沢山の閲覧感謝です!!!書いてて楽しく、読んでて楽しい作品を目指して頑張ります!!!
彼女との出会いは、俺が入隊した時まで遡る。
まだペーペーな俺は同期で入ってきた奴らを侮っていたのだろう。
体も大きく操縦の腕も同期では頭1つ抜きん出ていた、お山の大将とは俺の事だった。
そんな行いをしてれば、自然と人は寄り付かない。
だが、そんな俺に何かと歯向かう同期が1人。
それが、シズク・バーンズ。今では鬼教官のシズクと呼ばれる新人育成教官。
俺がこんな調子だったからか、全く出世しなかった。
だが、彼女はそんな俺を他所にメキメキと上達&昇進。いつのまにか開いた差は歴然だった。
それが更に気に入らず、荒れる日々。個人ランキング戦に籠もりきりになり、部隊にはほとんど顔を出さなくなっていた。
そこに舞い込んだのが、俺専用の更生プログラム。
もちろん言い出したのはシズクだ。
このまま腐らせるには惜しいとかなんとか言っていたのを覚えている。
その時は随分生意気な事を言うものだと食ってかかったが、いざ戦闘が始まればその実力は本物だった。
教官になる少し前まで最前線のしかも団長直属の切り込み隊を率いていた彼女は、まさに女傑となっていたのだ。
こうなっては従うしか他は無い。その後は地獄の特訓の日々。
やれ装備無しで一週間雪山登山しろだの、やれ釣瓶打ちしてくる砲弾をたった一機で迎撃しろだの、100m先のターゲットに当てろだの。
極め付けは20時間ぶっ続けのシズクと一対一の戦闘訓練。
それはもう…苛烈を極める特訓だ。常軌を逸している。
正直、思い出したく無い。
だがそのおかげか、いつのまにか俺は師団の中でも5本の指に入るほどの操縦技術を手に入れていたのだ。
その事には感謝している、だがそれとこれとは別だろう。
「なんだいなんだい?アタシの顔になんかついてんのかい?そう固まる事ぁないじゃないか。せっかく、優しい優しい同期のアタシが仕事をやるっつってんだからサ!もっと喜びなよ、八神ィ」
鬼の顔ってきっとこんな顔だ。身長こそ俺の方が高いが、それでも女性では大きい方だろう。
小麦色に焼けた肌で整った顔をしているが、右目に付けられたゴツいアイパッチと肩より上で切りそろえられた白い髪。
黒の軍服を腰で縛っているために、肩が露出するタイトな白シャツから覗く太い腕は傷だらけだ。
その傷跡、わざわざつけたのか。俺がいた時なかったじゃねぇか。
「…おっかねぇぞ。あのオバサン」
「黙ってろよ茶輔。それしんじゃうぜ?見ろよ千恵なんか完全に固まっちまってる」
そんなヒソヒソ声が聞こえる。それ、本当に言うなよ。俺の腹が物理的に吹っ飛ぶから。
最近の噂じゃ、あのタイガーウルフとガチで殴りあって互角らしいからな?頼むぞ?
冷や汗が額に浮き出ている俺を見かねて声を発したのは、いまだ笑いをこらえている団長だった。
「さて諸君。仕事の話に取り掛かろう。」
「オウ。そうだった、そうだった。忘れるところだったよ。で?この子等がお前ンとこのガキンチョかい?」
せっかく団長が切り替えてくれた流れをぶった斬る一言。
切り込み隊長は伊達じゃないってか?
凶悪な笑みを浮かべた顔が、子供達に向き直る。ちゃっかり同じ視線にしようとしゃがみながら近寄っていく。
子供達は後ずさらずに胸を張って睨み返していた。あの圧に良く耐えたと褒めてやりたい。
多分、後ずさったら俺のボディに一発良いのが入る。
「ガキじゃねぇ。京谷・グリーズだ!」
「強そうだからってナメんじゃねぇぞ?茶輔・グリーズだよ」
「…千恵・グリーズ」
あ、いかん。これはいかん、ヤバイ。千恵の緊張がてっぺんだ。
他2人はいつも通りだからまだ良いが、あの眼はアレだ。
機体に乗った時の眼だ。三日月・オーガスみたいになってる。
生唾が喉を通る音が嫌に大きく響き、俺の胃が最終警報を鳴らしている。
ここでは、まずい。
心臓が張り裂けるような緊張感。その均衡を破ったのは、この状況を作った張本人だった。
部屋自体が揺れているんじゃないかと思えるほどの馬鹿笑い。
いや実際に、俺の脚は震えてたのだが。
ひとしきり笑った後、勢い良く立ち上がるシズク。
そうしてこちらに向き直り、俺の肩にそのデカイ手を叩きつけてきた。
そんな予感はしていた、俺は急いで腹筋に全力を込め、次の行動に備える。
が、それはいらぬ心配だった。
「3年前のお前にそっっくりじゃぁないか!!!それに良く鍛えてる、度胸も良い。気に入った!…アタシはシズク・バーンズだ!ガキなんて言って悪かったよ」
安心しすぎて膝から崩れそうだ。
子供達も呆気にとられている。千恵はいつのまに団長を抱え込んだんだ。
