ダンガンロンパExtraWorld 〜砂漠のコロシアイ学園生活〜   作:magone

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第2章 『GHOST OF THE SECOND SIN』
第2章 (非)日常編 I


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローの少年が死んだ

みんなの為に戦い、そして散っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローを愛した少女が死んだ

ヒーローを愛した故に殺し、そして殺された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂漠に囲まれた陸の孤島

 

−絶望ヶ淵学園−での最初の事件がこうして幕を下ろした

 

 

 

 

 

 

 

これでいい

 

 

 

 

これでいいんだ

 

 

 

 

 

みんなこれを待っていた

 

 

 

 

希望を待っていた

 

絶望を待っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはExtra World(おまけの世界)

 

 

 

 

 

 

 

オマエラは生かされているに過ぎない

 

 

 

 

 

 

 

だから精々楽しませてくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界に飽きられるその時まで...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2章 『GHOST OF THE SECOND SIN』

開幕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オマエラ! おはようございます! 絶望ヶ淵学園が午前7時をお知らせします! 起床時間ですよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ん?」

 

 

なんだ今のは?

部屋の中を見回して見るとどうやら部屋に付属しているモニターから流れた音声らしい。

...小田切くんがいなくなったから姿を隠す必要もなくなったって事か。だからと言って朝からモノクマの声で目覚めるのは実に不快だ。

 

 

「...はあ」

 

 

時計を見ると確かに7時だ。桐崎さんの言っていた約束の時刻までまだ3時間程度ある。僕はとりあえず顔を洗うために洗面台に向かった。

 

 

「うう」

 

 

鏡に映る自分を見る。ひどい顔だ。顔を洗えば幾分かマシになるだろうか。

 

 

「...ふう」

 

 

僕は洗顔と歯磨きを終えるとベットに戻り腰掛けた。静寂に包まれる部屋。この静けさがいいようのない不安を駆り立ててくる。

 

 

「ダメだダメだ。弱気になってどうする。貴志さんにみんなを頼むって言われたんだ。僕がしっかりしないと...」

 

 

少し早いが僕は食堂に向かう事にした。準備を整えて部屋を出る。さらに宿舎を出たその時、目の前を歩く舞田くんを見つけた。

 

 

「あ、舞田くん」

「ああクルトか、おはよう」

「おはよう...早いね、もう行くの?」

「ああ。部屋におっても気が滅入るだけやし、それに一人やとなんか落ち着かんくてな。クルトもそんな感じやろ?」

「うん、そうだね」

「......」

「...なあクルト、一つ聞いていいか?」

「ん? 何?」

「お前は俺を恨んでるか?」

「え?」

 

 

舞田くんはそう唐突に聞いてきた。心なしか目も泳ぎ気味で、言葉もどこか弱々しかった。

 

 

「何で? 舞田くんを恨む理由なんて...」

「あるやろ。小田切が砂漠越え決意してたんも、貴志ちゃんがあんな事したんも、俺の提案が原因なんやで? 恨まれても当然や...」

「...確か貴志さんも言っていたよね? 小田切くんはどの道砂漠へ出て行ったって...だから舞田くんは悪くない。恨むことなんてないよ」

「ほんまか? クルトは特に小田切が死んだことに悲しんでた、そんな小田切が死んだ理由を作った俺をほんまに許せるんか?」

「...小田切くんが死んだのは、すごく悲しいよ? 悲しいけど、それは絶対に舞田くんのせいじゃない。こんな所に連れてきたモノクマが悪いんだ。...だからあんまり思い詰めないでほしい」

「......クルト」

 

 

そう、悪いのはモノクマだ。舞田くんじゃない。...でもそれはきっと舞田くんだってわかってるはずなんだ。それでもどうしても罪悪感が拭えないでいるんだ。気持ちは痛いほどわかる。

 

 

「小田切くんだって舞田くんが苦しむことなんて望んでないと思うよ」

「...せ、せやな...俺らしく、ないよな。こんなん。死んだ小田切にも悪い...」

「舞田くん...」

「よし! 難し考えんのはもうやめや! 小田切は俺らに希望を残そうとしてくれた。やったら俺らが出来るんは、アイツの願い通りにコロシアイを起こさんようにする事や! こんな暗い雰囲気やったら闇に飲まれてまう。やったら! 俺は俺らしくアイツの願いを叶えるしかない! せやろ! クルト!」

「う、うん」

 

 

な、何はともあれ元気になって良かった。

 

 

「ほな行くか。ここで喋っとってもしゃーないし」

「そうだね」

 

 

舞田くんと食堂へ向かうと、そこにはやはりと言うべきか、桐崎さんが食事の用意をしていた。

 

 

「桐崎さん、おはよう」

「おはようさん」

「これはクルト様、舞田様、おはようございます。申し訳ありませんが、朝食は少し待ってもらってもよろしいですか? 本日も6時頃、食堂に来たのですが、閉まっておりまして...」

「...もしかして校則?」

「そのようです。夜時間である午後10時から午前7時は食堂は閉鎖されているようでございます。いつものように皆様のお食事をご用意しようと思ったのですが、閉まっていたのでどうしようもなく」

「...桐崎ちゃんさ、こんな時ぐらい休んでも誰も文句なんて言わんで?」

「左様ですか。しかしこれは秘書の...わたくしの日課のようなものなので心配は要りません。ですがお気遣いありがとうございます」

 

