ダンガンロンパExtraWorld 〜砂漠のコロシアイ学園生活〜   作:magone

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あけましておめでとうございます。そしてお待たせしました。
今年もどうかよろしくお願い致します!


第2章 非日常編 学級裁判(後編)

–––モノクマ劇場♪–––

 

 

 

『事実は小説より奇なり』

 

 

 

という諺をご存知でしょうか?

 

イギリスの詩人・バイロンがその著作『ドン・ジュアン』の中で語られた一節が初出と言われています。

 

 

"現実の世界で起こる出来事は空想で書かれた小説よりもかえって奇妙である"

 

 

そんな意味合いを含んだ言葉です。

 

 

 

では小説の中の登場人物たちはこれについてどう考えるでしょう?

 

勿論、彼らは自分たちがフィクション上の存在ということを認識していないので、現実世界に生きる我々と同じ考え方をするでしょう。

 

ですが、もし彼らが自分たちはフィクション上の存在であるということを認識してしまったならば、どうでしょうか?

 

彼らの身に起こっていたこと全てが実はフィクションの中の出来事で、現実ではなかった。

という事実に直面してしまったら......?

 

 

果たして今後彼らの身に降りかかる出来事について、我々と同じ思考をするでしょうか?

 

 

答えは誰にもわかりません。

 

 

 

なぜなら、彼らにとってはそのフィクション世界こそ現実そのものに他ならないからです。

 

 

 

 

 

 

フィクションと現実世界の境界線は実に曖昧なものです。

 

 

 

 

それは"彼ら"が証明してくれるでしょう。

 

 

 

 

 

 

さあ、ではそろそろ本編に戻りましょう。

 

 

学級裁判、再開します!

 

 

 

 

 

 

–––学級裁判 再開–––

 

 

犯人は平子華月。

そんな空気が裁判場の雰囲気を占めつつある。

 

...確かに平子さんは、夜時間に化学室に行ったりと、その事実を隠していたりと、犯人だと疑われたとしてもおかしくない行動をとっていたのも事実だ。

 

でもどうしても思えない。

彼女が犯人だなんて、僕には......。

 

 

『......彼は相当苦しんで亡くなったようね。...こんなことになってしまったのも私の力不足が原因だわ』

...舞田くんの死に対して、僕に自身の無力さを吐露していた平子さん。

 

 

『クルトくん。今回の裁判、私は力になれそうにない。おそらくこの中で現在一番クロに近い人物は私だ...前回のような進行はできない。悪いけどクルトくんに後を頼むことになりそうだわ』

...自らが一番犯人に近いということを自覚し、僕に後を託そうとした平子さん。

 

 

『クルトくんならやれる。前回の裁判は君なしでは勝利はなかった。君にはその才能がある。真実を見つける才能が』

...そして僕に真実を見つける才能があると言ってた平子さん。

 

 

 

そんな平子さんの言葉を僕は信じたい。

 

 

僕に本当にそんな才能があるのなら

それでこの学級裁判を乗り切れるのなら

 

僕は...

 

たとえ繭住さんと対立したとしても

真実に向かうことをやめてはいけない。

 

 

そう決意した。

 

 

「あの、一つ宜しいでしょうか?」

「何? 桐崎」

「ご提案がございます。一度ここで今まで行われてきた議論を整理するというのはどうでしょう?」

 

 

 

僕がそんな考え事をしている間も裁判は着々と進行していた。

どうやら桐崎さんが今までの流れを振り返るという提案をしているようだ。

 

 

「そうっすね。ここは桐崎さんの言う通りにした方がいいかもしれないっすね。纏まってきた情報もありますし、整理するというのは、悪くないと思うっすよ」

「...僕も桐崎さんに賛成するよ...」

「よし! なら不肖この氏家幕之進が今まで議論された裁判のあらましを––」

「私がやろう」

「なんと! またこのパターンですか!?」

「氏家静かに」

「はい」

 

 

前回の裁判の時と同様に今までの裁判の流れを振り返る時間を設けるようだ。前回は平子さんがやってくれたけど、今回はどうやら勅使河原さんがその役目を引き受けてくれるらしい。

氏家くんは...まあドンマイ。

 

 

「まず舞田十司郎の死因については、足立猫の検死結果から一酸化炭素中毒以外の所にあるとされ、例の毒が死因であると結論付けられた。

 

犯行については、まず溶解炉によって煙を充満させたガラス工房に舞田十司郎を何らかの方法で誘導し、ドアを工具棚で封鎖した。閉じ込められた彼は一酸化炭素中毒に陥ることを防ぐために吹き竿を壊れた換気扇の穴に挿して、新鮮な空気を確保しようと試みた。だが、実はその吹き竿に毒が塗ってあり、それを口から摂取してしまい、彼は失血死してしまった。とされた。

 

しかしここまで議論しても完全なアリバイを持っているのは鮫島海と萬屋千歳の二人のみという現状に突き当たる。そして、この後に一番怪しいと言われ出したのが、平子華月だ。そして今もその最中にある。

 

...大方こんなものだろう」

 

 

勅使河原さんはふぅと一息吐くと、眠そうな目を僕らに向けた。

 

 

「ありがとう勅使河原さん」

「やはりいつも以上に多く喋ると何かと疲れるな......小一時間ほど仮眠をとっても構わないか?」

「勅使河原女史! 寝てはいけませんぞ! 今は命懸けの裁判中なのですよ!?」

「...勅使河原さんのその考察力は僕らには解らない犯人に繋がる証拠を見つけられるかもしれない。...だから僕らと一緒にこの裁判を戦ってくれると凄く助かる、と思う...」

「......君にそう言われてしまったらここで落ちるワケにはいかなくなってしまったな。もう少しだけ気を張っておくことにするよ」

「...頑張って...」

「......な、何ですかな!? この雰囲気は!? 甘ったるい空気を感じますぞ! 遺憾ですぞ! 遺憾ですぞこれは!」

「氏家うるさい」

「あ、ああ〜!! その突き放す感じ!! 実によいです! それをもっと頂ければ小生のこの胸のモヤモヤ感も上書きできると思うのですよ! さあ! もっと罵ってくだされ!」

「...これは相手にしてるだけ無駄ね」

 

 

何故か救われたような声を上げている氏家くんは放っておくとして、さっきの勅使河原さんの要約で今までの流れをおさらい出来たのは良かったと思う。

さて、それじゃあこれから何を話そうか。

 

「...そう言えばよう、舞田はダイイングメッセージっつう奴を残してんだろ? それで犯人はわかんねーのか?」

 

 

ダイイングメッセージか。言われてみれば、まだ精査していなかったな。

何か分かればいいのだけど...。

 

 

「バイキングソーセージ?」

「ダイイングメッセージ。わかって言ってるだろ」

「そんなものがあるの?」

「ええ。確かにあったわよ。十司郎ちゃんの近くに落ちていた本に。血文字でね」

「何て書いたあったの?」

「うーん。はっきりとは言えないけど、アルファベットの"m"や数字の"3"のような文字が著者名の辺りに書いてあったわね」

「ならその著者名に犯人を示すヒントが隠されているのかもしれないな。その名前を教えてくれないか?」

「確か...『法島 龍之介』だったかな。因みに本のタイトルは『不可侵のライヤー』というものだったわね」

 