俺と団長のため息が重なり、顔を見合わせる。
お互い苦労させられるなという声に、俺はただ頷く事しかできなかった。
※※※※
見渡す限りの荒野を疾走する姿を、スコープ越しに確認する。
数は4機。戦闘を駆け抜ける普通の機体より大きなソレは、オレンジにカラーリングされたグレイズアイン。
スペックをフルに改造されたシズク専用機【グレイズ・ペイン】だ。
主に関節部の強化、推進器の増設。あとは隠し腕を備えたバックパックだろう。3本目の腕を見た者はほとんどいない奥の手との事。
また変なモノ作ったもんだ。まぁそれはウチの子供達も変わらないが。
シズクの右後ろをピッタリとつけているのは京谷。
いつもは自由気ままに動き回る4つ脚の【グリモア・オンスロート】が今日は大人しく陣形を維持しているのは珍しい。
右手の巨大スラッグガンでは無く、取り回しのしやすい突撃ライフル。
それに合わせて左手には大型のマシンピストルを装備している。
背面の折り畳みのグレネードランチャーは外してあり、代わりにロケットポッドを2つにしていた。
珍しいといえば千恵もだ。シズク機の左後ろを追いかける白い頭のグリモア、茶輔と同じモスグリーンのカラーが施されている。
右手に巨大な鉄拳「インパクト・ナックル」左手に2連杭打ち機をそれぞれ持つ。
背中の補助バーニアはランドマン・ロディの脚をそう仕立て上げ、合わせて増設された推進器で固められた【グリモア・ランページ】
自分の身体そのもののように動く彼の戦闘方法は、型にはまることが無い破天荒極まるもので、一旦手綱を離せばどこまでも追いかけて行く猟犬さながらなのだが。
それも今はナリを潜めている。
そして殿。シズク機から少し離れた真後ろにつけるのは、茶輔の【グリモア・タイラント】両腕そのものを武器にした機体は、今回の作戦に合わせたのか広範囲に広がる武器では無く速射と連射に特化した武装だ。
右腕の巨大2連装砲は弾速と衝撃力に優れ、左腕の小型ガトリングは連射と装弾数に優れている。
そして問題のバックパックには、先程手に入れたグシオンリベイクフルシティのバックパックを装着。2本の隠し腕は既に展開済みで、それぞれに近接用の武器をもっていた。
右手にガンダムバルバトスのメイス、左腕にショートアックスという出で立ち。
なんだろうな。腕増やせば火力アップって凄い単純だよなぁ。
「なんだィなんだィ!随分大人しいじゃないか!!八神ぃ良い子達じゃないか、嘘ついたね?」
不意に飛び込んでくる声に一瞬たじろぐが、画面の向こうの彼女の顔は満面の笑みな事に安堵する。そのかわりに子供達の顔は少し暗い。それはそうだろうなぁ、初めて完璧に負けてたもんなぁ。
作戦が説明され、いざ開始しようとした時の事を思い出す。
※※※※
『作戦はだいたいわかった!でもこの人が見た目通りなのかためさせて下さい!!』
言い出したのは京谷だったか茶輔だったか。団長の正体を知って1番驚いたのは千恵だったのは覚えている。
だがそれでも、見下されてると思った彼らの戦闘意欲には既に火が入り今にも爆発しそうだった。その挑戦を受けるシズクも、散々煽りながら準備し始めていた。
団長はやれやれと肩を持ち上げ、俺はただただ慌てていたと思う。
場所を移して仕切り直し、団長の意向で用意された演習場は見慣れたソレ。この地面に何度も打ち据えられたものだ。
きっと今でもこの地面には様々な新人の涙が沁みてると思うと、なんだか俺も泣けてきた。
頑張ってくれたまえとしか先輩の俺からは言えんのだ。
『で?3人で来るかい?それともタイマンかい?!』
オレンジカラーのグレイズアインが大型アックスを左肩に担ぎ、手招きで挑発する。
それに1番に乗ったのは、京谷でも茶輔でもなく。すでに全開になっていた千恵だった。
ただでさえ緊張のピークだったのに、追い打ちのようにこの戦闘だ。
他の2機を振り切ってフルスロットルでバーニアを吹かす千恵の【グリモア・ランページ】が肉薄する。
背丈が高いグレイズアインに対して、右のダッキングを決めつつ懐まで一気に潜り込み顎に向けてアッパー気味に鉄拳を突き上げた。
それをスウェーで避けるシズク機は、飛び上がった千恵機に対して、返す刀で左腕の大型アックスを振り下ろす。
そのチョッピングに対して、千恵は背面バーニアを一瞬だけ強烈に吹かしあげ、左脚の甲をシズク機の左手首に下から引っ掛け、そのまま一回転し飛び越えるように背面に回りこんだ。
瞬時に後ろに回った千恵は、グレイズから離れようとする機体の慣性の力を無理矢理にバーニアで殺しながら今度は2連パイルで狙いを定めている。
