板挟みな純情な感情。
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迫ってくる。迫ってくる。
赤い目をしたアレ等が、迫ってくる。
恐ろしいほどの速さで動き回る、跳ね回る。
「このぉぉ!!猿風情がぁぁぁ!!!!」
先程から鬱陶しいほどの速さで地面を走る白頭に向け、右腕を振り上げ打ちおろす。
どんなに早く動こうがマスダイバーとなった我と、この【武田大魔王】の力ならばどんな機体でもバラバラになるだろう。
ただ腕を振るうだけ、それが必殺の一撃なのだ。そうだ負ける訳が、無い!!
轟く破砕音が小気味良い。そうだ!これだ!この力があれば!!
しかし、それに割り込むのは耳障りな警告音。
音の出所は機体状態画面だ。それを見やれば右腕が真っ赤に染まっている。
これの意味するところは…まさか?!
「ば、馬鹿なぁぁぁぁ!!!」
振り下ろした右腕。それを真正面から受け止めているのは潰れたと思っていた白頭のグリモア。巨大なクレーターほどに陥没した地面の中でまだあの赤い目がこちらを睨む。
ダメージが無かった訳では無い。左腕に装備していた杭打ち機は破壊され、胸部から左脚にかけての装甲がほとんど吹き飛び中身であるフレームが覗いていた。
恐ろしいのは、その状態でまだ動いているという事。
ただの機体ならば、もう既に粒子化し破壊判定されるはずだ。
だが、目の前のこの白頭は、何故だ。
そしてそんな状態で我が拳を受け止めているのは、右腕に装着された鉄拳型の武装。
全身からオーバーヒートの蒸気が立ち上っているにも関わらず、ソレはその拳を開きこちらの手の甲を掴み、捻り上げる。
無理やり反対に曲げられ、関節が軋む嫌な音が聞こえる。
慌てて抵抗するが遅すぎた。
不快な音を響かせながら肘部分から腕が千切られてしまう。
吹き上がる燃料に火花が混ざり、空高く巻き上げられたパーツが降り注ぐ。
その中で我が片腕を空高く掲げる佇む異形。
だが既に虫の息だ、ならばここで終わらせなければならない!
そう意気込むが、それを邪魔する小蝿が1匹。
頭が紫の4つ脚のグリモアだ。本当に虫の如く五月蠅い奴だ。
地面を無様に這い回りながら、効くわけがない豆鉄砲を繰り返し繰り返し行い続けてきている。
我が機体に傷を負わせられるのはこの子猿だけ。それが既に事切れるのを待つだけならば、先に小蝿を退治してやる!地面を跳ね回る虫は潰すに限るのだ!!
左脚を振り上げ、その頭上に脚を落とそうとした次の瞬間。左膝にビッシリと空いた弾痕が目につく。そう、それは正に定規で引いたような精確さで作られたキリトリ線の如き均等な直線。
そのキリトリ線がミシリと嫌な音を立てながら割れ始める。
…まさか、そんな。
あの猛攻の中、あんな精密な銃撃ができるものなのか?!
驚愕で見開いた目は、踏み潰そうとした虫が背中に背負っていた2つのロケットポッドを斉射したのを捉える。
弾頭が目指すのは今にも千切れてしまいそうな左脚。
切れ込みに正確に直撃したロケット弾が連続した爆発を起こし、千切れかけの左脚が爆散。
片足を失い姿勢制御ができなくなった【武田大魔王】が背中から倒れていくのがわかる。
だがこれで終われるわけが、無い。せめて、せめて1匹だけでも!!
そうやって倒れこみながら探せば、1匹だけ残っていた。素早い動きで翻弄されてしまう2匹より、遥かに鈍い動きの鈍亀の如き機体が1匹。
常に後ろに回り込みながら腕につけた見すぼらしい火器を乱射するだけのお前だ。
お前だけでも壊してやろう!!