 

このダイイングメッセージが書かれた本は僕がガラス工房に忘れたものだ。舞田くんにおすすめされたミステリー小説。読書家だった彼のことだ。何かを指し示しているには違いないと思うけど...。

 

 

「...法島...ねぇ...」

「うーん。やっぱさ平子が犯人なんじゃねぇの? 法島の"ほう"って法律の"ほう"なんだろ? だったらこの中で法律つったら検事の平子しか考えられねぇんだが?」

「さすがにそれは...ないんじゃないかな」

「んでだよ? 舞田はいつ死んでもおかしくない状況だったんだろ? だったらうだうだ考えずに適当に目に付いた本に平子を連想する文字がたまたまあったから、急いで印を残したってのも普通にあんだろ?」

「じゃああの"m"とか"3"に見えるヤツはなんなんすかね」

「意味なんてねぇんだよ。適当に付けたんだよ適当に」

「...本当にそうかな?」

「他に考えられねぇだろ?」

 

 

こじつけのようにも思える六車くんの主張だけど、確かに死ぬ間際に深く考えず適当に残した可能性もなくはないと思うけど...

うーん、どうだろう?

 

 

「...あっそうだ。確か鬼頭さんと古畑さんはその本について図書室に調べに行ってくれたよね? 何かあった?」

「ああ、あったぞ。その本と全く同じものと思われる内容の本がな」

 

 

鬼頭さんはそう言うとポケットから一冊の本を取り出してみせた。

 

 

「『不可侵のライヤー』...これだろ?」

「そう! それだよ」

「それに舞田が書いちょったダイイングメッセージに繋がる何かがあるんかのう?」

「さあな。それは古畑に聞いてくれ」

「古畑さんに?」

「古畑はその小説を捜査時間中に読破したらしい」

 

 

ど、読破!?

 

 

「え!? あの短時間で!?」

「へへっ。実は私、速読が出来るんすよ〜」

「凄いよ! 野々葉にそんな特技があったなんて!」

「原稿を読んでるうちに自然と身に付いたものなんすけど、まさかこんな所で役立つとは思わなかったっす」

「それで、古畑野々葉は舞田十司郎が残したダイイングメッセージが小説の内容と照らし合わせて、何か関係があると思うか?」

「うーん。どうっすかねぇ...ネタバレになるんすけど、内容聞くっすか?」

「この状況だ。ネタバレを気にして命を落としてはお笑い種だ。皆も異存はないな?」

 

 

異議を唱える者はいない。そりゃ命が懸かってるからね。ネタバレを気にするより今は手掛かりを見つけることが重要だ。

僕も途中まで読んでいたとは言え、内容を全部把握しているワケじゃない。古畑さんの話を聞き流すことはできないな。

 

 

「じゃあ要約するっすね? 簡単に言うと、これは刑務所から出てきた元探偵の主人公が次々と起こる事件を解決し、最終的には自身が刑務所に入ることになった事件の真相に辿り着くという物語っす」

「主人公が前科持ちなのか」

「ちなみに何の罪で刑務所に?」

「たしか...偽証罪だったはずっす」

「...法廷で嘘の証言をしたってこと...?」

「そういうことっす」

「なるほど。だからうそつき(ライヤー)ってことなのね」

「うーん。でも舞田くんのダイイングメッセージに関連しそうなものはないね」

「登場人物の名前にヒントがあるかも」

 

 

その後、小説の登場人物の名前を順に列挙していったが、これと言ってダイイングメッセージと関連付けられそうな名前はなかった。

 

 

「これも違うみたいね」

「う〜ん! 十司郎のダイイングメッセージ難しいよ〜。名前を直接書いたりはできなかったのかな?」

「まあそう言うな。直接名前を書いては後に犯人に消されてしまう恐れもある。舞田の行動はそれを見越しての事なのだろう」

「でも結局犯人が解らないならどうしよいもないよ。どう? ここはダイイングメッセージのことは一旦置いといて、別のことを話すっていうのは?」

「別のことというと...平子様の件でございましょうか?」

「うん」

「繭住女史の言う通りですぞ。やはりこの事件は平子女史のことを話し合わねば先は見えないと思うのですよ」

 

 

とうとう平子さんが化学室で倒れていた件について話し合うことになりそうだ。

 

 

「...それじゃあ、とりあえず平子さんを発見した時の状況を教えてくれる...?」

 

 

あの時の状況か。確か...。

 

 

「平子さんをはじめに発見したのは、僕と繭住さんと六車くんの3人。化学準備室の奥で倒れている彼女を見つけたんだ」

「その後っすかね。大声を聞いた私と鬼頭さんもそこに合流したっす」

「平子さんがモノクマに連れて行かれたのはその後だよ。今もどこかの部屋にいると思う」

「生死もわからないけどね...」

「......」

「...それで、平子さんはどんな風に倒れていたのかな...? 状況によっては、自殺未遂なのか、そうじゃないのか、わかるかもしれない...」

 

 

平子さんが倒れていた状況か...。

確かにそれはみんなと共有すべき情報だと思うし、それにもしかしたらそこに平子さんが自殺未遂じゃない証拠が隠れてるかもしれない。

ここで気を緩めるワケにはいかないな。

 

 

 

 

 

 

–––ノンストップ議論–––

 

 

「...じゃあ、平子さんが倒れていた状況について教えてくれるかな...?」

「平子が倒れていたのは化学準備室の奥。窓際の近くだったわ」

血の海に沈んでいたな。ありゃ相当な量の血を吐いたんだと思うぜ」

「血を吐いたってことは、やっぱり華月ちゃんは毒で?」

「だろうな」

「平子はおそらく毒瓶の中の毒を直接飲んで自殺を図ったんだろうね」

「華月ちゃん...何でそんなことを...」

 

 

違う...それはありえない!

意識不明の平子ー論破→直接飲んで

 

 

 

 

「繭住さん...それは違うよ。もし毒を直接飲んでいたら平子さんは意識不明どころかその場で死んでしまってるはずなんだ...」

「しかし平子華月は生きている。それが意味するところは彼女は少なくとも直接毒を摂取したワケではないということ」

「そう! だから平子さんは犯人なんかじゃ––」

 

 

 

「言いたいことはそれだけ?」

 

 

 

繭住さんの鋭い言葉が僕に続きを話させなかった。

 

 

「クルト...アンタが平子をどれだけ信用してるか知らないけど、化学室に出入りしていたアイツが一番怪しいってことは覆らないのよ」

「繭住さん......僕は...」

「もういいよ、クルト。その考えは私が正してあげるから。アンタも本気でかかってきなよ」

 

 

繭住さんの目に宿っているのは、僕がなぜ平子さんの味方をするのかという怒りなのか、それとも別の何かなのか、僕には分からない。平子さんが疑わしい行動をとったのも事実だけど、そこまで目の敵にする理由はなんなのだろう。

...いやそれが何であれ、ここで引き下がるワケにはいかない。

 

僕は彼女と相対した。

 

