孤児院隊長奮闘記   作:あげびたし

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シリアスを書いてるとお腹が痛い。でも楽しい
ほのぼの書いてると脳が痒い。でも楽しい



いつも閲覧してくれる方に感謝を。これからよんでくれる方にも感謝を。感謝を忘れずに楽しんで書きます


奮闘記:7 『家族』

『指定された駅についたぞ』

 

端末に送られてきたメッセージは酷く簡潔なものだった。

そんなに長い付き合いではないのだが、なんだか彼女らしさがそれに滲み出ている気がして少し嬉しくなる。軽く返事を送りながら伸びをした。

リアルでは初めて会うのだが、気心が知れているからなのか、なんなのか。

かなり気分は落ち着いている自分が少し可笑しい。

ここは、駅からそう遠くない公園だ。国の緑化事業の一環で行われた都市整備にあやかって、ビル群の中にポカリと空いたエアスポット。

かなりの規模を誇るこの公園は、休みの日になれば子供連れでごった返す。

だが、今日に限って公園内は閑散としている。

だだっ広い芝生を駆け回っているのは、あの3人だけだ。

元気に走り回っている姿をみると、昨日の事が嘘のように感じる。

京谷・茶輔・千恵の3人が鈴のような笑い声を響かせながらながら駆け回り、たまに置いてかれる千恵がゴロンと転がる。

それを見て他の2人も笑い転げている。あぁしてみていれば、本当にただの子供だ。

何かと気づいたように明後日の方向を見る3人。視線の先には犬の散歩に来ていた老婦人いる。

恐る恐ると近づいていく千恵と、それを笑いながらくついていく3人。

ちゃんと断って触り出すのは、一応年長者の茶輔。千恵は京谷の背中に隠れてはいるがその顔は笑顔であった。

なんだろうか、目頭が熱くなってきた。木陰から刺す太陽の光ではない。

 

「…あの子達なのね。可愛い子供達じゃない」

「あぁ、自慢の子供だよ」

 

無遠慮に隣に座ってきた黒のパンツスーツ姿の女性には顔を向けず、答える。

少し前から気づいてはいた。だが、それとなく声をかけづらかったのだ。

あちらから話しかけてくれて良かった、声色もGBNの世界とほぼ変わらない。

それに、背格好も。

顔だちは流石に違うが雰囲気がそのままだった。

セミロングの黒髪に、気の強そうなつり上がった大きな目。本当にそのままだ。

だが解せないのはそ彼女以外の気配。何か監視するような視線を感じる。

 

「あなたってゲームそのままなのね。本当の軍人みたいよ?…あと彼等の事は気にしないで。ただの護衛だから。」

「護衛…?そんなものが必要なのか?」

 

ここで初めてしっかり顔を向ける。見ればみるほどゲームとそっくりなシズクの顔があった。こちらを見据える目には、力強い意志を感じる。

 

「まぁ…これでも大会社の社長サマだからね。仕方ないンだよ」

「あ、今のはシズクっぽいな。本当にシズクなんだな」

「アンタはゲームよりも性格が丸いんだね。ヒョロヒョロしてたら笑い転げてた」

 

そう言って軽く笑いながら懐から名刺を取り出す。それを受け取った俺を軽い目眩が襲う。

 

「か、海運会社…有澤インダストリー代表取締役。有澤(かすみ)?!」

「ま、今は代理だけどね。お爺様が父よりも孫の私を選んだのよ」

 

有澤インダストリー。

この名前を知らぬ日本人はいないだろう。業界最大手の老舗会社。

海運送業のトップに立ち国の資本を底から支え、海外にも多く支店をもっている。

その、社長が。まさか…。

少し、胃が痛い。

そんな様子がおかしかったのか、涼しげな顔を破顔させるのは良く知ったシズクの顔だった。

周りの気配も少し慌てているのを感じるとこと、かなり猫かぶりが上手いようで安心する。

 

「お前、本当に社長か?…熊田八郎だ。孤児院マーゼランの管理人だ」

「孤児院の事は知ってるわ、八郎。初めまして…は少し変ね」

 