倒れ始めてはいるが、片足だけでも方向は変えられる。腰を無理やりに捻りあげ、奴の方に右肩から倒れ込んでやる。
だが、そんな状況にもかかわらず鈍亀は動かない。
諦めたのかと会心の笑みを浮かべるが、それはすぐに消されてしまう。
鈍亀の背中に背負うバックパックの隠し腕がそれぞれ握るパイルハンマーとショートアックスが投擲され肩に直撃、もの凄い衝撃が襲いそれだけで一瞬倒れこむ速度が落ちる。
だが、それだけでは無い。
奴の機体の装甲表面を黒いタールが覆い尽くし、それが肉塊のように蠢いている。
まるで、生きているかのようにブヨブヨと不定形に膨らんでいくではないか。
爛々と怪しく光る目はそのままに、戦車の下半身の上で膨らむおぞましい塊。
その塊を突き破るように巨大な砲身が、まるでハリネズミのごとく無数に生えてきていた。
それらの砲身は、生きているように全てこちらを向き獣のような咆哮を轟かせる。
直撃し続ける無限とも思える砲弾の雨が、倒れ込もうとする我が機体を支え続けていた。
そして、遂には垂直まで戻されてしまう。
「ば…馬鹿な…。なんだ、なんなのだお前等は…」
千切られた腕を片手で振り上げ、飛び上がり叩きつけようとしてくる白頭のグリモア。
4つの脚で顔面に張り付き、万力のように締め上げてくる紫頭のグリモア。
そして、未だ蠢く身体から更に砲身を生み出す緑のグリモア。
血の色に光る3つの目、それが三匹も。悪魔としか言いようが無い。
…我はいったい何と戦っているのだ?
※※※※
縦横無尽に駆け抜けていく。
敵の攻撃に被弾しようが、装甲が破壊されようが全てを無視して一心不乱に突き進む。
機体にかかる負荷で、腰の球体関節の接合部が火花を散らすのもお構い無し。
右腕で殴りつけ左腕で突き破る。悲鳴をあげる身体には目もくれない。
避けては撃つ。避けては撃つ。正確に冷静に精密に。
狙った場所がどこであれ、どんな状態であれ、やっていることは変わらない。
狙って、撃つ。それを何度も繰り返している。
吐き出し続ける。銃弾を相手が倒れて動かなくなるまで撃ち込みつづける。
銃弾が尽きれば殴りかかる。沈黙するまで叩き続ける。
それは身体がどうなろうが、命ある限り動きつづける限り終わる事が無いのだろう。
彼らが成り果ててた先に手に入れた力は、そんなモノだ。
どうしようも無いほどに、呆れ返るほどに単純なモノだ。
獣の如き雄叫びを上げる機体。
静かに機械のように仕事をこなす機体。
薄ら寒い笑みを張り付かせながら攻撃を加え続ける機体。
その行動の全てが人間離れをしていた。
機体の限界値を超えた機動力、どの姿勢からでも射撃を外さない補正力、異常なほどのタフネス。
3機に共通して現れている現象は数値では測ることができない。
これが仮装空間での出来事であるにも関わらず、彼らの中に燃えているのは生への渇望だった。
『死にたく無い』
ただそれだけの感情。
孤独の中で生まれた子供達に残っているの自我は、その恐怖しか残っていないのだ。
八神という男が与えてくれた愛情も、教えてくれた常識も今の彼らは忘れている。
ただ、目の前の敵を倒す事だけが、彼らからその恐怖を忘れさせてくれるのだ。
京谷と呼ばれた子供が無慈悲にコクピットごと顔面を潰し。
茶輔と呼ばれた子供が機体から吐き出した砲弾でバラバラに引き裂き。
千恵と呼ばれた子供が破壊した巨大な腕を肩口に向けて振り下ろす。
これ以上無いほどまでに破壊された機体が光の粒子になっていく。
中から男の悲痛な叫びが聞こえるが既に彼らの興味はそちらには向かない。
彼らは止まらない。止まれない。
止まってしまえば彼らは終わりなのだ。
共通の敵がいなくなったならば、次は自分以外が敵。
半壊した白頭のグリモアは、左腕を無理やりに引きちぎりそれを武器にする。
