ダンガンロンパExtraWorld 〜砂漠のコロシアイ学園生活〜   作:magone

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第3章 非日常編 学級裁判(前編)

–––弁論準備–––

 

 

 

まずは集めた証拠の整理からしていこう。

 

 

 

–––モノクマファイル3

被害者となったのは、"超高校級のエクソシスト"鬼頭ちはると"超高校級の獣医"足立猫の2名。

死体発見現場となったのは、"秘密の隠し部屋"なる謎の地下室。

 

鬼頭ちはるの死因は、頭を銃で撃たれたことによる即死で他に目立った外傷は見られない。

死亡時刻は、不明。

 

足立猫の死因は、不明。後頭部に打撃痕が見られる。

死亡時刻は、不明。

 

両名とも足枷を片足に付けられており、壁から伸びた鎖によって拘束されていた。

 

 

–––地図

平子の自室の扉に下に置いてあった秘密の隠し部屋の場所を記した地図。端っこに小さくモノクマのイラストが見られる。

 

 

–––十字架

鬼頭が常に首から下げている大きめの金色の十字架。右手でそれを握りながら死亡していた。

 

 

–––メリケンサック

鬼頭が装具と呼んで常備していた悪魔祓い用の武器。死体発見時も変わらず祭服の下に忍ばせてあった。

 

 

–––リンブルバット

萬屋と鮫島が砂漠から拾ってきた尻尾が二股に分かれた赤星の飼い猫。鬼頭からは悪魔と呼ばれていた。

 

鬼頭と足立と同じく、秘密の隠し部屋で亡くなっていた。

死因はおそらく失血死と見られる。

 

 

–––監視カメラの位置

部屋にある監視カメラは一つ。足立側の壁の右上奥の隅に取り付けられていた。

 

 

–––床扉のボタン

床扉を開けた裏側にあったボタン。これを押すと自然と床扉が閉まる仕組みになっていた。

 

 

–––ボタンの傷

床扉のボタンにまるで引っ掻いたような傷があった。

 

 

–––ゲームマスタールーム

放送室の中にあったバツ印の描かれた扉の部屋。"秘密の隠し部屋"を監視カメラを通して見ることが出来る。

 

 

以下、ゲームマスタールームにおいて出来うる操作(現在分かっている範囲)

 

・監視カメラによる状況把握

・ボイスチェンジャー付きのスピーカーを通して声を届かせることができる。(しかし、向こうの声は聞こえない)

・照明の点灯及び消灯

・足枷の遠隔解除

 

 

–––預かり所の景品

ゲームセンターのガチャで取れた景品の一時預かり所にあった大量の景品。ハンカチやぬいぐるみの類いが殆ど。誰が入手したかは不明。

 

 

–––平子の検死結果

足立の死因は酸欠による窒息死の可能性が高い。

 

 

–––『絶望ヶ淵学園生徒名簿』

景品ガチャにてゲットしたコロシアイ参加者全員のプロフィール。名前、才能、身長、体重、胸囲、好きなもの、嫌いなものが載っていた。

 

 

–––『今期の超高校級スカウト生 一覧表』

景品ガチャにてゲットした64人の超高校級の名前が載ったリスト。

 

その中に"超高校級のゲームマスター"として久礼爽の名前があった。

 

 

–––久礼爽

特定の人物を誘拐して、様々なデスゲームを強要した連続猟奇殺人犯。分かっているのは名前のみで、性別は不明。

コロシアイ参加者の中では平子のみが存在を知っていた。

 

 

–––桐崎に送られた真実

前回裁判の終わりに判明したモノクマから桐崎に送られた真実。

内容は『オマエラの中に超高校級の才能を騙る偽物がいる

 

 

–––麻酔銃

ゲームマスタールームに置き捨てられたハンドガン程度の大きさの銃。注視器を射出し、対象を眠らせる薬液を注入することが出来るらしい。

 

 

–––足立の白衣

足立がいつも着ていた白衣。内ポケットが存在し、リンブルバットが隠れていた様子をクルトと赤星が目撃している。

 

 

 

 

これで全部か。

 

3度目の学級裁判。しかも今回は前回と違って二人の死が確定してしまっている...。更にはリンブルバットまで犠牲に.......。

 

.......始めよう。

この裁判を切り抜ける以外に僕らが生き残る選択肢はないんだ。

 

 

 

–––学級裁判 開廷–––

 

 

「えー、ではでは! 最初に学級裁判の簡単な説明をしておきましょう! 学級裁判では『誰が犯人か』を議論し、その結果はオマエラの投票により決定されます。正しいクロを指摘できればクロだけがおしおきですが、もし間違った人物をクロとした場合は、クロ以外の全員がおしおきされ、生き残ったクロだけがこの絶望ヶ淵学園から卒業でき、希望溢れる外の世界へと羽ばたけるのでっす!!」

 

「と、いつもならここでオマエラにバトンタッチしたい所だけどっ! 今回の件を受けましてっ! またまた校則の更新を行いましたっ!」

 

「また?」

 

「これは、オマエラの為でもあるんだよ。わかったらとっとと丸っと確認しちゃってね〜!」

 

 

渋々、モノパッドの校則ページを開く。

 

 

そこには、『別の犯人による別の殺人が同時に起きた場合、先に死体発見された方のクロのみが投票対象となります。但し、先に死体発見された方のクロが存命ではない時、後に死体発見された方のクロを投票対象とする

 

 

以前の事件によって増えた校則に但書がされていた。

 

 

「つまり...?」

「鬼頭さんを殺したクロが足立くんだった場合。足立くんを殺した別のクロを見つけなくちゃいけないってワケね」

「考えなきゃいけないことが増えた...ってコト!? っすか?」

「それは議論を進めていけば自ずと見えてくるはずよ。それよりモノクマ良いの? このタイミングでの校則の更新なんて随分とクロに不利なんじゃないかしら?」

「うぷぷ...クロに同情するなんて検事らしくないね〜、平子サン。ま、君がクロかもしれないけど」

「...同情してるんじゃなくて、公平さを問いているのだけれど」

「公平さは問題ないよ。だって今回の事件は、そもそもがクロに有利な感じになっちゃってるからね、勿論詳しくは言えないけど、心配はノーセンキューだよ」

「クロに有利...ね。そもそもそこから公平にしてほしいのだけれど...取り敢えず苦虫を噛み殺しながら納得してあげるわ。みんなはどうかしら?」

 

