ダンガンロンパExtraWorld 〜砂漠のコロシアイ学園生活〜   作:magone

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第4章 『命の旗。』
第4章 (非)日常編 I


 

 

 

 

 

『...............これでよし。おはようございます! 古畑野々葉が午前7時をお知らせするっす! またこうして新しい朝を迎えられて、私は非常に嬉しく思いますっす。...また仲間が欠けてしまいました。大切な仲間が。辛いっす。けれど私たちにはまだ希望が残ってるはずっす。だから、みんなどうか...絶望しないでくださいね。私はみんなと一緒にここから帰れることを諦めたりしないっすよ。絶対に。......今日一日を健やかに過ごせる事を祈っています。それでは、また』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶望しないでください、か。

 

 

 

フン。まぁ、そういう展開もまた面白いだろう。

 

 

 

出来るだけ生徒の自主性は重んじたいが...。

 

 

 

少々、強引な手も仕方ない。

 

 

 

より面白い方に転がることが何よりだ。

 

 

 

それにこれはEXTRA(おまけ)

 

 

 

どこまでいっても"本編"じゃない。

 

 

 

奇を衒う必要もない。

 

 

 

...さ、そろそろ始めようか。

 

 

 

退屈してもいけないしな。

 

 

 

"キミ"の活躍も楽しみにしてるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4章『命の旗。』

開幕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......んん」

 

 

朝を知らせる古畑さんの放送。微睡みながらもしっかり聞こえた。絶望しないで、と。

 

 

「希望はある」

 

 

砂漠からは出られる。その道筋だって考えた。大丈夫。きっと大丈夫。諦めてたまるものか。

そう自分に言い聞かせながら支度を済ませると部屋を出た。

 

 

その道中、考える。

 

 

モノクマが送ってきた"真実"に今のところ嘘はないように思える。

 

 

 

この学園には秘密の隠し部屋が存在する

舞田くんに送られてきたこれは、鬼頭さんとマオさんを閉じ込めていたオアシスドーム内の地下室のこと。

 

 

 

オマエラの中に超高校級の才能を騙る偽物がいる

桐崎さんに送られてきたこれは、超高校級のガラス職人という才能を騙り、その正体は超高校級のゲームマスターだった久礼くんのこと。

 

 

 

コロシアイは何度も行われている

マオさんに送られてきたこれは、まだ何とも言えないけど、可能性はゼロじゃない。久礼くんの例もある。何があっても不思議じゃない。

 

 

 

あと不明な真実は3つあるけど、今まで開示された真実はどれも否定できない。特に久礼くんの件は。

 

 

 

...ということは、僕の持っているこれは...。

 

 

 

 

 

オマエラの中に黒幕の手先がいる

 

 

 

 

まさか本当にいるんだろうか。今までの傾向からモノクマがテキトーに嘘を吐いてることではないと思う。だとしたら...生き残った僕らの仲間の中に黒幕サイドの人間がいると?

 

 

...僕はどうしたらいいんだ。仮にこれが本当だとしても不用意にみんなに公開するワケにはいかないよな。混乱を招くだけになってしまう。せめて確信を得てからにしないと。...こんなことを考えるのも嫌だ。

 

 

久礼くんの言っていたマオさんの件も気になる。彼の言ってたことが本当だとすると、氏家くんが死んだ件にマオさんが絡んでいたってことになるけど...本人はそんな素振りは最期まで見せなかった。

 

どういうことなんだ。

 

 

『お前らよく聞け!! デスゲームには2種類ある!! よく考えて見定めろ!! お前らの敵をよ!!』

 

 

敵って...どういうことなんだ。久礼くん...。

 

 

 

 

陰鬱な気持ちを抱えながら、食堂の扉を開ける。

 

 

朝食を適当に済ませていると、ポツポツと人が集まり始め、数十分後には全員と顔を合わせられた。

 

 

「それで? どうせ次のエリアが解放されんだろ?」

 

 

ソーセージを頬張りながら六車くんが言う。

そうだ。学級裁判が行われてしまった翌日には決まって新エリアが解放されている。今回もきっとそうなんだろう。

 

 

「以前のやり方を踏襲するならそうなるかもね」

「...新しいエリア...」

「そんなことより朝ご飯食べないと。昨日はあんまり食べれなかったからお腹空いたよー」

「赤星さんが元気になって私は少し安心したっす! 昨日はどうなることかと」

「貴方の時も結構心配したけどね」

「あはは。そうでしたっす...」

 

