ダンガンロンパExtraWorld 〜砂漠のコロシアイ学園生活〜   作:magone

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プロローグ 『砂漠に眠るゼツボウ学園』
プロローグ 砂漠に眠るゼツボウ学園 I


「......聞こえるかい?」

 

 

 

 

気付くと僕は薄ぼんやりした空間の中に立っていた。そんな僕に声を掛ける誰かの声。僕はその声に何の気なしに話しかけた。

 

「君は?」

「君は僕だよ」

 

そう言った声に疑問を投げかける。

 

「どう言うこと?」

 

「深い意味はないよ。それに直にわかると思う。それより君に話しておきたい事があってね」

「その話って?」

「...君はこれからあるゲームに参加するんだ。それは人の所業とは思えないおぞましいゲーム。君はこれに勝たないといけない」

 

一体何の話をしているのか、僕にはさっぱり分からなかった。

 

「ゲーム? 言っている意味がわからないよ」

「すぐにわかる。いいかい? 大事なのはゲームに打ち勝つこと、ただそれだけだよ。今はこれだけ覚えていてくれたらいい」

「勝つこと...それは何−」

「ごめん。もう時間みたいだ。いいかい? 足を止めてはいけないよ? 真実に打ちのめされてはいけないよ? 信じることをやめてはいけないよ?」

 

謎の声は、僕の話を遮ると一言謝り、念押しをするように僕に言って聞かせた。まるで子供を躾ける母親のように。

 

「待って! 君は−」

「それじゃあね、"クルト"。君ならやれるって信じてる」

 

最後に僕の名前を呼んだその声は消え去り、薄ぼんやりした空間の奥から次第に明るくなっていった。眩しいまでに感じられるようになったその光に僕は飲まれ、そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...み、...君! 起きるんだ! 君!」

 

大きく力強い声に目が覚める。どうやら眠っていたようだ。

 

「......ん? ここは? あれ? 夢を見てた気がするんだけど...ダメだ思い出せない...」

「何を寝ぼけているんだ、君は? それよりケガは無いか?」

「...君は、だれ? ...それにここは?」

 

微睡みながら眠い目を擦り僕を起こした彼の方を見る。その大きな声に徐々に僕は覚醒を促され、置かれている状況の違和感に気付いた。どうも僕は見たことない教室で机に突っ伏して寝ていたらしい。

 

「うん。見たところケガは無さそうだな! 良かった良かった! 俺は小田切だ、今君のような人が居ないか探してたんだ。ここはどこかは...俺にも分からん」

「...え? それはどうゆう事?」

「それは、彼女に聞いてくれるか。俺はまだ他に君のような人が居るか探してくるから。それではまた会おう!」

 

彼はそう言うと勢いよく教室から飛びして行った。教室を見回して見ると、1人の女子が教室の奥の壁にもたれ掛かっていた。

 

「えーと、君は?」

「あらら、私のこと忘れちゃってる? ま、無理もないかな...数回しか会ってないしね」

 

よく彼女を目を凝らして見つめる。するとどことなく見覚えがある。あの独特な色合いの髪色、綺麗な顔立ち、そして腰に巻いたウエストポーチのような物。...思い出した。

 

繭住藍子(マユズミ アイコ)さん?」

「ようやく、思い出したのね。"超高校級の王子"さまのクルトくん」

「うう...あんまりその称号で呼ぶのは止めてくれるかな?...すごい恥ずかしいから」

 

Kurt・Ludwig・Klughardt(クルト ルートヴィヒ クルークハルト)、それが僕の名前で、【超高校級の王子】というのが僕に与えられた肩書きだ。確かに僕はバイエロン王国の王子だよ? でも何か王子と呼ばれるのが何だか小っ恥ずかしくてあんまり言ってほしくない称号でもあるんだ、僕にとっては。

 

 

「ふーん...わかったよ、クルト。で、名前以外に思い出すことはないかしら?」

「...【超高校級の美容師】が繭住さんの称号。前に何回か髪を切ってもらったことが...ある」

 

 

 