 

ある意味職業病のようなものなのかな、桐崎さんのそれは。...とりあえず僕と舞田くんは椅子に腰掛けて、約束の時間を待つことにした。

 

 

「クルト様、舞田様、お食事はまだですが、お飲み物はいかがですか? コーヒーや牛乳もございますよ?」

「なら俺はコーヒーで」

「あ、じゃあ僕もそれで」

 

 

桐崎さんは『承知しました』と言ってキッチンに行き、数分後コーヒーを淹れて戻ってきた。

 

 

「どうぞ、コーヒーです」

「あんがとな、桐崎ちゃん」

「ありがたく頂くよ」

 

 

アツアツのコーヒーは残っていた眠気を吹き飛ばしてくれると同時に今ここに生きていることを実感させてくれた。そう、昨日貴志さんをクロと指摘できなきゃ僕らはここにいないんだ。

 

 

「うん、美味しい」

「せやな...。美味い。なあ、クルトと桐崎ちゃんはこれからどうなると思う?」

「これからとは?」

「脱出できるか、コロシアイになっちまうか..って事や」

「...舞田くん」

「...明確な事は言えませんが、皆様と力を合わせればいずれはここから出られると信じております」

「桐崎ちゃん...せやな、俺もこんな所にずっとは居られん」

「僕だってそうだよ」

「わたくしもでございます」

 

 

この場にいる3人の意見が合った。ここからみんなで一緒に出る。それは貴志さんが託した小田切くんの願いだ。絶対に果たさなきゃいけない、そう思ってる。

 

 

「それはそうとお二方のお知り合いにいい感じにシルバーなおじ様はいらっしゃいますでしょうか?」

「え?」

「あ、そう言えば桐崎ちゃんって老け専やったな、ははっ」

「あ、えーと...」

「わたくしのストライクゾーンとしては50代から60代が望ましいのですが、70代もいける口でございます。40代は少し若いと存じ上げます」

「存じ上げられても、えーと、僕の父がそのくらいの年齢だけど、一国の王様だし...」

「王国秘書って言うのも悪くありませんが、わたくし程度での能力ではまだまだですので、見送らせて頂きます」

「う、うん。その方がいいよ」

 

 

口にしたはいいけどさすがに父と一緒にさせる訳にはいかないし、僕だって困る。すごく困る。

 

 

「そうやな。桐崎ちゃんのお眼鏡に適うかわからんけど、ええ感じの親父知っとるで」

「本当でございますか!?」

「ああ、そりゃもうイケイケやで、俺の師匠やねんけど、婆さん達や若い子からも人気があったから」

「ご、ご紹介頂いても?」

「おう、ええで。師匠もいい年こいて独身やし、問題もないやろ」

「か、感謝致します! 舞田様!」

「お、おう! ならまずはここから出なあかんな!」

「ここから出た時の楽しみが増えました。本当にありがとうございます」

 

 

桐崎さんのこんなテンションもなんだか新鮮だ。早く到着した甲斐が少しはあったかな。それにしても舞田くんの師匠か。超高校級の大道芸人の師匠...一体どんな人なんだろう。

 

 

その後も舞田くんと桐崎さんと雑談しながら過ごした。そうしていると時間は9時半になり、みんな続々と食堂に集まり出した。

 

 

「おはよう。あらアンタ達もう来てたの?」

「おはよう繭住さん、みんなも。...うん、部屋にいても落ち着かなくて」

「気持ちはわかるっす。あんな事があった後っすから...」

「あたし達はどうなるのかしら」

「まあとりあえず全員集まったら話し合おうや、まだ来てないのもいるみたいやし」

「そうだね」

 

 

待つこと30分。寝坊で有名な勅使河原さんを含めた全員が食堂に集まった。平子さんが食堂の扉を閉めると場の空気が変わり、緊張が走る。

 

「......」

「......」

「...ね、ねー! とりあえずご飯にしない? ぼくお腹減っちゃって...お話はその後でもいいかな?」

「そうね」

 

 

赤星さんの言葉が静寂を貫いた。平子さんもその提案に同調したので、とりあえず朝食を摂ることにした。...昨日は小田切くんが、そして今日は貴志さんがいない、もしたしたら明日も誰かが...。縁起でもない。そんな事は絶対にさせてはいけない。

 

 

「さてもう食事はいいでしょう」

 

 

平子さんはそう言うと立ち上がり、みんなの視線を集めた。

 

 

「これからどうするか、方針を固めようか」

「平子、その方針っつーのは何だ?」

「私たちが生きていく為に決める、ルールみたいなものよ」

「ルール...ねぇ」

「何だよルールって、ここから脱出する方法を探すんじゃねーのかよ!」

「六車くん。だったら聞くけど、あなたはモノクマに対する術を何か持っているの?」

「そ、それは...」

「ないのよ。あなたにも私にも他のみんなにも、そんなものは...。だったら私たちは今生き残る為には少しでもコロシアイのリスクを減らすしかないでしょ!」

「コロシアイ...」

 

 

平子さんの言う事も理解できる。僕らの間で少しでもルールを作ればそれがコロシアイの抑制に繋がる。でもそれは裏を返せば僕たちを信用してないって事でもあるんだよね...。

 

