ダンガンロンパExtraWorld 〜砂漠のコロシアイ学園生活〜   作:magone

33 / 36
第4章 非日常編 学級裁判(後編)

 

 

 

 

 

 

–––モノクマ劇場♪–––

 

 

 

 

 

キミたちがラクダについて知ってることっていくつある?

 

 

駱駝。

哺乳類、鯨偶蹄目、ラクダ科、ラクダ属の動物の総称。

 

 

 

背中のこぶには実は脂肪が詰まっていて、水を溜め込んでいるというのは迷信なんだ。水分補給をせずに数日間耐えうるという事実からきた考えなんだろうね。

 

まあ、モノラクダとかいう畜生はどうなんだかわかんないけどねっ!

 

 

 

 

ラクダは"砂漠の船"とも呼ばれ、乾燥地域には欠かせない脚でもあったんだ。交易には必須の動物だったんだね。

 

まあ、モノラクダとかいう畜生は人っ子一人も乗せらんないけどねっ!

 

 

 

 

そんなラクダは足の速さについては遅いイメージがあるかもだけど、実は時速40キロものスピードで走ることができるんだって。

 

まあ、モノラクダとかいう畜生は幼児用の三輪車の最高速度がせいぜいだけどねっ!

 

 

 

 

ていうかさ、モノラクダってなんなんだろうね。ぽっと出の四足歩行の畜生に一体何の意味があるんだろうね。

 

ねぇ? キミはアイツは何だと思うかな?

こっそり教えてよ。

安心して。ここは不可侵領域だからモノラクダは干渉できないようになってるからさ。

 

 

おっと!! そうこうしている内に裁判の時間が迫ってきたね。残念だけど話はここまで。優先順位を変更するワケにはいかないからね。

 

 

それじゃあ、再開しましょうかね。座して裁判の行方を見守ろうじゃないか。うぷぷぷぷぷぷぷ。

 

 

 

 

 

 

 

 

–––学級裁判 再開–––

 

 

頭痛は治った。意識も思考もはっきりしている。

よし、ここからは僕も裁判を引っ張るぐらい議論に参加しなきゃ。

 

 

「では仮にその"絶望"が萬屋千歳を殺害したとして、まずはその"絶望"について改めて整理したい。その"絶望"とはどんなものなのか。概略だけでも良い」

 

 

"絶望"。

確かにここで一度整理するのは必要かもしれない。

それらはどんな存在でどんな事象だったのか。

 

 

「舞田くんが見つけたDVD。そのDVDに収められていた内容はこんな感じだったよ。"超高校級の絶望"と呼ばれた彼女らは全世界で同時多発テロを敢行。世界は瞬く間に絶望に汚染されていった。事態を鑑みた希望ヶ峰学園サイドは学園をシェルター化して未来の希望たる生き残った生徒を保護したけど、そこでも"超高校級の絶望"によるコロシアイが起こった。多大な犠牲を払いつつもそこで"絶望"の中心たる江ノ島盾子が倒された」

「でもその後も"絶望の残党"が活動を続け、世界は尚も危機に瀕したままだった。ということだったわね」

「その"絶望"が私たちを砂漠に連れてきた連中の素性。そして、それは萬屋を殺した犯人の正体かもしれない。ということだったね」

 

 

そう、それが"絶望"。

常識という物差しじゃ到底測れない。なんで、どうしてなんて思っても無意味。彼らが求めるのは純粋な絶望ただそれだけなんだ。

 

 

「しかしよう、やっぱ信じらんねーよ。絶望だあとか残党があとか、そんなフィクションじみた話が本当でそれに萬屋が殺られたなんて」

 

 

六車くんの言うこともわかる。でも...。

 

 

「でも状況が"絶望"の関与を物語ってると思うよ。萬屋くんを狙ったのもその一端だと思うし」

「うーん、だがなぁ」

「私もその...そんな創作みたいな世界に自分がいるなら垂涎ものっすけど...。やっぱ...その...それで話を進めるのはちょっと怖いと言いますか何と言いますか」

「じゃが、それが一番可能性が高い話ならそうするしかないんじゃないかのう」

 

 

勅使河原さんの反論は打ち崩せたけど、まだ全員の賛同は得られていない様子だ。

 

 