「そう! それなのにアンタは私を専属にしなかったね。せっかくカッコよく仕上げてやったってのに」

「いやでもアレは...さすがに奇抜過ぎというか何というか...そのせいでしばらく外歩けなかったし...」

「な〜に? カリスマ美容師である私の仕上げにケチを?」

「ご、ごめん!」

「冗談よ。本気にしないでよ」

「はあ...相変わらず人が悪い」

「何か言った?」

「何も言ってないです」

 

...昔話に花を咲かせるのも悪くないけど、そろそろこの状況について話した方が良さそうだ。

 

「えーと、それより繭住さん...この状況は一体?」

「ん〜...それがね、どうやら私たち誘拐されちゃったらしいのよね」

「...誘拐!?」

「うん。他にも何人か私たちと同じように眠っていて気付けばここに居たって訳なのよ」

「他にも人が?」

「そう、しかも全員が超高校級の学生らしい。それをあの小田切って奴が起こして回ってる訳らしいのよね」

「そう、なのか...」

「......」

「どうしたの?」

「...何か意外だった」

「え?」

 

繭住さんが眉をハの字にさせて、不思議そうな目でこちらを見てくる。

 

「正直もっと動じると思った。アンタの性格じゃ最悪泣きだしてもおかしくないとまで思っていたよ」

「うう...泣きはしないけど...そうだね、もしかしたら慣れちゃってるのかもしれないね」

「え? 誘拐に?」

「うん。 3回程...」

「3回も!? アンタよく生きてたね」

「最初の2回は、身代金を払って解放してもらったんだよ...ほら僕こう見えても王族だから殺したら国家規模で捜査されちゃうからね」

「3回目は?」

「3回目は誘拐は、助けてもらったんだ。ある人に」

「へぇ、アンタも意外と苦労してるんだね」

「まあ...ね」

 

多分今回の誘拐もその類だと思った。でも不審な点がいくつかある。どうして僕らは自由なんだ? 普通...てゆうか僕の経験したものはもっとこう、拘束されていたし、単にお金目当てなら僕だけでも十分なはずなのに他の人を誘拐するリスクを冒すのは、どんな理由があるかと。

 

「繭住さん、他にも誘拐された人がいるって言ったよね?」

「うん、言ったよ?」

「案内してくれるかな? 他にどんな人がいるのか見てみたい」

「あ、ああ、わかったよ。...クルト、アンタ変わったよね...」

「ん? 何か言った?」

「何でもないよ! さあ、行こう! 案内するよ」

「うん、あ、ありがとう...」

 

繭住さんに連れられるまま教室を出ると、そこはいわゆる廊下だった。本格的にここは学校らしい。でもどことなく寒気のする雰囲気を漂わせていた。

 

「...クルトは、ここに連れてこられる前の記憶ある?」

「えーと、確か希望ヶ峰学園に入学するための準備をしていて...それから自室で寝た...と思う。...繭住さんは?」

「私も似たようなもんだね。誘拐された記憶もないから、犯人の顔すらわからないし」

「やっぱり、そうだよね。...あ」

 

そう話しながら歩いていると廊下の先の階段付近に人影を見つけた。近付くとそこには、ショートカットの青髪で、スーツっぽい服装を着た女子がいた。

 

「あの〜、もしかして君も誘拐された超高校級の学生?」

「......」

「あれ、聞こえてない?」

「...本当、ありえないわ」

「え?」

 

難しそうな顔をしてたので、僕はなるべく怒らせないように静かに彼女に声をかけた。でも静か過ぎたのか、彼女からの返答は無く、代わりに口にしたのは独り言のようなものだった。

 

「ありえない。私は仮にも検事なのよ。そんな私を誘拐? いい度胸してるじゃない! 裁判になったらあの手この手で私を誘拐した犯人に死刑を求刑してやる!」

「あの〜」

「ああもう! 仕事が山積みだったのに! こんな所で呑気してる暇はないってのに!」

「おい! 平子!」

「うん? あら、繭住さんいつからいたの?」

「さっきからいたわよ」

 

繭住さんが少し大きな声で彼女の名前を言うと驚き顔をしてこちらを向いた。彼女はどうやら僕らの存在に気付いていなかったようだ。それほど誘拐犯に怒り心頭なのだろう。

 