 

みんな渋々納得の意を示した。

ただ一人を除いて。

 

 

「赤星サンは、納得してくれない感じ〜?」

 

 

モノクマが、ふざけた調子でそう言うと。

 

 

「...誰」

 

 

赤星さんが、消え入るような声でそう呟いた。

 

 

 

「はにゃ? ボクはモノクマだよ。忘れちゃったの〜?」

「ふざけないでよ!! 誰がマオとちはると.......リンブルバットを殺したのって聞いてるんだよ........」

 

 

校則の件なんて無かったように、強引に議論に引きずり込まれる。

 

 

「んなこと聞いたって名乗り出るワケねーだろ。今までやってきた裁判のこと忘れたのかよ」

「そんなの...ぼくだってわかってるよ。でも...でも........ひっ.......」

「泣いてる場合じゃねぇだろ。そんなんでこの先の裁判やってけんのかよ。自分のペットや仲の良かった奴が死んだ途端これかよ。心のどっかでは思ってたはずだろ...こうなっちまうかもしれねぇってことぐらい」

「ひっ...ひっ...」

「チッ。いい加減にしとけよ。もう裁判は始まってんだぞ! いつまでも泣いてんじゃねぇよ!! それともあれか? 実はお前が犯人で裁判の進行を遅らせようとしてんじゃ–––」

「六車!! 今のは言い過ぎぜよ。お前も少しは落ち着かんか。気持ちは分かるが、喧嘩しとる場合じゃないじゃろ」

「鮫島くんの言う通りよ。こんな時だからこそ冷静に物事を見ないと、それこそ私たち全員揃って処刑って結末になるのは明白よ」

「チッ。わーってるよ...。んなことぐらい」

「それに焦らなくても大丈夫よ。もう既にわかってることもあるしね」

「...わかってること...?」

「犯人の名前よ」

「......は?」

 

 

平子さんの言葉に懐疑的な目を向ける面々。それもそうだ。そんな言葉が出てくるのは決まって議論がし尽くされた後だと相場が決まっているからだ。

 

 

「犯人の名前って...まだ何もわかってないのにどうやって?」

 

 

尤もな疑問。

いくらなんでも早すぎる展開だ。

 

でも僕は分かってるはず。その言葉が指す意味を。

 

 

 

 

–––ノンストップ議論–––

 

 

「平子はもう犯人がわかってるって言いてぇのか?」

「名前だけはね」

「含みのある言い方ですな。まるで他のことはわかっていないような感じに聞こえますぞ?」

「そう取ってもらっても間違いではないかしらね」

「はい? つまりアンタは犯人の名前だけわかってるって言いたいの?」

「まあ、そうね」

「何言ってんだお前。犯人の名前がわかってんならもう全部わかってんだろ? じゃなきゃ意味わかんねぇよ。犯人の名前だけわかってるなんてあるワケねーし、適当なこと言ってんじゃねぇぞ!」

 

 

平子さんだけじゃない。僕も犯人の名前には心当たりがあるはずだ。

 

 

久礼爽ー論破→犯人の名前だけわかってるなんてあるワケねーし

「それがあるんだ...六車くん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよクルトまで。じゃあその名前を言ってみろよ」

「.......久礼(クレイ)(ソウ)。確かそんな名前だったよね? 平子さん」

「ええ」

「くれい...そう...?」

「だ、誰っすかその人?」

「久礼爽。性別不明の連続猟奇殺人犯よ」

「さ、殺人犯!?」

「そうよ。そして今回の犯行がその久礼爽である根拠もあるわ。そうよね? クルトくん」

「え、あ、うん...」

 

 

え、えーと、確か根拠はアレで良いんだよね?

 

 

 

–––選択–––

 

 

二人の死体の有り様

リンブルバットの亡骸の有り様

死体発見現場の有り様←

 

 

 

 

「死体発見現場の有り様...それが根拠になると思う」

「それは...どういうことぜよ?」

「説明は私からするわ。まず久礼爽は、被害者を複数人誘拐し、その誘拐された者同士でいわゆるデスゲームを行わせるという犯行を重ねた人物よ」

「デスゲーム? 今の私たちみたいな?」

「大きな括りで言えばそうかもしれないけど、厳密には違うわ。久礼爽はもっと直接的な生き死にの掛かったデスゲームが主だった。拘束時間も私たちより圧倒的に短かったはずよ」

「つまり...あの地下室で行われていたのは久礼爽がマオちゃんと鬼頭に対して何かしらのデスゲームを強要していたってこと?」

「そういうこと」

 

 

僕もあの惨状を見るにデスゲームを仕掛けられた可能性は高いと思う。あの部屋自体もその為に用意されたかのような作りだった。

二人は新たなデスゲームに巻き込まれた。

この考えで間違いはないはず...。

 

 

「...少しいいか?」

「何かしら?」

「平子華月の言いたいことは理解できる。だが少しばかり突拍子がないようにも思える。確かに犯行内容が似通ってはいるが、それだけで久礼爽の犯行だと断定するのは些か早急に過ぎると私は思う。例えば、久礼爽のやり口を知っていれば、模倣犯の可能性だって十分にあり得る」

「なるほど。ということは納得できるだけの証拠を提示すればいいのね」

「ああ」

「わかったわ。クルトくん、例の証拠を」

「ま、また僕...? えーと...」

 

 

平子さんの助手かな? 僕は。

ま、まあいいや。例の証拠か...。それは多分、アレのことだろう。

 

 

 

 

 

–––証拠提示–––

 

 

『今期の超高校級スカウト生 一覧表』←

 

 

 

 

 

 

「平子さんの言ってた証拠ってこれの事だよね?」

「何ぜよ? その紙切れは」

「『今期の超高校級スカウト生 一覧表』。そうこの紙には書いてあるんだ」

「どうやら私たちを含む希望ヶ峰学園からスカウトを受けた超高校級の生徒がこの紙に一覧として載っているみたいよ」

「俺ら以外にもスカウト受けてた奴らがいたってことか」

「この紙を信じればだけど。まあ、こんな所で嘘をばら撒くなんて面白味もないこと、貴方はしないでしょう、モノクマ」

 

 

