えっ?シロちゃんがIS世界で為無双を!?   作:アメリカシロヒトリ

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初めてのあいえす☆初めての出撃

 

 

『いやーシロちゃんねぇ今日も可愛いですねほんとにねぇえハイハイハイハイ』

 

「ね“え”え“え”え“何しに来たのぉ!?何でISに馬が付いてくるの馬鹿じゃないのぉ!?」

 

『いやいやいやいやいや、違います違います僕はねあのほんとにねあーのシロちゃんのね操縦をあくまでもサポート!するために今日は来てますんでねハイハイハイ、まぁ今日はこのVR. CHAR君とね一緒に頑張って貰えればと思いますねほんとにねハイハイハイハイハイハイ』

 

「ね“え”ぇ馬なのに親面しないでぇ!!」

 

 シロはもう心底から嫌がっていた。確かに自分ひとりでISを動かすのは初めてだから不安もある。誰かと一緒にやれればそれは心強いことだろう。しかし、何だってシロが駆るISにAIを乗せちゃったのか。それでは本末転倒ではないか。製作者は何がしたいんだ。馬【ピー】ね。色々な感情がシロの中に渦巻いていた。

 

 なおVR. CHAR は同じAIであるシロにしか見えないので、今のシロは傍からみるとISを起動した瞬間情緒不安定になって喋り出したように映っている。

 

『あーシロちゃんシロちゃん、VR. CHAR君の姿はねシロちゃんにしか今見えてないんでね、ハイハイちょっとISを展開してVR. CHAR君を実体化させてもらえますかね』

 

「な↑んでそういうこと早く言わないのぉ!もおぉ!」

 

 憤りながらシロはVR. CHAR を展開する。やっとこさ窮屈なISコアから解放されたVR. CHAR は気持ちよさそうに伸びをしたが、次の瞬間真耶に警備員を呼ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやちょっとやばくないすかあのお姉ちゃん、VR. CHAR君もねまさかAIが通報されるとは思ってなかったんでねぇちょっと』

 

「黙って!」

 

『ハイ』

 

「何をゴチャゴチャと言ってますの!!」

 

「ほきゃああああああああああああああ⚡⚡⚡」

 

 シロは絶体絶命だった。馬は何故か実体化してもISの姿にならず、戦闘してくれるでもなくただ逃げ足が速いだけの馬だったからだ。あまりのザマにセシリアも手を抜いて砲撃しているが、このままだと馬のシールドエネルギーが尽きるのも時間の問題である。て言うかSE要らなくない?

 

「ホラホラホラホラ!逃げ回ってばかりでは代表候補生の名が泣きましてよ!」

 

「うおぉぉぉぉぉあっ危ねぇぇ!!あ、あぶ、あぶないですぅ。ねーぇウビバISなんでしょ!何とかして!」

 

『いやぁもうちょっとで読み込みが終わるんでねもう少しだけ逃げましょうウゥビバウビバウビバ!!!!』

 

 セシリアのライフルに撃ち抜かれ馬は片腕を喪失する。どうせAIなので血は出ないとは言えまぁまぁ痛々しいビジュアルになるが、シロちゃんは実に嬉しそうに笑った。

 

「……っち。ちょこまかと!」

 

 セシリアは相当なストレスを感じていた。聞けばシロもまた今日初めてISを受け取ったという。それが今眼下で無様を曝しているアレだ。確かに第三世代型ISは従来の観念に捉われない柔軟な兵装に重点を置いている。しかしアレは。あの馬は最早ISですらない。そんで何故かゴロゴロとスーツケースを転がしており諸々が謎すぎる。下手にサイズが小さいだけに狙い辛いが、それだけだ。先の一夏の様に最適化が済んでないが故の不調という様子ですらない。ならばもう。

 

「お遊びは……ここまでですわ!!!」

 

 セシリアはブルー・ティアーズを展開した。脳波をキャッチして敵機へ攻撃をしかける、セシリアの愛機を象徴する武装である。最早セシリアに一部の油断もない。目の前に存在する邪魔者を、ただ踏み潰す。絶対的強者としての殺意を身に纏う。

 

「ねっ……ねぇねぇウビバあれなに?たけのこの里?」

 

 なおシロちゃんは決定的に危機感が無かった。お腹が空いているらしい、おやつを献上して差し上げよう(提案)。

 

『――――――ッ!!』

 

 対してVR. CHARは息を呑む。彼は一応真面目に仕事を熟す気持ちはあるので先のセシリア一夏戦のデータは閲覧済である。よってあの兵器が三次元立体攻撃をしかけてくることも、自身とシロを守りながら避けるのが不可能なことも承知していた。