 

「平子は私たちがコロシアイに手を染めると思っているのか?」

「そうさせないようにするルールなのよ。現に貴志さんは理由はどうあれ殺人を犯したわ。保証なんてどこにもないのよ。...もうあんなコロシアイなんて二度と起こさせない」

「平子さん...」

 

 

平子さんの言葉に何か決意めいたものを見た。それは検事としてなのか、それとも別の何かなのか、どちらにせよ平子さんのその言葉に力強さを感じた。他のみんなもそんな顔をしている。

 

 

「...わかった。私は平子の意見に賛成する」

「鬼頭さん」

「人は罪を犯す。それは仕方のない事だ。だからと言って殺人を未然に防がない理由にはならない。神が全てをお赦しになっても、私はこのコロシアイだけは許さない。人の命を軽んじる所業は万死に値する。そう思っている。だからこそこんな事はもう起こしてはならない」

「私も平子華月に賛成だ。リスクは低い方がいい。制限は課せられるが、安全性が高まるに越したことはないだろう」

「...小生も同意見ですぞ」

「ぼくもその方がいい気がする」

「...うん、いいと思う...」

「せやな、その方がええかもしれん」

「わたくしも平子様に賛成でございます」

「あなたはどう? クルトくん」

「ぼ、僕?」

 

 

確かにコロシアイを起こさないようにするのが最善だ。まだモノクマの接触はないとはいえ、それも時間の問題...そうなるとどうなるかわからない、ならたとえ行動制限が課せられたとしてもコロシアイを起こさないようにするならそれがいい。

 

 

「僕も賛成だよ、平子さん」

「これで賛成多数、決まりね」

「で、具体的にはどうする? それも考えてあるのか?」

「ええ。とりあえずは殺人が一番起こりやすい夜時間の行動を制限しましょう。なるべく人にも会わない方がいい」

「そ、そうやな」

「それに日中でも一人で行動する事は避けた方がいい。最低二人以上でいるべきだと考える。もっと言えば料理も一人でやるべきではない、桐崎さんを信用しない訳じゃないけど、毒などを盛られないとも限らないので」

「それ酷くない? 桐崎は私たちの為にご飯を作ってくれていたんだよ? そんな桐崎が危険みたいな言い方」

「良いのです、繭住様。勿論わたくしはそのような事は致しませんが、皆様が安心して頂く為ならそれも致し方ありません」

「悪いね、桐崎さん」

「...桐崎」

 

 

大まかな方針が固められ、その後も細かいルールを決めていった。例えば毎朝この食堂で全員の安否を確認すること、部屋の鍵は必ず閉めること、部屋には9時半までには帰ること、などなど...。

 

 

「こんなところか?」

「いえ、まだよ」

「まだ?」

「鬼頭さん、萬屋くん、そして繭住さんあなた達の持っている凶器を出してくれる?」

「は?」

「ん?」

「...凶器...?」

 

 

凶器? その3人が持っている凶器って.......まさか...

 

 

「メリケンサックと射出型ラペリングロープ、それとハサミってこと?」

「そうよ。それらは凶器になりうる」

「これは救済の為の装具と何度言えば...」

「...危険は少ないと思うけど...」

「ふざけないでよッ! 私がこのハサミで人を殺すと思ってんの? そんな事絶対にしない! 私が死ぬことになってもそれだけは絶対にない!」

「それを私たちが信用できると思うの?」

 

 

繭住さんがあのハサミで人を殺すとは思えない。だって失くした時はあんなに必死になって探して、見つかった時は子供のように喜んだ、そんなハサミを使って人を殺すなんて...そんな事は...。

 

 

「私は絶対にこれで人は殺さない」

「そう言って本当は殺しの算段を練ってるかもしれない」

「平子さん!」

「何? クルトくん」

「繭住さんは、そのハサミで人殺しなんてしないと思うよ。そのハサミは繭住さんにとって本当に大事なものだと思う。だから大丈夫だと思うよ」

「...クルトくん、庇うのは簡単よ。でもそれで安全は買えないのよ」

「平子さん...」

 

「...死んでからじゃ、遅いのよ」

 

 

平子さんから放たれた言葉はとても重く、それは彼女が検事であるが故に嫌というほど知ってきた人の死という揺ぎようもなく変えようもない、残酷な事実なのだろう。...死んだ二人が戻ってこないように......。

 

 

「まったく、オマエラは何て実りのない話をしているんだ」

 

 

え?

 

 

「出たな」

「モ、モノクマ」

「何しに出やがった!」

 

 

みんな突如現れるモノクマにも慣れてきている。そしてそれは良くも悪くも事態を進展させるという事も直感でわかっていた。

 

 

「いや〜学級裁判を生き延びたオマエラにささやかなご褒美を用意したんだよ」

「褒美、とな?」

「いやな予感しかしないっすけど...」

 

 

モノクマがご褒美? 古畑さんの言う通りいやな予感がする...。

 

 

「オマエラの為にこの絶望ヶ淵学園の新エリアを解放しましたーッ!」

「新エリア?」

「そうだよ。場所は校舎の2階と3階だよ。何があるかは行ってからのお楽しみ!」

「それが褒美だと?」

「オマエラにとっては贅沢すぎるぐらいだよ。行動範囲が広くなるんだからね」

「ああ、そうかい」

「まあ行くも行かないもオマエラ次第だよ。しっかり考えて行動しなよ」

 

