孤児院隊長奮闘記   作:あげびたし

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奮闘記:5 鉱山攻防戦・後編

鉱山の周りの巡回兵達をたった一機で制圧するのには、流石に骨が折れた。

だが、敵はかなり練度の低い奴らだらけ。楽は楽だがそこが不思議でもあった。

本当にこいつらは、あの団長達と互角に戦えていたのだろうか。

普通に考えて、ありえないほど弱い。

偵察は穴だらけ、情報管理はお粗末。しかも武装は野太刀や槍といった戦国時代のような物。

辛うじてある遠距離武器といえば、カラクリ式の大筒と火縄銃持ちが散見する程度。

白兵戦は確かに素晴らしい練度なのだろうが、いちいち名乗りをあげ射線に飛び出してくるのは如何なものなのか。

 

「新人相手にはそれが効くだろうが…まさか、そういう事か?シズクの奴…エゲツない事しやがる」

 

スコープ越しに更に一機。俺は右翼から攻め立てていた敵の隊長機のコクピットを打ち抜く。

あんな目立つ三日月の意匠のツノ飾りじゃ狙ってくれと言わんばかりだ。

消滅を確認し次の狙撃ポイントへ移動しようとしたその時。

戦場全てに響く声。オープンチャンネルで捲したてるのは、どうやら敵の長らしい。

酷いダミ声で金ピカの羽織と真っ白な着物。

そんな悪趣味な衣装を着たのは巌のような顔に隈取りを施し、能で有名な白獅子に扮した随分と傾いた大男であった。

…なんだ、あれは。

なにやら大声で喚き散らしてはいるが、よくわからん。とりあえずアレを倒せば終わりだ。

こんな茶番は、さっさと終わらせるに限るだろう。

俺は子供達の相手をしている時以上の疲労感を感じながら、無線封鎖リコンを巻きつつ更に鉱山へ進みだす。

だがその瞬間にその目標としていた方向から、もの凄い地鳴りが響く。急ぎスコープの倍率をあげ確認。

鉱山の中腹、盛大に吹き上がる土煙りの向こう側。その中に浮かび上がる巨大な影。

 

「なんつー物を持ち出してきやがった…あれは流石に相手にするのは面倒だぞ…?!」

 

俺は急ぎ子供達と合流する為に進路を変更、全速力で来た道を戻る事にする。

そして、あんなモノを見た子供達の反応を想像する。

…嫌な予感しかしない。

そう思いながら今まで切っていた味方の回線をオンにする。

そこら中から聞こえる新人達の怒声に混じり、時々聞こえる胃にダイレクトに響く声。

絶対に聞き逃せない会話内容。

 

「なんかよぉ変なオッさん出てきたぜぇ?」

「俺知ってる!!!馬鹿トノってい言うんだろ?!テレビで見た!!」

「ちがうね!アレは!!ただの馬鹿だよ!!!!」

「ならよぉお?!アレ、先にぶっ倒した奴が今日の晩飯当番なぁ?!」

「「乗った!!」」

 

ゲラゲラと笑う声を無線が拾う。

ほら、やっぱりな。そうだよなそうなるよな。

お前らはそういう奴らだよ、知ってたよ。でも勝手に突撃していく前に合流できて本当に良かった。

まだ、間に合う。

あんなのに単騎で突っ込ませる訳にはいかないからな。

というかシズクも笑ってないで手綱をしっかり握ってくれよ。

作戦行動前にあれだけ念押ししたじゃないか!!俺の味方はいないのか!!!

また胃がキリキリと痛みだすが、ここはぐっと堪えて移動に注力する。そのおかげか、なんとか飛び出す前に彼らの目の前に追いつく事に成功する、これで大丈夫だ。

 

「あ!隊長だ!!隊長隊長!!たぁーいちょぉぉ!!敵沢山倒したよ?!偉いでしょ?!」

「はー?!ちげぇし俺のが倒したし!!千恵は止め差してねぇからノーカンだし!!」

「とどめってんなら俺が1番だろぉ?!敵部隊長穴だらけにしたの俺じゃぁねぇか!」

「そォいう事なら、アタシが1番だね!きっちり真っ二つにしたのはアタシ!!だからアタシが1番だ!」

 

いや、シズク。いやシズクさん。混ざらないでくれ。これ以上の負担は本当にやばいんだ。子供達のノリで来られたら、俺ではもう収拾がつかないんだ。

ほら見ろ、千恵のやつが無理矢理俺の機体の腕掴んで、頭撫でさせてるじゃないか。

どうにかしてくれよ。

それにな、お前ら状況わかってる?敵の親玉が頑張って見栄張ってるんだよ?見てあげようよ。

あんなでっかい機体で出てきたんだよ?あっちみよ?

