ダンガンロンパExtraWorld 〜砂漠のコロシアイ学園生活〜 作:magone
まずは今回も前回と同じように集めた証拠や証言を整理していこう。
–––モノクマファイル2
被害者となったのは、"超高校級の大道芸人"舞田十司郎。
死亡推定時刻は今日の午前3時頃。
死体発見場所は技術室内のガラス工房。
死因については記述なし。
目立った外傷はない。
–––『不可侵のライヤー』
クルトがガラス工房に忘れてそのままにしてしまっていた法島龍之介著のミステリー小説。
本の著者名の辺りに「m」や「3」のように見える、舞田自身が遺したとされる血文字のダイイングメッセージがあった。
–––溶解炉
ガラスを溶かすための高熱を生み出す装置。
ガラス工房内に立ち込めていた煙の発生源。
スイッチが意図的に破壊されており、火を止める手段はなかった。
–––吹き竿
ガラスを成形する際に用いられる金属管。
倒れていた舞田の近くに不自然に転がっていた。
先端部分に少量の血が付着している。
–––換気扇
溶解炉から排出される煙を外へ出すために取りつけられているらしい。
作動するためのスイッチが破壊されていた。
換気扇自体は少し高めの位置にある。
–––氏家の証言
ガラス工房に置いていた貴志萌華モチーフのガラス工芸品が床に落ちて粉々になっていたという。
氏家曰く、自然に倒れてしまうようなものではなかったらしい。
–––鮫島の証言
昨日の夜10時頃から今日の朝7時頃まで萬屋と共に夜通しで砂漠を調査していたという。
–––工具棚
ノコギリやハンマーなどが収納されている棚。
ガラス工房の扉を封鎖するように倒れていたらしい。
棚自体はそれほど重くはない。
–––隠されていたDVD
アニメDVDの山の中に隠すように置いてあったDVD。
タイトルは『映像の新世紀〜希望ヶ峰学園と絶望の歴史』。
そこには、"人類史上最大最悪の絶望的事件"と称されるものの詳細が語られていた。
現段階でこれが本物か偽物かの区別をつけることはできないが、突拍子のない内容のため偽物である可能性が高いと思われる。
–––ランダムに送信された真実(?)
モノクマによってコロシアイ参加者のうち7人のモノパッドに送信されたもの。
モノクマ曰く、真実とのこと。
クルトには『オマエラの中に黒幕の手先がいる』、足立には『コロシアイは何度も行われている』、舞田には『この学園には秘密の隠し部屋が存在する』というものが送られている。
–––意識不明の平子
化学準備室で血溜まりの中で倒れていた平子。
辛うじて生きてはいたが、モノクマに別室に連れて行かれ、今現在の平子の容体は不明。
–––化学室に出入りしていた平子
平子が立ち入り禁止である化学室から出てくるのを舞田と六車が目撃していた。
化学室に出入りしていた理由は不明。
–––散乱していた実験器具
平子が倒れていた付近に散乱していたアルコールランプ、三脚台、金網、マッチ、ビーカーなどの実験器具。
何かを温めていた痕跡がある。
–––モノクマ特製のオリジナルポイズン
モノクマがコロシアイの為に用意した7種類の毒。
以下それぞれの毒の効能。
白の毒薬:致死性は0%で目眩や吐き気、頭痛の症状が出る即効性の毒薬。
青の毒薬:致死性は0%で目眩や吐き気、頭痛の症状が出る遅効性の毒薬。
緑の毒薬:致死性は50%で目眩や吐き気、頭痛の症状も出る即効性の毒薬。
黄の毒薬:致死性は50%で目眩や吐き気、頭痛の症状も出る遅効性の毒薬。
黒の毒薬:致死性は100%で細胞組織を破壊し、失血を促す即効性の毒薬。
赤の毒薬:致死性は100%で細胞組織を破壊し、失血を促す遅効性の毒薬。
紫の毒薬:何が起きるかわからない。効果は不明の毒薬。
–––毒の使用方法
薬品棚の中にあった説明書きがあった毒の使用例。
気化した時のみ、毒の効果が半減するらしい。
–––嘔吐したクルト
昨日、コーヒーを飲んだ直後に吐き気に襲われそのまま嘔吐し、意識を失ったクルト。
しかし半日後には回復している。
–––足立の検死結果
舞田の死因は顔色などの要因から一酸化炭素中毒ではないと推定。
......こんなものかな。
また始まる。舞田くんを殺したクロを見つける学級裁判が開かれる。
二回目の学級裁判だが、当然のごとく慣れることもなく、心臓の鼓動が速くなっているのを感じる。だが逃げるワケにもいかない...僕ら全員の命が懸かってるんだ。
平子さんにも頼まれたんだ。この学級裁判を。
やるしかない。やるしかないんだ。
いや、やらなきゃいけないんだ!