平子さんの鋭い視線がモノクマに突き刺さる。当のモノクマはどこ吹く風で蜂蜜を貪っている。それを見た平子さんは呆れ顔でため息を漏らす。

 

 

「ん? 待ってよ。それってもしかしてさ、ゲーセンの景品ガチャで出てきたあの紙?」

「うん。その通りだよ。これはマオさんの部屋で見つけたんだ」

「...そう言えば私がマオちゃんに渡したんだったね。すっかり忘れてたよ。で、それが今回の犯人が久礼爽である証拠になる理由は何?」

「みんな、取り敢えずこの紙に書いてある64人の名前を確認してくれるかな?」

 

 

 

 

 

〜今期の超高校級スカウト生 一覧表(五十音順)〜

 

 

 

【超高校級の天文学者】赤星衛

【超高校級の獣医】足立猫

【超高校級のパティシエール】甘城有花

【超高校級のフィギュアスケート選手】石動メメ

【超高校級の弓道部】射手矢流女

【超高校級の気功家】岩門瞑力

【超高校級のガラス職人】氏家幕之進

【超高校級のマタドール】牛嶋カルラ

【超高校級の配達員】運天飛雄

【超高校級の茶道部】可愛川恋

【超高校級の自転車競技部】炎上寺豪

【超高校級のアームレスラー】大河内傑

【超高校級の作曲家】大沢火星

【超高校級の納棺師】小栗人志

【超高校級の幸運】忍足帝斗

【超高校級のヒーロー】小田切電皇

【超高校級のギタリスト】折原融

【超高校級の探偵】鎌倉涙

【超高校級の樹木医】冠林巽

【超高校級の新聞部】貴志萌華

【超高校級のエクソシスト】鬼頭ちはる

【超高校級の秘書】桐崎雨城

【超高校級の落語家】金笑亭鳶子

【超高校級の消防士】日下太陽

【超高校級の王子】クルト・L・クルークハルト

【超高校級のゲームマスター】久礼爽

【超高校級の執事】黒塚神威

【超高校級の助産師】香野桃梨

【超高校級の柔道家】後藤田勇

【超高校級の化学者】咲間伊織

【超高校級の漁師】鮫島海

【超高校級のバックパッカー】地獄谷大河

【超高校級の映画監督】陣海蛭都

【超高校級の整体師】妹尾実心

【超高校級の清掃委員】園山紗緒

【超高校級の声優】高原美彩

【超高校級のスタントマン】武田士走

【超高校級の棋士】知恩院櫻子

【超高校級のボディビルダー】槌ヶ谷魔沙比呂

【超高校級の歴史学者】勅使河原祈里

【超高校級のゴルファー】十市遥

【超高校級の金魚絵師】智己燐

【超高校級の舞台役者】羽入響介

【超高校級のドルフィントレーナー】半堂芽莉

【超高校級の巡礼者】聖戸千歩

【超高校級の検事】平子華月

【超高校級の卓球選手】福江笑美

【超高校級の造船技師】舟橋菊水

【超高校級の放送委員】古畑野々葉

【超高校級のモデル】細川摩耶

【超高校級の大道芸人】舞田十司郎

【超高校級の投資家】マシュー・ブラックモア

【超高校級の美容師】繭住藍子

【超高校級の車掌】道重信行

【超高校級の園芸部】翠川育智

【超高校級のエースストライカー】六車ミゲル

【超高校級の僧侶】夢道斎現

【超高校級の気象予報士】森霰

【超高校級の超常現象研究家】八坂綺羅々

【超高校級のボランティア】譲羽巴

【超高校級の探検家】萬屋千歳

【超高校級の宝石商】瑠璃宮玻璃菜

【超高校級の養蜂家】六角逢

【超高校級の演出家】和久井考村

 

 

以上、64名

 

 

 

 

 

「僕の名前の下。そこにしっかりと"久礼爽"の名前が記載されてあるんだ。超高校級のゲームマスターとして...」

「...確かに名前がある...」

「つまり、私たちの同期として"猟奇殺人犯"久礼爽は入学予定だったってことよ」

「殺人犯を入学させるとは...学園も怖いことするっすね...」

「反社会的な人物は過去にも入学させている前例があるわ。そこに疑問はない」

「え、えーと。というワケであの現場を作り上げたのは久礼爽である可能性が極めて高––」

 

 

 

 

「その話、待つぜよ!」

 

 

 

 

そう言って僕の言葉を止めたのは鮫島くんだった。

 

 

 

「クルトよ、おまんの言ってる事、ちとおかしいぞ」

「おかしい? えーと...どの辺りかな?」

「わからんか。自分が頓珍漢な事を言っちゅうことに。なら教えちゃるきに、しっかりわしの話を聞くぜよ!」

 

 

 

僕の言ってる事にどこか引っ掛かった箇所があったようだ。どこだろう...? わからない。ならお互いの主張をぶつけ合って解決するしかない。

 

ここは議論を展開する場なんだから。

 

 

 

 

 

–––反論ショーダウン–––

〔鮫島海〕

 

 

 

 

「久礼爽って奴が希望ヶ峰に入学しちゅう可能性があるのはわかるが、それが今回の事件に関係しとるとは思えんぞ」

 

「どうして? 事件現場の有り様を見るに久礼爽の犯行の可能性は十分にあると思うけど...」

 

「そもそもじゃ、コロシアイに参加させられとる人数は全員で16人ぜよ。その入学予定リストにもわしら全員の名前と才能が書いとる。じゃが、それは久礼爽も同じぜよ。クルトの言っとる通り、彼奴の犯行なら、17人目にその久礼爽がおって、今もどこかに潜んどることになる。それは流石に無理があるぜよ!」

 

「いや僕も久礼爽がこの学園のどこかに潜んでるとは考えてないよ」

 

「それじゃあ、やっぱり久礼爽なんて奴は、端っからこの学園にはおらんことになるぜよ。となると今回の犯行は、彼奴のやり方を真似した模倣犯で確定っちゅうことになる。どうじゃ? それでもまだ久礼爽本人による犯行って言うんか?」

 

 

 

いや確定とはまだ言えないはずだ。

あの証拠を出そう。

 

 

 

 

桐崎に送られた真実–論破→模倣犯で確定

「その言葉、切らせてもらうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「鮫島君は覚えてる? 桐崎さんが処刑される前に僕たちに言い残したことを」