 

 

 

–––反論ショーダウン–––

〔繭住藍子〕

 

 

「いくら平子が毒を直接飲んでいなくたって、アイツが一番怪しい事実は変わらない。それはクルトにだってわかるでしょ?」

「化学室に出入りしていたってことでしょ? でもそれにだって何か理由があるかもしれない」

「理由って何よ。化学準備室から毒薬を持ち出す以外に何があるのよ!」

「それは...まだわからない...」

「それ見なさいよ。やっぱり毒薬を持ち出した以外に考えられないじゃない! 毒の件だって直接口にしたんじゃなきゃ一体平子はどうしてあんなことになっていたの? 殴られたの? 刺されたの? ...違うでしょ。あれはどう見ても毒を飲んだ後の状態だったわ。他に方法がない限り、やっぱり平子が自分で毒を飲んだのよ。きっと毒が回るまで時間がかかって私たちが来た時に辛うじて生きている状態だった。ただそれだけのことだったのよ」

 

 

 

 

いや直接じゃなく平子さんに毒を摂取させる方法ならあったはず。あれを使えば...

 

毒の使用方法ー論破→他に方法がない限り

「悪いけど、その言葉斬るよ」

 

 

 

 

 

 

「方法がない...なんてことはないはずだよ、繭住さん」

「何言ってるの?」

「繭住さんだって知ってるはずだよ? だって捜査の時に一緒にアレを見つけてるはずだから」

「アレ? ......もしかしてあのゴミみたいな説明書のこと?」

「そう。それだよ」

「ん? その説明書とはなんぜよ?」

「毒の使用方法に関する情報がまとめられた取扱説明書のことだよ。くしゃくしゃに丸められていて、薬品棚の奥に隠すように置いてあったんだ」

「へぇ。そんなものがあったのね。それでその説明書には何て書いてあったの?」

「そこには、毒の様々な使い方が書いてあったんだけど、一つだけ例外的に書かれていた使用方法があったんだ」

「それはなんですか?」

「気化させた場合だよ」

「気化?」

「毒を蒸発させたってこと?」

「そういうこと」

「えーと...それの何が例外的なんすか?」

「...毒を気化させて吸わせた場合、毒は本来の効果を発揮できなくなるらしいんだ」

「それはどれくらいなんだ?」

「説明書には半減するって書いてあったね」

「半減ですと? それはつまり...」

「なるほどそういう事か」

 

 

勅使河原さんは何かに合点がいったのか、そのまますらすらと言葉を紡ぎ始めた。

 

 

「平子華月は、おそらく真犯人の罠に嵌まったのではないか。真犯人は前もって密閉した化学準備室で毒を気化させておいた。使ったのは致死性100%で即効性の黒の毒薬だろう。すると致死性50%の気化した毒が充満する部屋が完成する。後はターゲットがその部屋に入室するのを待つだけだ。毒に気付いた頃にはもう遅いだろう。その時はおそらく毒を吸ってしまった後だろうからな。そして平子華月は、そのまま毒の効果によって吐血...奇跡的に一命は取り留めたものの今回の裁判には参加できないほどの状況に陥ってしまった、ということか」

 

 

勅使河原さんが言葉を止めた時、一瞬の沈黙が流れた。

そして、その沈黙を破ったのは、彼女の隣にいた氏家くんだった。

 

 

「...し、しかし、毒を気化させると言っても一体どのようにして?」

「それなら多分わかるよ。その証拠もあるんだ」

「証拠とな?」

 

 

おそらく平子さんを襲った犯行は、勅使河原さんが言ってくれたことでまず間違いない。

後は僕がその根拠を示せばいい。

僕にはその責任がある。

 

 

 

 

–––証拠提示–––

 

 

散乱していた実験器具←

 

 

 

 

「実験器具?」

「うん。平子さんが倒れていた近くの床に散乱していたんだ。アルコールランプやビーカー...毒を気化させる為の道具がね」

「物的証拠もあるなら間違いないだろうな」

 

 

証拠は示せた。

これで問題ないはず。平子さんは確実に気化した毒を吸ってしまったんだ。これでみんなも平子さんが犯人かもしれないという考えを変えてくれるといいのだけど...。

 

 

「いや、しかし...小生はやはりまだ平子女史が犯人である可能性を拭いきれませぬぞ。それ自体も彼女の計画のうちということもあると思われ」

「氏家様の言う通りにございます。ここまで議論を重ねても他に有力な容疑者が挙がらないのであれば、平子様が犯人である可能性が未だ高いということに変わりはございません。ですので、ここで平子様が犯人ではないと、決めつけてかかるのは危険であると申し上げます」

「氏家くん...桐崎さん...」

「悪いなクルト、俺もコイツらに賛成だ」

「...六車くんまで」

「いいか? 俺と舞田は平子が夜時間に化学室から出てくるのを見てんだぞ? それが何を意味するのか、解らねぇお前じゃねーだろ」

「......」

 

 

...六車くんの言いたいことも理解できる。

 

"平子華月が夜時間に化学室に行った"

 

この事実が平子さんへの疑いの眼差しを消させないのだ。

反論できる材料を持ち合わせていない僕は閉口することしか出来なかった...。

 

「そうじゃのう...うーん...悲しいことじゃが、やっぱり平子...さんが犯人としか思えんぜよ」

「私も桐崎さんたちと同じ意見っす...」

 

 

やはり駄目なのか?

ここまで頑張ってもまだみんなから彼女への疑心を取り除くことは出来ないのか?

 

僕の弱い心が顔を覗かせる。もう駄目かもしれないという気持ちが腹の奥から湧いてくる。

 

僕は...一体...どうすればいい?

 

 

 

「クルト」

 

 

そんな中僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。

...鬼頭さんだ。

 

 

「鬼頭さん?」

「何という顔をしているんだ」

「顔?」

「何故諦めた顔をしている?」

「...そんな顔してた?」

「ああ。...クルトは平子が犯人ではないと信じているからこそ、ここまで戦ってこれたのだろう?」

「それは...そうだけど...」

「私もそうだ。平子が犯人とは思えない。昨日見た平子の目は、これから人を殺してここから脱出しようという目ではなかった。むしろ、一人で何かと戦っているような、そんなものに見えた」

「...鬼頭さん」

「だから諦めるな。まだ抗える方法は残ってるだろ? 周りを見ろ」

「周り?」

 

 

鬼頭さんの言う通りにして周りを見回しているとこちらを見つめるマオさんと目があった。

 

 

「クルトちゃん」

「マオさん...」

「諦めるのはまだ早いわよ。あたしもクルトちゃん達の話を聞いて華月ちゃんはやっぱり犯人じゃないと思ったわ。...それに華月ちゃんはあたしに検死を頼んだ時、顔には出さなかったけどひどく悲しげだった。彼女はきっと一人で全て抱え込んでしまっている。あたしにはそう見えるのよ」

「ぼくも華月は犯人じゃないと思う!」

 

 

マオさんに呼応するように赤星さんが声を上げる。

 

 