「えー、ではでは! 最初に学級裁判の簡単な説明をしておきましょう! 学級裁判では『誰が犯人か』を議論し、その結果はオマエラの投票により決定されます。正しいクロを指摘できればクロだけがおしおきですが、もし間違った人物をクロとした場合は、クロ以外の全員がおしおきされ、生き残ったクロだけがこの絶望ヶ淵学園から卒業でき、希望溢れる外の世界へと羽ばたけるのです」
「毎度この口上するワケ?」
「ある種の通過儀礼みたいなものだからねこれは。解っていたら別に聞き流してくれていいよ」
「そんな事よりも先程から気になっていることがあるのですが、お伺いしても宜しいでしょうか?」
「何かな? 桐崎サン?」
「舞田様のお席に御遺影がある事は理解できます。ですが平子様のお席にも御遺影があるという事は一体どういうことなのでしょうか?」
「それぼくも気になっていた。それにそもそも華月はどうしてこの場にいないの?」
今この裁判場には4つの遺影がある。小田切くん、貴志さん、舞田くん、そして平子さんだ。さらに小田切くん達の遺影には大きくバツ印が描かれているが、平子さんの遺影にはバツ印ではなく、大きく『?』の文字が描かれている。理由は凡そ理解は出来るが、あの出来事を知らない人たちにとってはまるで意味の解らないことだ。説明をする時間が必要だろう。
「それに関してはボクから説明するよ。あのね、平子サンはね、危篤状態にあるんだよ」
「...危篤...状態...?」
「それは...どう言うことでしょうか? なぜ平子様はその様な状態に置かれているのでしょうか?」
「具体的なことは言えないよ。あからさまにクロに不利になっちゃうからね! でも平子サンが危険な状態なのは事実だよ。疑うならそこにいるクルトクンや繭住サンとかに聞いたらいいよ」
「...そうなのですか?」
「...うん。間違いないよ。僕たちが平子さんを見つけた時には既に危険な状態だった......幸い脈はあったけど、でも意識はなくて...」
「...で、でも華月は...だ、大丈夫なんだよね? 生きてはいるんだよね? クルトみたいに時間が経てば回復するんだよね? ねえ? そうなんだよね?」
「そ、それは...」
「そんなの分からないよ。言ったでしょ。危篤状態だって。回復の見込みがない状態だってこと。いつ命を落としてもおかしくない状態なの。わかる? 平子サンの状態はそれほど重篤なの。今夜が峠、というか、今まさに峠をハチロクで爆走中ってところなの。だからこの学級裁判中に死んじゃう可能性もある。
平子さん...そんなに危険な状態なのか......
でもそんな平子さんに僕らは何もすることができない。ここに来て以来、己の無力さを感じることは多々あったけど、まだ生きている平子さんに何もできず、回復を祈ることしかできないなんて、自分に嫌気すら差す。
「つまり平子様はいつ亡くなれてもおかしくない状態ということですか。...理解致しました」
「そんな...華月まで......死んじゃったら...嫌だよ...十司郎だって死んだばかりだっていうのに......こんなの......」
「......衛ちゃん...泣いてばかりもいられないわ。友人のために泣くことは悪いことじゃないけど、今は涙を拭いて一緒に裁判を戦いましょう。ここで全滅なんてすればそれこそ今も戦い続けてる華月ちゃんにも申し訳ないわ」
「.......う、うん。そう、だよね。...うん。わかった。今は華月が回復するのを信じることにする! だから議論を始めよう! 十司郎と華月をあんな目に合わせたクロを見つけるんだ!」
そうだ。平子さんは今も戦っている。死と戦い続けている。生きようとしている。だったら僕らも戦うしかない。そして勝たなくちゃいけない。僕らが生き残るには、平子さんが戻って来れる場所を守るには、ここで負けるワケにはいかないんだ。
「議論を始める前に少しいいか?」
「勅使河原、どうしたの?」
「今回議論すべきなのは舞田十司郎の件だけで、平子華月の件は現在不必要に思えるのだが、それに関してここにいる参加者はどう考えているのか?」
「平子のことはどうでもいいって言いてぇのか?」
「そうではない。新しく追加された校則を見るといい。そこには『別の犯人による別の殺人が同時に起きた場合、先に死体発見された方のクロのみが投票対象となります』と記載されている。つまり今回、舞田十司郎と平子華月を襲った犯人が別々であった場合、私たちが投票すべきなのは、舞田十司郎を殺害したクロということになる。平子華月の件を議論するのは舞田十司郎が殺害された事と関連性が見出せてからするべきだ。私が言いたいのはそういう事だ」
「確かにその通りだけどよ、犯人が別々だなんてありえるのか?」
「ありえない話じゃない。実際校則が追加されたのは、平子華月が襲われた後なのだろう? 犯人がそれを知らずに、凶行に及んだ可能性もある」
「...一理ある。なら今はまず舞田君の件から議論を進めていこう...」
舞田くんと平子さんを襲った犯人が別々......可能性としてはあるけど、本当にそうなのだろうか。......わからない。
今はとにかく議論を進めていかないことには何も始まらない。僕はモノパッドに表示されているモノクマファイルを見ながら、舞田くんの死と向かい合った。
「まずは前回と同じようにモノクマファイルの確認からしていこう」
「はい。今回亡くなられたのは超高校級の大道芸人であらせられる舞田十司郎様でございます」
「...死亡推定時刻は午前3時頃...」
「死体発見現場は技術室ん中のガラス工房ぜよ」
「死因はこれまた不明らしい」
「確か煙が充満していた所に倒れていましたな」
「だったら死因は一つしかねーだろ。舞田の死因は一酸化炭素中毒で決まりだ!」
いや確か舞田くんの死因はそれじゃなかったはず!