 

古畑さんは今も桐崎さんの上着を着ているが、以前のような心配は不思議とない。おそらくその後の彼女の振舞いがそうさせないんだろうな、と内心思う。

 

 

「ぼくはもう大丈夫! とかはやっぱりまだダメだけど、それでも前は向かないとさ。マオもぼくたちがここから出られることを願ってると思うから」

「赤星さん...! 一緒に頑張って生きましょう! 生きてここからみんなで外に!」

「野々葉、ありがとう〜」

 

 

赤星さんも元気になって良かった。あの事件の後だから手放しで喜べる状況にないのは違いないけど、それでも前を向いてくれていることは素直に嬉しかった。

 

 

そんな中、平子さんが全員に向けて話を始めた。内容は久礼くんが寄越したDVDについてだろうか。テーブルにその現物が置かれているので、そう察した。

 

 

「みんな揃ったなら聞いてくれるかしら。一応、処刑直前に久礼くんから渡されたDVDを確認したわ。中身は彼の言った通り、黒焦げた部屋に足立くんが現れるという内容だった」

「モノクマが加工した動画の可能性はないの?」

「もしかしたらあるかもしれないわね。私は動画加工とかそっちの技術に関してはさっぱりだし。でも、私の経験則上このレベルの加工は過去見たことがない」

「...つまり、本物の可能性が高い...ってことかな...?」

 

 

平子さんはその仕事柄、ディープフェイクとかそっち系の事件にも触れていると思う。その彼女が"過去見たことがない"と言っている。ならば萬屋くんの言う通り、本物である可能性が高いということか。

 

 

「現状はそうかもね。でも地下室の足立くんの様子は記憶にないということも本当っぽいわ。だとしたら...」

「記憶を奪われている」

 

 

記憶を奪われている。そんな俄には信じ難いフレーズを聞いても何故だか"有り得ない"という考えも浮かんでこない。この異常空間に麻痺しているというのもあるが、僕自身記憶を奪われているということに心当たりがないワケじゃなかったからだ。

 

 

「そう。私たちはここに連れて来られた経緯を何も覚えていない。なら他の記憶も奪われた可能性も多いにある。どうやったかはわからないけど。それなら足立くんのあの様子も説明できるわ」

「じゃあ、マオは本当は悪い人だったの...?」

 

 

赤星さんが弱々しくそう訊く。

実際のところはどうなのか...。あのDVDの内容が本当なら久礼くんと氏家くんを殺し合わせた"何かしら"と少なからず繋がりがあったという事は事実だと思う。久礼くんはその"何かしら"は希望ヶ峰学園と信じて疑わなかった。ならマオさんは希望ヶ峰学園と共謀して久礼くんたちをデスゲームに嵌めた? いやそんなワケがない。希望ヶ峰学園もそうだが、何よりもあのマオさんがそんなことを容認するはずがない。DVDの中のマオさんも何か特殊な事情があってそこに居たのだと、そう思いたい。切に。

 

 

「まだ分からないわ。どうやらその件には希望ヶ峰学園が関わってるって話だし。事件の全容が見えない以上、そう考えるのは早計よ。それに赤星さんは言っていたでしょ? 足立くんを信じるって。なら今まで接してきた彼を信じてあけて」

 

 

平子さんがそう赤星さんに向けて言う。そして、ふと思う。以前の、コロシアイが始まったばかりの頃の平子さんは冷徹で冷血な印象があった。今もそう言ったことがないワケではないけど、幾度かの裁判を経て、彼女は少し変わった気がする。こんな温情ある言葉を投げかけてくれているのがその証拠だ。

 

 

「...うん! そうだね! ぼくは信じるよ。今まで優しくしてくれたマオのことを」

「じゃあ、この件は一度横に置いておくってことで良いっすかね」

「ただでさえ気を揉むことも多い。ずっと思い悩むより、そうした方が精神衛生上ベストかもね」

 

 

マオさん。本当のところは僕にもよくわからない。

でも僕も赤星さんと同じ気持ちだ。今まで何度も助けてくれたマオさんを、優しく接してくれたマオさんを信じたい。

 

 

そして、モノクマの登場を危惧しつつ、みんなが朝食を終えるのを待った。

そろそろかと身構えていると。

 

 

「やあやあ。オマエラおはおはよ〜」

 

 

予想的中。嬉しくはない。

 

 