「華月は確かに少し怖い時もあったけど、でも華月が犯人なんて考えられないよ。ぼくはクルトと華月を信じることにするよ!」

「衛ちゃんもこう言ってるよ。だからクルトちゃん、そんな顔しないで」

 

 

そっか。

鬼頭さんが周りを見ろって言っていたのは、この事だったのか。

 

鬼頭さん、マオさん、赤星さん

 

平子さんの無実を信じる人がこんなにもいる。

だったら...こんな所で諦めてる場合じゃない。

 

 

「勅使河原さん!」

「なんだ?」

「勅使河原さんは平子さんが犯人と思う?」

「私の考えは先ほど述べた通りだ。変わりはない」

「ということは?」

「平子華月が犯人であるという説は薄いということだ」

「...僕も勅使河原さんに賛成だよ...」

「勅使河原さん、萬屋くん...」

 

 

これで完全に意見が分かれることになった。これで少なくとも投票で平子さんを犯人とすることはできなくなったはずだ。

後は繭住さん達の意見と戦って納得させればいい。平子さんが犯人でないということを。

 

 

「...鬼頭さん」

「ん?」

「鬼頭さんのおかげで大事なことに気付けたよ。...ありがとう」

「礼ならこの裁判を生き残ってからすればいい。まあ元から礼など必要ないがな」

 

 

鬼頭さんは微かに笑みを見せたが、すぐに元に戻った。

 

 

やるしかない。

 

 

僕は繭住さんをはじめとする平子さんが犯人かもしれないと思っている面々と対峙する。

平子さんの無実を信じる人たちと一緒に。

 

 

 

–––議論スクラム–––

 

 

《平子が犯人だ》vs《平子は犯人ではない》

繭住藍子…………………クルト

桐崎雨城…………………勅使河原祈里

古畑野々葉………………足立猫

六車ミゲル………………鬼頭ちはる

氏家幕之進………………赤星衛

鮫島海……………………萬屋千歳

舞田十司郎………………平子華月

貴志萌華…………………小田切電皇

 

 

 

氏家「平子女史は自身に疑いがかかることを見越してわざと毒を気化させ、致死率を下げた上で自ら毒を吸った。そういった可能性もあるのでは?」

vs

勅使河原「だとしても致死率は50%だ。二分の一の確率で死亡するリスクを背負ってまで実行する理由が見当たらない」

 

 

桐崎「やはり自殺だった、という可能性はないでしょうか?」

vs

足立「自殺なら毒をわざわざ気化させて致死率を下げるなんてこと、しないと思うけどね」

 

 

古畑「だったらこういうのはどうっすかね? 平子さんは、舞田くんを殺してしまった罪の意識に苛まれ、自分で毒を飲むために化学準備室に来たはいいけど、やっぱり死ぬのが怖くなってしまった。そこで平子さんは、自分の生死を神さま頼りにすることにしたんす! わざわざ気化させたのもそういうことが背景にあったんすよ!」

vs

赤星「あれ? でも致死性50%の毒薬って他にあったような? わざわざ気化させる意味ってあるのかな?」

 

 

六車「舞田のダイイングメッセージにもあったろ? 法島の法は法律の法、つまり検事である平子が犯人って示してんだよ!」

vs

鬼頭「こじつけもいい加減にしろ。ダイイングメッセージについては、それ以外のことを指し示していると考えるのが妥当だろう」

 

 

鮫島「平子...さんは化学室に入っとったんをわしらに隠しちょった。それは毒を持ち出したからではないんか?」

vs

萬屋「...化学室に入ったことを隠していたのは事実だけど、毒を持ち出した証拠もない...決めつけてかかるのは危険だと思うよ...」

 

 

繭住「クルトだって襲われたんだよ! どうしてアイツの肩を持つの!?」

vs

クルト「肩を持つつもりはないよ。けど平子さんが毒を盛ったって根拠もないよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが僕たちの答え。

それを覆すつもりはない。

説得できたのかは分からないけど、それでも議論を次の段階に進めることはできたはずだ。

 

 

 

 

 

「んーならば平子女史は何故に化学室に行ったのでしょうか? 毒を取りに行く以外に化学室に行った理由は何なのでしょう?」

 

 

そう。問題はそれだ。平子さんが犯人かもしれないと思っている面々の多くがやはりこの事が頭から離れずにいるのだろう。

 

僕は頭の中に様々な可能性を浮かべていた。

 

平子さんが化学室に行った理由...とは一体?

 

彼女は何を思って化学室に向かったのか?

 

化学室に行って出来ることは限られるはず。

となるとやはり毒に何かしたのかな? 毒は捨てることはできないから、処分しに行ったってことはないと思うけど.....

 

...あれ?

 

「.......ん? まさか?」

 

 

僕の脳裏にはある可能性が浮かんでいた。

確かにこれが本当なら"あの事件"も説明がつくかもしれない。

 

 

「クルト、何?」

「平子さんが化学室に行った理由...わかったかもしれない」

「え!?」

 

 

僕は辿り着いた答えをみんなに告げた。

 

 

 

 

–––選択–––

 

 

 

Q.平子華月が化学室に入っていた理由は?

 

 

毒を入手するため

毒の実験を行うため

毒を飲むため

毒を処分するため

毒と毒の入れ替えを行うため←

 

 

 

 

 

これだ。

 

 

 

 

 

 

「平子さんは、もしかして毒の入れ換えをしに化学室に行ったんじゃないかな?」

「ど、毒と毒の入り換え? それはどういうこと?」

「これは推測だけど、平子さんは化学室の毒を誰かに持ち出されることを危惧していたんだと思う。化学室は立ち入り禁止とはいえ、物理的に封鎖されていたワケじゃないからね。それに毒自体を処分することも校則上できない。だから万が一に備えて致死性100%の毒瓶と致死性0%の毒瓶の中身を入れ替えておいた、そういうことだったんじゃないか?」

「そんな..嘘でしょ?」

 

 

繭住さんが驚きの表情を浮かべている。

無理もない。

もし本当にそうだとすれば、今までみんなが思っていた毒の入手とは真逆の行為。

 

犯行の妨害。それが彼女の目的だったんだ。

 

 

 

「だ、だけどそんな事が可能なのか? 毒には色が付いていたんだろう?」

「いや毒自体は無色透明だったはず。色が付いているのは毒が入っている瓶の方なんだよ」

「そうなのか。だとすれば可能だが、それをやったって根拠はあるか? 根拠がなければそれもやはり憶測に過ぎないということになるが」

 

 

 

根拠か。

仮に平子さんが毒と毒の入れ替えをしたとして、それが一連の出来事に何かしらの影響を及ぼしてるということになる。

となると"あの事件"のことを提示すれば、毒と毒の入れ替えを行なった証明になるはずだ。

 

 

 

 

–––証拠提示–––

 

 

 

 

嘔吐したクルト←

 

 

 

 

 

