠距離攻撃というアドバンテージは無くなったも同然である。
「んだ? そのまま逃げに徹する気か? よもや弓矢だけが攻撃手段の全てじゃねぇだろ?」
「……言われなくても。そろそろこちらが打って出ようと思っていた所だ」
白髪の男は弓矢を手放す。すると、風に溶けるかのように弓矢は消えていく。続いて取り出したのは二振りの剣。白髪の男がその剣を手に持つ際、まるで虚空から創り出したように見える。
それを見た黒髪の男は口笛を吹き、見た目からして重そうな大剣を片手だけで軽々と持つ。まるで、大剣の重さなど感じないように。
「へぇ…? 面白ぇ技使うじゃんか。やっとこさ本気になったって訳か?」
「そうとも取れるな。生憎、遠距離からちまちま攻撃するのは性に合わないのでね。サーヴァントである俺とここまでやり合える奴が居るとは思いもしなかったのが本音だ。剣を抜かせる程、お前が強いという事か」
「ほぅ…? 上から目線なのはスルーするとしてよ、つまり俺は舐められてたって訳か。余裕ぶるんじゃなかったって後悔させてやるよっ!!」
「……来い!」
双剣と大剣、三本の剣がぶつかり合う。火花を散らし、何度も何度も切り結ぶ。
白髪の男が双剣を手にした事により、戦況はガラッと変わる。何かしらの術が影響しているのか、白髪の男が振るう双剣は余りの激しさにより、へし折れる。然し、折れる度に白髪の男は虚空から剣を創り出し、尚も切り結ぶ。
或る意味無限とも取れる双剣の応酬に、黒髪の男の体力は確実に削られていく。体術も織り交ぜての攻めを繰り広げ、一進一退の攻防にもつれ込むも、依然として白髪の男の方に戦況は傾いている。
(ちっ、このままじゃジリ貧なのは俺の方だ。何か策は無ぇのか…?)
「どうした。息が上がって来ているぞ?」
「けっ、なめんなよ? 俺はまだまだいけるぜ!」
「ふっ、そうこなくてはなっ!」
サーヴァントと人間には圧倒的な差があった。身体の構造自体が違う為、仕方ないかもしれないが。身体能力が高いとはいえ、黒髪の男は生身の人間。サーヴァントである白髪の男とは違い、スタミナというものが存在する。白髪の男が弓矢を放っていた時はまだいい。最小限の動きで弾く事が出来たからだ。
だが、今は白兵戦にもつれ込んでいる。当然、攻撃しつつ自分の身を守る事もしなくてはならない為、遠距離攻撃に対応する時より遥かに体力を使うのは目に見えている。
状況は白髪の男が有利になってきている。それでも黒髪の男は退くという事をしなかった。敵前逃亡は恥と思っているのか、はたまたこの男も軍人としての誇りがあるのか。そこまでは分からないが、兎に角男は戦い続けた。
然し、体力の消耗がピークに達したのか、黒髪の男は僅かだがふらつき、肩肘をついたその時だ。その隙を狙い、振り下ろされる双剣を何かが弾く。その前に銃撃音が辺りに響いたような気がしたのだ。
「誰だっ!」
白髪の男が声を荒らげたその時、一点集中と言わんばかりの弾幕が男を襲う。小型の盾を瞬時に作成した白髪の男は弾幕を防ぐが、余りの密度に後ろへ大きく下がる結果となった。
黒髪の男が弾幕が飛んで来た方向を向くと、金髪の少女と橙色の髪の少女、盾を持った桃色の髪の少女に白髪の女性、青髪の男の五人が走って来ていた。
他の四人は知らなくとも、男は金髪の少女に見覚えがあった。名前を呼ぶ前に、自らの名前を呼ばれる。
「────────カグラさんっ!」
飾りも無い無骨な二丁拳銃を手にし、自分に走り寄ってくるその少女を見た時、確信が持てた。この少女は自分が良く知る少女だと。だからこそ、名前を呼ぶ。
「おう。逢えて良かったぜ、ノエルちゃん?」
白い歯を見せ、満面の笑みを浮かべる。探していた少女─ ノエル ─が見つかったのだ。これ以上に嬉しい事は無い。
今までの疲れもなんのその、ノエルにカグラと呼ばれた男は無双とも取れる動きで白髪の男を退けた。
一段落した所で、改めて事情説明を受けた。橙色の髪の少女は藤丸立夏、白髪の女性はオルガマリー・アニムスフィア、青髪の男性はキャスターとそれぞれ名乗る。そして、彼等がカルデアという組織に属している事も分かった所でカグラは自己紹介をしてから質問をぶつける。
「俺はカグラ。階級は大佐だ。んで、そこに居るノエルちゃんと同じ世界出身っつー事になる」
「貴方も、平行世界から来た人という事ですか?」
「そうだ。立夏ちゃんは理解が速くて助かる。それはさておき、俺からの質問だ。アンタ達はカルデアと言ったか? そんな組織がノエルちゃんと一緒に居る理由、差し支え無ければ教えてほしい」
「それは私からお話します、カグラさん」
自ら説明役を買って出たノエルの話を聞く限りでは、元の世界に戻る手段を探すべく、互いに協力関係を結んだという事らしい。
「……という訳です、カグラさん」
「なるほどな…」
もう一つ、謎があると言えばある。あの時突如発生した蒼い渦。それの解明もしなければならないだろう。何れ消えるとはいえ、蒼の反応を感知したとノエルは言っていた。それならば、蒼を良く知る人物が関わっている事にもなる。
知っている事と言えば、六英雄にして自分達の敵として立ちはだかったユウキ=テルミ、統制機構のトップにして最悪の敵となった帝…否。冥王イザナミ、目の前に居るノエル、後一人居た気がするが気の所為だという結論に至る。
兎に角、彼等が一番蒼に関わっていたのだ。ノエルは違うとして、残りは二人。だが、そのどちらも可能性としては薄い。あの世界には二人は居なかったからだ。
(今考えこんでも仕方ないか…? 原因究明はゆっくりと行えばいいだけだ)
取り敢えずアレコレ考えるのはやめておいて、今はノエルと共に元の世界に帰る手段を探した方がいいという結論に至った。そうなれば、必然とカルデアに協力せざるを得ないだろう。
ノエルが信頼しているかどうかは置いておき、カルデアに協力する事を選ぶ。人手は多いに越したことはない。
「良かった…。カグラさんが居てくれたら百人力ですよっ!」
「ははっ、ノエルちゃん。そりゃ買い被り過ぎってもんだ。でもまぁ、退屈しのぎにゃなるだろ。さっきみてぇに強ぇ奴が居るからな」
「そ、そうですね。私も協力しますので、存分に戦ってください!」
「そこまで言われちゃ、頑張らないと男が廃れるな……」
傍から見れば恋人に見えなくもないが、それはさておき。新たにカグラを迎え、計六人となったカルデア勢。この先どうなるのか。それはまだ分からない。
更新遅れて申し訳ない…っ!
次はなるべく早く更新します(´・ω・`)
それでは(・ω・)ノシ