そう言って目に涙を浮かべて笑顔をみせるシズクこと霞と立ち上がって固い握手を交わす。

その姿は社長に似つかわしい堂に入ったソレ。

身長もかなり高い、ヒールがあるとはいえそれでもかなりのものだ。

そして握手をした時にわかる、かなり鍛え上げている。

本当にゲームのシズクそのままなのだ。

 

「もう一回言うけど、アンタ凄いわね。ウチの社員にもガタイの良いのはいるけど、それ以上じゃない」

「…まぁな。それはおいおいだ。まず紹介させてくれ」

 

マジマジと観察してくる彼女の視線から逃れるように声を張り上げて、子供達を呼びつける。聞こえた声に反応し駆けつける姿はまさに子犬さながらだ。

 

「なんだ!…だれだ!!!てきか!!!」

「もうメシの時間だっけかぁ?たしかに腹ぁへったけどさぁ」

「………」

 

彼女の姿を見た三者三様の反応。

京谷、いきなり誰だはないだろう。

茶輔、飯はまだだ。それにちゃんと挨拶しないか。

千恵よ、すぐに俺の背中に飛び乗って隠れるのはやめなさい。

だが、子供達の姿を近場で見た彼女の反応はもっと突き抜けてたが。

 

「なンだい!ほんっとーにガキじゃないか!!コイツら本当に強いのかイ?!」

 

開口1番、腰に手を添え胸を張りながら呵々大笑する。

うん、いやわかりやすいけどね?もうちょっとあったでしょうよ社長!!!!

 

「…あ!!!ちょうつよゴリラおばさん!!!」

「うおっびっくりしたぁ…ってなんだあん時のおばさんかぁ」

「こ、こんにちわ…」

 

ソレは、まずいんじゃないかねキミ達。千恵はちゃんと挨拶できたな偉い偉い。

あぁなっちゃいけないぞ、なったらあんな風に振り回されちゃうからな。

公園に響くのは2人の子供と、それを笑いながら追いかける女性とは思えない声。

予想以上の驚きもあったが、これはこれでよかったと思えた。

 

※※※※

 

「…なるほど、ね。」

「あまり驚かないんだな。もっと反応してもいいだろ」

 

遊び疲れて眠ってしまった子供達を車まで運び、その足でまた出会ったベンチに座る。

既に日は傾いてはいるが、暖かい気温はまだ続いていた。

これまでの俺の経緯、そして子供達との出会い。全ての話をポツリポツリと語った。

その間、彼女は何も言わず視線を手に持った缶コーヒーに落としながら、ただ相槌を打つだけだった。

喋りすぎて枯れてきた喉を水で潤している少しの間で観察してみるが、その顔は驚きよりも悲しさの色が見て取れる。

すこし、意外だった。てっきり激怒するかとおもっていたからだ。

 

「…意外と大人しいんだ、な?」

「ハラワタが煮えくり返ってンだよ。気付け」

 

怒ってらっしゃった。

睨みつけられた蛙のように身体が縮こまる。

 

「でもまぁ、合点がいったよ。アンタの身のこなしと彼らの背景。納得できた」

「そうかい、他言してくれるなよ今日が空いててよかった」

「ソレは安心しなよ。今日はウチらの貸し切りだから」

 

社長って本当に凄いんだなぁと感じた。聞けば犬を連れていた老婦人は、心配で見にきていた祖母だという。

言われてみれば、確かにただの老婦人にしては気品があった気がする。

乾いた笑いが口をついた瞬間、目の前に出された右手。

顔を上げれば、仁王立ちした彼女。

 

「改めて、握手よ。ソレに、決めた事があるわ」

 

頭ごなしのソレは、有無を言わさぬ迫力があった。

抵抗は無駄だとわかった俺は渋々ソレに応じながら立ち上がる。

 

「決めたって…何をだ」

「アタシはアンタと結婚する」

 

ハイ?あなた今、何を言ってらっしゃるの?

ソレに手の力が凄いんだが、逃げられんのだが?

 

「あ、違った。アンタと一緒に暮らす」

「何も違わねぇ!!!」

 

遠くに見えた老婦人が視界に入る。

笑顔だ、いやいや。貴女のお孫さん暴走してるの止めてくれませんかね?!