足立の検死結果ー論破→一酸化炭素中毒
「それは違うよッ!」
「いやその可能性は低いと思うよ、六車くん」
「あ? 何でだよ? あの状況じゃどう見ても煙を吸い込んで死んだように見えるが?」
「でもそうじゃないんだ。そうだよね? マオさん」
「ええ。十司郎ちゃんが一酸化炭素中毒が原因で死んだなら顔色はむしろ良く見えるはずだからね」
「顔色が良く? 何言ってんだ?」
「一酸化炭素中毒に陥った人の顔色は血液中のヘモグロビンと結合して顔色は"良く"見えるって意味よ。それなのに十司郎ちゃんの顔色はお世辞にも良いものとは思えなかった。という事は十司郎ちゃんの死因は煙ではない、別の所にあるとあたしは思うのよ」
「そ、そうか。なら一酸化炭素中毒ってのは違ぇな。...つか何で毎回最初の議論で俺が論破されなきゃいけねーんだ?」
「それはお前が的外れなことしか言えない馬鹿だからだ。いい加減自覚を持った方がいい。自分が論破する側ではなく、される側ということを」
「んだと!? コラァ!! いつもテメェは事あるごとにバカバカバカバカバカ言いやがってッ!! 暴言しか吐けねぇのかその口は!!」
「ブーメランを投げろとは言ってないのだが」
「あ゛あ゛!?!?」
「はいそこで喧嘩終わり!! 今はそんなことしてる場合じゃないでしょ! 早く次の議論に行きましょう」
パチンと手を叩いて喧嘩を仲裁した繭住さんはそのままモノクマファイルを再度確認すると一呼吸置いて話し始めた。
「うーん。それにしても舞田の死亡時間が午前3時ということは、前回と同じ夜時間に行われた犯行ってことね」
「ということは、今回は誰もアリバイは成立しないんじゃないすかね? そんな時間みんな自室で一人だと思うんすけど」
「まあそうなるだろう。そんな夜更けにアリバイがあるという方が稀有だ」
「...あっいやそれが」
「ん? どうしたんすか? クルトくん? 何か言いたいことがあるんすか?」
「う、うん...」
アリバイが成立する人はいる。だけどそれを僕の口から言っていいものか悩む。
でも逡巡している場合ではないことも確か。今は確定している事実をみんなと共有すべきだと思う。
氏家の証言
鮫島の証言←
モノクマの証言
これだ。
「鮫島くんと萬屋くん。二人には夜時間のアリバイがあるんだよ...」
「えっ!? そうなんすか!!......まさか!!鮫島くん女性が苦手だからって夜時間に萬屋くんと×××...!! いや確かに萬屋くんは童顔ですし可愛らしいっすけど」
「ち、違う!! そがなことじゃなか!! わ、わしと萬屋は砂漠を調べとったんぜよ!」
「砂漠を? それは本当か? 萬屋千歳」
「...う、うん。そう...だけど、何でクルト君がそれを...?」
「あ、それは」
「それはわしが教えたんじゃ。すまんぜよ萬屋」
「...そうなんだ。うん。大丈夫。今は緊急事態なんだし、仕方ないよ...。......それでみんなごめん。夜時間のルールを破って...鮫島君も巻き込んでごめん...」
「萬屋くん......」
「...頼む! 此奴を責めんでくれ。此奴はただ皆のために砂漠を調査しとっただけなんじゃ! やましい事は何もしとらん! ルールを破ったんは悪かったが、それも夜の砂漠がどんな風になっとんのか調べるために仕方ないことやったんぜよ!」
「鮫島...」
「頼む!!」
「...さ、鮫島君...」
鮫島くんは僕ら全員に向かって頭を下げた。その行為は鮫島くんが萬屋くんをどれほど信頼しているかを知るには十分なものだった。もちろん僕らも彼らを責め立てるつもりはない。ルールを破ったからと言っても萬屋くん達の行動は僕らをここから救う為に他ならないのだから。
「頭を上げてよ、鮫島くん。心配しなくてもここにいる人は誰一人として君たちの行動を責めたりしない」
「そうっすよ! ただそれなら私たちにも一言ぐらい言ってくれれば良かったっすのに。砂漠の調査なら誰も反対なんてしないっす!」
「...あの日はクルト君があんな状態だったし、平子さんがルールを破っていたってバレたばかりだったし、これ以上ルールを破って夜時間に出歩くなんてとても言えなかったんだ...」
「...なるほど。隠していた理由はそういうことだったんだね」
「...本当にごめん...」
「萬屋様が謝られることはございません。それに今回の件に限って言えば、萬屋様と鮫島様の完全なアリバイが成立しますので、結果的には容疑者を減らすことに成功しております。寧ろ賢明な判断だったと言えます」
「そうね。千歳ちゃんと海ちゃんが容疑者から外れれば、残りは10人かしら。まだまだ多いわね」
「ふっふーん! マオ!! それだけじゃないよ!! ここから更に半分以下に減らすことができるんだよ!!」
「え、そうなの?」
得意げな顔をして、鼻高々に胸を張っているのは赤星さんだ。容疑者を更に半分以下に? そんなことができるのか?
「赤星さん、それは本当?」
「へへっ! ぼく気付いちゃったんだよね〜!」
「勿体ぶってないで早く教えてよ」
「うん! わかったよ! ズバリね! 犯人は"男子"なんだよ!!」
「はい!?」
犯人は男子だって? そんなことがわかる証拠なんてあったかな? 僕は赤星さんの次の言葉を待つことにした。
「あのね! 今回、十司郎を殺した犯人はズバリ男子なんだよ!」
「あ? それ本気で言ってんのか?」
「本気だよー! 超本気だよー!」
「赤星衛がそう考えるに至った経緯を教えてくれるか?」
「わかったよ! みんな思い出して欲しいんだけどさ。十司郎が殺されていたあの部屋のこと覚えてる?」
「ガラス工房のことでしょ? それがどうしたの?」
「聞いた話によると、その部屋の前には工具棚が横倒しされていたんだよね?」
「ええ。それは間違いないですぞ」
「ならやっぱり犯人は男子だよ!! だって女子じゃあんな重い工具棚を倒せっこないよ!」
いやそんなことはない筈だ。アレはそんなに重くない。
工具棚ー論破→女子じゃあんな重い工具棚を倒せっこないよ!