「あらそう。で、そちらの銀髪アンテナ君はどなた?」

「クルトよ。"超高校級の王子"なのよ」

「クルト・L・クルークハルトです」

「へぇ、王子ね...よろしく、クルトさん。それにしても王族を拉致とは...この犯罪組織は思ってるほど巨大みたいね。あ、紹介遅れたわね。私の名前は平子華月(ヒラコ カヅキ)、【超高校級の検事】と言われているわ」

 

 

 

「検事? それって高校生でもなれるものなの?」

「もちろん、正式な検事ではないわ。父の仕事を手伝ったりするぐらい。その過程で裁判で重要な証拠や証言を見つけていくうちに超高校級の称号を与えられたってワケよ」

「それでも十分すごいと思うよ。検事なんて普通高校生じゃできないよ。それをやっていけるなんて平子さんはすごいよ! ねえ、繭住さん」

「...ふん」

「繭住さん?」

「何でもないわよ」

 

話を振ると繭住さんは何故か少し不機嫌そうな顔をした。

 

「気にしないでいいわよ、クルトくん。繭住さんは私が気に入らないだけらしいから」

「え? 何で?」

「クルトくんが私に興味津々だから、妬いちゃってるのよ」

「は? はああああああ? そ、そんな事あるわけないしょ! いい加減な事言ってるとアンタの髪をサザ◯さんみたいな髪型に切るわよ?」

「そんな事してみなさい? 傷害罪で訴えてあげるわよ?」

 

な、なんだかよくわからないけど...いつの間にか二人の喧嘩が始まっていた。ど、どうすればいいのかな? とりあえず喧嘩を収めないと...。

 

「ふ、二人とも今喧嘩してる場合じゃ」

「「黙ってて!」」

「は、はい」

 

どうやら僕には仲裁能力はないらしい。それから二人の口喧嘩は言葉が詰まるまで続いた。

 

「もういい。平子(コイツ)と話してる時間が勿体無いわ。行くわよ、クルト!」

「行きなさい、行きなさい。私は元々考え事していたの。もう二度と邪魔しないで」

「ふん!」

「ふん!」

 

そう言うと繭住さんが僕の腕を掴んで階段を降りた。後で平子さんには一応謝っておこう。階段を降りるとそこはやはり何の変哲もない普通の廊下だった。廊下の奥をよく見るとそこには"食堂"と明記された扉があり、繭住さんに連れられるままに入った。

そこには、白衣を着た美形の男子と大漁旗を後ろに背負った筋骨隆々な色黒の大男がいた。

 

「ん? あらあら藍子ちゃんじゃないの? 他に人は見つかった?」

「ええ。入って、クルト」

「ど、どうも」

「あら〜、随分と可愛らしいコじゃないの〜? そう思わない? 海ちゃん?」

「わしにそんな趣味は無いわ! おまんと一緒にするんじゃなか!...で、おまんは何の超高校級何じゃ?」

「お、王子です」

「へぇ、王子さまの〜。銀髪王子なんて実にそそるじゃ〜ない?」

「は、はあ」

 

白衣を着た男子の目線が何だかすごい怖い。きっとそっちの気がある人なんだと思う。色黒の大男は昔見た歴史ドラマの坂本龍馬と似た口調で話してる。後ろに背負った大漁旗で才能については何となく想像はつくかな。

 

「あたしは足立猫(アダチ マオ)、猫と書いて"マオ"って読むのよ。【超高校級の獣医】とも呼ばれているわね」

 

 

 

「わしは鮫島海(サメジマ カイ)、巷じゃあ【超高校級の漁師】なんて呼ばれちょるわ」

 

 

 

「よろしく、二人とも」

「よろしくね〜、クルトちゃん。あたしの事は"マオちゃん"とでも呼んでね〜」

「あ、あの〜、え〜と、マ、マオ...さん」

「恥ずかしがっちゃって可愛いね〜、仕方ないから大目に見てあげるわ」

「ハッハッハッ! クルトは面白い男じゃの、王子とは思えん普通の男じゃ」

 

マオさんはぐいぐい来るタイプだ。少し苦手かもしれないな...。鮫島くんはとても豪快だ。ザ・海の男って感じだ。

 