「僕が死んでいない。これが平子さんが毒と毒の入れ替えを行なった根拠だよ」

「は?」

「説明するよ。昨日の朝、僕がみんなの前で吐いてしまったことを覚えているかな?」

「ああ、覚えちょるぞ。クルトが突然吐いたきに、心配したぜよ」

「その時は本当にありがとう。...それでさ、みんなはこの事どう思うかな?」

「どうって...そりゃアンタが犯人に毒を盛られて、ああなったって思ってるけど?」

「それに関しては間違っていないと思う。でもさ、だったらどうして致死性100%の毒を使わなかったのかな?」

「...まさか! そういうことなの!?」

「そう。犯人はおそらく致死性100%の毒を使ったつもりでいたんだと思うよ」

 

 

そう。僕はあの時点で死んでいたはずだったんだ。

真犯人の仕掛けた毒によって...。

しかし、それは思わぬ妨害を受けていた。

 

 

「つまり、僕は平子さんに間接的ではあるけど、命を救われていたんだよ。もし平子さんが毒の入れ替えを行わなかったら僕はこの世にいなかったと思う...」

 

 

そうでなければ、この学級裁判も舞田くん殺しではなく、僕殺しの犯人を見つける場になっていただろう。

 

 

「...しかし...そう考えると真犯人はクルト君を襲った後に平子さんが毒の入れ替えを行なったことを見抜き、その夜、化学室に再び毒を調達しに行ったってことになるよね...?」

「そう、なるね」

「...だとすれば、真犯人は平子さんが毒の入れ替えを行なったことを喋らせないように、口封じの為、彼女を毒であんな状態にしたってことなのかな...」

「そうだと思う。真犯人は、おそらく平子さんが捜査時間になると、いの一番に化学準備室に行くって予想出来たんだ。毒を使用したという証拠を得る為に。そうして化学準備室に来た平子さんを予め気化させた毒で...」

「...華月ちゃん」

「...しかしこれで犯行は凡そ明らかになったな。一先ずは前に進んだと言ってもいいだろう。だが...」

「だが?」

 

 

腕を組み直す勅使河原さん。

僕は彼女の次の言葉を待った。

 

 

「その真犯人に繋がる手掛かりが何一つない。大胆不敵且つ緻密な犯行を行なっているにも関わらず、ただの一つもボロを出していない。そして、クルト・L・クルークハルト、舞田十司郎、平子華月...三人もの人間を手に掛けてまでも外に出たいという執念。私たちは相当な知恵者を相手にしてるのかもしれない」

 

 

その言葉を聞いた時、事の重大さに気付いた。

犯人に繋がる手掛かりがない。それは即ちクロに敗北した事を意味する。

クロを指摘出来ず、全員処刑の末路。

全員の脳裏にその未来が過る。

 

 

「そ、そうだ! ダイイングメッセージだよ! もう一度みんなで考えよう! あれになら犯人に繋がる手掛かりがまだあるかもだし!」

 

 

そうだ。まだダイイングメッセージがある。

みんなで解読していけば、あるいは...。

そう思っていると、あの耳障りな声が聞こえて来た。

 

 

「ありゃりゃ〜議論が煮詰まってきちゃいましたか〜。ん〜どうしよっかな〜。このまま何も進まないようじゃ投票タイムに行くしかないけど」

「ま、待ってくださいっす! まだ投票タイムは早いっすよ!」

「その通りでございます。まだ議題は残っています。このような中途半端なところできりあげるのはモノクマ様の本意でもないでしょう?」

「うーん。でもボクとしてもあまりにも退屈なのはNGだよ? このまま議論がグダグダになったその時は容赦なく投票タイムに行くからそのつもりでいてねっ!」

 

 

まずいな。このままじゃ犯人の特定も出来ないまま投票タイムってことに...

それだけは避けないといけない。

 

 

...しかし、犯人の影すら見えないのも事実。

 

 

まるで幽霊だ。

 

 

痕跡の一つもない。

 

 

 

......考えろ。

あれは舞田くんが残してくれた唯一の手掛かり。そこに真実が隠されてるはずなんだ。

確か...あれは図書室に暇つぶし用の本を探しに行った時に、彼に勧められた小説だった。

 

あの時の舞田くんとの会話を思い返えすんだ。

そこに何かヒントがあるかもしれない。

 

思い出せ...思い出せ...思い出せ!!

 

 

 

–––回想–––

 

 

「それはな、ミステリー界の巨匠・法島龍之介が書いた最新作や。映画化の話もある名作やで。普段小説読まん人でも読みやすいからおススメやで」

「それって確か何とか大賞取ったっていう作品?」

「お! 覚えとったか! そやで。これは日本ミステリー大賞を取った作品や」

「あ、やっぱりそうだったんだね」

「この人の作品やと...他には『黒の改革』『路地裏の神さま』『雨の降る城』...あ、『探偵村』もそうやな」

「本当に色々知ってるんだね」

「知ってるで〜。こう見えても読書家やからな、俺。また読みたい本があったらいつでも聞いてくれや」

「うん! ありがとう! 舞田くん」

「おう」

 

 

–––回想終わり–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...あれ?

 

 

 

......まさか...あの人が犯人なのか?

いやでも、まだ確証がない。

あの人を犯人だと断定するにはまだ......

 

他に何かあるはずだ。あの人を犯人だと仮定することで見えてくるものがあるはずだ。

何かあるはずだ...何か.......。

 

 

 

待てよ?

 

 

 

毒をコーヒーメーカーに仕込むためには、予めあの情報を知ってないといけない。そしてそれを知り得たのはやはりあの人しかいない。

 

 

...みんなに質問をしよう。

 

 

もし僕の望む通りの答えをみんなが返してくれたら、あの人を追い詰める鍵になるが、それが為されなかった場合は...いや考えるのは後でいい。

 

 

これは賭けだ。

真犯人と僕との戦い。

 

 

Sieg(勝利)

 

 

それを掴み取らなきゃいけない。

 

 

お願いだ。小田切くん。

今は少しだけ君の勇気を貸して。

 

 

 

 

 

「み、みんな...一つ質問してもいいかな?」

 

 

一縷の望みを言葉に乗せてそう投げかけた。

 

 

「質問ですか?」

「いいわよ。何かしら?」

 

 

 

「みんなはさ......コーヒーって飲む?」

 

 

 

「ん? それがこの事件と何か関係があるのですか?」

「うん。とても重要なことなんだ。頼むよ」

「重要なことっすか...」

「...わかったわ。答えるわよ。みんなもそれでいいね?」

 

 

コーヒーを飲むか、飲まないか。

みんなの答えが重要だ。

僕は一人一人の言葉を集中して聞いた。

 

 

「飲まないわよ」

「ぼくもあんまり好きじゃないかな。苦いし」

「紅茶派っすからコーヒーは飲まないっすよ」

「飲んだことねぇよ」

「私も飲まない」

「小生もコーヒーの部類は苦手ですな」

「...わしは水しか飲まんぜよ」

「お腹壊すからコーヒーは飲まないようにしてるわ」

「飲めないことはないが、自ら進んでは飲まないな」

「...飲まない...」

「わたくしもコーヒーは然程...」

 

 

全員が答え終わった頃、僕はそっと胸を撫で下ろした。これであの人を追い詰めることができる、と。

 

 

「それで? これで犯人がわかったの?」

「うん。今ので確信したよ」

「ほ、ほんと!? だ、誰なの?」

「それは...」

 

 