「そうとは限らないよ!」
「え!? どうして?」
「赤星さんはあの工具棚を実際持ってみたことはある?」
「うん? いやないけど..でも棚だよ? 2mくらいあったし、普通は重いと思うんだけど?」
「いやそうでもなかったよ。私も持ってみたんだけどさ、女の私でも持ち上がるぐらいの重さだったよ。あれぐらいなら倒すくらいは誰でもできると思うよ」
「あ、あれ〜? そ、そうなの?」
「私が確かめた限りはね」
「...でもそれは倒れていた工具棚の事だよね...?...本来の工具棚にはノコギリやハンマーが沢山入っていたから重量はもっとあった筈だと思うよ...?」
「それも尤もだが、予め工具を抜いていたケースも考えられる。いずれにせよ工具棚が倒されていたからと言って犯人の性別を確定することは出来ないと考えられるな」
「そ、そっか。名推理だと思ったんだけどね〜」
「いや割と無理やりな運びだったと思いますぞ?」
「いや〜ごめんよ〜男子諸君」
工具棚の件は僕も確かめたし、重さに関しては間違いない。赤星さんの推理は確かに違ったけど、逆に言えば女子でも倒せたって意味にもなる。それを確認させてくれた事は大きいと思う。赤星さんが言ってくれた事は決して無駄じゃない。
「その男子諸君の一角を担う小生から質問があるのですが、よろしいですかな?」
「なに?」
「いや〜小生ずっと疑問に思っていることがありましてね。舞田氏は一酸化炭素の中毒死ではないこと足立の検死結果からそうであると思うのですが、でしたら本当の死因は一体何だったのでしょうか?」
「...舞田の死因か」
「一酸化炭素中毒ではないとしたら、私にはアレしか考えられないのだが」
「アレってなに?」
鬼頭さんの言うアレ。一酸化炭素中毒の線が消えた今、舞田くんの死因として最も考えられる可能性。それは...
モノクマ特製のオリジナルポイズン←
これしかない。
「化学準備室にあったモノクマ特製のオリジナルポイズンのこと、だよね?」
「そうだ」
「つまり毒殺ということか」
「...毒。確か7種類ぐらいあったよね...?」
「その中のどれかが舞田くんに使われたってことっすね」
「クルト・L・クルークハルト。その詳細を教えてくれるか?」
「あ、うん。わかったよ」
僕は7種類の毒の特徴と効能をみんなに説明した。
白の毒薬:致死性は0%で目眩や吐き気、頭痛の症状が出る即効性の毒薬。
青の毒薬:致死性は0%で目眩や吐き気、頭痛の症状が出る遅効性の毒薬。
緑の毒薬:致死性は50%で目眩や吐き気、頭痛の症状も出る即効性の毒薬。
黄の毒薬:致死性は50%で目眩や吐き気、頭痛の症状も出る遅効性の毒薬。
黒の毒薬:致死性は100%で細胞組織を破壊し、失血を促す即効性の毒薬。
赤の毒薬:致死性は100%で細胞組織を破壊し、失血を促す遅効性の毒薬。
紫の毒薬:何が起きるかわからない。効果は不明の毒薬。
...と、全ての毒の説明を終えるとマオさんが何かに合点がいった様な声を出した。
「ああ! なるほどね。アレはそういうことだったのね」
「ん? マオさん何かわかったの?」
「多分十司郎ちゃんに使われたのは、黒か赤の毒薬だと思うわ」
「その根拠は?」
「十司郎ちゃんは相当な量の吐血をしていたの。でも外傷はほとんどなく、外的要因によるものではないと考えていたから何でだろうと思っていたのよ。でもクルトちゃんの説明を聞いて確信したわ。十司郎ちゃんは失血死。それは黒と赤の毒薬以外にはできないわ」
「私も足立猫の意見に賛成だ。白、青、紫の毒薬は論外だとして、緑と黄の毒薬は、致死性が50%とはいえ効能を鑑みるにおそらく吐血はしないと見られる。結果、黒もしくは赤の毒薬が使用されたといってまず間違いないだろう」
「んー、ならさ、十司郎はどうやって毒を使われたのかな?」
「昨日はクルトが毒を盛られたばかりだったからいつも以上にみんな警戒心が増していたはず、そんな状況で他人から貰った食べ物や飲み物を口にしないと思うわ」
「ちなみにクルトに盛られた毒は、白か緑のどちらかだと思うわ」
「うん。僕もそうだと思う」
「まあ今は舞田がどうやって毒を身体に入れられたのかを考えよう。クルトの件はまた後で話し合おう」
「うん。そうだね」
次の議題は毒をどうやって体内に取り入れたのか、か。
色んな可能性が考えられる。これはみんなの意見をしっかり聞いていこう。その中に答えが隠れているかもしれない。
「あの状況でどうやって十司郎ちゃんを毒殺できたのかしら?」
「直接口から飲ませたいうんはどうぜよ?」
「考えられなくはないけど、少し強引かもしれないわね」
「ならよォ、朝飯に既に仕込んでいたってのはどうだ?」
「あれには全員一通り口を付けてるっすよ! 朝食に毒が入っていたなら私たち全員ここにはいないっすよ!」
「他に考えられる可能性といえば、以前も話に出たウォーターサーバーに混入させたというのはどうだ?」
「...それか気化させたとか...?」
「ストローみたいなのに毒を塗って直接吸わせたというのはどうっすか?」
「それか刃物に毒を塗ってそのまま十司郎をグサリ」
「う〜ん。一体どのような方法を用いられたのでしょうか」
...ん? 待てよ? もしかしたらあの方法で舞田くんの身体に毒を入れたのか? いや多分そうだ。あの証拠にはそれを証明するものが付着していたはず!