「言い残したこと?...あれか? わしらの中に偽物がおるとか言うやつか?」

「そう!それだよ。正しくは『オマエラの中に超高校級の才能を騙る偽物がいる』だね」

「...という事は...」

「そう。彼女の言葉を信用するなら、私たちの中に才能を騙る者がいるということ。...いや、それだけじゃない。名前すら偽っている者がいる可能性が高いわ」

「そして、その正体が、久礼爽...ってことっすか」

「そういうことじゃったか......」

 

 

久礼爽が誰かに成り代わっている。

僕たち全員、そして久礼爽の名前が入学リストにあったということは、つまりはそう言うことになる......。

 

一体、誰なんだ...。

 

互いに疑惑の視線が向けられる。

 

 

 

「だが、犯人の氏名が明らかになったとはいえ、それが誰なのかが不明な以上、裁判を続ける以外選択肢はないようだな。平子華月は、この先どう議論を進めるつもりだ?」

「取り敢えずは、犯人がどうやってあの秘密の隠し部屋を発見できたのか? それから紐解いていこうと思う。どう?」

「"秘密の隠し部屋"...なんだか"頭痛が痛い"みたいな重複表現っすね」

「それは私じゃなく、モノクマに言ってね」

「国語の授業をしてる場合ではない。その隠し部屋とは、鬼頭ちはる等が死亡していた現場のことだな?」

「その通りよ。文字通り、あの部屋は隠されていたワケだから、見つけ出した経緯に犯人に繋がる手掛かりが見つかるかもしれない」

 

 

あの部屋を犯人がどうやって見つけ出したのか...。

うーん...偶然見つけた可能性もゼロじゃないけど、やはりそうじゃない気がするな...。

 

 

「あー、わかっかぞ。犯人がどうやってあの部屋を見つけたのかをよ」

「え、六車くん、それは本当?」

「あ? 冗談言ってるように聞こえたか?」

「い、いやそんなことはないけど...」

「待ってくださいっす! 私も思いついた事があるっす!」

「...僕も...」

「おいおいおい! 待てよ! 俺が話してんだろうが。これ以上イラつかせんじゃねーよ!」

「む、六車くんは少し冷静になった方が良いと思うっすよ...鬼頭さんが亡くなって悲しいのは分かるっすけど、そんなに当たり散らしたって何にもならないっすよ!」

「...同感...」

「うるせえぇ!!ああ!!イライラする!!」

 

 

六車くん......。

捜査の時もそうだったけど、今回は前回の裁判以上に荒れている...。

 

 

「どいつもこいつも...いいから黙って聞いてろ!!」

 

「私もわかったことがあるっす! 取り敢えず、私の気付きも聞いてほしいっすよ!」

 

「...僕も気付いたことがあるから共有しようと思う...」

 

 

 

「俺の話を聞け!」

 

「私の話を聞いてほしいっす!」

 

「...僕の話も聞いて...」

 

 

六車くん、古畑さん、萬屋くん。それぞれが違うことを話すようだ。聞き漏らしがないようにちゃんとみんなの会話を聞かなきゃ。

 

 

 

 

–––パニック議論–––

 

 

※パニック議論は3人が3人とも議論を展開するので、会話が3つございます。

 

(例)

 

A1「」

B1「」

C1「」

 

A2「」

B2「」

C2「」

 

 

...このように続いていき、A1はA2に会話が進み、B1はB2に会話が繋がるようになっています。また同じ人物が連続で話す場合もございます。以上が大まかなパニック議論の説明となります。

 

 

 

 

 

六車「俺の話を聞け!

古畑「私の話を聞いてほしいっす!」

萬屋「...僕の話も聞いて...」

 

繭住「わかったから、少し声のボリュームを抑えてくれる?」

氏家「何ですかな?小生でよければ、お伺いしますぞ」

勅使河原「続けてくれ」

 

六車「チッ。いいか?よく聞いとけよ」

平子「個人相談じゃないのよ。みんなに話して古畑さん」

萬屋「...僕はオアシスドームの開放条件と同じだと思うんだ...」

 

繭住「何?」

古畑「は、はいっす!えーと、端的に言うとモノクマに教えてもらったんじゃないかと」

鮫島「同じ開放条件じゃと?」

 

六車「普通に考えて、物理的に長時間オアシスにいた奴が見つけたに決まってる」

氏家「モノクマ氏...ですか?」

萬屋「...つまり、景品ガチャから入手したんじゃないかと、思う...」

 

六車「そして、それが出来たのはオアシスで遊んでた女共、お前らの中の誰かだ」

古畑「もしかしたら聞けば教えてくれたかもと思ったっす!」

勅使河原「成程、有り得る話だ。可能性として最も有力だと思うが...それを裏付ける証拠があれば良いんだが」

 

繭住「はあ? あの時は誰もそんな不審な動きはしてなかったわよ! 適当言ってるんじゃないわよ!」

平子「その可能性は低いと思うわね。癪だけど、そんな不平等な真似はしないでしょう」

鮫島「わしは持っとりませんね...うーん...」

 

 

 

聞こえた!

 

 

 

地図–賛成→景品ガチャ

「萬屋くんの言ってることに賛成だよ!」

 

 

 

 

 

「景品ガチャ。僕もそこで手に入れたと思う。その証拠もあるよ」

「...え、証拠があるの...?」

「うん。多分、平子さんが持ってると思うよ」

「...平子さんが...?」

「クルトくんの言ってる証拠って、これのことかしら?」

 

 

平子さんはポケットから四つ折りにされた紙を取り出して見せた。

 

 

「それは何だ?」

「地図よ」

「...ち、地図...?」

「これには"秘密の隠し部屋"の位置が示されているわ」

「...そんなものがあったんだ...でも...それが景品ガチャから手に入れたって何でわかるの...?」

 

 

その理由も僕は答えられるはず。

 

 

 

 

–––選択–––

 

 

 

モノクマのイラスト←

ネコのイラスト

クルトのイラスト

 

 

 

 

 

 

「その地図には端に小さくモノクマのイラストがあるんだ。後から描いたものじゃなく、ちゃんとプリントされたイラストが」

「それが何でガチャで手に入れた物とわかるんぜよ?」

 

 

 