 

モノクマはそう吐き捨てるといつものように消えた。...一体どうゆう奴なんだ、アイツは。

 

 

「新エリアねぇ、行ってみた方がいいかしら?」

「そりゃ行くべきやろ。何かあるかもしれんし」

「...まあ罠でも確かめない訳にはいかないわね。行きましょう」

「ほ、本当に行くの? 危険かもしれないよ?」

「だったらここで待っていればいいわ。各自探索が終わったらここに集合ってことでいいわね?」

「...どうしよう」

「衛ちゃん心配しなくても大丈夫よ。あたしも残るわ。探索はみんなに任せましょう」

「ありがとう...マオ」

 

 

どうやら新エリアに危険を感じている人は食堂に残るらしい。...僕はどうしよか。でも行かないワケにもいかないよな。

 

 

「もう行く?」

「そうね、行きましょう。凶器の話し合いはまた後にしましょう」

「忘れてなかったか」

「ならさっさと行くかぁ。ダラダラしても仕方ねぇしな」

 

 

赤星さんとマオさんを食堂に残して、その他全員が食堂を出て新エリアという所に向かう。その最中、僕は目の前を歩く萬屋くんの背中を見て手紙のことを思い出した。

 

 

「あ、萬屋くん、ちょっと」

「...うん...?」

「萬屋くんに渡さなきゃいけないものがあるんだ.....これなんだけど」

「...手紙...誰からの...?」

「小田切くんだよ」

「...え...」

 

 

萬屋くんは驚いたように目を見開いた。僕は内ポケットから出した手紙を萬屋くんに渡した。

 

 

「...こんなの、どこで...?」

「小田切くんの個室の引き出しだよ。僕宛と貴志さん宛、それと萬屋くん宛の手紙を見つけたんだ。だから今日渡そうと思って持ってきたんだ」

「...中身は見たの...?」

「僕宛のものはね...萬屋くん宛の手紙は見てないよ」

「...そっか...ありがとう、クルト君...見つけてくれて...」

「...うん」

 

 

萬屋くんは手紙を貰うとポケットにしまい、僕の前から姿を消した。そうこうしていると他のみんなは新エリアに行ったらしい。僕も行かないと...

 

 

「さて」

 

 

2階へ上がる。...確か2階って僕がここで目覚めた教室があったはず。階段を上がって左手に5つ教室があったけど、それ以外はなかったと思う。そう思い、階段を上りきると右手にあるはずの壁がなくなっていた。

 

 

「ここが...新エリアか...」

 

 

右へ進むと技術室と書かれた部屋と図書室と書かれた部屋が目に入った。

 

 

「技術室に...図書室か」

 

 

僕はとりあえず近くの技術室に入ることにした。技術室って事だから何か脱出に使える工具とかあればいいんだけど...。技術室の扉を開けるとそこには工具棚?を見ている萬屋くんと氏家くんがいた。

 

 

「二人ともここに居たんだね」

「おおクルークハルト氏ィ! ここに来るとはオメガ高いですね」

「オメガ? まあいいや。何か使える物は見つかった?」

「使える物に分類されるか分かりかねますが、この工具棚にはノコギリやハンマーのような道具が保管されていますね。木製の長机には万力が付属してあったり、後ろの小さな棚にはボンドがあったりと、まあ普通の技術室以上の品揃えはありませんな」

「...でも役立つ可能性はある。頭に入れておいても損はない...と思う...」

「うん。そうだね」

「それよりですよ! クルークハルト氏! この奥にある部屋が重要なんですよッ!」

「奥の部屋?」

 

 

萬屋くんの様子を見るにまだ手紙は呼んでいないようだ。それより今は奥の部屋だ。よく見ると確か準備室みたいな扉があった。

 

 

「準備室みたいなもの?」

「いえいえいえ、そのような場所ではございませぬぞ。もっと有益で有用な場所なのですよ!」

「うん? 一体何があるの?」

「...口で説明するより見たほうが早い...」

「そうですぞ、百聞は一見にしかず! とくとご覧あれ」

「う、うん。わかったよ」

 

 

氏家くん達に言われるがままにその部屋に向かった。近付いてみてわかったけどこの部屋の扉は目線の高さに小さな窓があった。でも暗がりでよくわからない。少しだけの不安を残しつつ、僕はその扉を開けた。

 

 

「ん? これは?」

 

 

壁に沿うように長テーブルと椅子、それの向かい側に大きな四角い機械がいくつもあり、奥には鉄製の棒のようなものを始めとする、一目見ただけで専門的と思える道具が見えた。

 

 

「これは」

「その機械はいわゆる溶解炉ですよ」

「溶解炉?」

「小生はファーネスって呼んでますが、要は作品を作る為のガラスを溶かす設備ですよ」

「ああ、なるほど。つまりこの部屋はガラス工芸品を作るための工房ってことか」

「その通りですぞ。いや〜でもさすがの小生も驚かされましたぞ」

「氏家くんから見てもそんな感じなの?」

「ええ。ここの設備の充実ぶりは気味が悪いレベルで、バーナーや吹き竿があるのはまだ分かるのですが、ガラス製品の型取りをするモールドや吹き竿を冷ます為のパイプクーラーなど...およそ個人が用意できる設備ではないです...まあそれでも確かにガラス工芸品を作るには必要不可欠なものには違いないですがね...」