 

「きぃさぁまらぁぁ…!!!我を誰だと思っておるかぁぁぁ!!!!」

 

また響くダミ声。正直耳障りも甚だしいが、ここは頑張って興味を引いてほしい。

ホラ、なんか無いのか。子供達を振り向かせられる武器とかは。

 

「しっかしまァ…見てくれは兎も角、立派なもんじゃァ無いか。サイコガンダムとはね」

「えぇ。所々に見える城の意匠を見るに城に変形できるようですな…アダッ!!」

 

同意して補足してたらどつかれた…なんでだ。俺が何をした!

 

「もうアタシは上官じゃぁないンだ!!敬語なんて使うんじゃないヨ!気持ち悪い!!」

「「やーい怒られてやんのー」」

「あぁぁ!!隊長に手ぇだしたなあああああ!?!?」

 

あぁ。早く帰って濃いコーヒーでも飲んで布団に入りたいなぁ。

でもアレ倒さなきゃ、帰れないんだろうなぁ。

現実逃避は良くない癖だと頭で理解しつつ、どうしてもやってしまう。

ダメだ、俺がしっかりしなければ。

そんな事を考えているところに丁度良くあちらから攻撃が開始される。

仮呼称【城サイコ】の指から発射される拡散メガ粒子砲の無差別攻撃。

だが、そんな大雑把な攻撃が当たる訳がない。

それぞれが余裕を持った回避行動を取りながら作戦を伝えていく。

 

「いいか、よく聞け。あの【城サイコ】との距離はまだ遠い。俺が気をそらしてやるからシズクきょ…いやシズクを先頭に突撃機動を取りつつ接敵。その後は足元から切り崩すぞ」

「なンだ。意外と普通の作戦じゃない?まぁ手堅いのもいいものサ」

 

無線画面の向こう側から凄い形相でこっちを見るな。

ただでさえ面倒なのが加速するじゃないか。

 

「わかったよおおおおおお!!!!じゃぁいってくるねええええええ!!!!!」

「あ、また抜け駆けすんな!!待てコラぁぁぁ!!」

「アイツらぁぁ!!先に行ったら俺が不利になんだろぉがぁぁぁぁ!!!」

 

敵のやたらめったらな攻撃の中、ドップラー効果を残しながら突っ込んでいく3機。

俺が!!説明した!理由は!!何だった!!!

 

「本当に元気な子だよ、全く。…正直アンタは良くやってるよ。」

「同情するならちったぁ手伝え…」

「ぷっ…アハハ!!そうそう、そうこなくっちゃ!その顔してる時のアンタが好きだよアタシは!!」

 

そう早口で言い残し子供達の後を追うシズク。

お前もかよ、俺の話を聞いてくれる奴はいないのか。

畜生め、こうなったら八つ当たりだ。

 

操縦桿のグリップの頂点にあるハッチを開け、中にある赤いボタンを押し、右脚を力強く地面に打ち着ける。

瞬間、打ち据えられた地面のフィールドデータが割れたステンドグラスのように爆ぜる。

キラキラと量子化していくデータの下には電子の海。

それが一瞬垣間見えたが、その空間を埋めるように現れたのは多数のハッチをもつ硬質な床。

いや床では無い、これは。

()()()()()()()()だ。

都合36機のミサイル・ハッチ、1つのハッチに装弾されているのは小型トマホーク型ミサイルが十二発。ソレが一斉に敵に襲いかかるという寸法。

これが俺の奥の手。いわゆる必殺技だ。

 