「で、今度はどこが解放されるの?」

「オマエラ慣れてきてない? もっと阿鼻叫喚のトンチキ騒ぎしてくれた方がこっちとしては面白いんだけど」

「毎度毎度そんなリアクション取ってられるか。こちとらこれでも疲弊してんだからよ」

「そうぜよ。少し察さんか」

「何でボクがオマエラのメンタル回復を待たなきゃいけないのさ。そんな甘えたこと言ってるとボクがどんなことするか...まだ分かってなかったりする?」

 

 

そう凄まれると何も言えない。何故ならモノクマは僕らに動機を与えてくる...そして、その匙加減はモノクマ次第。どれだけ酷いことをしてきても不思議じゃない。

 

 

「...いいから。早く教えなさいよ。どこなのよ、新エリアは?」

「うぷぷ。そうやって素直になったらいいんだよ。新エリアの場所は"屋上"。そこから色んな所に行けるようになってるから自分たちの目で確かめてみてねっ」

「色んな所?」

 

 

屋上か。そう言えばこの校舎はグラウンドから見るに4階建て。これ以上の階層はないと思う。だから屋上か、そこから"色んな所"に行けるらしいけど...そんな場所あったかな?

 

 

「じゃ、ボクは行くから。何かあったら呼んでね〜。限定キャラのガチャの排出率ぐらいには行く気はあるからさ」

「それって高いように見せて全然高くないっすよね!?」

「......」

「行く? 新エリア」

「行くしかねーだろ。何があるかもわかんねーし」

「そうね。萬屋くん達はどうする? 昨日は砂漠に出て間もなく裁判のために戻された感じだったけど」

 

 

萬屋くんと鮫島くんは、昨日も朝早く砂漠へ出ていたが、鬼頭さんとマオさんの死体発見の報をモノパッドで知り、踵を返し、急いで学園へと引き返してきたと言っていた。......もし、すぐには帰って来れない場所に居て、裁判に参加できない状況になった場合はどうなっていたのだろう。まさか校則違反で処刑に? いやどうなんだろう。モノクマなら無理矢理にでも連れ帰って裁判に参加させようなものだ。そんなことで生徒を減らすなんて面白味もないことアイツがするワケない、そんな信頼は謎にある。

 

 

「...出るなら、早めに出たい...」

「そうじゃな。拠点の岩山まで辿り着くんには相当な時間がいります。そうでないと夜になって気温が下がり、探索も困難になってしまいますから」

 

 

2人は引き続き砂漠の探索を続けてくれるようだ。昨日のように引き返すことにならないように祈るばかりだ。

 

 

「なら探索はぼくたちに任せてよ! 前みたいに!」

「そうだな。あらゆる可能性を検討するためにもそれが一番良いだろう。萬屋千歳と鮫島海は引き続き砂漠を、私たちは新エリアをそれぞれ探索などを行う。それで良いか?」

「...問題ないよ...」

「わ、わしもそれで大丈夫です」

「よし。そうと決まれば急げば善だ。とっとと支度するぞ」

「善は急げ、ね」

 

 

前回と同じで、砂漠を萬屋くんと鮫島くん、新エリアを僕ら残留組がそれぞれ請け負うことになった。

諸々の準備が整い次第、新エリアに向かうことにしよう。

その前に。

 

 

「萬屋くん、鮫島くん。気を付けてね」

「...うん...」

「おうよ、クルト! そっちもな」

 

 

萬屋くんは小さくも力強く頷いてくれた。

鮫島くんは拳を掲げて笑顔で返事をくれた。

 

そういう反応を貰うと、僕自身勇気づけられる。

本当に頼もしいと感じる。小田切くん亡き今、希望を繋げてくれているのは彼らなんだと改めてそう思う。

 

そんな2人に小さく手を振って暫しの別れを告げると、僕は新エリアを探索をするべく食堂を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが屋上...」

 

 

4階の更に上階に続く階段を登り、扉を開けるとそこに広がっていたのは至って普通の学校の屋上。意外にも自殺防止の柵まであった。

 

 

「特別何もないけど」

「うん。普通の屋上だね。ぼくの元いた高校もだいたいこんな感じ」

「赤星さんは屋上に入れるタイプの高校だったんすね〜! 私の所は立入禁止だったので羨ましいっす」

「んなことはどうでもいい。それより何だよここは。これのどこが新エリアだ? 過去一しょうもねぇぞ」

 

 

六車くんがいつもように悪態をつく。

 

 

「モノクマの話ではここから更に行ける場所があるということらしいけど...」

 

 

そんなことを呟くと、唐突にそれは来た。

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

キケン サガッテクダサイ

キケン サガッテクダサイ

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

いきなり空中にそんな文字列が出現した。それと同時にどこからともなく鳴るサイレン。

 

"危険 下がってください" 何のことだ?

