日常ほのぼの系で頑張りたい。
プロローグ
「やめろっつってんだろおおおおおおおおお!!!!!」
悲しいかな、彼の叫びは届かない。
金切り声に近い叫びは、声の主の遥か前方に鎮座する移動砲台さながらの戦車型の機体には聞こえない。戦車の車体にMSの上半身がついたソレは両腕を丸々武器にしていた。
右手には砲身を切り詰めたジャイアントガトリング、左腕には大型の榴弾砲。その両方を盛大にぶっ放している。
その射撃音に呼応するのはバーニア音。射撃によって舞い上がる大量の土煙の中から、喜び勇んで突撃する2つの影。
1つは両手に巨大な2連パイルバンカーと大型ナックルを構えた機体。背面には巨大な補助バーニアを背負っていた。
そのバーニアを吹かしまくりながら、頭のネジが無くなってしまったかのような変態的な動きで宙を跳ね、地上を駆け、そしてたまに転がりながら予測不能な動きで迫っていく。
そしてもう1つ、そんな笑いながら突撃していくソレを追いかける4つ脚の異形な機体。
4つの脚を器用に動かす姿はまさに蜘蛛。壁を蹴り、滑空し、そして走る。
走りながらも右腕に構えたスラッグガンと背面に装備したロケットを小気味よく連射していく。
どれだけ連射していても、4つ脚による安定制御により反動を抑えているためその姿勢が崩れる事は無い。
その異形な3機の共通点は、それぞれがMSグリモアをベースに改造されたガンプラであることだ。著しい魔改造で原型はほぼ無いが。
倒壊するビル群、しなくても良いオブジェクト破壊。だが、それはその下にいた者たちにとってはひとたまりもない。
「なんだアイツら!!!!めちゃくちゃしやがる!!」
「リーダーはやく退避を…」
「ちょっと!こっちこないでよ!!まって…!!」
そんな声が聞こえた気がした。
ビルの瓦礫を避けようにも、その瓦礫の雨の中を無視して突っ込んでくるのはパイルとナックルの機体。
まず3機のうち1機がパイルに貫かれ爆散する、そしてその勢いのまま降り注ぐ瓦礫の中から脱出していった。
残り2機も、なんとか瓦礫の雨を抜け反撃態勢をとるが、今度は鉛玉の雨が彼らを襲う。高く上空まで飛び上がった4つ脚がこれでもかと言わんばかりの撃ち下ろし攻撃。逃げ場は、無い。
苦し紛れに援護を要求するも、別働していた部隊は戦車型に滅茶苦茶に撃たれて動けない。
「ふ、ふざけた奴ら…だ。」
呆れ果てて何も言えないとは、こういう事なのだろう。
無線越しに漏れた声は酷く疲れ果てていた。
※※※※
「ほんっっとーーーーーに申し訳ない!!!!」
砂漠に木霊するの男の声。そして深々と下げる頭。短く刈られた頭髪に、こんがりと日に焼けた肌に逞しい顎。筋骨隆々の身体。年は30代、身長は180といったところ。
黒のタンクトップの上に羽織ったモスグリーンのタンクジャケット、そしてカーキ色のカーゴパンツに黒のコンバットブーツ。
そんな見た目ゴリラで熊のような大男の謝罪を呆れた顔でそれを受けるのは、標準的な連邦軍服の男。両者の共通点は疲れ切ったその顔だ。
かたや青ざめてはいるが無理して笑っている。もう片方は胃を痛めているようなそんな鎮痛な顔だ。
青ざめているほうは苦笑いと共に片手を振りながらその場を離れ、鎮痛顔は今度は顔を真っ赤にして振り返る。
その鬼も逃げ出すような目線の先にいたのは、全員彼と同じ姿で揃いのジャケットを着込んだ子供達。
金髪に緑の目のチャラけた子供。黒の前髪で目元を隠している子供。長い赤髪後ろで縛り更にバンダナで括った金の眼の子供。それぞれ馬鹿笑いをしながら盛り上がっているようだ。