「ぼくはよくわからないよ。結局どう進行したらいいのかな?」

「こればっかりは宙ぶらりで話は進められないわね。足並みは揃えないといけないわ。じゃないとその後の議論も意味を成さなくなるかもしれない」

「ならばどうするんぜよ?」

「決まってるわ。例の議論方法。互いの意見を二つの陣営に分かれて戦わせる。それしかないわ」

 

 

アレか。

 

 

「そうは言っても...平子、アンタはどうするの?」

「私は、そうね...貴方達とは逆の陣営に入ろうかしらね」

「え、何それ、どういうこと?」

「本音を言えば私もその話を完全には飲み込めてはいないけど、その線しか考えられないならそうするしかないとも思う」

「ならどうしてよ」

「本気で戦わせてこその議論よ。"絶望"という線で話を進めるなら私の考えた反論も打ち砕いてほしい。後々のことを考えてもね」

「前回まで淫猥な妄想云々と言っていた人と同じとは思えないほどの頼り甲斐っす!」

 

 

平子さんの思惑も理解できなくはない。このフィクションめいた話で議論を進めるなら遅かれ早かれ綻びが生じて停滞するのは目に見えている。それを予め潰しておくのは悪い作戦じゃない。なら...。

 

 

「わかったよ、平子さん。やろう」

 

 

相手はあの平子さんだ。中途半端な弾で論破は出来ない。慎重に、でも確実に。

 

 

「勅使河原さんはどうする?」

「私はクルト・L・クルークハルトと繭住藍子の側に立とう。先の反論で私は"絶望"が関与しているという線で話を進めると言った。今もその考えは変わらない」

「...わかった」

 

 

かくして僕らは向き合う。

萬屋くんを死に追いやった正体と。

 

 

 

 

–––議論スクラム–––

 

 

 

《"絶望"は事件に関与していない》vs《"絶望"は事件に関与している》

平子華月…………………クルト

六車ミゲル………………繭住藍子

古畑野々葉………………鮫島海

赤星衛……………………勅使河原祈里

氏家幕之進………………萬屋千歳

足立猫……………………鬼頭ちはる

舞田十司郎………………桐崎雨城

貴志萌華…………………小田切電皇

 

 

 

 

平子「この事件に"絶望"が関与してると考えうる明確な証拠はないわ」

繭住「でも事態は"絶望"が関与してると考えた方が自然だと思うわよ」

 

 

古畑「"超高校級の絶望"とか"人類史上最大最悪の絶望的事件"とかやはりフィクションじみていて本当にそれで話を進めていいのか心配なんすけど...」

勅使河原「フィクションというのならこの状況だって同等の事態。砂漠の中の学園なんて普通は有り得ないのだからな」

 

 

赤星「そもそもコロシアイって本当に"絶望"の仕業なのかな?」

クルト「モノクマが送ってきた真実にもあったようにコロシアイは過去にも行われている。そのコロシアイはいずれも"絶望"の仕業だった。僕たちが強いられているこの状況もコロシアイだとするならばこれも"絶望"の仕業だと考えられると思うよ」

 

 

六車「だが良いのかよ。モノクマを信用して。俺は未だに疑問が残るぞ」

鮫島「モノクマが送ってきよった真実は、どれもホンモンじゃった。事ここに及んだならいよいよもって信用する他ないぜよ」

 

 

六車「仮に"絶望"が居たとして、それが萬屋を殺したことにはなんねぇんじゃねーか?」

繭住「殺すなら裁判で有利になる平子やクルトを選ぶはず。わざわざ萬屋を狙ったのは私たちの希望を摘み取るため...。考えたくないけど、そう考えると説明がついちゃうのよ」

 

 

古畑「確か黒幕の手先が関与してるって話もありましたっすけど...それもどうなんすかね?」

鮫島「紫の毒薬を使ったんは、その効能を予め知っとった人物。それは黒幕の手先たる内通者しか有り得んぜよ」

 

 

赤星「"人類史上最大最悪の絶望的事件"だってぼくの記憶にはないし。...祈里も言ってたよね? そんな歴史はないってさ」

勅使河原「確かにそんな歴史は私の観測し得る範囲では綴られていない。だが記憶はないのはモノクマの細工で間違いないだろう。どうやったかは解らないが、過程より結果を今は見るべきだろう」

 

 

平子「記録によれば絶望の核である江ノ島盾子は既に故人。であるのならば、黒幕である"絶望"の誰かがこのコロシアイを起こす意義は何かしら?」

クルト「江ノ島盾子のもたらした絶望は伝播する。つまり"超高校級の絶望"の意思はまだ存在する。ならコロシアイを起こす意義はただ一つ。絶望、それだけだよ」

 