 

僕らは急いで4階に続く階段に逃げ込んだ。

 

 

「チッ! なんなんだよ!」

「何よこれ...」

「い、一体何が始まるんすか...?」

「取り敢えず、様子を見ましょう...」

 

 

音のする方を探すとそれは空から鳴ってることがわかった。次の瞬間、天から何かが伸びてくるのが確認できた。どんどん伸びてる謎の影、その影は屋上に向けて落ちてきていた。

 

ドンッ!

 

けたたましい音と共に屋上に舞い降りた何か。

よく見るとそれは、扉が付いた箱。

その姿は宛ら...。

 

 

「まるでエレベーターね」

「エレベーター!? どこに? 空から伸びてるように見えますけど...まさか! 宇宙ステーションっすか!?」

「軌道エレベーターなの!?」

「...そもそもこの空は偽物よ。エレベーターに乗っても着くのは精々ドームの上じゃないかしら?」

「それもそうっすね...」

「ということは、このエレベーターの先が新エリアってこと?」

「そうかもね」

 

 

突如現れた謎のエレベーター。天に伸びる姿は正に軌道エレベーターそのもの。実状は違うけど...これに乗って上がれば新たな世界があるかもしれない。

 

恐る恐るそれに向けて歩き出そうとした時だった。六車くんが何かを見つけた。

 

 

「おい。こっちにも何かあんぞ」

 

 

グラウンドと反対側。そこにあったのは校舎裏に続く螺旋階段だった。奥の見てみると何かしらの怪しげな施設も見える。

 

 

「どうする? どっちから先に行く?」

 

 

エレベーターの先か。螺旋階段の向こう側か。

 

 

「それぞれ好きな方で良いんじゃない? 別にみんなで動く必要もないんだし」

「そうね。手分けした方が時短にもなる。情報も集まるしね。探索し終わったと感じたらまた食堂ってことで」

「僕もそれが良いと思うよ」

「異議なし!」

「私もっす!」

「...何でもいいから行くぞ。夜になったらダルいしな」

 

 

 

さあ、どちらから先に行こうか。そう考えているとそれぞれ思い思いの場所へと向かって行った。

 

 

さて。まずは......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレベーターから行こうかな。やっぱりこれがどこに続いてるのかは気になる。さっき突然出現したワケだから安全性はどうかとは思うけど、モノクマが僕らを事故死させても意味はない。奴は僕らにコロシアイをさせたいんだから。その一点だけはやはり謎の信頼感がある。

 

 

 

「これか......ほんとまるで軌道エレベーターだ」

 

 

天を突くように伸びたそれの前に立った僕は、ボタンを押して来るのを待つ。到着を知らせる機械音を上げて扉が開いたエレベーターに乗り込むと、5人は優に乗れる大きさであることが分かった。そして、扉が閉まり、目的地に向けて移動を開始した。

 

 

10数秒後、到着音が鳴った。どれだけ高い所に来たんだろうか。不安を背に扉が開くのを待つ。

 

 

開くとそこに広がっていたのは、円状の空間。その中央にはとても大きな望遠鏡が鎮座していた。

 

 

「これってもしかして...」

「天文台だよー!!!!!」

 

 

そう勢いよく声を掛けてくれたのは、目を爛々と輝かせている赤星さんだった。

 

 

「やっぱりそうだよね」

「うん! ここまで大きな望遠鏡は中々お目にかかれないよー! どれだけお金を投資したのか考えたくもないね」

 

 

赤星さん言う通り、ここまでの望遠鏡を用意するのは並大抵の規模じゃできない。ということは...絶望ヶ淵なんて称しているけど、やっぱりここは希望ヶ峰なんじゃ...?