「ああああ!!!もう知ったことか!!コイツで吹き飛びやがれぇ!《イノンブラーブル・メテオール》!!!!!」

 

計432発のミサイルが地面から空高く舞い踊り、流星となって降り注ぐ。

ロックオン機能を搭載したミサイル群は、一心不乱に目標に向かって突き進む。

後は突撃していったアイツらがうまくやってくれるはずだ。

メテオールのミサイル達の軌跡を眺めながら、射撃姿勢をとりスコープ越しに子供達を見る。

千恵の【ランページ】京谷の【オンスロート】茶輔の【タイラント】そしてシズクの【グレイズ・ペイン】が流星群の如き弾幕の中、あの巨大な【城サイコ】に襲いかかるところだった。

 

※※※※

 

「報告します!!!右腕損傷甚大!!拡散メガ粒子砲沈黙!!」

「腹部装甲融解!!もの凄い熱量です!!隔壁456から500まで閉鎖します!!」

「ダメです!!敵機に懐に入られました!近距離銃座の弾幕が追いつきません!!焼け尽きます!!!」

 

オペレーター達の泣き叫ぶ声が遠くに聞こえる。その不協和音の中、自分の腹の内側は煮えくりかえっていた。

なんなのだ!なんなのだ奴等は!!この我が【武田大将軍】の威風堂々とした姿を見て、何故恐れぬ!

それに対して我が軍はどこにいった!直掩機は!!真田の【赤備盾無武者頑駄無】と本田の【最強東照頑駄無】という我が軍最強の矛と盾はどうしたのだ!!!

急ぎ2機の姿をレーダーで探すと、映ったのは無数のミサイルを全身に被弾し消滅する2機の瞬間であった。

唖然とするしか言いようがない。何故だ。あの知将が率いた最強の軍隊とも渡り合えた我が軍が何故?!

 

「何故だぁぁぁぁ!!!何故!!!我は武田・ゲンシン!!最強の将軍であるぞおおおおお!!」

「吠えるな、髭ダルマ。気づかなかったのかィ?アンタが一生懸命に今まで戦っていたのはサ、アタシ等の新人部隊だっていうのにねェ!!」

 

コクピットモニターに映り込むオレンジ色のグレイズアイン。

我が【武田大将軍】の顔面に張り付く不届き者。

だが、今奴はなんと言った?我が相手していたのが新人部隊?

頭の先まで登っていた血の気が一気に引いていく、と同時に闘志が急激に萎えていく。

 

「実際良い訓練相手だったよアンタ達は!でもねぇ…もう役不足なンだよ!!失せなド三品!」

 

そう言いながら大型アックスを振りかぶる不届き者。ただの状態なら容易く跳ね返す事ができただろうが、被弾により露出した機関部に食らえばひとたまりも無い。

これだけは、使いたくなかった。だが、こうなっては仕方がない。

これは最終手段。使えばもう戻れない。

だが、それがどうしたというのだ。

ここまでコケにされた我がプライドにかけて、此奴だけでも地獄に送らねばこの怒りは収まらん。

 

「調子に乗るな!!!雌狐めがぁぁぁぁ!!!」

 

禁断のボタンを拳で叩き割るように押しつける、途端に青いコクピット内部が紫とも黒とも言えない色に満ちる。

そしてわかる、身体の奥から力が湧き上がるのが!!

 

「ふ、ふははははは!天魔招来!!崩天滅神!!!これが【武田大将軍】再改め【武田大魔王】の真の力じゃぁ!!」

 

機体に満ちいる力の本流のままに、半壊した右腕を振るう。

ただそれだけで、不届き者が吹き飛んだ。

なんと愉快な事か!!これからは始まるのは、一方的な蹂躙劇じゃぁ!!