 

–––証拠提示–––

 

 

 

預かり所の景品←

 

 

 

 

 

「景品ガチャの近くに景品を一時的に預けられる場所があって、そこに大量の景品が置かれていたんだ」

「大量の景品があったとして、それが何だって言うんじゃ?」

「僕らの中にその預かり所に景品を預けた人っている?」

「......」

 

 

その問いに、"はい"と答える人はいなかった。

 

 

「いない。つまり、景品ガチャをたくさん回した人がいるってこと。そして、それはつまり犯人か、ここにいない鬼頭さんかマオさんしかいない」

「でも鬼頭さんは軟禁されていたし、足立くんもそんな様子はなかったと思うわ。そうよね、赤星さん?」

「.........うん」

 

 

赤星さんは、力なく頷いた。

 

 

 

「となると、残るは犯人しかいない」

 

 

 

 

「ちょっと待って。そもそも平子が何でそんなものを持っているの?」

「朝起きると扉の下の隙間に置いてあったのよ」

「置いてあった?」

「ええ。私たちが鬼頭さん達を発見できたのもこの地図のおかげよ。誰が置いたかは不明だけど」

「何でそんな...わざわざ死体を発見される行動を?」

「さあね。でもそうしたってことは、これを置いた誰かは、私に死体を発見して欲しかった。それは間違いないと思うわ」

 

 

どうしてそんなことを? 死体を発見させて、犯人に何の得があるんだ? いや、そもそも地図を平子さんに渡したのは、犯人なのか?

 

わからないことが多過ぎる。

 

 

 

「発見されたがっていた...。見つけることで犯人に何らかのメリットがあったんすかねぇ」

「...そう言えば、4階の放送室の中にあった閉ざされた部屋が解錠されていた。そしてその部屋は、死体発見現場を監視できる作りになっている。そこを洗えば、犯人の意図も見えてくるかもしれない」

「なるほど、良いかもしれませんな。小生は同意ですが、各々方は如何ですかな?」

「いいんじゃない? でもまずはあの部屋の存在を知らない奴の為にも、どんな部屋か説明した方が良いと思うよ」

「では情報を共有しよう。少しばかり複雑ではあるが、聞き逃しなく聞いてくれると助かる」

 

 

自らの頭をニ度ほどトントンと軽く叩き、そのまま言葉を続けた。

 

 

「えーと、確か部屋の名称は"ゲームマスタールーム"だったはずだ」

「ゲーム...マスター...?」

「モノクマがそう呼称していた。中に入るとまずは巨大なモニターが目に入る。そこには、鬼頭ちはると足立猫の死体が残されている地下室が映し出されていた」

「...まるで監視しているみたい...」

「いや、()()()ではなく、現に監視しているのよ。しかもあの部屋から地下室に干渉できる仕組みもあったわ。そうよね? 勅使河原さん」

「そうだな。具体的にはボイスチェンジャー付きのスピーカーを通し、声を届かせることや照明の操作、足枷の遠隔解除などが出来るらしい」

「本当にデスゲームの主催者のようなことが出来る部屋なんすね......」

 

 

「でも...その部屋を久礼爽が利用したとして、一体何が目的なんすか?」

 

 

目的......。

 

 

「そもそもどうやってあの二人を地下室まで運んだんだ?」

「確かにそれも気になるっすね...」

 

 

目的は、まだわからない。

取り敢えず、今は目の前の疑問を片付けていこう。犯行を暴いていけば、そのうち明らかになるはず。

そうなると信じて。

 

 

–––ノンストップ議論–––

 

 

「...鬼頭さんと足立君...。...あの地下室にどうやって2人を...?」

自ら入ったとは...やはり考えづらいかしらね」

「ゴギブリじゃないんだから、ホイホイ入ってはいかないでしょうね」

何かしら理由を付けて連れ込んだとかはどうっすかね」

「正体不明の地下室に? 難しくない?」

そんなもんぶん殴って連れてくりゃ済む話だろうが

「あはは...六車くんいつにも増して声色が何か物騒っすよ...」

 

 

 

確かに言い方はアレだけど、半分はそれで合ってるはず...!

 

 

 

モノクマファイル3ー賛成→そんなもんぶん殴って連れてくりゃ済む話だろうが

「僕も六車くんに賛成だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ! 本当にそうなんすか!?」

「うん。今回のモノクマファイルの足立くんの所の記述を見てくれるかな」

「"足立猫の死因は、不明。後頭部に打撃痕が見られる。死亡時刻は、不明。"...と書いてあるのう」

「特に大事なのは後頭部の打撃痕。つまり頭を何かで殴られている。しかもそれが死亡理由とは明記されていない...ということは、マオさんは誰かに気絶させられて地下室に連れて来られた。こうは考えられないかな」

「うん、そうね。クルトくんの言う通りで概ね間違いないと思うわ。()()()()()()はね」

「鬼頭ちはるに関して、モノクマファイルには"頭を銃で撃たれたことによる即死で他に目立った外傷は見られない"との記載がある。つまり、足立猫のように昏倒させた後に連れ込んだということではない、と謳っているようなものだな」

「...そもそも鬼頭さんは普通に強い...から例え不意を突かれたとしても彼女を気絶させるのは簡単じゃないはずだし...」

「どうなんじゃ、クルト。鬼頭さんの方も分かっとるんか?」

 

 

 

鬼頭さんが地下室へどうやって連れて来られたか。

その答えを導く証拠はあったはず。

 

 

 

 

 

 

–––証拠提示–––

 

 

麻酔銃←

 

 

 

 

 

 

 

「これで鬼頭さんを気絶させたんじゃないかな」

「それは、小生らが捜査の折に発見した麻酔銃ですな」

「...麻酔銃...?」

「うん。これなら実力者の鬼頭さんでも眠らせることができるはずだよね」

「そんなものどこに? この学園の中には無かったよね? いくら何でも剥き身の麻酔銃を放置しておくほど私たち節穴じゃないと思うんだけど」

「それこそ景品ガチャとか?」

「...もしかしたら、足立くんが持っていたのかも」

 

 

えっ?