言わなくちゃいけない。

自然と声が微かに震える。

でもここまで来たんだ。逃げ出すワケにはいかない。僕は意を決してその人を指差した。

 

 

 

 

 

–––人物指名–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桐崎さん。犯人は君だよね?」

 

 

そう指摘された桐崎さんは、ゆっくりと僕の方を向いた。そして口を開こうとしたその時、桐崎さんより早くそれを否定する声が聞こえた。

 

 

「ク、クルトくん? な、何言ってんすか? そんなことあるワケないじゃないっすか」

 

 

古畑さんだ。

 

 

「どうしてそんな答えをなったか知らないっすけど、桐崎さんが犯人なんてあり得ないっすよ!」

 

 

それはいつもの明るく優しい彼女とは違い、ある種の怒気を含んだ言葉だった。

友達が犯人と名指しされたからだろうか。いやそうに違いない。僕だって逆の立場ならそうしたかもしれない。でも...だからって僕も引くことなんてできないんだ。

 

 

「クルト、桐崎が犯人って根拠は?」

「それは...コーヒーだよ」

「コーヒー?」

「わたくしもコーヒーは然程飲みません。他の方々も似たような回答だったと思いますが」

「いやそうじゃない。桐崎さんが飲むか飲まないかはこの際どうでもいいんだ。問題なのは、他のみんなの回答なんだ」

「他のみんな?」

「回答してくれた人は桐崎さんを除いて、全員コーヒーを飲まない。ということは、ここでコーヒーを飲むのって、桐崎さんを除くと僕と殺された舞田くんだけになる。そして僕と舞田くんがコーヒーを飲むって知っていたのは、最初の学級裁判が終わった次の朝、僕と舞田くんにコーヒーを淹れてくれた桐崎さん、君しかいないんだ」

 

 

そう言われた桐崎さんの表情が少し強張ったように見えた。

 

 

「クルトの言う通りかもしれん。誰も使わないコーヒーメーカーに毒を入れても意味はない。それをしちゅうには、最初からわしらの中にコーヒーを飲む人物がおることを知らんといかん」

「いやいや...いやいやいやいやこんなのおかしいっすよ!! コーヒーを飲むことを知っていただけで犯人なんて! そんなのひどいっすよ!」

「古畑様...」

「桐崎さん、安心してくださいっす! ここは私がクルトくんの言ってることは間違ってるって証明するっす! だからそんな顔はしないでほしいっす...」

 

 

古畑さんと桐崎さん。僕は彼女たちが一緒に料理を作っていたのをここ数日見てきた。その間彼女たちは友情を育んだのだろう。だから古畑さんは桐崎さんが犯人ではないと信じて疑わない。それは古畑さんの必死の顔を見れば解る。

 

 

「だからクルトくん! 桐崎さんを犯人だなんて言うのは私の反論を打ち負かしてからにするっす!!」

 

 

古畑さんが桐崎さんを思う心が本物だからこその反論。それすら打ち砕かなきゃいけない。

...辛いけど、やらなきゃいけない。

みんなで生き残る為には、平子さんが帰ってこれる場所を守る為には、僕は友情の為に立ち上がった彼女の言葉すら斬り捨てる覚悟だ。

 

 

 

–––反論ショーダウン–––

〔古畑野々葉〕

 

 

「クルトくん! それは余りに横暴な推理じゃないっすか!? クルトくんと舞田くんがコーヒーを飲むことを知っていたから犯人? そんなの無茶苦茶っすよ! コーヒーなんてこんなに人数がいるなら一人くらい飲むと予想するのが普通じゃないんすか!! だから桐崎さんが犯人だなんて言うのはやめてほしいっす」

 

「でも誰かがコーヒーを飲むことを事前に知ってないとコーヒーメーカーに毒を仕込まないと思うよ。ウォーターサーバーとか他にいくらだって候補があるのにそこに仕込まないのは、自分が飲まない且つ他の誰かが飲むものに仕込みたかったとしか思えない。...そして、僕と舞田くんがコーヒーを飲むことを知っているのは、あの日、僕らにコーヒーを淹れてくれた桐崎さんぐらいしかいないんだ」

 

「だとしてもっすよ! そんなのはただの言い掛かりじゃないっすか! 桐崎さんは私たちの為に献身的に料理を作り続けてくれたんすよ? 桐崎さんは人を殺すような人間じゃないっす...それは近くで桐崎さんを見続けてきた私が一番よく知ってるっす。それにクルトくんや舞田くんを襲う動機だってないじゃないっすか。動機もないのに桐崎さんを犯人扱いするなんて...クルトくんがそんな恩知らずだったなんて知りたくなかったっす......」

 

 

 

僕だって出来ればこんなことしたくはない。

でもやらなきゃいけない。誰かがやらなきゃ何も前に進めないんだから。

 

 

ランダムに送信された真実(?)ー論破→クルトくんや舞田くんを襲う動機だってないじゃないっすか

「その言葉、斬るよ」

 

 

 

 

 

「確かに明確な動機は解らない。だけどさ、あったよね? 一つだけ動機になりうるものがさ」

「動機になりうるもの?」

「あっ! もしかしてモノクマちゃんがあたし達のモノパッドに送ってきた『真実をお伝えします』って、あれのこと?」

「うん、それだよ。確かマオさんには『コロシアイは過去にも行われている』という内容のものが、舞田くんには『この学園には秘密の隠し部屋が存在する』という内容のものが送られていたよね?」

 

 

かく言う僕にも『オマエラの中に黒幕の手先がいる』という内容のものが送られてきていた。ただ今ここでそれを言う理由はない。黒幕の手先がいるという件はおそらくこの事件に関しては無関係だ。僕の持っている情報をどうにかするのは後でいい。

 

 

「あれにもし桐崎さんが殺人を決意してしまうほどの何かが書いてあったとしたら...それは動機と言えるんじゃないかな?」

「そ、そんなの...ただの憶測じゃないっすか! 桐崎さんに真実が送られてきたって証拠もないじゃないっすか!!」

「でも送られてきてないって証拠もない」

「で、でも...」

「古畑さん、これは桐崎さんにだけ当てはまることじゃないんだ。僕ら全員が動機を持ってしまう可能性があったってことなんだよ。だから動機がない、なんて僕らは誰にも言えない。このコロシアイに参加させられてる以上はね......」

 

 

僕がそう言うと古畑さんは何とも言えない顔を見せ、少しの間、沈黙した。

 

 

「桐崎さん......」

 

 

古畑さんが小さく彼女の名を呼ぶ。

すると名を呼ばれた桐崎さんもそれに反応した。

 

 

「古畑様...もう宜しいです」

「え?」

「ここからわたくしが自ら反論致します。元よりこれはわたくしに向けられた疑惑。ならばわたくしが反論するのが道理というものではないでしょうか?」

「わ...私は...ただ桐崎さんが疑われたのが許せなくて...」

「解っております。ですが、ここはわたくし自身が反論しなければ、クルト様も納得しないでしょう」

「...桐崎さん」

「心配には及びません。わたくしは潔白でございます。ですので、ここは見守っていてはくれませんか?」

「わ、わかったっす...」

 