 

 

「クルト?」

「あっ、ごめん。少し考え事してた」

「そうなんだ。ね、これ見て。多分天井の開閉ボタンだよ」

「天井の?」

「そだよ。そうしなと宙を見れないからね」

 

 

そう言いながら赤星さんはボタンを押す。そうすると天井が見る見る開いていった。暑い空気と陽の光がそこから侵入してくる。

 

 

「へぇ」

「これで観測できる!」

「昼間なのに?」

「関係ないよ。この望遠鏡があればね」

「そうなんだ」

「じゃ! 早速!」

 

 

赤星さんが望遠鏡を使おうとした瞬間、機械音声が鳴り響いた。

 

 

《砂嵐ガ接近中。砂嵐ガ接近中。天井ヲ閉ジマス。繰リ返シマス。天井ヲ閉ジマス》

 

「えっ?」

「砂嵐だって?」

 

 

閉じられていく天井。どうやら天体観測はすぐには出来ないらしい。

 

 

「勝手に閉じられていく...頻繁に砂嵐が来るここならではの機能だね」

「うぅー! 砂嵐じゃ仕方ないね。また今度にしよう」

 

 

砂嵐...萬屋くんと鮫島くんは大丈夫だろうか。

...信じるしかない。あの2人の強さを。

 

僕らには僕らの役目がある。

 

 

「赤星さん、ここはこの望遠鏡以外何かあった?」

「ん〜、そことそことそこの扉は同じ部屋に繋がってるっぽいよ」

「同じ部屋に...ちょっと見てくるよ」

「わかった! ぼくはこの望遠鏡を調べてるね〜」

 

 

さて、次は。

 

エレベーターを南とするなら西と東と北にその扉たちがある。どの扉に入っても同じ部屋に通じているらしいけど...取り敢えず、近場の扉に入ろう。

 

 

「あっ、暗い」

 

 

中は薄暗く、どこか涼しげな雰囲気が漂っていた。天井を見上げると幾千もの光の粒が輝いている。

 

 

「この部屋は...」

「プラネタリウムっぽいっすよね、これは」

「あっ、古畑さん。ここを調べていたんだね。暗くて気付かなかったよ」

 

 

声がする方を振り向くと、暗がりに薄っすら浮かぶシルエットが見える。そのシルエットがどうやら古畑さんらしい。

 

 

「そうっす! そして調査の結果は何の変哲もないプラネタリウムってことがわかりました。アレガ、デネブ、アルタイル、ベガって奴っすね」

「何言ってるかわからないけど、確かに普通のプラネタリウムっぽいね」

 

 

見上げると満天の星空。昼間でも楽しめる居心地の良い空間だ。でもそんなことはどうでもいい。ここから出られる手掛かりないのなら。

 

 

「古畑さん、何か気になる所はあった?」

「そうっすねぇ...まぁ特にこれと言ってって感じっすかね。強いて言うならナレーションの人の声が凄くイケボだったっす...聞いてみますか? ふふふ」

「それは...また今度にしようかな。他の場所も見てみたいし」

「そうっすか〜。じゃあ私はここでイケボを堪能...いや引き続き調査してますんで、何かあればまた報告会の時にお教えするっす!」

「う、うん。わかった。じゃあまた食堂で」

 

 

プラネタリウムから退出すると、赤星さんはまだ望遠鏡を観察している。

 

凄い集中してる...邪魔しちゃ悪いよね。

 

僕はエレベーターに乗ると、天文台を後にした。

十数秒後、屋上に再度足を付ける。すると、そこに人影があった。

 

 

「勅使河原さん」

「君か。...なるほど。エレベーターから帰って来たのか。空には一体何があった?」

 

 

眠たげな目を擦りながら勅使河原さんは訊ねてきた。

 

 

「望遠鏡とかプラネタリウムとか...天文台みたいだったね」

「天文台か。まぁ妥当な所だろう。ドーム上に造設するモノなど限られているからな」

「そう、かな。...勅使河原さんはここで何を?」

「まだ屋上自体は調べきっていなかったから一人残って探索していた。ここは日向ぼっこにはピッタリだ。偽物の陽射しでも十分に居心地が良い」

 

 

つまり眠りたかっただけかな...。

相変わらずのマイペース。

 

 

「えーと。じゃあ特にはなかった感じかな?」

「そのようだな。しかし、プラネタリウムか。そこならば、ゆるりと睡眠をとることも叶うか。行くとするか。それではまた食堂で会おう。クルト・L・クルークハルト」

「あっ、うん。寝過ぎちゃダメだからね...!」

 

 

後ろ姿で無言で手を振る勅使河原さんを見ながら、僕も次の場所へと向かうことにした。

 

 

「さてと。次は...あの螺旋階段の向こう側か」

 

 

螺旋階段。校舎の裏側に続く道。その先には一体何があるのだろうか?