吹き竿ー賛成→毒を塗って直接吸わせた
「古畑さんの意見に賛成だよ」
「ん? あれ、本当にそうなんすか!? 私が言ったことながら驚愕の色を隠せないっす!」
「でもよォ、舞田がストローみたいなのを使ってる姿を俺は見たことねーぞ?」
「いやストローではないんだ。
「ん〜ストローのようなものですか。...あっ! もしかして"吹き竿"のことですかな?」
「うん。その通りだよ」
「吹き竿ってのは何だ?」
「吹き竿というのは、簡単に言いますとガラスを成形する際に用いる細長い金属管のことですな」
「金属管か。確かにストローのような形状とも言えなくはないな」
「しかしそれだけで吹き竿に毒が塗られていたと仮定するのは些か早計ではないでしょうか? 他にそう断定する理由があるのでしょうか?」
「うん。その理由もあるよ。舞田くんの近くに転がっていた吹き竿には、先端付近に血が付いていた。多分、舞田くんが吹き竿に咥えた時に塗られていた毒を吸い込むか舐めるかしてしまったんだと思う」
「なるほど、あの吹き竿に付いていた血は舞田氏が吐血したものだったのですな」
「そう考えると使われたのは即効性の黒の毒薬ということになるな」
「でもなら舞田くんはどうして吹き竿を口に咥えたんすかね?」
「そうじゃのう。理由もなく金属管を咥えることせんと思うが」
舞田くんが金属管を咥えた理由...
それが何なのかが解れば今回の犯行がどんなものなのか見えてくる気がする。ここで躓くワケにはいかないな...。
「舞田氏が吹き竿を咥えた理由ですか」
「それはやっぱりあれだよ! ガラス工芸品を作ろうとしていたんだよ!」
「可能性はゼロではないですが、んーどうでしょう...」
「私はこう考える。あの密閉された状況...加えてあの煙...それから導き出される答え、それは舞田十司郎は一酸化炭素中毒を防ぐため新鮮な空気を体内に取り入れようと試みた、ということだ」
「しかし空気を取り入れようにもそのような穴は無かったように見受けられましたが」
「なんだか無性に咥えたくなったとか?」
「いや何すかそれ。呪いか何かっすか?」
あの状況を鑑みるに舞田くんが吹き竿を咥えた理由はアレしかないかもしれない。
溶解炉ー賛成→新鮮な空気を体内に取り入れようと試みた
「勅使河原さんに賛成だよ」
「勅使河原さんの言う通り、舞田くんは新鮮な空気を吸うために使ったんだと思うよ」
「やはりそうか」
「うん。おそらく犯人は溶解炉を暴走させ、煙を充満させたガラス工房に何らかの方法で舞田くんを連れて来て、扉を工具棚で封鎖した。閉じ込められた舞田くんは、新鮮な空気を吸うために近くにあった吹き竿を使った。僕はそう思うよ」
「しかしそのような新鮮な空気が確保できる場所が果たしてあのガラス工房にございましたでしょうか?」
「うん。それもあるんだ」
「それはどこ?」
それは...
換気扇←
これだ。
「換気扇だよ」
「換気扇、でございますか?」
「じゃが換気扇は確か壊されとったと思うが」
「いやそれは関係ないんだ。重要なのはそこに外に通じる穴があったってことなんだ」
「穴?」
「そりゃあ換気扇ですから、グラウンド方面に通じてはいますが。...ああ!! 故に吹き竿が必要だったのですか!?」
「うん。煙が充満した室内で唯一新鮮な空気が吸える場所。それが換気扇の穴。でもそのままじゃ煙も一緒に吸ってしまう。そこで必要になるのが吹き竿なんだ。これを換気扇の穴に挿せば、吹き竿を通して新鮮な空気を吸える。舞田くんはおそらくそう考えたんだと思う」
「ああ!!なるほどそう言うことっすか!!穴に棒を挿すなんて、中々考えたっすね!」
「...卑猥...」
「古畑さん誤解を生みそうな抜粋はやめて...」
と、とにかくこれで舞田くんが吹き竿を咥えるに至った経緯が説明できるはずだ。
...しかし犯人は何でここまでする必要があったのか? これを実行するには少なくとも、化学準備室から毒を調達し、溶解炉と換気扇を破壊し、全ての吹き竿の両端に毒を塗り、工具棚を倒すことができるか確認しないといけない。
理由はわからない。だけどこれは確実に突発的に起きた殺人ではないということだけは言えると思う。
そう思っていると...