 

 

 

 

これが僕たちの答え。

フィクションじみた話だろうが、何だろうが関係ない。それが可能性として高いのなら受け入れるしかないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう? 平子さん。"絶望"がこの事件に関係している線で進めても大丈夫かな?」

「...ええ。その線で考える方が賢明ね。貴方たちもそれでいいかしら?」

「ぼくは問題ないよ」

「私も一応は大丈夫っす」

「まぁ、しゃーねぇか。いくら突拍子もねぇ話だろうが、現状それしかねぇならそれで進めるしかねぇな」

 

 

一応、これで足並みは揃ったと考えていいかな。

 

 

「だけど、一つだけ良いかしら」

「何よ平子」

「"絶望"が関与してる可能性について論じるのは良い。でもその"絶望"が黒幕の手先と同一人物だという思考は捨てた方が良いわ」

「何を言ってるの?」

「あくまで思考の話よ。凝り固まった先入観は危険を伴う。今は頭の片隅にでも入れておいて」

 

 

 

黒幕の手先と"絶望"が同一人物でない可能性...か。

 

 

 

「それで? どうすんだ? この後俺たちは何を議論すりゃいいんだ?」

「まだ不明な事柄があるのなら、それについて話したいところだが」

「不明な事柄...何があるんぜよ?」

「それも議論の中で決めるとしよう。今の段階で進めることのできる議題とは何なのか」

 

 

 

進めることのできる議題か。まだわかっていない事柄はいくつかあるけど...その中で一体何を注視すべきなのか、みんなの議論をよく聞いて考えてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––ノンストップ議論–––

 

 

 

「不明な事柄とか気になった箇所とか何でもいいから挙げてくれると助かるわ」

黒幕の手先が誰なのかは未だに判ってはいないわね」

「そんなの犯人が判ってねえって言ってるようなもんじゃねーか」

殺害場所もまだ確定ではなかったよね」

「殺害場所が天文台ではない線か。しかし、まだ判断材料が少ないのがネックか。他にも何か挙げられないか?」

紫の毒薬を気化させる装置を設置した時間とかっすか?」

「そういや工場も妙な点がいくつかあったわね」

凶器が実は校旗ではなく、他のものとか?」

 

 

 

そう言えば...あの事が未だ片付いていない。あれなら議論を進められるかもしれない。

 

 

工場内の砂−賛成→工場

「繭住さんの意見に賛成だよ!」

 

 

 

 

 

 

「工場のエグイサル倉庫。確かにそこに妙な点があったよ」

「妙な点ってなにー?」

「砂だよ。倉庫内に砂が散乱していたんだ」

「砂? そんなもん前に俺が見た時には無かったぞ」

「そう。だからその砂が倉庫で散乱したのはごく最近の出来事だと思うんだ」

「最近と言ってものう。そもそもどっからそん砂は持ち込まれたんぜよ?」

「グラウンドの砂ではないんすか?」

「いやグラウンドは工場から遠すぎるし、それよりももっと確実な要因があるよ。砂が工場内に入った要因が」

「確実な要因?」

 

 

工場内にあった砂。

それが持ち込まれたのはあの"扉"からのはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––証拠提示–––

 

 

工場内から砂漠へ通じている扉←

 

 

 

 

 

 

「工場には外...砂漠に通じている扉があったんだ。ボタン式で開閉できるタイプの大きな扉が」

「なるほど! その扉を開けた時に砂が中に侵入したんだね!」

「それが一番真っ当な要因かもね」

「待て待て。そもそもその扉は...っていうか砂漠に通じる扉は全部封鎖されていたハズだ。コロシアイをしねぇとその扉は開かない。そうだったろう?」

 

 

六車くんの言う通り、その扉も封鎖はされていたと思う。だけど矛盾はしてない。

モノクマたちの言ってた封鎖解除の条件を僕が聞き間違いしていなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––ノンストップ議論–––

 

 

 

コロシアイをしねぇと開かない扉から砂漠の砂が侵入するワケがねぇよ。きっと他のことが要因じゃねぇのか?」

「でもそこ以外に砂が持ち込まれた要因は考えらんないんすけど...」

「だとしても不可能なモンは不可能だろ? だって封鎖されてんだからよぅ」

「確かにそうなんだけど、だったらどこから持ち込まれたの?」

グラウンドだろうな、順当に考えて」

オアシスドームも同じく封鎖されていたしな」

「だろ? だからアレはグラウンドの砂しか考えらんねーよ」

 