 

 

「ん? あれは何だろう?」

 

 

校舎裏向こうを見てみると、何やら大きな施設がある。

螺旋階段を下りて、正面にそれはあった。

 

 

何だろう?

その謎の施設に歩を進めるとその前に平子さんと六車くんがいた。

 

 

「二人とも! 何かあったの?」

「クルトくん。いや...うん......」

 

 

平子さんのこういう反応は珍しい。よっぽどの何かがあったのかな?

 

 

「ん? その反応は何?」

「そりゃそうもなる。見ろよクルト、これ」

「これ?」

 

 

六車くんが顎で指した所を見てみると...。

 

 

 

 

 

 

 

「"これ"とは酷いメル!! トーホーは物ではないメルよッ!! トーホーはこの学園併設のEXISAL生産工場を仕切っている、モノラクダ工場長メルッッッ!!」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

白黒の小さな金髪ラクダがいた。

 

え?

 

...え?

 

 

「なんだって?」

「だからさー、モノラクダ!! この工場の工場長メルよ!!」

「情報量が多すぎてパンクしそうだわ...。そもそも貴方は何者? モノクマの手下とかかしら?」

「手下!? そんなワケないメル! トーホーは工場長なんだから学園長より偉いのは自明の理メル!」

「...相手にするだけ無駄な気がするわ。とにかくモノクマの仲間であることは違いないようね」

「あんなヤロウがまだ増えんのかよ...先が思いやられるなこりゃ」

「...モノラクダ。私の聞き間違いでなければ、その工場... EXISAL(エグイサル)生産工場って言ったのかしら?」

「そう! EXISAL生産工場メル!」

 

 

エグイサル...確か高機動人型殺人兵器とモノクマは言っていた。

 

その生産工場...。

 

 

「小田切が倒したアレか」

「でも再び現れ、私たちを脅している。それはここで再度作られたからね」

「何体も注文が入ってビックリしたメルよ。小田切クンは聞いていた以上にヤバかったメルね」

 

 

小田切くんが殲滅したハズの殺人ロボット。それをここで作っていたのか。

 

 

「じゃあよう、この工場ぶっ潰せばもうあのロボは増やせねぇってことか?」

「ぶっ潰す!? ダメダメ! ダメメルよ〜、そんなことしたらキミたちは校則違反で処刑されちゃうメル」

「校則違反だと?」

「『この学園の公共物をコロシアイ目的以外で破壊してはいけません』...だったね」

「チッ」

「キャッキャッキャ! 滅多なことは考えない方が身のためメル。そこを見るメル。ちゃんと絶望ヶ淵学園の校旗を刺してあるメル。ここは歴とした学園内の判定メルよ」

 

 

どこか希望ヶ峰学園の校章と似たデザインの校章が描かれている校旗が無造作に地面に突き刺さっている。

校則違反になるなら破壊は不可能か。自滅覚悟なら可能かもだけど、さすがにそんなことは出来ないしね...。

 

 

「おい、モノラクダ。ならそこの工場は立入禁止か?」

「そんなことはないメルよ。学園内は自由に探索OKメルから、それはここも同様メルよ」

「だとよ。行くか?」

「そうだね。ここで立ち止まってるワケにもいかないしね」

「よし、じゃあ行くぞ。案内しろラクダ」

「モノを付けるメル!!」

 

 

そのまま工場内に進んでいく六車くんとモノラクダ。

 

 

「平子さん、僕らも工場に」

「......」

「平子さん?」

「...あの声、どこかで聞いたことがある気がするのよね」

「あの声? モノラクダのこと?」

「ええ。でも思い出せない。あんな珍妙な喋り方をする人なんて忘れるワケないと思うんだけど」

 

 

確かに語尾に"メル"なんて付ける人なんて忘れるワケないよね。人ではないけど。

 

 

「.....まぁ、今はもういいわ。行きましょう、クルトくん。それよりこの工場に何があるかを確かめる方が先決よ」

「う、うん。そうだね」

 

 

僕らは少し遅れて六車くん達に合流した。

 

 

「トーホー自慢の工場を好きなだけ見学するメルよ」

 

 

中へ入ると、早速コンベアが見えてきた。

 

 