「へぇ。さすが超高校級のガラス職人だね。そう言う専門的な知識があるの羨ましいな」

「そ、そうですかぁ? 褒められると照れますなぁ」

 

 

そうか。ここはガラス工房だったのか。よく見たら昔テレビでやってた番組でこんな場所を見たのを思い出した。

 

 

「...ガラス工房は氏家君が適任と思ったから呼んできた...」

「萬屋くんが見つけたんだね」

「萬屋氏から聞いた時は驚嘆の声を上げたものですよ。まさかこんな所にこんな工房があろうとは」

「本当だよね。工房なんて普通の学校にはないだろうし、それこそ希望ヶ峰のような所じゃないと...」

「...希望ヶ峰...」

「早く帰りたいものですな。途中だった作品も数多くあると言うのに...」

「...そう言えば氏家くんの作るガラス工芸品ってどう言うものなの?」

「小生の作品ですか。そうですなぁ。まあ一口にガラス工芸品と言っても沢山ありまして...」

 

 

氏家くんはそう言うと近くの椅子に腰掛けて前傾姿勢で話し出した。相変わらずゴーグルと黒いマスクで表情は読み取れないけど...。

 

 

「小生の専門はいわゆる吹きガラス技法によるもので、コップや一輪挿しなどを色鮮やか且つ儚げな印象で目に訴える作品をモットーに作っておるのですよ。とは言っても薩摩切子やステンドグラスのような作品にも手を出していますがね」

「すごいね! 正にガラスのエキスパートって感じ」

「ガラスしか脳がないのですよ。ですが、このような場所が用意されているなら作品の一つでも作ってみたいものですな」

「楽しみにしているよ、氏家くん!」

 

 

氏家くんはスッと立ち上がると『了解ですぞ』と言い、敬礼のポーズをとった。

 

 

「二人はこれからどうするの? 他の所に行く?」

「いやまだこの部屋を詳しく調べられていないので、しばらくはここにいるつもりですぞ」

「...僕も一応残る...一人じゃ心配だから...」

「すまないですぞ、萬屋氏」

「...気にしないでいい...」

「そっか。じゃあ僕は図書室に行くよ。また食堂で会おう」

「了解ですぞ!」

「...わかった...」

 

 

僕は二人のいる工房、それから技術室を出てそのまま図書室へと向かった。

 

 

「ガチャ」

 

 

扉を開けるとそこには本を物色している舞田くんと桐崎さん、それと机に座って本を読んでいる勅使河原さんがいた。

 

 

「おお、クルト来たか」

「うん。ここは普通の図書室かな」

「せやな。まだわからんけど今んとこなんて事ない普通の本ばっかや」

「特別危険はありませんが、脱出に繋がる手掛かりはないと存じ上げます」

「そっか」

「まあでも本は普通の高校んより蔵書数は多いと思うぞ。見てみ、この棚には小説がずらっと並んでんねんやけど、めっちゃマイナーな小説もあるねん。去年のナオキ賞取った堀北国治の『ジャンヌの葬列』や日本ミステリー大賞を取った法島龍之介の『不可侵のライヤー』なんかがあるんはまだわかるけど、黒木田ハレルヤの『金星ブレイカーズ』シリーズまであるんはビビったわ。あんなん買ってんの俺ぐらいやと思ってたわ。国会図書館かよ」

「舞田くんって本読むんだね、何か意外だったよ」

「...う、意外とは失礼やな。俺やかて読書ぐらいするで。最近はおもろい作品も多いからなぁ。な? 桐崎ちゃん」

「左様ですね。わたくしもお暇を頂いた時は読書を嗜んでおります。クルト様も如何ですか?」

「うん、そうだね。これを機に読んでみようかな」

 

 

小説か。そういや教材以外では触れてこなかったな。小さい頃から日本に住んでるから漢字とかは読めるし、小説が嫌いってワケじゃないし、読書を始めてみるのも悪くないかもしれない。

 

 

「読みたくなったら俺に聞いてくれ。おススメの奴教えたるで!」

「その時は頼むよ」

「おう!」

 

 

小説が読みたくなったら舞田くんに聞くとしよう。...そう言えば勅使河原さんは机でずっと本を読んでるけど、何を読んでるのかな? 気になって勅使河原さんに話しかけた。

 

 

「勅使河原さん、何を読んでるの?」

「......うん?」

「あ、邪魔しちゃった?」

「いや気にする事はない。それで私に何の用だ? クルト・L・クルークハルト」

「いや、何を読んでるのかなって思ってさ」

「これか? これは日本史Bの教科書だ」

「教科書? どうしてそんなの読んでるの?」

「...落ち着く為よ。歴史に触れていると心が平静になっていくのを感じる。今の私はそれほど心に乱れがあるという事だ」

 

 

いつも眠そう...いや冷静な勅使河原さんもやはりこの状況は堪えるようだ。当然だ。コロシアイを強要される現状に無関心でいられるワケはないんだ。

 

 

「...いい謝罪が思いつかない」

「謝罪?」

 

 

振り向き、僕を目をまっすぐ見つめ勅使河原さんは言った。それにしても謝罪って...もしかしてあの事を言っているのか?