「ん? あ、ああ! わかったぞ!! 犯人が!!」
六車くんが声を荒げてそう言った。
「犯人がわかったの?」
「ああ! わかったぞ! こんな大掛かりな仕掛けをするにはガラス工房を熟知してなきゃならねぇ。つまりこの部屋に一番出入りしてた氏家! お前が犯人だ!」
「しょ、小生ですと!?」
「ああ! 溶解炉がどうだ吹き竿がどうだなんてよう、普通の人にはまず思い付かない方法だ。だがお前が違う。お前は"超高校級のガラス職人"だ。専門器具を使うトリックを思い付いたとしても不思議じゃねぇ!」
「ぬ、濡れ衣です!! 小生が作品を作るための道具を使って人を殺したなど!! あり得ませぬ! あり得ませぬぞ!!」
「確かに氏家様が一番の容疑者には違いありませんが、しかしそれだけで犯人だとは言うのは時期尚早かと」
「ならあのガラス工房に行った奴ら全員が容疑者だ!」
「全員?」
「あのガラス工房に行ったことがあるのは...」
「氏家幕之進、クルト・L・クルークハルト、繭住藍子、それと私は確定だ」
「...探索の時に僕も入った...」
「でも萬屋くんはアリバイがありますし、クルトくんも毒を盛られたことを考えると、残るのは...」
「氏家と繭住と勅使河原だ!」
「小生は決して!! 決して!! ガラス工房の道具を用いて犯行を企てるようなことはしておりませんぞ!!」
「ちょっと待って! 何で私が容疑者の一人になってるのよ! ガラス工房なんてちょっとしか見てないわよ!」
「自分で名乗り出といてなんだが、私は殆どの時間をそこで寝て過ごしていただけだ。私が犯人とは言い難いと考える」
「小生は犯人ではないですぞ!!」
「私が犯人なワケないじゃない!」
「私を犯人と断定しない方がいい」
あっまたこれだ。3人が3人とも無罪を主張するアレだ。注意深く聞かないと聞き漏らす可能性がある。集中していこう...。
※パニック議論は3人が3人とも無罪を主張するので、会話が3つございます。
(例)
A1「」
B1「」
C1「」
A2「」
B2「」
C2「」
...このように続いていき、A1はA2に会話が進み、B1はB2に会話が繋がるようになっています。また同じ人物が連続で話す場合もございます。以上が大まかなパニック議論の説明となります。
氏家「小生は犯人ではないですぞ!」
繭住「私が犯人なワケないじゃない!」
勅使河原「私を犯人と断定しない方がいい」
氏家「各々方! 信じてくだされ!」
足立「私も藍子ちゃんは犯人じゃないと思うけど」
萬屋「...僕は信じるよ。勅使河原さんは犯人じゃない...」
古畑「信じたいのは山々っすけどねぇ」
繭住「さすがマオちゃん!! わかってる!」
勅使河原「ありがとう萬屋千歳」
古畑「でも3人以外で他にガラス工房に入った人はいないんす...」
六車「そんな事は誰でも言える。犯人じゃねぇならその根拠を言え!!」
萬屋「...一緒に犯人じゃないって根拠を探していこう...」
氏家「むむっ!!...うーん、た、確かにそうですが...」
繭住「根拠も何も私はガラス工房に何があるなんて知らなかったわよ!!」
勅使河原「すまない。君には迷惑ばかりかける」
氏家「災難です...疑われたりと作品が壊れていたりと...うう...小生のメンタルが...風前の灯に」
六車「うっせーな!! 反論はいいが、もう少し小さいで言え!!!!」
萬屋「...気にしないで。僕は君を信じてるだけだから...」
古畑「確かに災難っすけど、だからって容疑が晴れるワケじゃないっす」
鬼頭「うるさいのはお前だ。大声で喚くな」
赤星「祈里と千歳を見てると何だかこっちが照れちゃうよ〜」
確かに聞こえたよ!
氏家の証言ー賛成→作品が壊れていたりと
「そうだよ! 氏家くん! それがあるじゃないか!」
「クルークハルト氏? な、なんですかな?」
「作品が壊れていた件だよ!」
「さ、作品ですか?」
「何すか作品とは?」
「作品というのは、氏家くんが死んだ二人の弔いの為に作ったガラス工芸品の事だよ」
「ああ、確かに保健室に持ってきたものよね? 黒と赤が綺麗な色合いを出してる素敵な器だったわ」
「それは小田切氏をモチーフにした作品ですな」
「二人ってことは萌華がモチーフの作品もあるの?」
「ええ。...ありました。ありましたけども、貴志女史モチーフの作品は小生の知らない間に床に落ちて粉々になっていたのですよ...」
「私も確認した。間違いない。確かに下に落ちて割れていた」
「自然に落ちたんすかね」
「いえ形状は小田切氏モチーフの作品と同様に器でしたから勝手に下に落ちるとはやはり考え辛いのですよね。現に小田切氏モチーフの作品は無事だったワケですし」
「つまりさ、クルトは何が言いたいの?」
「僕が言いたいのは、恐らく夜時間に誰かがガラス工房に入った可能性があるってことだよ」
「た、確かに誰かが誤って長机に置いていた小生の作品を落としてしまったと考えるのが一番あり得る話ではありますな」
「だったら私たちだけが疑われるのはおかしいわ! 夜時間に入った痕跡があるなら容疑者を狭めることはできないはずよ!」
ひとまずはこれでいい。ガラス工房に入ったことがあるってだけでクロを確定させることはできないと思うし、まだまだ解ってないことも多い。クロを確定させるのはそれらの謎を解いてからでも遅くはないはず。
「チッ...ならどうすんだ? クルトは何を話し合えばいいと思うんだ?」
「そう、だね...うーん...例えば、なぜ舞田くんはガラス工房にいたのか、とか?」
「ガラス工房にいた理由か?」
「呼び出されたとかですかな?」
「でもクルトが毒を盛られたばかりだったんだよ? 夜時間に呼び出しを受けたとしても誰がそれに応じるのよ」
「殺してから連れてきた可能性もないっすから、舞田くんが自分から外に出たと考えるしかないっすけど...その理由がわかんないっすね」
舞田くんが自室から外に出た理由がきっとあるはず。それをみんなで議論しようとしたその時だった。勅使河原さんが声を上げた。
「一つ...いいか?」
「ん? 何?」
「私と萬屋千歳と桐崎雨城と赤星衛は、舞田十司郎の個室を調べていたのだが、そこでこんな物を見つけた」
勅使河原さんが取り出して見せたのは少し大きめの"本"だった。
「もしかして、エレベーター前で言っていた"何か"ってそれのこと?」
「そうよ」
「その本が何だっての? 舞田はああ見えて読書家だったし、部屋に本がある事ぐらい別に不思議じゃないと思うけど?」
「この本のタイトルを見てもそう言えるか?」
「タイトル?」
「『改訂版・希望ヶ峰学園公式資料集』それがこの本のタイトルだ」
希望ヶ峰学園の...公式資料集?