 

 

 

 

いやあの砂はグラウンドの物ではないし、ましてやオアシスドームの物でもない。

六車くんがそう頑として主張するのは、封鎖解除の前提条件を勘違いしてるからだ。

 

 

モノクマ&モノラクダの証言−論破→コロシアイをしねぇと開かない扉

「六車くん、それは違うよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「六車くんは、コロシアイが起きた=死体が発見されたタイミングで封鎖が解除されたと考えてると思ってるんだけど、それは違うんだ」

「ん?」

「キッチンが封鎖された直後に現れたモノクマとモノラクダが封鎖解除の条件は死体を発見されたタイミングとは一言も言ってないんだ」

 

 

 


 

「何故そんなことをするの? この期に及んで私たちを餓死させるようなことをするなんて」

「出来ればトーホーとしてもそんな結末は望んでないメル。だからこの封鎖を解除することができる条件も用意したメル」

「その条件ってのは...」

 

 

含み笑いを浮かべながら2体は言う。

 

 

 

 

「人が」

 

「死ぬことメル」

 

 

 

 

何も言葉が出てこない。

 


 

 

 

「人が死ねば封鎖が解除される。その後モノクマもモノラクダも死体発見の有無には言及していなかった。だからこれは人が死んだ時点で封鎖は即時に解除される仕組みになってると思うんだ」

「と言ってるがそこでふんぞり返ってる2体はそこんとこどうなんだ?」

「トーホーらは封鎖が解除される条件を漏れなく伝えたメルよ」

「そうだね。それだけは事実だよ。後はオマエラが勝手に解釈しなよ」

「漏れなく、という事はやはり人が死ぬことだけが条件だと言うことね」

「そういや...私が死体を発見する前に水道から水が出たのを確認してるわ。ということはその時点で萬屋は既に殺されていて全ての封鎖は解除されていた、ということになるのよね」

 

 

続けて繭住さんがそう証言した。水道の水については勅使河原さんも裏付けを取ってくれたので、やはり封鎖解除の条件は"人が死ぬ"ということだけのようだ。

 

 

「工場の砂漠に通じる扉が開いたことは確定として、でもそれはなんでなんすかね? どうして扉を開ける必要があったんすかね?」

 

 

わざわざ砂漠へ通じる扉を開ける必要性とは何か。扉を開けたということは、外に出なきゃいけない理由があった。それも正面の扉ではなく、工場にある裏口的な扉から。その理由を考える。あの工場には何があった?

 

 

......。

 

 

 

記憶を頼りに思い出す。すると一つの可能性に気が付いた。

...でも可能なのか、そんなこと。

 

 

いや言わなきゃ何も始まらない。ここは裁判場。議論を交わす場所。たとえ間違っていてもいい。可能性があるならそれを言うべきなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

–––選択–––

 

 

Q.砂漠へ通ずる扉を開けた理由は?

 

 

エグイサルで外に出るため←

砂漠の気候を調査するため

日向ぼっこをするため

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの工場にあったエグイサルの中には一機だけ搭乗できる機体があった。もしかしてだけど、それに乗って外に出るために扉を開けたんじゃないかな...?」

 

 

そう発し、一呼吸を置いてその理由を述べた。

 

 

「萬屋くんの死体を移動させるために......」

 

 

 

当否はわからない。

でもそれならエグイサルに乗って外に出た説明も付く。

 

 

 

「死体を移動?」

「萬屋くんは多分工場付近で殺されたんだ。その後で捜査を撹乱させる為かはわからないけど、萬屋くんの死体を別の場所に移動させたんだ」

 

 

別の場所。それは封鎖時から唯一開いていてもおかしくない場所。それはあの場所のあの箇所しかない。

 

 

 

 

 

 

 

–––証拠提示–––

 

 

開閉可能な天井←

 

 

 

 

 

 

 

 

「天文台の天井。そこは確か天体観測の為に開閉が可能になっていたよね?」

「そうだね。天文台はそういう作りになっていたよー」

「それがどうしたんすか?」

「つまり、予め天文台の天井を開けておいて、その後に萬屋くんを工場付近で殺害。工場内から砂漠に通じる扉からエグイサルに乗って萬屋くんの死体を持って外に出る。そして、エグイサルで学園を包むドームを登って、開いていた天文台の天井から萬屋くんの死体を中に入れた。って僕は思うんだ」