 

『ま、間に合って……』

 

 殆ど懇願する形でVR. CHAR はスーツケースから何物かを取り出し。

 

『はいシロちゃん!』

 

「あい?」

 

 シロを盾にした。

 

「嫌“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わりましたわね」

 

 先の戦闘で損耗した分をきっちり補修し、BT兵器全戦力を以て同時包囲した上での全弾掃射(フル・パック)。生きていられる動物は居ない筈である。

 

 思えば少しやりすぎたかもしれない。アレは真っ当なISを纏った人間でなく、出来損ないのISと人工知能だ。模擬戦でISを破壊しても文句は言われまいが、あのAIに関してはもし破壊してしまっては面倒だ。最悪ドイツから正式に抗議を受けかねない。

 

「ふん。関係ありませんわ。このセシリア・オルコット、倒した敵に難癖をつけられようとも」

 

『いやぁ~ね、勝った気になるのは少し早いんじゃないですかねハイハイハイ』

 

「!!!」

 

 セシリアは戦慄した。これはあの馬頭のISの音声である。BT兵器の総攻撃をまともに受けて健在?そんな筈はない。あれは確実に必中のタイミング、不可避の完璧な砲撃であったと自負している。避けられたなどあり得ない。それではなぜあんな余裕そうな音声が、ましてや自分を煽るような台詞が聞こえてくる?

 

 答えはひとつ。

 

『このVR. CHAR……【Virtual Reality Combined Humans And Reflections(ヒトと映像を繋げる仮想空間)】が立派な第三世代型ISであることをね、ひとつ証明してみせましょうね』

 

 そこにはスーツケースから不可思議なエリアを展開するVR. CHAR と、黒光りするヘルメットを被ったシロが堂々と立っていた。

 

「(受け止めたッ……ヘルメット!?あり得ない!ISの武装はそんなチャチなものではありません!まさかあれこそがあのISの!!)」

 

『シロちゃん!!』

 

 VR. CHAR はスーツケースから銃器を取り出し、シロへと手渡した。

 

 AKM。1949年にソ連軍の主力小銃として採用されて以降、その卓越した信頼性から世界各地で手を変え品を変えて愛され世界三大突撃銃とまで呼ばれた傑作AK-47の改良発展形である。その最たる特徴は、誰がどの様に使用しても一定の戦果を保証すること。戦士ならぬ電脳少女のシロにはこれ以上ない相棒である。

 

 シロはAKMを両手に構える。集弾性は一歩譲るAKでこんな真似をすれば当たるものも当たり得ない。しかしシロにとってはこれでいい。とにかく弾を大量にバラ撒いて、撃ち続けるのが目的の彼女には。

 

「行くよウビバ!」

 

『はぁいシロちゃん!』

 

 戦場はマズルフラッシュと金属に金属が当たるけたたましい音響に支配された。ちなみに馬はフルオートで撃ってみたら反動で手首を痛めSEが減ったので小刻みにちまちま撃っている。ここぞという時しか役に立たない男である。

 

「こ、これは……!」

 

 セシリアは防戦に陥れられた。このまま放っておいては下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、全BT兵器を落とされる。しかしBTを回収するにはセシリア本体の動きがどうしても鈍くなり、集中砲火を浴びかねない。このままこちらもスターライトmkⅢで応戦してもよいが、単純に手数で劣る現状で正面切っての撃ち合いはあまり好ましいと思えなかった。

 

 ちなみにセシリアは気付いていないが、この状況はシロにとっても不利である。実体を持たないシロがAKMにさわれて、AKMの銃弾がISに有効なのは一重にVR. CHAR の単一仕様能力【仮想現実化】の恩恵である。VR. CHAR が起動する限りシロは実体を持つ人間と変わらぬ存在になれるし、AKMだっていくらでも展開して弾も随時補給される。

 

 しかしそれらは、SEを消費して実行される能力である。従ってシロがトリッガーを引く度にめりめり減っていくSEに馬は顔を青くしてシロにもその旨を伝えていたが、シロちゃんはいっぱい弾を撃つのに夢中で聞いちゃいなかった。

 

「おほーーーーーー楽しーーーーーーー☆」

 

『(シロちゃんんんんんんんんん!!)』

 

 がしかし、この余裕の笑顔が却ってそれらの要素をセシリアに悟らせず、持久戦という選択肢を彼女から削ぎ落とせていた。

 

「ふふ……いいでしょう。癪ですが、ブルー・ティアーズは落としてしまっても構わなくってよ」

 