 

話が終わると桐崎さんは僕の方に向き直った。

 

 

「お待たせ致しました。ここからはわたくし、桐崎雨城がクルト様の主張に反論させて頂きます」

 

 

その言葉に覚悟めいた何かを感じた。気圧されてる場合じゃない。桐崎さんの反論が始まる。僕は呼吸を整えて、最後の証拠を握った。

 

 

 

 

–––反論ショーダウン–––

〔桐崎雨城〕

 

 

「クルト様が毒を盛られた件は確かにわたくしが犯人だと考えれば、辻褄は合うでしょう。しかしそれも憶測の域を出ません。それだけでわたくしを犯人とするのは、やはり早計と言わざるを得ません」

 

「確かにコーヒーの件だけで、桐崎さんをクロとするのは難しいと思う」

 

「クルト様も解っておられるではないですか。ならわたくしがお三方を襲った犯人という主張を取り下げてはもらえませんか? 恐らくモノクマ様に投票タイムをすると仰られて焦ってしまったのでしょう。クルト様の疑念も解ります。ですが他にわたくしを犯人とする証拠もございません。故にわたくしに投票するのはご自身の身を滅ぼすことにもなるのです。解って頂けましたか?」

 

 

自分が犯人だと名指しされてもこの冷静さ。さすがとしか言いようがない。

でも僕は持ってる。彼女が犯人だと示す証拠を。

 

 

『不可侵のライヤー』ー論破→他にわたくしを犯人とする証拠もございません

「その言葉、斬らせてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

「舞田くんが小説『不可侵のライヤー』に書き残したダイイングメッセージ。それが桐崎さん、君を犯人だと示しているんだ」

「え...」

 

 

そう言った直後、彼女の顔から余裕が消えた。

 

 

「ダイイングメッセージが解けたの!?」

「うん」

「う、嘘でございます...そのようなことあるワケないです」

「嘘じゃない。ちゃんと解ったんだ。舞田くんが言いたかったことを」

「出鱈目は言うものではございません! これ以上裁判を掻き乱すのは辞めて頂きたいです!」

 

 

桐崎さんの言い分は焦っているようにも見える。それは僕だけじゃなく、他のみんなも疑いの視線を彼女に向けていた。しかし当の本人である桐崎さんはそれには気付いていないようだ。

 

 

「き、桐崎...アンタ...が?」

「信じられないわ...」

「まじかよ...」

 

 

口々にそう唱える。無理もない。桐崎さんは僕らの為に休むことなく食事を作ってきてくれた。そんな桐崎さんがこんなことをするなんて信じられないんだと思う。僕だってそうだ。信じたくなんてない。

でもだからって事実から目を逸らしてはいけない。ここで辛い真実から逃げることは即ち今までいなくなった人達の想いを無にすることと同じだからだ。

 

 

そして、僕は彼女に告げた。

 

 

「桐崎さん、これで終わりにしよう」

「お...わり...? 何を言っておられるのですか」

 

 

 

辿り着いた答えを提示すれば、全て終わるはずだ。

この事件も、この裁判も、全て。

 

恐らくこれが彼女の最後の反論になるだろう。

 

やってやる。

 

ここまでやって来たんだ。何としも彼女の反論を打ち砕く。それが今の僕がやるべきこと。

 

この裁判を終わりに導くんだッ!!

 

 

 

 

–––理論武装–––

 

 

 

「ダイイングメッセージが解けたなんていい加減なことは言わないで下さい!」

 

 

 

「あれほど皆様が頭を悩ましていたのに、クルト様にだけ解るなんて有り得ません!」

 

 

 

「コーヒーの件だって横暴です!」

 

 

 

「コーヒーを淹れただけで犯人扱いされるのは、さすがのわたくしも我慢なりません!」

 

 

 

「もうやめましょう」

 

 

 

「不毛です」

 

 

 

「このような時間は不毛極まりません!」

 

 

 

「不毛です!!」

 

 

 

もう終わりにしよう。

こんな彼女...僕はもう見てられない...。

 

 

 

「全て不毛です!」

 

 

 

「だからこんなことはもうやめにしましょう」

 

 

 

「ダイイングメッセージが解ったなんて嘘をつくのはもうやめにしましょう!」

 

 

 

僕は彼女の言葉を遮るのように最後の証拠をぶつけた。これで終わりだ。

 

 

 

 

「雨の降る城」

 

 

 

 

「え...何故、それを...?」

「鬼頭さん、あの本をもう一度出してくれるかな?」

「あ、ああ」

「その本に法島龍之介が今まで執筆した本の一覧がどこかに書いてあったはずなんだけど」

 

 

ペラペラッと本を捲る鬼頭さん。

 

 

「...あったぞ」

「それを執筆された順から作品の名前を言ってみてくれないかな?」

「あ、ああ。わかった」

 

 

鬼頭さんに全員の視線が集中する。

 

 

「言うぞ......『黒の改革』...『路地裏の神さま』...『雨の降る城』...『探偵村』...」

「もう大丈夫だよ」

 

 

僕は鬼頭さんの言葉を止めた後、桐崎さんに向き直った。そして決定的な一言を放ったのだ。

 

 

「桐崎さん...下の名前って"雨城"だったよね」

「......」

「桐崎雨城...『雨の降る城』...なるほどそういうことか」

「解った人もいるようだね。あのダイイングメッセージの文様、あれは数字の3を表していて、それは著者である法島龍之介の3作目の作品である『雨の降る城』を指していたんだ」

「読書家だった彼のことだ。法島龍之介の作品を全て覚えていても不思議ではないな」

「雨城ちゃん...」

 

 

舞田くん...そして平子さん...

ありがとう。

二人の助けがなくちゃここまで来れなかった。

 

 

「最後にこの事件を振り返るよ。だから桐崎さん...その時は...罪を認めてほしい...」

「......」

 

 

彼女は何も言わなかった。否定も肯定も。

...それでも僕はやめるワケにはいかない。

 

 

これで本当に終わりだ......。

 

 

 

 

 

–––クライマックス推理–––

 

 

 

ACT.1

今回の犯人は、まず化学室から毒を持ち出すことから始めたんだ。毒を持ち出すことに成功した犯人は、キッチンに常備してあったコーヒーメーカーに仕込んだ。ターゲットは、僕もしくは舞田くん。そして、その犯人の思惑通りに僕は毒入りのコーヒーを飲んでしまった。

...犯人の計画はここで終わるはずだった。僕を殺してそのまま学級裁判に臨むつもりだったんだ。...でも僕は死ななかった。それは平子さんが予め黒の毒薬と白の毒薬をすり替えておいたおかげだったんだ。僕は吐きはしたものの、命を落とすことはなかった。

犯人は僕が死なないことに焦ったはず...そして考えて導き出した結論が平子さんによる毒のすり替え。そこで犯人は次の一手を打つことにした。

 

 

