でもまだ熱は冷めないのだ!!
黒色化した装甲に纏う紫色のオーラ。そして異常に発達した手足や羽の形状を見れば、それが進化したブレイクデカールの力である事は明確だ。
団長から知らされた「機体の異常変貌・凶暴化」という以前手に入れた情報とも一致している。
あとは、この機体が回復能力を持っているのかということが問題だ。
もし回復能力を持っているのであれば勝ち目は無い、すぐにでも退却しなければならなくなるだろう。
光学マントで周囲の景色と同化し、まず戦況を見極めるために戦場から離脱。
そうやって十分な距離を離し、改めて敵の姿を観察する。【巨竜ダナジン】の身体は大体俺達の5倍の大きさだろうか、そして尻尾はそれ以上に長く太い。あれに当たればひとたまりもないだろう。
突然、視界前方のビルが倒壊する。
崩れ落ちる瓦礫の中に見えるの巨竜の腕に押し潰されそうになっている【ランページ】。
急ぎ援護のために銃を構えるが、それよりも早く反対側に回り込んだ【オンスロート】が、両腕の銃を巨竜の顔面目掛けて乱射し始めている。
右手のAKに似たアサルトライフルの銃口から吐き出される弾の弾幕に加え、左手に持ったスラッグガンを超至近距離で撃ち込み続けている。
目に見えるダメージは無さそうだが、連射と衝撃力を嫌がったのか鬱陶しそうに巨竜は尻尾を【オンスロート】目掛けて叩きつける。尋常ではない轟音と粉塵を巻き上げるが、既にその場所には【オンスロート】はいない。
そして巨竜が【オンスロート】に気が向いた瞬間を見逃さずに、奴の腕に押さえつけられていた【ランページ】は脱出。
すぐさまに懐に入ると、踏み込んだ勢いをそのままに左腕の2連杭打ち機をガラ空きのボディ目掛けて振り抜く。
硬質な金属同士がぶつかるけたたましい爆音が響くが、巨竜は少しよろめいただけにとどまっている。
咆哮のような声をあげる巨竜。それと同時におそらく口に当たる部分に入った亀裂が上下に裂け、まるで本物の爬虫類の口内が顕になる。
ぞぞろに生えた鋭い牙とテラテラと光る舌、機械の身体であるのがその生々しさに更に拍車をかける。
そしてカメラアイからギョロリと覗く丸い目玉が一つ。血管が浮き出た見た目は、はまさに生物のソレ。
その姿に、一瞬たじろいだように見えた【ランページ】に掴み掛かろうと手を開きながら体当たりを仕掛ける巨竜。だが、それもすぐに阻まれる。【ランページ】の真後ろから飛び込み、同じように体当たりを仕掛けた【マガツ・ハシュマル】は真正面から巨竜と対峙する。
ハシュマルの頭の後ろから伸びたテイルブレードを巧みに操り巨竜に攻撃を牽制しつつ、追い討ちをかけるように羽から飛び出した都合20機のファンネルが周囲を囲い、頭から発射したビーム砲と収束された光の束が巨竜を襲う。通常MSならそれで跡形も無くなるような熱量のビームを巨竜はその身に受けることとなったが、それで沈黙するはずは無い。
ビーム発射までの一瞬のラグで背中の羽で全面を覆い防いでいた。しかも、その羽には少しの傷も見当たらない。
圧倒的な防御力だ。瞬間火力では最強の【ランページ】のパイルを食らい、更にあのビームを至近距離で防いでもその身には届いていないのだ。ブレイクデカールの力を加味しても、その異常さが際立っている。
しかし、なぜこの場所にこんな怪物が居るのか。無人機なのは動きと巨竜の中身で明らかだ。
ならば誰かがここに持ち込んでいたのか。
到底、制御できそうなモノでは無い。だから封印していた?