未だ狂奔の中にいるのか、振り回す腕で牽制を繰り返す。
無傷な4つ脚のグリモアは、それぞれに両腕の銃口を向け油断なく構える。
淡々とした動きで正に機械のように急所を狙い、エンジン音を空転させ威嚇し続けている。
肉塊の奧から低い獣の唸り声を上げるのは、タールの塊となり砲身を身体から生やした戦車型。
過剰な砲撃で半ば融解してはいいるものの、今度は口径の小さい銃身を次々に生み出す。
今にもそれぞれが飛びかからんばかりの状態、始まれば止まらないであろう。
その彼らを背後から照らすのは、地平線の先から少し顔を見せた太陽。
光が差した瞬間に響くのは砲声。
彼らがその音に反応し、そちらに顔をむけたその時に聞こえるのは彼らにとってはかけがえのないソレ。
酷く冷たくかつ機械的な声だが、彼らにはソレで十分だった
「停止コード『TKS・05091718』…止まれ。お前達の戦いは、もう随分前に終わっているんだ」
酷く疲れた男が呟く声が、彼らのコクピットから聞こえていた。
※※※※
「あれは、なんだったのサ」
目の前の男は答えない。
長く一緒にいたはずだが、こんな顔は初めて見た。
どんな時でも仏頂面で乗り越えてきたコイツの顔が、今は悲惨なほどに歪んでいる。
今にも死んでしまいそうなほどに歪められた顔に血が出そうなほどに食いしばられた口元。
それが、次に開いたのはそれからだいぶたってからだった。
「必ず説明はする。今はアウトして子供達を家に連れてかえらねばならん」
そうしてログアウトしていく彼がたっていたところを見つめ、無力な自分を恨む。
まただ。また、目の前から勝手にいなくなった。
それだけの事なのに、なんでこんなに悲しいのだろうか。
胸を刺す痛みに耐えながら、空を見上げる。
目元が酷く、熱い
※※※※
あんな事になっていても所詮仮装空間だ。現実では無い。
まるで眠っているかのような姿でコンソールに座り続けている子供達を見て、少し安心する。
だがまさか、こんな事になるとは思わなかった。
すぐに店員に事情を話し、眠ってしまった子供達を強制ログアウトさせ長いしてしまった事を詫びる。
通い慣れ常連となっていた事が幸いしたのか、年配の店員は笑いながら許してくれた。
こちらの事情もある程度知っている彼は、孤児である子供達をまるで孫のようだとも言ってくれた。
その好意に感謝を示し3人を車に乗せ、我が家へと戻る。
真っ暗な部屋の中、布団を敷きその上にゆっくりと子供達を下ろす。始めて会った時よりもだいぶ体重は増え、肌も綺麗になってはいる。
だが、刻まれた傷は深い。もう起こらないと思っていた。だが、起こってしまった。
それが本当に悔しい。俺は無力なのか。
頬に熱いものが伝い、手の甲に落ちる。喉から出かかる嗚咽を必死で堪える。
そうしてどれほどたったのか、鳴り響く間抜けな電子音でわれにかえった。
ポケットから出した端末に表示されたメッセージ。
送信者の名前は良く知っているモノ。
「…話して、おくべきだな」
しかし今、彼らだけにしておくのは無理だ。
なので返事にはこう書き込んだ。
『実際に会って説明したい。できるか?』
震える手で送ったメッセージには、すぐに『了解』のリプライが飛んできた。
だが、その短いやり取りで身体に力が湧いてくる。少し楽にもなった。
どこから話せばいいのか、頭を悩ますが今は、この子達と一緒にいなければならない。
3人の頭を順番に優しく撫でながら、今日は眠らずに見ていてやる事にした。
シズク「はぁ…なんでなんだろうな。こんなにも悲しいのは。私らしくもない。全部アイツのせいだ。そうに決まってる。…っと!何みてるンだい!!え?予告?アイツは?はぁ?頼むって?……しょうがないねぇ全く!
次回!!奮闘記第7話!!『家族』!!絶対見るんだよ!!!」