ACT.2

その夜、犯人は予め下調べを終えておいたガラス工房を訪れた。犯人はそこで、吹き竿に毒を塗り、換気扇を壊し、溶解炉を暴走させ、部屋の前の工具棚から工具を取り除いておいた。目的は僕らの中の誰かの殺害。状況から見て氏家くんを呼ぶつもりだったのかもしれない。彼をガラス工房に異変があるからという理由で呼び出し、殺害するつもりだったんだと思う。しかし、予想外のことが起きてしまった。舞田くんが希望ヶ峰学園の情報が入ったDVDを確認するために視聴覚室にやってきてしまったんだ。

 

 

ACT.3

急遽、犯人はターゲットを舞田くんに変更した。視聴覚室から出てきた舞田くんをどこかのタイミングで呼び止め、ガラス工房へと誘導した。そして舞田くんが完全にガラス工房へ入った後、工具棚を倒し、部屋を封鎖。一酸化炭素中毒に陥ることを恐れた舞田くんは、近くの吹き竿を手に取り、換気扇の隙間から新鮮な空気を得ようとした。しかしそれが罠だった。舞田くんは吹き竿の先端についた毒を口から摂取してしまい、吐血した。

死ぬ間際、舞田くんは最後の力を振り絞って近くにあった本にダイイングメッセージを残した。最終的にこれが犯人を特定する決め手になったんだ。

 

 

ACT.4

犯人は舞田くんを殺害した後にもう一つやることがあった。それは平子さんを学級裁判の場に立たせない状態にすることだ。毒のすり替えをした彼女の口を封じることでこの事件のクロを彼女に被せようとしたんだと思う。

そこで犯人が用意したのが化学室にあった実験器具と黒の毒薬。黒の毒薬をビーカーに入れ、アルコールランプで温めることにより、毒の気化を狙い、その後、化学準備室を密閉することによって気化した毒が充満した部屋を作り上げたんだ。毒は気化すれば効能が半減するもののターゲットを動けなくさせるには十分だった。

翌日、舞田くんの死体が発見され、それを見た平子さんが化学準備室に最初に向かうであろうということが犯人には予測できたんだろう

そして、犯人の狙い通りに平子さんは今回の学級裁判に参加できないくらいの状態になってしまった...。

 

 

 

 

「用意周到で実に計画的。それでいて臨機応変に対応できる器用さまで持ち合わせている。そんな人物がなぜ殺人という凶行に及んでしまったのか。今の僕らにはまだ解らない。だけど、その犯人は特定できた。二杯のコーヒーと舞田くんが残したダイイングメッセージによって...そしてその犯人は...」

 

 

僕は真隣にいる彼女の目を見て、はっきりと告げた。

 

 

 

「"超高校級の秘書"桐崎雨城さん。君がこの事件の犯人だ」

 

 

 

しばしの静寂が流れる。

数秒後、その彼女の口が開かれた。

 

 

 

「嘘......です」

「桐崎さん......」

「これは真犯人の罠でございます! わたくしを犯人に仕立て上げ、この学級裁判を乗り切ろうとしているのでございます!! 舞田様のダイイングメッセージもきっと真犯人がわたくしを犯人にする為に仕掛けた罠なのです!」

「...桐崎さん」

「信じてください!! このままではわたくしは疎か、皆様まで処刑されてしまうのですよ!? 良いのですか!」

「き、桐崎さん...私は......」

「古畑様も何か言って下さい! わたくしが犯人でないと主張して下さい! わたくしが犯人でないと信じてくれるのなら...あっ、そうです。一つ思い出しました」

 

 

何かを思い付いたのか、桐崎さんの声が級に落ち着いた。気になって彼女の顔を見る。僕はそれを見て、固まってしまった。

 

彼女は横顔からでも分かるくらいにはっきりと

 

笑っていた。

 

 

「以前わたくしは古畑様と色々お話しさせて頂きました。その時申し上げたのです。クルト様と舞田様がコーヒーを嗜んでいるということを」

「え?」

「そうなの? 古畑?」

「い、いや......そんな話一度も...」

「嘘はいけません! わたくしは確かに申し上げました」

「桐崎...アンタいい加減にしなよ。犯人はアンタだってみんなもう気付いてるのよ?」

「その認識が間違いなのです。古畑様はきっとわたくしが話した情報を利用して、コーヒーメーカーに毒を仕込み、舞田様の死体の近くにわたくしに繋がる偽物のダイイングメッセージを用意したのです! これならば古畑様も犯人である可能性が十分にあります!」

「き、桐崎さん...私が犯人と思ってるんすか?」

「状況がそれを物語っております! わたくし目線、古畑様が犯人としか考えられません!」

「嘘...っすよ。こんなの...私はずっと友達だと思って......」

「友達? たった数日一緒に過ごした間柄を友達とは呼称しません。平和ボケした発言は謹んでくれませんか?」

「そんな......」

「桐崎さん......」

 

 

こんな彼女の姿は見たくなかった。保身の為に一番一緒にいた古畑さんに罪を擦りつけようとしている。

顔を両手で覆い、泣き声すら立てようとしない古畑さんを見てると、胸が苦しくなった。

 

 

「モノクマ様!! 投票タイムです!!」

 

 

桐崎さんがモノクマに向かい、叫ぶ。

 

 

「お! ようやく投票タイムを促してくれたね。待ちくたびれたよ〜。でもいいの? 桐崎サン自身が疑われてるように見えるけど?」

「皆様も解ってくれるはずです。聡明な皆様ならきっと真実を選択してくれると信じております」

「そうかい。そうかい。なら投票タイムいっちゃいますか!!」

 

 

モノクマの宣言と共に投票画面が眼前のモニターに現れる。

 

 

「舞田クンを殺したと思うクロに投票してくださいなっ!」

 

 

僕は彼女のボタンを押した。

躊躇いはしたが、迷いはしなかった。

きっとみんなも同じ面持ちなんだと思う。

 

 

投票結果。

 

 

それがモニターにデカデカと表示される。

 

 

古畑さん、1票。

桐崎さん、11票。

 

 

当然の結果だった。

 

 

「どうして、ですか......」

「桐崎さん...」

「どうして!? わたくしは今まで皆様方の為に一生懸命尽くしてきたつもりです! それなのにどうしてですか!? どうしてこのような結果になるのですか!! わたくしは犯人ではありません! わたくしは––」

「投票の結果、クロになるのは誰か!? その答えは正解なのか不正解なのかー!?」

「モノクマ様!? まだわたくしは話してる途中で」

 

 

モノクマは、桐崎さんの必死の訴えにも耳を貸そうとはしなかった。

 

 

そしてモニターに映し出される僕らのイラストが円状に配置されたルーレット。

クルクルと回り出した光の矢印が止まる頃、指し示しされていたイラストは、やはり...桐崎さんだった。

 

 

「そんな......」

 

 

そう呟いた桐崎さんの言葉を最後に今回の学級裁判は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

......幽霊なんていなかった。

 

そこにいたのは、罪を犯した一人の少女。

僕らと同じ、ただの人間だった。

 

 

 

 

 

 

 

–––学級裁判 閉廷–––

 

 

 




割と時間がかかってしまった後編。難産という程ではなかったのですが、中々まとめられず時間をかけてしまいました。m(__)m

次は久々のオシオキ編ということで自分としても楽しみな部分であります。

それではまた次回お会いしましょう。

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