そんな推測をしながら俺は引き金を絞り、【オンスロート】を攻撃しようとしていた巨竜の腕を狙撃する。それに合わせるように遠距離から【タイラント】による絨毯爆撃のごとく降り注ぐ砲火の雨。
砂塵と爆炎が視界を覆うが、一旦はこれで距離が取れる。
だが、そんな飽和攻撃にも耐えているのが見て取れた。
「一体、なんなんだコイツは…!」
頭の奥がチリチリと焦げ付くような焦りを、俺は隠せないでいた。
※※※※
瓦礫の破壊しながらひた走る。
倒壊したビルを飛び越え、それを踏み台にしながら更に加速する。
最短最速で最強の一撃を放つために、あえて遠くに距離をとる。
振り向けばあの巨体は、茶輔の爆撃の中で身動きがとれていない、今がチャンスだ。
深呼吸を一つして思い出すの隊長の言葉。
『遊びを捨てて、一撃一撃を丁寧にな』
うん、わかったよ。一撃に全力を込めればいいんだよね。ありがとう隊長。
操縦桿上部のリミッター解除スイッチを押す。
コクピット内が真っ赤に染まり、モニターとリンクした全周対応および速度計算ができるヘルメットが降りてくる。
操縦桿を外し、シートに身体を委ねる。途端に身体全てが【ランページ】と一体化したような気分になった。
踏み出す一歩の衝撃が直に伝わる、視界がとてもゆっくりになっていく。
更に速度をあげていく
目標は決まっている。
ならあとは、全力でぶつかるだけ。
※※※※
モニターに映る巨体めがけてひたすらに撃ち込み続ける。
相手の動きに合わせてその都度に角度をかえ、位置をずらしながらトリガーを押す。
俺に近づいてこないのは前線で戦ってる仲間のおかげだ。なら、俺は何してるんだ?
俺は、火力担当だ。その俺の攻撃が効いてない。
巨龍が腕を無造作に横に薙ぎ払う。一番近くにいたのは京谷の【オンスロート】だ。
避けられるはずの攻撃をモロに食らった機体が宙を舞った。抑えきれない衝動が腹の奥から込み上げ今にも爆発しそうだった。
それを押さえ込んで冷静にさせてくれたのは、隊長が出撃前にかけてくれた言葉。
『冷静さを保て、激情の中でも冷静でいられれば良い。そうすりゃお前は無敵だよ』
あぁ…よく分かってるじゃねぇか隊長。
両手で頬を叩き深呼吸する。そうだ、俺だけで戦ってるわけじゃない。
操作パネルの中心に付いている厳重に封をしたボタンめがけて拳を叩きつける。
後のことは皆に任せよう。
これが、俺の全開だ。
【タイラント】の左腕を強制パージした途端、連結していた箇所から飛び出したのはドス黒いタールにまみれた新たな腕。
コンテナ状の四角い肩部、その肩部から更に戦艦砲が4門飛び出す。そして更にコンテナ下部からせり出す腕から、様々な砲身が産み出されていく。
タールの一部を引きづりながら持ち上げられた左腕は機体の全長をはるかに超え、せり出す砲身が標的を捉え始めていた。
※※※※
アクセルは既に全開、4つの脚に装着したローラーは火を出す勢いで回り続けている。
両手に握った銃火器をひたすらに連射してるが、まったく効いている様子が見えない。
巨大な爪がついた腕を真上から叩きてけて来た。
真横に回避し避けざまに腕と二の腕の隙間を撃つ、弾かれた。
すぐさま自分の機体を横に回転させ、上体を低くし股下を潜る。
脚と腰の関節、ダメだ。
尻尾が振るわれる。ジャンプで避けながら空中で縦回転。奴の頭を取った。
眉間と目玉めがけて全火力集中。
…クソが。
焦る気持ちが湧いてくる、千恵も茶輔も攻撃を加えてはいるがダメそうだ。
あの二人の攻撃で効かない、なら二人よりも攻撃力が足らない俺はどうすればいいんだ。
気持ちが悪いモヤモヤが腹に溜まっていることに気を取られて、迫る爪に気づけなかった。
ものすごい衝撃が襲いかかり、俺は宙に放り出されている。
頭の中で鳴り響く音が更に強くなってきた。とても、うるさい。