「今は止まってるけど、注文があればいつでも稼働させられるメルよ。完全受注生産メル!」

「もう二度と稼働しないことを願うわ...」

「それは困るメル...。仕事がなくなってしまうメルよ」

「知ったこっちゃねぇ。こちとらソイツに殺されかけてんだぞ」

「それがエグイサルシリーズの役目だから仕方ないメル」

「シリーズ?」

「知らないメルか? 今のは初代から改良に改良を重ねて出来た次世代機メルよ」

「だからMk−X(マークテン)なのね」

「キャッキャ。そういうことメル。この工場の奥に歴代のエグイサルを見ることが出来るメルよ。折角なんで向かうメルか」

「...ま、取り敢えず行きましょうか」

 

 

工場のことはまだ何もわからないので、仕方なくモノラクダについていくことにした。

 

そこへ向かう途中、モノラクダは工場内にある色んなモノを教えてくれた。

 

 

「そこにあるのは、エグイサルを組み立てるアーム。あそこにあるのは、トーホーが詰めている工場長室。それとあれは、掃射場メルね。いくら撃っても平気な丈夫な部屋メル。それと...これはプレス機メルね。ここで壊れたり、使わなくなったエグイサルを処分するメル」

 

 

プレス機......。

何だろう。この胸のザワザワ感は。前に何かあったっけ?

 

 

「クルトくん」

「...ん? 何?」

「神妙な表情をしてたから何かあったのかなと思って」

「いや、何もないんだけど...うん...」

「...自分でもわからないって顔ね。もし何かわかったら言ってね」

「...うん」

 

 

説明できない気持ちを抱えながら工場内を進む。

 

 

そして、目的の場に辿り着いた。

 

 

「ここが歴代エグイサルが保管されている倉庫メル」

 

 

ずらりと並んだ機械の怪物たち。これが全て殺人兵器だと思うと胸がゾワっとする。

 

 

「歴代ってことは以前にも使われてたの?」

「初代はバリバリに使われていたメルね。その他は改良して変化していっただけで使用されることはなかったメルね」

「ということはやはり過去にもコロシアイが...? それとも他の用途に?」

 

 

平子さんが考えを出すように独り言を呟いた。

 

 

「これが初代メル! ワケあって全て破壊されてしまったメルけど...一体だけ復元することに成功したメルよ」

「ふーん」

「現在唯一の搭乗できる機体メル。次機からはAIに切り替えていったメルからね〜」

「乗れんのか! これ!」

「左様メル。しかし、生徒をおいそれと乗せるワケにはいかないメルよ。危ないメルからね〜」

「チッ」

 

 

不満げな六車くんをよそに、モノラクダは言葉を続ける。

 

 

「その他の機体はAIが取り除かれて動かないメルね」

「そうかよ。平子どうする?」

「まだ何かあるかもしれない。しばらくはここを探索しようとは思う」

「そうだな。俺もそうっすかな。クルト、お前は外を探索してくれ」

「外?」

「工場以外にも気になる所があったっぽくて繭住が一人でそっちに行った。お前はそっちを手伝え」

「あっ、うん。わかったよ」

「んじゃ頼んだぜ」

 

 

六車くんと平子さんを工場内に残し、外に出る。

 

 

 

どこだろう? この工場以外に気になるとこなんて.......

 

.......あれかな?

 

 

目線の先には鉄の壁で覆われた巨大な箱があった。一見すると壁にしか見えない。

あれに違いないと思い、駆け寄ってみると、繭住さんがその前に立っているのを見つけた。

 

 

「...ん? あっ、クルト!」

 

 

繭住さんはこちらに気付くと手を振ってくれた。

 

 

「繭住さん、ここに居たんだね」

「ちょっと気になってね。見てよこれ」

「鉄の壁、だよね?」

「なんだと思う?」

「ん〜、次のエリアとか?」

「やっぱそうだよね。ということは黒幕はまだまだコロシアイを続ける気ってことよね」

「最後の二人になるまでって言ってたし、どうやらそのつもりっぽいね」

 

 

そう。モノクマが最初に言っていた。最後の二人になるまでコロシアイは終わらないと。

 

 

「最後の二人ね...。クルトはどう思う? まだコロシアイは続くと思う?」

「...正直もう分からない。でももうこれ以上は避けなくちゃ。萬屋くん達が砂漠の出口を探してくれている。それが見つかれば小田切くんが残してくれた希望も繋がる。だから絶対に諦めちゃダメだよ!」

「そうね...」

 

 

希望はある。殺し合う必要なんてない。

そう心の中で強く思う、と同時に脳裏に蘇る。

 

 

オマエラの中に黒幕の手先がいる

 

 

不安が僕の心を掻き立てる。

久礼くんのように素性を隠している人がまだ......?