 セシリアはこっそりとインターセプターを控えさせる。接近戦が苦手だという愛機と自身の特性は重々に把握した。だからこそ。

 

「たとえそれでも!勝つのはこのわたくしとブルー・ティアーズですわ!!」

 

 その弱点を突かれるくらいならば、最も苦手とする戦法で以て叩き潰す!誇り高きセシリア・オルコットの意地と美意識が、最後の雄叫びをあげさせた。

 

 驚異的なスピードでセシリアが迫りくる。シロとVR. CHARも銃口をそちらへ合わせるが、所詮素人の腕であること、セシリアもある程度縦横に動きを振りつつ飛んでいることで対した被弾もなくシロの眼前に至った。

 

「これでぇぇぇぇぇ!終わりですわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 回避も防御もさせるつもりはない。今更銃弾を撃ち込まれたってブルー・ティアーズの最大戦速に重力の加わった著しい運動エネルギーを止めることなどできはしない。この一撃で終わらせてくれようと、強く腹積もりをして吶喊するセシリアに向かって――

 

「どうしてヒトは右利きが多いのか?それは心臓がほんの少し左寄りだから、体の左側に遮蔽物を置いて、右側の腕で攻撃するようになったためだと言われています」

 

「なっ……!」

 

 ――シロはあれだけ楽しそうにバラ撒いていたAKMを投擲した。当然セシリアはそんなものにぶつかりはしない。残るのは銃を手放したシロと、必殺の間合いに入ったセシリア。

 

「だからヒトは……」

 

「ヤケになりましたわねッ……!?」

 

 セシリアは見てしまった。シロの背後へいつの間にか周っていたVR. CHAR。彼の手にもAKMが無かったのを。何故彼までもがAKMを手放す必要がある?シロはまだしも、彼はまだ撃ち続けていたっていいはずだ。いやそもそもシロの背後に周ったこと自体がおかしい。なぜ射線を被らせるような真似をした?何故彼は……

 

 

 シロに向けてスーツケースを開いている?

 

 

「咄嗟に避けようとするときは、大抵体の右側を相手に晒します」

 

 セシリアは聞いた。断続的に鳴らされるエンジン音。あれはそう、両親が健在であった幼き頃、家族で出向いた避暑地でのこと。木こりが木々を切るのに何を用いる?どんな古風な木こりでも巨木に斧は用いまい。そう、この音は。

 

 そしてセシリアは最後に見た。避けた先に居たのは真白い女。見た事も無い満面の笑みで、ヒトに向けてはいけないモノを構える彼女がそこにいて――――

 

 

 

 

《勝者!浮島シロ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 




【VR. CHAR】
【Virtual Reality Combined Humans And Reflections(ヒトと映像を繋げる仮想空間)】
 試製第三世代型IS。仮想現実を実際の世界に影響させる一連の研究から生み出された試作機。ISとしての機能をスーツケースに集約させた存在で、単体の攻撃力も防御力も皆無である。
 単一仕様能力は【仮想現実化】。特殊なフィールドを機体周辺に展開し、その内部ならば操縦者の思考イメージから得られた武装をケース内で精製、取り出すことができる。そのイメージが曖昧だとうまく武装を選び出せない。日本の一般家庭で育った5歳の女の子にこれを持たせても戦闘には全く役に立たないし、操縦者が平静を欠いた場合にもやはり役立たずになる。また生命を作り出す事は出来ない。
 物質を精製・維持する為にシールドエネルギーを消費する。原則高い効果を持つものほど消費量も増大するため、例えば単独で原水爆を生み出すのは不可能である。仮に造りだせたとしても本機の能力で生み出した物体はフィールド外ではただの映像になってしまうため、敵機を被爆半径に入れて起爆しようものなら自身が真っ先に犠牲になる。
 また速攻性にも大きな難を持ち、物質の精製には一定の時間を要する。操縦者の習熟によってある程度軽減されるが、欲しいと思ったものをその場で展開することは不可能。設計段階では予め一定の武装を拡張領域に保管しておくプランもあったが、その様な領域が確保できないこと、本機は単一仕様能力の動作試験機という色合いがあったことから廃止された。

 この様に軍用にも競技目的にも適さず、ほぼ実験機のような状態で世に送り出された意欲作である。質実剛健に重きを置くドイツ製にしては異色の機体なことから、どうやら本機は所属こそドイツでも純独国製の機体ではないとされるが、どういう事情があるのかは判然でない。
 特に何故ガイドAIが馬なのかは一切不明である。




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