何やら早口で捲し立てている彼女の声は、全く耳に入らずただただ天を仰ぐ。

 

一体、これからどうなるんだ、俺は。

 

※※※※

 

目の前には机に突っ伏したように笑うのは知将と呼ばれ、敵味方問わず恐れられる我らが隊長だ。

そんなに笑うことはないだろうが、顔をあげた瞬間にその笑みはいつもどおりに戻っていた。

ここは言わずと知れた作戦指令本部。その最奥地に存在する団長室。

いつもなら戦略を競い合わせる各部隊の隊長たちで騒がしいのだが、今は俺たち3人だけ。

右隣は腕を後ろで組み、仁王立ちの姿勢を崩さないシズク。

その顔は本人は喜色満面のつもりだろうが、見る人がみれば絶対に近寄りたくないだろう。

そう言う俺は、きっと胃痛で青ざめた顔をしているのだろう。脂汗すらでてきそうだ。

 

「いやいや、笑って済まなかった。だが、経緯はわかった。君が決めたのならば引き止める理由は無いだろう。…なんだ、お幸せにな」

 

そう言って握手を求める手に応じるシズク。

俺もソレに習い、何食わぬ顔で応じ団長室を後にする。

なんともまぁ、全てが急に決まったものだ。

ほとんど俺に拒否権は無かったが、トントン拍子で決まって行く事に多少目が回った。

結論から言えば、俺とシズクの結婚の話は保留となった。

ソレはそうだろう。

大企業社長が結婚、ソレもどこの馬の骨かもわから無い男とだ。

会社は上から下までの大混乱。笑っていたのは彼女の祖母と母親ぐらいではないだろうか。

いままでの生涯であんな死にそうな目にあったのは…けっこうあったが、アレは別ベクトルに緊張した。

まず先代有澤インダストリー社長との顔合わせ。いや、アレは謁見だな。

90歳だとは全く感じさせない迫力の爺さんと、ソレとは真逆なのんびりした彼女の祖母。

そして迫力こそなりを潜めたのだろうが、まだまだ絶好調だと言わんばかりの彼女と瓜二つの母親。

父親は海外出張でいなかったものの、かなりのインパクトを俺の脳に焼き付けてくれたもんだ。

聞けば有澤家はなんと女系の家系らしく、シズクはその中でも1番初代様に似ているのだとか。

いや、今はそんな事は置いておこう。まず変化があったのは2つ。

俺達のフォースにシズクが加入した事。

そしてリアルの俺達の家に霞が入居してきた事。

その2つだ。

なんだろうな、普通に言ってるけど凄い事なんだよな。でもこんな事にすこしも動揺してないのは子供達のおかげで慣れたからかな。

…慣れたく、なかったなぁ。

 

「オイ!もっと喜べよ!!これからアタシも一緒なンだぞ?」

 

そう言いながら背中をバンバン叩く手にはたと気づく。

俺達の家は、俺が溜めていた貯金でどうにかなってはいるが、こいつはどうなるんだ?

有澤家から飛び出した彼女にそんな資金があるとは…。

 

「ん?あぁ心配すんな!!!お前らを養って生きてくぐらいの蓄えあるから!!」

 

破顔一蹴とはこの事か。

顔を少し赤らめながら笑う彼女の目を見ていると、ソレもいいかと思えてくる俺が怖い。

あまり彼女に頼らずに仕事を探そうと隠れた誓いを立て、俺を待っている子供達のところへ歩を進める。

 

今までは1人だった。

だがこれからは2人で、だ。

 

言いようの無い感情に、俺の胃痛は今日に限って痛まなかった。

 




茶輔「なんか、色々あったんだなぁ」
京谷「俺らがねてる間に、なにがあったんだ…」
千恵「で、でも、なんか良いよね。…よくわかんないけど」
茶・京「「まーなぁー」」
千恵「あ、でも晩ゴハンのおかずが減るんじゃ…」
茶・京「「やっぱ今の無し!!!!!」」

八神「はぁ…全くお前らは…
次回!奮闘記第8話 ヨーロッパ遠征!…い、嫌な予感しかしねぇ」
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