 

 

「萬屋くんのこと?」

「ええ。私は生き残る為とはいえ萬屋千歳に身に覚えのない罪を着せ、剰え裁判という場で糾弾した。そのような事をした、簡単には許して貰えないだろう...」

 

 

やっぱりそうだったんだ。勅使河原さんも何も考えてないワケじゃない。みんなそれぞれあの裁判に思うことがあったんだ。

 

 

「...君はどう思う? 私はどうしたらいい?」

 

 

勅使河原さんがどうすればいいか...それは本質的な意味で僕にはわからないだろう。だったら

僕は勅使河原さんが少しでも安心する言葉を言おうと思った。

 

 

「...勅使河原さんがそう言う気持ちだって伝えればいいんじゃないかな? そうすればきっと萬屋くんだってわかってくれるはずだよ」

「...そう思うか?」

「少なくても勅使河原さんの思いは伝わる」

「...そうか。そうすれば良いのか。そんな簡単な事にも気付けないとはね。...すまない」

「謝る事ないよ。僕はただ思ったことを言っただけだから」

「ふふ。そんな君だからこそ、貴志萌華も後を託したのだろう...」

「え、それは...」

「......」

「あれ? 勅使河原さん?」

「zzz」

「?」

 

 

寝てるッ! 思いっきり会話の途中だったけど寝てるッ! ...ここまで来るともはや才能だな。

 

 

「あちゃあ寝ちゃったか。しゃーねえ、勅使河原ちゃんが起きるまで俺もここにおるわ」

「舞田くん」

「クルトも桐崎ちゃんも他んとこ探索言ってもええで。勅使河原ちゃんは俺が見とくし」

「いえわたくしはこの奥にある資料室を調べたいと思っておりますので、ここに留まりたく思っております」

「そうか。ならクルト、探索の方は任したで〜」

「あ、うん、わかった。それじゃあ僕は3階に行くね」

「おう!」

 

 

3人のいる図書室を出て、3階に続く階段へ向かう。上がってみると、左手に2階にもあった普通の教室があり、右手には視聴覚室と化学室という文字が見えた。左手の教室は一旦スルーして、とりあえず視聴覚室に向かった。ここはちょうど技術室の真上の部屋かな? そんな事を思いながら扉を開ける。

 

 

「普通の視聴覚室だ...」

 

 

机には一つ一つ丁寧にDVDを再生できるモニターが取り付けてあり、奥には大きなスクリーンがある。そしてそこには机に腰掛ける六車くんがいた。

 

 

「あ、クルトか」

「六車くん、何か見つかった?」

「いやこの部屋には何もねぇな。モニターとスクリーンぐらいだわ。今、古畑と鬼頭(暴力オカルト女)が奥の準備室を調べてる。もしかしたらそこには何かあるかもな」

「奥の?」

 

 

よく見ると確かに準備室に続く扉がある。

 

 

「ガチャ」

 

 

そう確認した矢先、その扉が開いた。

 

 

「うん? クルトか」

「あ、鬼頭さん」

「ここを調べに来たのか?」

「目に入ったからね。とりあえず覗いてみたんだ。何かあったりした?」

「まああったと言えばあったが...な」

「んだよ? その歯切れの悪りぃ言い方は。つーか古畑はどうした?」

 

 

「うっひゃああああああああぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!」

 

 

な、何だ? 今の声は? 古畑さんか? 準備室で一体何が...? そう思っていると準備室から古畑さんが飛び出して来た。

 

 

「皆さん! 見てくださいっす! あれ? クルトさんもいたんすね。大いに結構っす!」

「な、何が? 古畑さん」

「これっす! これっす! なんと! あの名作! 『グングニルズワールド・フロンティア×2』のDVD全巻! もう〜これは興奮せずにいられないっすよ!」

「ぐんぐに?」

「一世を風靡したアニメタイトルっすよ! クルトくん、知らないっすか?」

「ご、ごめん。そう言うのには疎くて...」

「それは人生9割9分9厘損してるっすよ? あれでしたらこれからそこでモニターで一緒に見ないっすか?」

「ああ、うん...今回は遠慮しておくよ」

「そっすか...致し方ないっすね。見たくなったらいつでも言ってくださいっす!」

 

 

古畑さんはそう言うと準備室から持ってきた大量のDVDを床に置き、その中の一つをモニターに挿入し、出力するとそのまま視聴を始めた。

 

 

「おい鬼頭、準備室にはもう何もねぇのか?」

「映画のDVDのようなものはあったが、やはり脱出の手掛かりになりそうなものはないな」

「んだよ、本当にただの視聴覚室じゃねぇか」

「グンフロがあっただけでも収穫っすよ。これさえあれば生きていけるっす!」

「俺たちはグンフロがあっても生きていけねーよ」

 

 

アニメや映画のDVDじゃあ手掛かりとは言えないな。まあでも凶器みたいなのがないだけマシかな...。

 

 

「チッ...おい本当に他に何もねーのか?」

「疑うなら自分の目で確かめてくればいいじゃないか」

「ああ、そうするよ」

「...あっ! 待って六車くん! そこは!」

「は?」

 

 

準備室に向かおうとした六車くんを僕は制止しようとした。なぜなら床に置かれたDVDに六車くんが気づいていなかったからだ。しかしその甲斐なく六車くんはDVDに足を取られた。