 

※※※※

 

戦いは終始こちらが優勢に進んでいた。

圧倒的な破壊力を持つ【ランページ】の一撃で機体は揺れ、手数と素早さで翻弄し続ける【オンスロート】が一方的に攻撃を繰り返す。

そして正面火力では他の追随を許さない茶輔の【タイラント】がその火力で敵に攻撃の隙を与えない。

そしてそれらの攻撃の間隙を縫うようにシズクの【グレイズ・ペイン】が効果的に露出した弱点を叩いていく。

もう、俺にはする事が無い。あの乱戦に混ざれる機体では無いのだ。

せいぜいする事は、たまに彼らが被弾しそうになるミサイルを撃ち落とす程度だ。

そしてついにコクピットがある敵の頭にシズクが取り付くのが見えた。

やっと、終わる。

だが、にわかに湧き上がるのは悪寒。この手の悪寒でロクな事が起こった試しが無い。

俺は無意識に彼らの元へ全速力で駆け出していた。

このまま終わってくれと祈るしか無い。

 

無情な事に、この悪寒は当たる事になる。

 

急激に周囲の空間が歪み、敵の【城サイコ】から紫のオーラが立ち上る。

アレは、まさか。

 

「畜生!クソが!!ふざけんな!!!マスダイバーかよ!!!!」

 

破壊したはずの右腕が真横に振られ、頭に取り付いたシズクが吹き飛ばされる。

運が良かったのはこっちに飛んできた事だ。

マント広げ全身で受け止めるが俺も一緒に吹き飛ばされてしまう。

片腕と片脚を破壊されながらもなんとか致命傷を避けたのは流石だが、これでは戦闘できないだろう。

せめて、敵の射程外にでなければならない。

瞬間、コクピット画面に映る警告表示。

 

それは目の前まで迫った極太のメガ粒子砲だった。

 

※※※※

 

シズク機がボロ雑巾のように吹き飛ばされ、八神が受け止めたその瞬間に放たれた粒子砲。

それによりロストした2人の最期を見届けていた子供達。

その彼らの精神状態は非常に不安定になっていた。

 

子供達がここにいるのは楽しいからだ。

孤児だった彼らを拾い育ててくれたのは彼だ。

様々な事を教えて、ヒトとして接し、いつも一緒にいてくれたのは。

八神という人間だけだった。

彼らにとってそれが全てであった。

 

八神の笑顔が好きだった。

八神の困った顔が好きだった。

八神に叱られてる時本当に悲しそうな顔を見るのが辛かった。

八神のお腹が自分達のせいで壊れているのが辛かった。

 

そしてその全てが自分達に向けられた愛だとは気づいてはいない。

だが、無意識に受け取ったのは確かな「愛情」だったのだ。

ーその彼が、目の前からいなくなる。

初めて出会った時から仕事の時以外でいなくなった事が無い彼が、いなくなった。

 

それが彼らに与えたストレスは、必死で封印していた彼らの本質を呼び起こしてしまう。

そしてその性質はどういう原理なのか、彼ら共に戦ってきた彼らの機体にも染み込んでいた。

彼らは、ソレを自ら開ける。

 

ソレは封印しておくべき事だ。

もう必要の無いものだ。

この平和な世界で、彼らの力の居場所はもう無いのだ。

 

「おぉぉまぁえがぁここにぃぃいるからああああああ!!!!」

 

子供とは思えない咆哮の出所は千恵。

かつて違法薬物の過剰投与により、身体能力を異常に強化されてしまった哀れな子供。

 

「ハイジョ、ハイジョハイジョハイジョハイジョハイジョハイジョ」

 

瞳孔が完全に開き切り、壊れたように呟くのは京谷。

キリングマシーンとして育てあげられ、最後の1人まで殺し尽くさねばならない蠱毒の檻から生還した、悲しき戦闘人形。

 

「……フーッ…フーッ!!」

 

両目が赤く充血し、片鼻からは血を流す。ありえないほどに興奮し獣の形相になるのは茶輔。

戦争が絶えないある国でただ独り闘い続け生き残った結果、人格を失いかけた悲運な獣。

 

それに呼応する彼らの機体のカメラアイが血の色に赤々と燃え上がる。

機体そのものが彼らの身体になったかのような動き、それが敵と認識した巨大な影に襲いかかっていく。

 

それはまさに悪魔のようで、敵にとっては悪夢だろう。

赤い光の尾を引くカメラアイは血の涙のようだ。

 

彼らは今日、今この瞬間。

 

 

彼ら本来の姿に成り果ててしまった。

 

 

 

 




次回、奮闘記第6話 『獣』

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