当然、ゴリラの目線には気づかない。
「だからよぉぉ?おまえは思い切りが足んねーんだって!!いつもみたいに突っ込んでったらいいだろ?」
「そうだそうだー」
「い、いや。そ、そういうんじゃ無くて、ね?みんなといると、強くなった気がして、ね?外に出たら無理だよぉ」
「そうだそうだー」
瞬間、機関砲の速射音のような音が響き、彼らは地面に両手を突き沈黙する。
表現できないほどの怒声。そして、ため息。
涙目を浮かべる彼らはそれぞれ言い訳を口にだすが、その一切を無視し彼はポツリとこぼす。
「今日は…なんか胃に優しいもんが食いたいなぁ…」
その言葉を聞き、3人の顔に笑顔が戻る。顔を見合わせ、そして駆け寄る。
「隊長!なら俺、煮物が食べたい!!煮豆!!」
「ぼ、ぼくはうどんがいいなーって」
「俺ぁ…カレーがくいてぇんだけど…胃に優しいって中華丼とか?」
それぞれ言いながら彼の大きな手を引き、周りを囲みながら歩く。
その先は彼らが基地としている場所。
周囲一帯が広大な砂漠になり、そのところどころに倒壊しかけのビル群が見える。
一度見失えば二度と同じ場所には辿りつけないであろう、そんな砂漠の中にポツンとある墜落し半分だけ地表に顔を出しているマゼラン級戦艦。
ソレが彼らの家だ。家と呼ぶには粗末なものだが、まさしく彼らの居場所だった。
「ホラ、お前ら。ログアウトして飯にするぞ。準備しろよー」
疲れているはずなのだが、張りのある声で号令をかける。そうして彼らは現実に戻っていく。
現実でもゲームでも彼の苦労は続くのだが、楽しそうな声は止まる事は無かった。
※※※※
ビルに囲まれた一角。そんなコンクリートジャングルの中に、塗装が剥げかけ看板が多少歪んだ小さい幼稚園ほどの建物がある。
周囲がギラギラとしたネオンを光らせる中、その建物の窓からは暖かい光が漏れていた。
光の中に見えるのは、やけに逞しい大男と彼を囲む小学校中学年程度の子供達。笑いながら食事をし、たまに怒られながら生活している。
この建物の名前は「孤児院・マーゼラン」そこに住むのはガンプラ好きで苦労人気質の大男と、理性が吹っ飛んだ子供達。
彼らの楽しみは、もちろんガンプラバトル。男の趣味で集めていたグリモアに目をつけた彼らは、子供の発想を最大限に発揮し改造を繰り返す。
そうやってできたのが彼らの機体。あんまりにもあんまりな改造に男は開いた口が塞がらなかったが、楽しそうに笑う彼らを止める事はしなかった。
しかしそうして彼らがそのまま飛び出して、見知らぬ他人にとんでもない迷惑をかけると心配した彼は
『いっそのこと自分も一緒にやればいいじゃない。』
という友人の声に背中を押され、共に遊び始める事になる。
ネットワークで繋がったガンプラの世界は広い、最初はオドオドしていた子供達も、徐々にそれぞれの楽しみを見つけはしゃぎ回っている。それはもう、男の胃にリアルに穴が開くレベルで。
そんな彼らの日常はもっぱら他のフォースの陣地に侵入し暴れるだけ暴れて帰ったり、唐突にフォース戦を申し込み散々散らかして帰ったりする毎日なのだ。
そんな彼らを統率し、辛うじて作戦らしきもので戦えてるのはひとえに彼のおかげなのだろう。
ならば、胃に穴も開くだというものだ。
これは、仮想電脳空間内で自分のガンプラを使って遊ぶ「ガンダムバトル・ネクサスオンライン」(通称GBN)
その広い世界の中で悪魔のような子供達に振り回される彼の、奮闘の記録である。
機体スペックとかもその内纏めれたらいいなぁ