何だそれは?
「希望ヶ峰学園!? どうしてそこでその名前が出てくんのよ?」
「さあ、それは解らない。しかしこれが舞田十司郎が夜時間に外に出てしまった要因ではないかと思う」
「あ? どうしてそうなんだ?」
「まずはこの本の内容を確認して欲しい。順に回すから適当でも構わないから見てもらえるか?」
僕らを勅使河原さんの言う通りにして、一人一人その本の中身を確認していった。
そして確認した者は一様に怪訝な表情を浮かべていった。それもそうだ。なぜならこの本、殆どのページの殆どの文章が黒塗りで読めないようになっていたのだ。ちょうど不開示情報を隠す公文書のように。
「みんな見たようだな」
「な、何すかこれ! どのページも黒塗り黒塗りで何が書いてるか全くわかんないっすよ!!」
「これが何で舞田くんが部屋から外に出た要因になるの?」
「確かにこれ単体では恐らく舞田十司郎も部屋から外に出ることもなかっただろう。しかしこの本の最後のページ、そこにこんなものがあった」
「それは?」
「紙のDVDケースだ」
「DVDケース?」
「DVDが付属されてたってことか?」
「その通りだ。この『改訂版・希望ヶ峰学園公式資料集』にはDVDが付属されていたと思われる。しかしその中身がどこにも見当たらない。となると考えられる可能性はDVDを再生できる場所に行った、と思われる」
「それって...」
この学園でDVDを再生できる場所は一つしかない。それは...
技術室
図書室
視聴覚室←
化学室
間違いない。
「視聴覚室に間違いないよ」
「その通りだ」
「...クルト、その付属されたDVDってまさか」
「うん。アレのことだ」
隠されていたDVD←
これに違いない。
「多分勅使河原さんの線で間違いないと思うよ」
「その顔は何か確証があるな」
「うん。僕と繭住さんと鬼頭さんと六車くんと古畑さんは、視聴覚室でそのDVDを観たんだ」
「それは本当?」
「本当っすよ。私と鬼頭さんがグンフロのDVDの山の中から見つけたんす。それからそこにいた全員でDVDの中身を確認したんすよ」
「それで...そのDVDの内容は一体どのようなものでございましたか?」
「それは...」
僕らはあのDVDの内容をみんなに話した。
炎に包まれる街...崩壊する建物...嬉々として殺し合いを演じる人々......あの地獄絵図のような光景のことを...
"人類史上最大最悪の絶望的事件"
"超高校級の絶望"
"江ノ島盾子"
"絶望の残党"
"未来機関"
あのDVDで語られた事の全てを。
「そ、それは何? う、嘘だよね? ぼくらの世界が、そんな事になっているなんて...そんなの...」
「...江ノ島...? 絶望...? 未来機関...?」
「その様なことが有り得るワケがございません! それはきっとモノクマ様の捏造に違いありません!」
「ボクはそんなことしちゃいないよ? 何でもかんでも人のせいにするのは良くないなぁ」
「慌てるな。あのような突拍子もない映像はフィクションに違いない。それに現実で起きている確証もないんだ。取り乱す必要はない」
「うぷぷ...果たしてそうかな?」
「黙れ」
鬼頭さんの言った通り、アレはフィクション。それ以外には考えられない。
「...とりあえず今はそれに関する真偽は置いておこう。兎にも角にもこれで舞田十司郎が夜時間に部屋から出た説明がついたようだ」
「...舞田くんはおそらくこの『改訂版・希望ヶ峰学園公式資料集』を図書室で見つけた。それを部屋に持ち帰り、読んでみたものの中身は黒塗りだらけで何も解らない。そこで目に付いたのが付属のDVDだったんだ」
「私たちが入学するはずだった希望ヶ峰学園に関するDVD...舞田が気になって視聴覚室に行ったって不思議じゃないわね」
「じゃあ...あのDVDを隠したのって」
「舞田くん本人かも」
「あの内容だ。舞田がアレを見て何を感じたかは解らないが、おそらく私たちに見せるべきではないと判断し、それをDVDの山の中に隠した。ということかもしれない」
「木を隠すなら森の中、DVDを隠すならDVDの山の中ってことっすね」
まあ僕もあの内容を見たら、もしかしたら隠すかもしれない。それぐらいリアリティのある映像だった。
「...つうことは何だ、アイツは視聴覚室のそのDVDを見て隠した後、たまたま犯人と遭遇して、たまたま殺されたってのか?」
「...もしかしたらそうかもしれない」
「嘘だろおい。なら部屋を出なけりゃアイツは死なずに済んだってことかよ」
六車くん...
「......でもよう...ならアイツ何でガラス工房なんかに...」
「...犯人に連れられたとか?」
「...さあな」
「舞田十司郎がガラス工房にいた謎か」
舞田くんが視聴覚室でDVDを見終わった後、犯人と遭遇したと仮定しても、その後にガラス工房に閉じ込められることなった経緯が解らない。
...それなら議論を続けるしかない。そこで何か新しい事実が見つかるかもしれないなら、ここで立ち止まってる時間はない。
「なぜ舞田十司郎はガラス工房にいたのか? その理由が解らない」
「やっぱり犯人に連れられて来たとかっすかね?」
「眠らされて運ばれたとかはどうぜよ!」
「確かに保健室には睡眠薬ぐらいならあったけどねぇ...」
「逆転の発想で犯人に追われた十司郎が自分からガラス工房に逃げ込んだとか」
「殺人鬼でもいたんすかね...」
「んなモン決まってる。舞田は無理やり連れて来られたんだ。きっとぶん殴って気絶させたんだ! そうに違いねぇ!!」
いやそれだけは違う。
モノクマファイル2ー論破→ぶん殴って気絶させたんだ!