 

 

「平子さん、どういうこと?」

「ほら、私たちって所謂アイデンティティになるような道具の所持を認められていたわよね?」

「私のハサミとか萬屋の腕に付いてる何とかみたいな」

「......射出型ラペリングロープ......」

 

 

萬屋くんが小さな声で注釈を入れる。

 

 

「そう。超高校級たる為のアイデンティティ。それが足立くんの場合は、麻酔銃だった」

「どうしてマオちゃんが麻酔銃なんすか?」

「足立くんは超高校級の獣医よ。動物を眠らせるために携帯してあってもおかしくはないでしょ? 麻酔自体は持っていたようだし」

「しかし、足立がそんなものを持っていたとは一言を聞いとらんぜよ」

「理由は足立くんにしか分からないけど、もし自分が麻酔銃を所持してると他の人に知られてしまえば、悪用されてしまうと考えたのか。もしくは護身用、いざという時の切り札として使いたかったのか」

「......マオ」

 

 

暫く黙っていた赤星さんがポツリと呟く。

 

 

「いずれにしてもそれを犯人である久礼爽に利用され、鬼頭さんは眠らされた」

「足立猫を襲った後に携帯してあった麻酔銃を奪い、それで鬼頭ちはるを昏酔...ということか。なるほど納得な点も多いが、疑問の余地もある」

「どこかしら?」

「鬼頭ちはるが麻酔銃を撃たれたとするならば、それは一体どこなのか?」

「自分の部屋...ではないわよね流石に。鬼頭もそこまでバカじゃないわ」

「じゃあ外に出ていたんすかね。ほら、軟禁されても夜時間なら関係ないですし」

「何者かに...久礼氏に呼び出されたとかですかねぇ」

「そうかもね。リンブルバットの件で彼女も冷静さを欠いていたようだし、手紙か何かで釣られた可能性も多いにあるわ。それこそ"悪魔を殺させてあげる"とか...ね」

「.......」

 

 

"悪魔を殺させてあげる"

 

まさしく悪魔の囁き。鬼頭さんにとってそれがどれほどのものか、僕に推し量ることなんて出来ないんだろうな...。

 

 

「しかしそれも憶測に過ぎない。実際にそのような手紙が見つかった訳でもない。鬼頭ちはるが、夜時間に外出した理由...それは本人か地下室へ連れ込んだとされる久礼爽しかいない」

 

 

具体的な方法は、まだ不透明なことも多い。

でも、着実に犯人に迫ってるはずだ。

 

悠長にそんなことを考えていると...。

 

 

 

 

 

 

 

「...ならば、そろそろ良いかしらね」

 

 

一息置いて、平子さんがそう呟いた。

 

 

「そろそろって?」

 

 

 

 

 

 

 

この裁判の当事者。"被告人"に出廷して貰うのよ

 

 

 

 

 

 

 

 

被告人に出廷!? つまりそれは......。

 

 

「久礼爽の正体がわかったの?」

「...えっ...?」

「平子それ本当?」

 

 

そう口々に問うが、平子さんは至って冷静に話し始める。

 

 

「その手掛かりが掴めるかもしれない。私たちのことが詳細に、それも趣味嗜好すら知ることができるある物があれば」

 

 

詳細に? 趣味嗜好すら...?

 

 

......もしかしてあれのことか?

 

 

 

 

–––証拠提示–––

 

 

『絶望ヶ淵学園生徒名簿』←

 

 

 

 

 

 

 

「平子さん、それってこれのこと?」

「そう、それよ」

「...なにそれ...?」

「その紙には、私たちのプロフィールが詳細に記載されている。"絶望ヶ淵学園生徒名簿"と言ったかな、ガチャの景品らしいわ」

「私が当てて、マオちゃんに預かってもらっていたのよ」

「え、えーと...それがどう今回の事件に結び付くんすか? プロフィールに〇〇の正体は久礼爽ッ!って書かれているワケではないんすよね?」

 

 

古畑さんの疑問も尤もだ。提示した僕ですらまだ何もわからないままなんだから。

 

「そうは書いてないわね。書いてあるのは、名前、才能、身長、体重、胸囲、好きなもの、嫌いなもの...そんな所かしらね」

「体重に胸囲ぃ!? やだやだ見ないでくださいっす! プロポーションには自信ないんすよ〜!」

「ええ、別に見なくてもいいわ。大事なのはそこじゃないもの」

「んじゃあ、どこが重要なんですか?」

「好きなものよ」

 

 

好きなもの...?

それがどうして久礼爽に繋がる手掛かりに?

 

 

「まずこのプロフィールに嘘はないと仮定するわ。モノクマもこんな所で嘘は書かないでしょう。...そうよね?」

「もっちー☆」

「...とのこと。これを踏まえた上で聞いてほしい。このプロフィールの記載とは違うこと過去に発言した人物がいる。その人物こそが今回の事件を引き起こした張本人....久礼爽よ」

「......ッ!」

「過去の発言...それは一体いつのタイミングですかな?」

「前回裁判。舞田くんが殺された事件の学級裁判内よ」

 

 

前回の裁判...?

 

 

「アンタ前回の裁判いなかったじゃない」

「看病してくれた優しい獣医さんが教えてくれたのよ。裁判の詳細を色々とね...」

「...そう」

 

 

そっか、平子さんのことを裁判が終わってからずっと診てくれていたから、きっとその時に聞いたのかな。

 

 

マオさん......。

 

本当に、本当にお世話になりっぱなしだった。

僕が毒に侵された時もずっと看病してくれた。

 

 

 

 

 

久礼爽を見つけないと。

 

 

 

 

結局、僕はマオさんに何も返せなかった。

 

鬼頭さんにだって裁判の時に助けてもらった。

あれが無ければ僕はここに立っていないかもしれない。

 

 

やるんだ。

 

 

まずは、生徒名簿の好きなもの欄を整理してみよう。

 

 

赤星:澄んだ星空

足立:動物全般

氏家:コロンビアコーヒー

小田切:人助け

貴志:写真

鬼頭:レモン

桐崎:銀色

クルト:クラシック音楽

鮫島:脂の乗った刺身

勅使河原:古文書

平子:ダージリンティー

古畑:アニソン

舞田:投げ銭

繭住:ジェットコースター

六車:リフティング

萬屋:桜

 

 

 

つい全員分やってしまった。...まあ、問題はないか。

 

 

さあ、次は前回の裁判だ。

 

 

 

 

 

開廷から閉廷まで何があったか思い出せ。

 

 

 

 

思い返せ。

 

 

一体何があった?