「そういや鮫島、他の学生は? もう少しいたはずでしょ?」

「あ、あの。...他の人たちは、先ほど食堂から出て行きました。...きっと近くにいるとお、思います」

「あ、あれ? 鮫島くん? キャラ変わってない?」

「面白いでしょ〜? 海ちゃんは、女子と話すといつもの豪快さは消えて、声も小さくなるのよ〜、見た目と裏腹に意外にウブなのよね〜」

「お、おい! 足立! |おまん余計な事を!」

「鮫島?」

「は、はい..何ですか、繭住さん...」

 

態度どころか話し方まで標準語になっているんだが...。振り幅の大きな人だな。

 

「私はクルトを案内するから、他の人が帰ってきたら引き止めておいて」

「は、はい」

「行ってらしゃ〜い、二人とも」

「マオちゃんまた後で」

「それじゃあまた」

 

マオさんは満面の笑みを浮かべ、手を小さく振りながら見送ってくれた。鮫島くんは...堅くなったままだ、女性に弱いなんて人は見かけによらないと思った。

食堂を出ると近くに売店や倉庫らしきものもあった。売店を覗くとガチャガチャみたいなものがあったが、人が居なかったのでそのまま売店はスルーした。次に倉庫を覗く。そこには多くの道具があった。もしかしたら何か使えるものがあるかもしれない。倉庫へ入ると奥の方から何やら声が聞こえた。

 

「...ほら本当の事言えよ! ペテンなんだろ?」

「そんな訳なかろう」

 

そこには、金髪で黄緑のシャツと赤いネクタイを巻いたいかにもチャラそうな男子と目が細くて神父みたいな服を着て首から十字架を下げている女子がいた。

 

「六車、鬼頭、何をやってるんだ?」

「あ? ああ、何だ繭住か。いやさあ、俺ってオカルトめいたモンは信じないんだよ。だから自称エクソシストって奴はどうも胡散臭く見えてな、問い詰めてたところだ」

「自称ではない。希望ヶ峰学園から超高校級の称号を得た紛れも無いエクソシストだ」

「こう言ってんだよ。...って後ろのは誰だ?」

「クルトよ、超高校級の王子なのよ」

「よろしくです」

 

僕は苦笑いをしながら会釈した。それにしてもエクソシスト...そんな学生もいるのか。

 

「おう、よろしく。俺は六車ミゲル(ムグルマ ミゲル)だ。【超高校級のエースストライカー】なんだぜ? サイン欲しいか? 高値で売れるぞ? やらねーけど」

 

 

 

「あ、そうなんだ。サッカー選手?」

「そうだ、俺は点取り屋としての才能に特化してんだ。だからそう呼ばれてる。...で、そっちのペテン師が−」

「ペテン師ではない。...初めましてクルト。私の名前は鬼頭ちはる(キトウ チハル)、【超高校級のエクソシスト】。自称ではなく、ちゃんと与えられた称号だ」

 

 

 

「エクソシストって具体的に何する人なの?」

「エクソシストってのは、日本語では祓魔師。悪魔払いを主に行う人の事を言う」

「じゃあ鬼頭さんは今までたくさんの悪魔を祓ってきたの?」

「勿論。...だが私の行うエクソシズムは独自のスタイルなんでクルトたちが想像するものではないと思うぞ」

「へ、へぇ、そうなんだ...ハハッ...」

 

でも六車くんの言う通り、エクソシストって映画とかテレビとかではよく聞くけど、実際に会ったのなんて初めてだし、悪魔を信じれるかって言ったら、何とも言えない...。

 

「う、うー」

「ん?」

「うー、うー。た、助けてくれ鬼頭! お、俺の中にー、悪魔がーとーりーつーいーてー、か、体がー」

「おい、六車!」

 

どう見ても嘘だ。六車くんは多分鬼頭さんを揶揄う為に悪魔に取り憑かれたフリをしている。それを見兼ねたのか、繭住さんが六車くんを止めようと声を上げた。でもその瞬間、鬼頭さんからとてつもないオーラを感じ、僕は体を身構えた。

 

「其は悪を持つ者。其は体を零落せし者、其は心を零落せし者、其は人を零落せし者。主よ、報復を許したまえ。主よ、歓喜を許したまえ。汝、悪魔を受け容れんと欲すれば、我は其を打ち祓う為の剣とならん。汝、悪魔の力を行使しようと願わば、其は我を守る盾とならん」