「それは違うよ」
「いやその可能性は低いと思うよ、六車くん」
「あ? 何でだよ? あの状況じゃそれぐらいしかアイツを運べねぇだろ?」
「モノクマファイルには、舞田くんには"外傷はない"ってあるんだ。舞田くんを殴って気絶させたならどこかしらに外傷が残ってるはずなんだ」
「お前はモノクマファイルぐらい確認しておけ。見てみろ。最初の議論と全く同じ流れで論破されているじゃないか。何をしているんだお前は」
「うっせーな!! テメェも!! 一々突っかかってくんじゃねぇ!!」
「...でもこれで舞田君の件に関しては一通り話し合ったと思う。これから何を話すの...?」
「萬屋と鮫島ぐらいしか完璧なアリバイを持ってるのもいない。これまでの議論だけじゃ舞田殺しの犯人を特定するのは難しそうね」
「なら平子華月の件を議論するのはどうだ? 舞田十司郎が毒殺なのは確定したと言ってもいいし、その毒があった化学準備室で倒れていた彼女ともしかしたら関連性があるかもしれない」
「なら次は平子さんの件を話し合うっすよ」
遂に平子さんの件を話し合う時間が来たか。
今も懸命に死と戦い続けてる平子さん。彼女の身に何があったのか、捜査時間に何が起きたのか、それを解き明かせばこの事件の全容が見えてくるはず。
「...ちょっといいかしら?」
ん? 繭住さん?
「何?」
「この事件、もしかしたら平子が犯人ということもあるんじゃない?」
「え?」
平子さんが...犯人だって?
「どう...して? 平子さんだって被害者なんだよ? 現に今だって懸命に生きようと」
「それがおかしいのよ」
「おかしい?」
「どうして、平子は死んでないのよ」
「...それはどういう意味...?」
「繭住藍子は平子華月に死んでほしかったのか?」
「違う! そうじゃない! 私が言いたいのはどうして犯人に襲われたにも関わらず平子は今も生きてるのか、っていうことよ」
「確かに...そうだよな。生きてること自体がおかしい。それは俺も思う」
「六車くん!」
「考えてもみろよ! 舞田は絶対死ぬ毒を使われて殺された。なら何で平子にはそれを使わなかったんだ? おかしいだろ?」
「つまりこれは小生らを間違った答えに導かせる為に平子女史が張った罠ということですか?」
罠?
嘘だ...そんな事...あるワケ......。
「それか舞田くんを殺した自責の念に駆られて自殺しようとしたんすかね?」
自殺?
あり得ない。あの平子さんが自殺を選ぶなんて......。
「そんな事はどっちでもいいわ。罠だろうと自殺未遂だろうとクロは平子、投票対象は変わらないわ」
「繭住さん!! そんなことはあり得ないよ! 平子さんは罠を張ったり自殺を選んだりするような人じゃない!!」
「クルト...アンタはアイツの何を知ってるの?」
「そ、それは」
「何も知らないでしょ? だったら"そんなことをする人じゃない"なんて断言できないはずよ」
繭住さんの言葉に反論できない。確かに僕は平子さんのことを何も知らない。彼女が本当は何を考えて、どう行動しようとしたなんて僕には解らない。
解らないけど...それでも...僕は......
「それでも僕は...平子さんを信じたいんだ」
「クルト...いいわ! アンタは私よりあの女を選ぶってワケなのね!」
「違うよ! そんなんじゃない!」
「何か昼ドラみたいになってきたっすね」
平子さんが犯人なワケない。だって彼女は舞田くんの亡骸を見た後、僕にこう言ったんだ。
『......彼は相当苦しんで亡くなったようね。...こんなことになってしまったのも私の力不足が原因だわ』
『クルトくん。今回の裁判、私は力になれそうにない。おそらくこの中で現在一番クロに近い人物は私だ...前回のような進行はできない。悪いけどクルトくんに後を頼むことになりそうだわ』
『クルトくんならやれる。前回の裁判は君なしでは勝利はなかった。君にはその才能がある。真実を見つける才能が』
そう言った彼女の言葉を僕は信じたい。
たとえ繭住さんと対立することがあってもこれだけは譲れない。
心が痛い。以前僕に笑顔を向けてくれた彼女は今は僕に怒りの表情を向けている。でもここだけは逃げるワケにはいかない。
僕の真正面にある遺影の中で微笑む小田切くんから勇気を貰うと、僕は彼女らと対峙する。平子さんの無実を信じて...。
「......」
「......」
「......」
「......」
「......」
「......」
「......うっ!」
「.......ここは」
「......そうか。私は......」
––––––気がついたようだな。
「...だ、誰?」
––––––でもまだダメだ。貴様の出番はまだ少し先だ。
「何を言って...」
–––––解ったら大人しく寝てろ。出番になったら起こしてやるよ。
「な、何を...私に...何を.......」
–––––口を噤め。命が惜しいならな。
「.......」
–––––賢い子だ。それでいい。
–––さあ。後半戦といこうか。
学級裁判は久しぶりに書くと書き方を忘れてしまいますね。
今回は少しノンストップ議論多めでした。次回はどうなるかなぁ。
それとまたまた生徒一覧のページのイラストを更新しました。これで当分は変えないと思います。度々申し訳ありません。
次回はふつうに後編になる予定です。是非クロを予想してみてください。それではまた次回お会いしましょう。