 

 

 

 

 

 

 

..........

 

 

 

 

 

....................

 

 

 

 

 

 

..............................

 

 

 

 

 

 

 

........................................

 

 

 

 

 

 

 

 

..................................................

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっ......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかそんな......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんてことだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が聞いたんじゃないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クルトくん、その顔はわかってしまったのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はどんな顔をしてるのだろうか。

 

 

 

 

 

悲しいような、苦しいような...

 

 

何かが終わってしまうことを恐れているような...

 

 

きっとそんな顔だ。

 

 

 

 

「うん、わかったよ」

 

 

「それは誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

マオさんと鬼頭さんに対して、デスゲームを強いた久礼爽。

 

 

その正体は......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––人物指名–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「氏家くん。君が久礼爽なんじゃないか?」

 

「しょ、小生がでございますか!?」

 

 

 

"彼"はいつもの調子でそう答える。

 

 

「...氏家君が...?」

「ほう、なるほどな」

「まさかそんな...アンタが?」

「平子さん、クルトくんが言ってることは本当なんすか?」

「ええ。"超高校級のゲームマスター"久礼爽の正体は、そこにいる氏家くんよ」

「まじか、お前が」

 

「いやいやいやいや、待ってくだされ各々方! 平子女史とクルークハルト氏、冗談も程々にしてくれませんと然しもの小生も困ってしまいますぞ?」

「冗談で...僕がこんなこと言うと思う?」

「...本気と?」

「生憎、私の冗談下手は、法曹界では有名な話でね」

「そ、そうは申されましても......。何の根拠があってそんなことを仰っているのかはわかりませんが、小生は"超高校級のガラス職人"としての才能を披露したではありませんか! クルークハルト氏だってその一端はご存じのはずですぞ」

 

 

そう言われ、脳裏に保健室に置かれてる『希望』を思い出した。

 

 

『希望』作:氏家幕之進

 

 

それは小田切くんがモチーフになっているガラスの器のことだ。

 

 

 

確かに感動したのは事実。それほどにその作品は僕の心を打った。

 

 

だけど......。

 

 

 

「確かに...あの器は、凄い作品だったよ。さすがガラス職人の作品だと思った...」

「ならば!」

「だけど...それが"超高校級のガラス職人"による作品だとは限らない.......」

「なんですと...」

「...少し前に勅使河原さんの言っていたことを思い出してみてほしい」

 

 

 


 

 

「だが証明が出来ないのも事実だろう。例え赤星衛が全天88星座を構成する天体を網羅していることを証明したりしても、例え六車ミゲルが神技と呼べる軌道のシュートを放ったとしても、それが超高校級足らしめると誰が判定する?」

 

「勅使河原、何が言いてぇんだ?」

 

「私たちは専門家ではない。故にここでいくら自らの超高校級を証明しようとしても、それは無意味だと言っている。例えこの中に偽物が居たとしてもその人物を特定する手立ては私たちにはない」

 

 


 

 

 

「僕たちには氏家くんが"超高校級のガラス職人"であるという証明ができない。例え感涙するほどの凄い作品を作ってみせたとしても、それで超高校級足らしめていると僕たちには判断のしようがない...」

「そ、そうだとしても何故に小生が久礼爽なる人物だと言えるのですか!? そのような根拠がありますかな!?」

「根拠ならあるよ」

「なっ...!?」

「平子さんは前回の裁判の発言の中でプロフィールと異なる発言をしたと言っている。そのシーンを思い出したよ」

「...一体どこの発言...?」

「僕が桐崎さんをクロだと判った時の質問、その時の氏家くんの回答だよ」

 

 

 

 


 

「みんなはさ......コーヒーって飲む?」

 

 

 

「ん? それがこの事件と何か関係があるのですか?」

「うん。とても重要なことなんだ。頼むよ」

「重要なことっすか...」

「...わかったわ。答えるわよ。みんなもそれでいいね?」

 

 

コーヒーを飲むか、飲まないか。

みんなの答えが重要だ。

僕は一人一人の言葉を集中して聞いた。

 

 

「飲まないわよ」

「ぼくもあんまり好きじゃないかな。苦いし」

「紅茶派っすからコーヒーは飲まないっすよ」

「飲んだことねぇよ」

「私も飲まない」

「小生もコーヒーの部類は苦手ですな」

「...わしは水しか飲まんぜよ」

「お腹壊すからコーヒーは飲まないようにしてるわ」

「飲めないことはないが、自ら進んでは飲まないな」

「...飲まない...」

「わたくしもコーヒーは然程...」

 

 

 


 

 

「コーヒーを飲めるかという質問に、そこにいなかった平子さん以外の全員の回答が、差異はあるけど飲めないと答えているんだ、氏家くんを含めてね」

「うんうん、それで?」

「ここで一旦、生徒名簿に書かれている好きなものの欄を見てほしいんだ。そうすると全部わかるよ」

 

みんな、生徒名簿に目を向けた。

 

「氏家のプロフィールは...これね。えーと、好きなもの...えっ?」

コロンビアコーヒー。確かにそう記載されているな」

「好きなものがコーヒー???」

「これはどういうことなんだ氏家。お前はコーヒーは苦手だっつってたよな?」

「こ、こ、これは...そう! クルークハルト氏の意を汲んだのですよ!」

「意を汲んだ?」

「左様。あの時、クルークハルト氏は何かしらの一計を案じていたように見えました。それで小生はコーヒーは苦手だと回答したのです!」

「そんな見え透いた嘘を吐くなよ」

「嘘ではございません!!!」

「あの時のクルトくんの思考が貴方にわかったら、もはやそれは思考盗聴レベルだけど。それに実は貴方は裁判以前にも同じこと言っているのよ? 覚えてないかしら?」

「裁判以前...?」

 

 


 

 

「ん? クルトどうしたの?」

「コーヒーでも飲もうかと思って。昨日嫌な夢見てしまったせいで寝覚めが悪くってね...。繭住さんもいる?」

「いや私はいいわ。コーヒー飲むとお腹壊しちゃうかもしれないし」

「ほほう。繭住女史奇遇ですな。何を隠そう小生もコーヒーは苦手の部類でしてね。いや〜気が合いますな〜」

「1ミリたりとも気なんて合わないし、合わせない」

「はっはー! 手厳しいですな!」

 