 

 

「...もう少しだけ探索しようか。何かまだ見落としがあるかもしれないし」

 

 

そんな思考を払い除けるように僕は探索を続けた。

 

 

 

頼むから、もう仲間を疑わせないでくれ.......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜萬屋千歳、砂漠にて〜

 

 

–––時は遡り、2度目の裁判前夜–––

 

 

 

 

「...鮫島君...本当に良かったの...?」

「構わんぜよ」

 

 

夜遅いせいか鮫島君はいつもより更に声が低かった。深夜に活動することに加え、ルールを破らせているのもあり、どうしても申し訳なさが勝つ。悪いことをするつもりは一切ないが、それでもそんな気持ちになることは避けられなかった。

 

 

「男に頭下げられて頼まれたら断れる奴などおらんぜよ。確かに夜時間のルールを破ることにはなるが、悪いことをするワケじゃないき、問題はないぜよ」

 

 

砂漠に出るためには調査は必須。特に夜の砂漠は。

その為に鮫島君に協力してもらうことになった。夜の砂漠でも彼なら体を壊すこともないと思ったからだ。

 

それでもやはり1人で調査すべきだっただろうか、と今でも多少思うが、僕にも限界がある。補助してくれる役が必要だ。それにはやはり体が丈夫で信頼も置ける鮫島君が適任。協力してくれると言うならそれを拒む理由はない。

 

 

「それでどうするんぜよ。調査と言ってもわしは専門的な知識なんぞ何もありゃせんぞ」

「...取り敢えず...気温の低下を調べながらこの学園を包むドームを一周しようと思う...」

「そうか。了解したぜよ」

 

 

気温の調査は必須。次第によっては防寒具の有無も考えなくてはならない。砂漠を進むことによる体力低下や精神的な問題もある。僕だけならともかく、他のみんなは砂漠越えなんて初心者。十分な調査はやはり必要になる。

この学園を包むドームの事も合わせて調べたい。もしかしたら重要な何かを見落としているかもしれないし、ドームの反対側も砂漠が広がっているのかも知っておきたい。

 

 

 

ドームを左手に進む。振り向くと2人分の足跡が砂に刻まれていた。

 

夜が深くになるに連れて、気温が低くなっていくのを感じる。やはり夜に脱出するのは危険か。

 

 

そんなことを思いながらしばらくして。

 

 

「ここがようやく半分か」

「...だと思う...」

 

 

思ってはいたが、反対側も砂の世界が広がっている。やはりこの学園は四方八方を砂漠に囲まれた場所にあるということは間違いないらしい。

 

そして、このドームも相応に大きい。一体誰が何の為に建造したのか、謎は深まるばかりだ。

 

 

「学園全体を包んでると考えたら当然の大きさかのう。......ん? なんぜよあれは?」

 

 

鮫島君の指差す先に視線を向ける。

そこにはドームに入ったら謎の切れ込みがあった。よく見るとそれは扉だということがわかった。しかもとても大きい。

 

 

「扉かのう? それにしてはデカいが」

「...何かの搬入口...かな...? ...こっちからは開かなそうだね...」

「そうじゃな。しかしバカデカい扉じゃ。一体何を出す為の物なんぜよ...」

 

 

そう聞いて、一つだけ思い当たるものがあった。

 

 

「...例えば...小田切君が倒したあの機械...」

「ああ!! エグイサルゆう奴か。確かにそれぐらいの大きさじゃのう」

「...だとしても今はどうしようも無さそうだね...」

「むう。そうじゃのう」

「...うん...」

 

 

 

そう考え、一旦この扉のことは後回しにすることになった。今は調査が最優先。開かない扉に構っている暇はない。

 

 

しかし、嫌に気になる。

 

 

あの大きな扉は学園のどこに通じているのだろうか。

それを知る日が来るのだろうか。

いやそんな日は来ない方が良いだろう。

 

一刻も早くここから脱出するんだ。

 

それが先に逝ってしまった小田切君に対しての弔いになる。そう信じて、希望を繋ぐ。それが僕に出来得ることだと思う。

 

 

 

......砂漠の冷ややかな風が頬を撫でる。

 




ここに来て、新たなモノ枠。
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