 

 

「う、うわあああああああぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!」

「六車くん!」

 

 

「ムニュ」

 

 

「え?」

「あ」

「これは...」

 

 

足を取られた六車くんは咄嗟に近くにあったものに手を掛けた。しかしそれは悲劇の始まり。六車くんが手を掛けているのは鬼頭さんの胸だったんだ...。

 

 

「き、貴様...」

「ああ、えーと、その、何だ...お前って意外と着痩せするタイプだったんだな...」

「フンッ!」

「ぐああああああああああああああぁぁぁぁああああああ!!!」

 

 

顔を赤らめた鬼頭さんの拳が六車くんにクリーンヒットした。

 

 

「ぶっ殺す」

「待てって! これは事故だ! 事故! なあクルト、そうだよな?」

「ええ、うん、まあ」

「そんなものは関係ない。やはりお前には悪魔が取り憑いているとしか思えない。完膚無きまでに祓い倒してやる」

「お、おい! 待ってて!」

「其は矛、其は盾、我は全ての災厄を取り除く者也。虚空の彼方より先の天に御坐す主の名に於いて汝の...」

 

 

詠唱を始めた鬼頭さんを止めることはできない。ごめん六車くん。ここはいつものパターンでお願い。

 

 

「ここは任せておいて大丈夫っすよ。クルトくんは他のところ探索しに行ってもいいっすよ」

「あ、いいの?」

「いいっすよ。それともやっぱりここで一緒にグンフロ見るっすか?」

「ああ...また今度にするよ」

 

 

僕はそう言うと鬼頭さんに襲われる六車くんを横目に教室を後にした。

 

 

「次は化学室か」

 

 

化学室。何やら嫌な予感がする。化学室って言うぐらいだから劇物の一個や二個あっても不思議じゃない。そんなものがあったらコロシアイの火種になりかねない。そんな不安を抱きつつ化学室の扉を開ける。

 

 

「うん? あ! クルト!」

「繭住さんここにいたんだね。それに平子さんと鮫島くんも」

「危険な香りしかしなかったからね。確かめに来るのは−」

「あ゛あ゛! クルトよぉ! よう来てくれたぜよ!」

「鮫島くん?」

「ちっくとこっちに来てくれんか?」

「え? あ! 鮫島くん?」

 

 

平子さんの言葉を遮った鮫島くんは僕の肩を掴むと、二人と少しばかり離れた所に連れてこられた。

 

 

「ど、どうしたの?」

「シーッ! 静かにするぜよ」

 

 

その大きな腕を僕の肩に回して、鮫島くんは話を続けた。

 

 

「クルトよ、わしが女性が苦手なんは知っちゅうか?」

「ああ、うん、聞いたよ」

「そんなわしがあの二人の相手できるか?」

「...ならどうしてここに来たの?」

「わしが一番乗りだったんじゃ。そこにあの二人が入ってきたんぜよ...女性ばかりの空間はわしには堪えるき、誰か男が来んかと思っちょった」

「えーとつまりどうしたいの?」

「わしは他のところに行くき、後は頼むぜよ」

「え、嘘」

 

 

鮫島くんが行ってしまったらここに残るのは、僕と繭住さんと平子さん。僕はいいとしても、あの二人は犬猿の仲だ。加えてさっきのこともある。もし喧嘩が起きても残念ながら仲裁力のない僕には止めようがない。

 

 

「じゃあわしは行くぜよ! じゃあな!」

「えっ! ちょ、ちょっと!」

 

 

そう言うと鮫島くんは化学室から勢いよく出て行った。

 

 

「あれ? 鮫島どうしたの?」

「あ、えーと、ああ、そうトイレ! トイレに行ったんだよ」

「だからあんな急いで出て行ったのね」

「そ、そうなんだ」

「そんな事よりまずは探索をしないと。遊びに来たワケじゃないのよ?」

「...わかってるわよ」

「...うう」

 

 

一瞬の緊張が走る。一触即発、とまでは言わないけどこの二人の事だからいつ喧嘩が始まったっておかしくない。僕はただ平穏を祈る他なかった。

 

 

「ここはその名の通り化学の実験をする為の特別教室のようね」

「私の通ってた高校と大差ないように見えるわ」

 

 

いくつかの長テーブルにはガス栓とシンクが付属しており、壁際にはフラスコやビーカーなど道具類が保管されていた。

 

 

「うん。普通だね」

「安心するのは早いわ。問題は化学薬品のあると思われる準備室よ」

「準備室...」

 

 

確か視聴覚室にもそう言う場所があったな。他に探索するような場所もないので僕たちはその準備室へ向かう。

 

 

「ガチャ」

 

 

扉を開くと、一際大きな薬品棚が置かれているのが目に入った。

 

 

「これはが化学薬品かな」

 

 

そこにはいかにもなビンに様々な薬品がずらりと並べられていた。確認のために引き戸を横にスライドして中にある薬品を一つ取り出してみた。

 

 

「ん? このマークは?」

 

 

取ったビンには紫色のドクロマークが描かれていた。...予想はつく。これはきっと毒薬だ。

 

 

「毒薬っぽいね」

 

 

「そうだよ。それはボクが調合し、生み出した世界でただ一つの毒薬! オリジナルポイズンなんだよ」

 

 

え? ...この声は......。

 