 

氏家くんは嬉しそうな声でそう言った。

 

 

 


 

 

 

「クルトくんが毒入りコーヒーを飲む直前の会話よ。貴方は繭住さんに同調するように自分もコーヒーが苦手だと自白しているのよ」

「なっ......!?」

「確かに、そんなことを言ってたような気がする...」

「おいどうなんだ、これでもまだシラを切る気か?」

「シラを切るも何も小生は...そんなことを言ったのかも曖昧です。そ、そもそもその生徒名簿だってモノクマ氏が用意した品ではありませんか!? それを証拠にやいのやいのと責め立てるのは、些か根拠薄弱なのではありませんかな?」

「...はじめに嘘はない仮定すると言ったはずだけど、まあいいわ。確かにこの証拠は、完全に納得できるかと聞かれればそうではないしね」

「平子女史...!」

「おい平子」

「でも貴方が疑わしいのは事実。どうかしら? ここは私と反論ショーダウン()をしない? 貴方が久礼爽ではないと私に主張して」

「小生が平子女史と、ですか?」

「そうよ」

「...致し方ありませんな」

 

 

平子さんの纏う空気が変わった。

 

一対一の主張のぶつけ合い。

それは彼女の得意とする舞台だ。

 

 

「訊問の時間よ」

 

 

ここは平子さんに任せよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜平子華月、裁判場にて〜

 

 

 

 

さあ、まずはその仮面を剥いであげるわ。

 

秋霜烈日が如くに。

 

 

 

 

 

 

–––反論ショーダウン–––

〔氏家幕之進〕

 

 

「モノクマ氏の用意した生徒名簿なるもので小生が久礼爽であると主張するのはやはり少々無理があると思いますぞ。確かにチグハグな回答をしてしまったことは認めましょう。だがしかし! それは混乱してしまった結果なのです。いきなり犯人だと名指しされたならば、誰だって困惑する。皆が皆、冷静な判断に基づいた言動を取れることはないのです!」

 

「それにしてはえらく饒舌なのね。まあ、そういうことにしておいてあげてもいいわ。ただそれを抜きにしても私が貴方を久礼爽だと断ずる証拠を持ってる、いえ、貴方のそのマスクとゴーグルの下の顔が、久礼爽と同じだと私は知ってる」

 

「それには矛盾が生じますぞ! 小生は火傷の痕を隠すために常にマスクとゴーグルをしています、自室は除きますが。それにマスクの下を見られたのだってクルークハルト氏に対して一回だけ。ゴーグルに関しては、この学園において一度たりとも外したことはございません! 故にマスクとゴーグルの下の顔を知らない平子女史には、そんな主張はできないはずでございますぞ!!」

 

 

 

その言葉を待っていた。

私が持ってる情報がこれで意味を成す。

 

貴方の負けよ。

 

 

 

 

オッドアイー論破→ ゴーグルに関しては、この学園において一度たりとも外したことはございません

 

「悪いわね。その言葉、斬るわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜クルト、裁判場にて〜

 

 

 

氏家くんの反論に綻びが生じたのか

 

平子さんの検事としての目が光って見えた。

 

 

 

「氏家くん、貴方は言ったわね? この学園で一度も他の人の前でゴーグルは外したことはないと」

「え、ええ。二言はございませんぞ!」

「それを聞いて安心したわ。これで私の持ってる情報が生きる」

「情報?」

「何だその情報って」

 

平子さんは自分の目を指差し、言った。

 

「...貴方、左目が碧眼でしょ?」

「え?」

「左目が碧眼じゃと???」

「...どこでそんな情報を...?」

「久礼爽の事件は、以前から知っていた。それは捜査資料に目を通す機会があったからよ。犯人に関することは殆どなく、犯行の内容や特徴が主だった。年齢も性別もないその資料に唯一書かれていた身体的特徴、それが左目が碧眼。オッドアイであるということ」

「捜査資料、検事である平子華月ならではの情報だな」

「どう? 氏家くん。貴方はさっき言ったわよね? ゴーグルは外したことはないと、確かに。この状況でゴーグルの下の貴方の眼のことを当てるのはまず不可能。貴方が久礼爽かもしれないという前提条件を除けば、ね」

「ぐ、ぬぬぬぬぬぬ」

「おい!!どうなんぜよ!!氏家!! 」

「...氏家君...まさか本当に君が...」

「誰かに成り代わるというなら顔を隠しているというのは、実に都合が良い。本物の氏家幕之進を知らない私たちなら尚更」

「違うなら違うって言ってよ氏家...。アンタはキモかったけど、そんなことやる奴じゃないと思ってたわよ」

「...氏家」

 

 

「ぐぬぬ...........ぬぬ.................」

 

 

 

 

「さあ、そろそろ出廷してくれるかしら? 氏家くんの仮面を被った、"超高校級のゲームマスター"久礼爽くん」

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ、はあ、はあ...ああ...ああ...ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、正解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶叫したかと思えば、途端に落ち着き払った声色でそう言うと"彼"は、ゴーグルを頭に上げ、僕たちに両目を見せた。

 

オッドアイだ。左目だけが碧い。

 

 

まるでガラス細工のような、そんな綺麗な瞳だった。

 

 

 

 

 

 

 

「左目だけ碧眼。氏家くん、やっぱり君が...」

「まあ、そういうこと」

 

 

そう言うと、彼はゴーグルを完全に取り去り、前髪をかき上げた。髪型も変わってしまい、服装や体型は同じでも()()別人にしか見えなかった。

 

 

「これも必要ないか。蒸れてしょうがなかったんだ」

 

 

マスクも取ってしまい、あの痛々しい火傷の跡も露わになってしまった...。

 

 

 

氏家くん.......。

 

 

いやもう僕らの知ってる氏家くんはいない。

 

今、僕らの目の前に立っているのは......。

 

 

 

 

 

 

 

 

「"超高校級のガラス職人"氏家(ウジイエ)幕之進(マクノシン)改め、"超高校級のゲームマスター"久礼(クレイ)(ソウ)だ。以後宜しく、な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

得体の知れない、殺人鬼。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––学級裁判 中断–––

 

 

 

 

 

 




1004日振りの投稿らしいです。大変お待たせしました......。
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