「え、ちょ...」

 

鬼頭さんは何かを詠唱しながら懐から何かを取り出して、それを両手に装着した。

 

「お、お前それ...メリケンサックじゃねーか!」

「主よ! 悪魔を祓わんと此奴を殴らんとする事を許したまえ!」

 

そう鬼頭さんが叫ぶと、鬼頭さんの拳が見事に六車くんの鳩尾を殴り上げた。

 

「グハッ!」

 

鈍い音と六車くんの断末魔が倉庫内にこだました。

 

「い、痛ってええええええ!! こ、この暴力女が! なにがエクソシストだ! ただメリケンサックで殴っただけじゃないか!」

「このメリケンサックは、私が祈りを込めた聖なる装具(メリケンサック)だ。よく効くだろう、悪魔よ」

「うるせー! ふざけんな! 暴力女!」

「ほう、まだ悪魔が取り憑いているようだ。もう一発行こうか」

「お、おい! やめろ! ま、繭住、クルト! 助けてくれ!」

「あ、え〜と」

「行くわよクルト、自業自得だわ」

「ま、待てよ! おい!...ぐあああああああああ...」

 

繭住さんが僕の腕を掴んで急ぎ足で倉庫を出た。この後の事は僕は知らないし、知りたくもなかった。

...少し歩くと赤い電灯に照らされたエリアについた。よく見ると奥に扉があって上に"体育館"と明記されていた。その扉の手前には二人の女子がいた。一人は前髪で片目の目が隠れたポニーテールの女子で、一人はメガネを掛けた茶髪の女子だ。

 

「どう? 開きそう?」

「あ、繭住さん! それがうんともすんとも言わないっす。どうやら入れる所と入れない所があるよっすね」

「それはそうと繭住様、そちらの幸が薄そうな御仁はどなたでございましょうか?」

「これはクルト、王子なのよ」

「王子なんてすごいっす! 握手してもらっていいっすか!」

「い、いや僕との握手なんて何の価値もないですよ」

「...クルト様の王国の方が助けに来る可能性はございましょうか?」

「あ、それは、どうだろうね...そうではあればいいんだけど...」

「何か事情がお有りのようですね。失礼致しました、クルト様」

「いや、大丈夫だよ...でもなるべく王族扱いはしないでほしい...かな」

「わかったっす! クルトくん! もう握手は求めないっす!」

「あ、うん、あ、ありがとう? えーと...」

 

名前が分からず言い澱んでいると彼女の方から名乗ってくれた。

 

「あ、申し遅れたっす! 私は古畑野々葉(フルハタ ノノハ)って言うっす。【超高校級の放送委員】と呼ばれているっす。普段はこんなだけどオンエアとなると、ちゃんとするっすからそこは心配しなくて大丈夫っすよ!」

 

 

 

「わたくしは桐崎雨城(キリサキ ウジョウ)と申します、きりは"桐一葉"の桐、さきは"城の崎にて"の崎、うは"雨ニモマケズ"の雨、じょうは"城の崎にて"の城と書きます。称号は【超高校級の秘書】となります。よろしくお願いします」

 

 

 

 

古畑さんは放送委員なんだ。超高校級ともなるとどんな放送をするのか気になるところだ。桐崎さんは、すごい丁寧だ。名前の説明で"城の崎にて"が二回出てるのはわざとなのか...。てかなんで例えが全部文学作品?

 

「よろしく、二人とも」

「そういや、他のみんな外に出たようっす」

「外?」

「はい。あちらの扉からグラウンドに出られるようになっているようでございます」

 

桐崎さんはそう言うと扉の方を指差した。

 

「わかった。...古畑も桐崎も気をつけて。私たちも外に行ってみるわ」

「わかったっす。何かあれば連絡しに行くっす」

「お二人ともお気を付けて」

「ありがとう。クルト、行きましょう」

「うん」

 

 

 

僕たちは桐崎さんの言っていた扉へと向かった。

 

 

 

 

 

 

その扉の先で深い絶望が待っている事も知らずに...。

 

 




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