 

「そう! モノクマだよ」

 

 

やっぱり...。

 

 

「わざわざ出てきたって事は何か言いたいことがあるって事か?」

「さすが平子サンだね〜。ボクのやる事なす事もしかして全てお見通しなんじゃないの?」

「軽口はいい。用件だけ話せ」

「グスン。ヒドイなぁもう〜。ボクだって出番が欲しいんだよッ! 生きてるだけで出番がある君たちとは違うんだよッ!」

「意味のわからない事をこれ以上言うな。さっさと本題を言え」

「もうわかったよ! ボクだって仕事だからね! やる事はやるってクマ業界じゃ有名なんだから!」

 

 

モノクマの場違いに明るい声は相変わらず僕の脳髄に不快感を与える。正直小田切くんの遺品を破壊し、貴志さんにあんな惨い処刑を敢行したモノクマなんて声どころか姿すら見たくない。...でも話を聞くしかない。これはおそらくこの薬品についての事だから。

 

 

「これはね、素人でも扱い易い毒薬をコンセプトに作った7種類の絶望ヶ淵学園産オリジナルポイズンなんだ」

「7種類?」

「そうだよ。

 

 

致死性は0%!ですが目眩や吐き気、頭痛の症状が出る即効性の白の毒薬

 

 

致死性は0%!ですが目眩や吐き気、頭痛の症状が出る遅効性の青の毒薬

 

 

致死性は50%!さらに目眩や吐き気、頭痛の症状も出る即効性の緑の毒薬

 

 

致死性は50%!さらに目眩や吐き気、頭痛の症状も出る遅効性の黄の毒薬

 

 

致死性は100%!細胞組織を破壊し、失血を促す即効性の黒の毒薬

 

 

致死性は100%!細胞組織を破壊し、失血を促す遅効性の赤の毒薬

 

 

何が起きるかわからない!効果は飲んでからのお楽しみ! 謎めく紫の毒薬

 

 

 

以上7種類がオマエラのコロシアイをサポートする為に開発された毒薬だよ。それぞれのビンのラベルにも服用量や効能が書いてあるからくれぐれも間違いないようにしてね!」

 

 

僕たちのコロシアイをサポートする為に開発された? ふざけてる。どこまで僕らをバカにするんだ...。こんなものまで用意して...ふざけるな!

 

 

「ふざけるな」

 

 

「何か言った?クルトクン」

 

 

こんなものがあるからコロシアイが起きるんだ。こんなものさえなければ僕らはコロシアイなんかに手を染めないんだ!

僕は手に持ってるビンを床に叩きつけようとした。

 

 

「こんなもの!」

 

 

「待って」

 

 

それを止めたのは平子さんだった。

 

 

「それを壊せばペナルティを受けるわ」

「...ペナルティ?」

「うぷぷぷぷぷ。気付いたようだね、平子サン」

「どう言う事?」

「これ見て」

 

 

そう言われて見せられたのはモノパッドだった。そこにはこの絶望ヶ淵学園の校則が表示されていた。

 

 

「あれ?」

 

 

増えてる。

 

 

「16個になってる」

「『この学園の公共物をコロシアイ目的以外で破壊してはいけません』。さっき確認したら増えていたのよ。ご丁寧に『アップデートしました』って通知も来たわ」

「つまりそのビンを壊すとクルトクンはおしおきされちゃうって事だね」

「そんなのいつのまに! 聞いてないわよ!」

「一々ボクが言うと思わないでよ! それにあのモノパッドは元々携行品なんだから持ってないオマエラが悪いよ。現に持っていた平子サンはちゃんと気付いてたワケだしね」

「...まるで私たちが悪いみたいな言い方ね」

「さあね。でももう少し身の振り方を考えた方がいいかもしれないね。賢くなくちゃすぐに殺されてしまうよ?...うぷぷ」

「...用向きは済んだでしょ。そろそろ消えてくれる?」

「平子サンは冷たいな。さすが仲間の死に何も感じないだけはあるね!」

「......」

「うぷぷ...それじゃあね。ダズヴィダーニャ!」

 

 

モノクマはそう言うと消えていった。なぜロシア語かなんてツッコミはしない。

 

 

「はあ」

 

 

僕は溜息をつくと手に持った毒瓶を薬品棚に戻した。

 

 

「まあ化学室もこれくらいね。その薬品棚ぐらいしか危険なものはなさそうだし」

「だったら食堂に戻る? マオさんと赤星さんも待ってるし、もしかしたらもうみんないるかもしれないよ」

「...そうね。とりあえず集まって探索した結果を聞きましょう。新エリアに何があるか全員で把握する必要もあるし」

「そうだね。じゃあ戻ろう」

 

 

僕らは化学室を出ると、みんなと合流する為に食堂へと帰った。

 

 

 

技術室、図書室、視聴覚室、化学室...今回解放されたエリアは主な場所はこの4つ。そしてこれらが新たな殺意が芽吹くキッカケになるとは、今の僕たちには知る由なんてなかった。

 




2章突入ということでまた新たな展開を迎えます。是非楽しみにしていてください!

立ち絵の方は作者の技術が追いついていないのでまだないですが、いずれは載せたい!と思っています。

ツイッターも1章完結記念で始めました。(@ronpa_mago1)

それではまた次回お会いしましょう!
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