『慌てるなよ、京谷。お前は十分強いんだから、もっと自分を信用したらいい』
頭を締め付ける音が緩んだ気がした、隊長の声が聞こえた気がした。
「そうだよ…俺は、強ぇんだよ!!!」
緩めかけてた操縦桿を握りなおし、空中ですぐさま体勢を立て直す。食らった被害は甚大だがまだ脚は動くし、武器もある。なら、まだヤレる。
着地と同時に、武器を背面に収納し更に加速。
十分に距離を取りつつ、火器管制CPUにコマンド入力。
〈ジェネレーターリミッター解除。出力上昇、危険域突破。〉
アラートが鳴り響く中、敵の猛攻を潜り抜けながら距離を取る。
〈空間湾曲確認。バスターキャノン[エーレンベルク]背面部ドッキング成功〉
急回転のドリフトターンを決め、向き直りながら再度突撃。その巨竜の顔面が盛大に爆発する。それが飛んできた方向を見れば半身が重火器と化した【タイラント】の姿。
〈準備完了。対象ノ完全沈黙マデ限定解放承認。…レディ〉
ソレが合図だった。
トランザムの如く加速し始めた機体と、相手の動きの先が読めるような感覚。
ここからは、ずっと俺達のターンだぜ。
※※※※
最初に無傷の巨体を揺るがしたのは一つの爆発だった。
頭に直撃した砲弾はいままでの爆発と違い、始めてダメージらしいダメージを与えていた。
爆炎の大きさと直撃したときの衝撃力が段違いだった。それが、合図だったのだろう。
直撃を確認した瞬間にさっきまでの範囲を爆撃していた砲弾ではなく、貫通力と衝撃力に重きを置いた砲弾が絶え間なく巨竜を捕らえ続ける。
そんな動くこと封じられた竜は羽を盾にして砲弾を防ごうとするが、その羽はエメラルドに光輝く極太の光線により撃ち貫かれ、燃えおちてしまう。
機械から出るとは思えない生々しい咆哮をあげる巨竜。だが、すぐさまその光線を放った方向に向け口を開け攻撃を加えようとするが、それは叶わない。
なぜなら、巨竜の腹の下から突き上げる白い流星が、その巨体を天高く突き上げ始めていたからだ。
高度が十分に達した瞬間、白い流星と化した【ランページ】は竜の腹部を完全に貫き今度は急降下しながら竜を地面に向けて逆落としにする。
地面との直撃の瞬間、とてつもない衝撃波と土煙により全センサーがクラッシュする。
やっと回復した視界が捕らえたのは、超巨大クレーターとなり跡形もなくなったプラント地帯。
その中心で停止している【ランページ】と壁際に埋まった【オンスロート】、クレーター外でひっくり返っている【タイラント】。
そして
「だーーーーーかーーーーーらーーーー!!!!あれをやるときゃ俺達の近くにおとすんじゃぁあねええええええええ!!!!!」
「動けねぇんだけどよぉ…早く起こしてくんねぇ?」
「いいんじゃん!!!!あんのクソ爬虫類ぶっ壊したんだからさぁ!!!!!」
けたたましい子供達の声と、今の戦いを見てどん引いている代行屋だった。
そんなやりとりに少し安心し、彼らを助けようと近づこうとしたその時。
よく聴き慣れてはいるが、もう二度と聞きたくない声が響く。
〈いやぁー素晴らしいねぇ!ホント素晴らしいよ!〉
耳障りな合成音のような声と、パチパチと手を叩く音。
クレーターの真上、空から降りてくる人間。
それは、俺がもう見る事は無いと思っていた人間と瓜二つだった。
京谷「どうだーーー!!!俺達の必・殺・技!!!」
茶輔「オーバーキルがなんぼのもんじゃあああああ!!!」
千恵「や、やりすぎちゃったかな…ま、いっか!」
茶輔「でもよぉ、なんだぁあいつ?きもちわりぃんだけど」
京谷「同感。でもどっかで見たことあんだよなー?」
茶輔「あー俺もだわ、クッソ暑そうな格好したおっさん見たことあるわ」
京谷「千恵は?…ってあれ?」
茶輔「オイオイオイ…テメェ…千恵に何しやがったぁ!!!!!」
???「次回奮闘記、第16話 『ゴースト』…ハハハハハ!楽しみだなぁ!!」
茶・京「「まちやがれぇぇ!!」」