鋭く尖った杭が目指すは、グレイズアインの中でも1番面積の広い胴体部分。
背面に回られた事で反応が遅れたようだったが、長年のカンなのか狙ったのか。
カウンターの如くシズクは右脚の踵から後ろ側に向けて蹴り上げていた。
猛禽類の爪を彷彿とさせるその脚が既に加速し始めた千恵に襲いかかる。
さすがの超反応も、この体勢ではできない。
『アッハ!!』
千恵の笑い声が聞こえる、やっと本調子になってきたようだった。迫り来る爪に全く恐れていない声。
知らずうちに自分の拳に力が入っていたのだろう、今でもあの熱は忘れられない。
そんな俺の、声にならない応援に呼応するように千恵機はその場で全身を右に高速回転させる。
攻撃の方向に合わせた回転で致命傷は避ける。
…が、右腕の鉄拳とバーニアの一部がシズク機の爪先が掠り、そのままバラバラに破壊される。
一撃の重さが並の機体を凌駕しているのだ、どんな改造施しやがったのか。
空中でバランスを崩し、そのまま地面を横向きに転がる千恵機。
だがその状態のまま起用に腕だけでジャンプし距離をとろうとしていた。
その着地の隙をシズクが見逃す訳がない。
踏み込む速度に推進器の加速を合わせ、離れた距離を一気に詰める。
だが、シズク機の左腕の装甲が爆発。
『お前等だけでぇ!楽しむんじゃぁねぇぇよぉぉぉぉ!行くぞ、千恵ぇ!京谷ぁ!!』
『おっしゃぁぁ!!俺たちが負ける訳ねぇだろぉぉ!!合わせろ千恵!』
シズク機を中心に置き3機が左螺旋を描き始める。
そしてその渦をどんどん狭めながら、茶輔の【グリモア・タイラント】と京谷の【グリモア・オンスロート】が迫っていく。
そこに体勢を整えた【グリモア・ランページ】が加わり攻撃が始まった。
攻撃の口火を切るのは茶輔機。全速力で左にサテライト起動を描きながら、左腕のガトリングと右腕のグレネードの砲身が銃弾を吐き出していく。
その射線を避けるように茶輔機の後ろに回りこんだ京谷機が、両手のマシンガンを乱射する。
壁の如く貼られた弾幕に、さすがに堪らずシズク機は両手をクロスさせ防御する…が。
防御の前にアンダスローで持っていたアックスを投擲。
その攻撃に対して、茶輔機と並走する京谷機が右背面の折り畳みグレネードランチャーで迎撃する。
そのまま発射の反動をあえて押さえ込まずに、逆に利用し機体自体を回転させ、そして茶輔機と逆のサテライト軌道にスムーズに移行しつつ乱射を再開。
京谷機と別れた茶輔機は、破壊されたアックスの残骸など気にも止めずに攻撃を続行。
グシオンリベイクフルシティのバックパックの隠し腕に持つ銃剣付きライフルと、マシンピストルもそれに加えていく。
そして、それらの攻撃自体が囮。
空中に飛び上がった千恵機が、垂直落下とバーニアの推進力を合わせて2連杭打ち機に取り付けたニッパーシールドを展開し迫る。
サイクロンのような濃密な弾幕、その中心部。
台風の目に縫いとめられたシズク機には動けるはずもなかった。
そしてその真上からは砲身から飛び出た銃弾のようになった千恵機。
これ以上無いほどの連携。
普段はただ闇雲に暴れるだけだがいつのまにこんなコンビネーションができるようになっていたのだろうか。
だが、相手はあのシズク。そんな簡単に終わらない。
徐々に狭まる弾幕の中、防御した腕をそのままに垂直に飛び上がる。
そうして、一瞬でも弾幕から逃れたシズク機の背中から通常MSの脚ほどの長さの三本目の腕が展開。
ガンダムヴィダールの脚を改造したのであろうソレが、ニッパーシールドの刃を突き刺そうとしていた千恵機を無造作に掴み締め上げ、真下に向けて叩きつける。
吹き飛んだ千恵機の先にたのは、ちょうど茶輔機と京谷機が重なりあうその場所。
3機の正面衝突による爆発はそれは派手なモノだった。
相変わらず、無茶苦茶だったアイツは。
子供達もよく戦っただろう、良いガス抜きもできたのではないだろうか。
演習場から帰ってきた3人の顔をそれぞれ見てやると、かなり不満があるようだった。
先ほどまでの戦闘データを繰り返し確認しながらコンビネーションプランを練ってる姿は、いつもの3人ではないような気さえした。
「さて、そろそろ襲撃ポイントだ。諸君…派手にやろう。」
無線から発せられる団長の声で回想から呼び戻された俺は一層気を引き締めてスコープ画面に注力する。
アイツらが誇れる俺になるために、だ。
千恵「…。」
茶輔「……。」
京谷「………。」
八神「一丁前に拗ねてやがる。やれやれ、…次回!」
シズク「だらしがないねぇ!もっとシャキっとしナぁ!!
次回奮闘記第4話!!鉱山攻防戦!!!アタシとヤリてぇ奴は前に出な!!!!」
八神「…お、俺の出番はまだなのか…」