「エグイサルで死体を運搬したということか」

「なんだかスケールの大きな話になってきたね」

 

 

これなら工場内に砂が落ちていた理由も萬屋くんの死体が天文台にあった理由も説明は付く。説明は付くけど。

 

 

「でもよ、エグイサルでそんな事出来んのか? そもそも初見で操縦できるような代物なのかよ」

「それに死体を移動させた理由も不明っす。そんなことして一体何の得があったんすかね?」

 

 

まだまだ解決すべき問題は山積みだ。

 

 

「エグイサルについては私たちよりモノラクダに聞いた方が良いんじゃないかしら。工場長なんでしょ?」

「おいラクダ野郎どうなんだ?」

「むー! 野郎とは酷いメル! まぁでも質問についてはお答えしても良いメル。裁判の行方を左右するモノでもないメルし。えー、ごほん、エグイサルについて簡単におさらいすると高機動人型殺人兵器の一つで」

「エグイサルには操作方法がコックピット内にあって誰でも操作可能だよ。壁を登るなんてお茶の子さいさいだし、ちょっとぐらいなら空を飛ぶことだって出来るんだ」

「モノクマ! トーホーの台詞を先取りするなんて酷いメル!」

「だって長そうだったんだもん。ただでさえ長いのにこんなとこに文字数使ってらんないの!」

 

 

...まぁ、これでエグイサルでの死体運搬は可能だったってことにはなったね。

それで、残る問題は...。

 

 

「エグイサルの件は良いとしてもまだ謎だらけね。萬屋を移動させた理由とかもだし、それに他にも」

 

 

 

一つ一つ、着実に明らかにしていこう。

 

 

 

 

 

 

 

–––ノンストップ議論–––

 

 

「謎はまだまだあるわね」

「例えば何が残ってるんぜよ?」

死体を移動させた理由は未だ判然とはしないな」

エグイサルについての諸問題については一旦クリアで良いとても、わざわざそんな事をする理由がわかんないわね」

「ん〜! 問題だらけっすね〜」

「それに問題なら他にもあるわ」

「他にもっすか?」

「萬屋を天文台で発見した時、天井は閉まっていた。つまり、開閉ボタンを押したってことになるけど、それだとエグイサルで帰れなくなるのよね」

 

 

いやそれは違う。確かその天井は自動的に閉まる仕組みがあったはずだ。

 

 

 

砂嵐接近感知装置−論破→天井は閉まっていた

「それは違うよ、繭住さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの天文台の天井にはある条件になれば自動的に閉まる仕組みがあったんだ。そして、そのある条件は...」

「砂嵐だね!」

「その通り。砂嵐接近感知装置と言って、砂嵐が来れば自動的に天井が閉まる仕組みになっていたんだ」

「あ、思い出した。そうだったね。忘れていたよ」

 

 

砂嵐は日に何度か来る。だから天井を一度開けさえすれば、後は砂嵐が来るのを待つだけで自動的に閉まる。

そう。砂嵐が来るタイミングを見計らって...。

 

ん? という事は犯人は砂嵐が来るタイミングをある程度知っていたという事になるのかな...?

 

なんだろう。この胸騒ぎは。

 

 

「そう言えば私も思い出しましたっす。その天文台の天井が空いている時に砂嵐が接近した場合、機械音声が流れるという話を」

 

 

古畑さんがそう言って、僕の思考は眼前の議題に持っていかれた。

機械音声。確かに最初に天文台を探索に来た時に僕もその音声を聞いた記憶がある。

 

 


 

 

「へぇ」

「これで観測できる!」

「昼間なのに?」

「関係ないよ。この望遠鏡があればね」

「そうなんだ」

「じゃ! 早速!」

 

 

赤星さんが望遠鏡を使おうとした瞬間、機械音声が鳴り響いた。

 

 

《砂嵐ガ接近中。砂嵐ガ接近中。天井ヲ閉ジマス。繰リ返シマス。天井ヲ閉ジマス》

 

「えっ?」

「砂嵐だって?」

 

 

閉じられていく天井。どうやら天体観測はすぐには出来ないらしい。

 

 


 

 

「確かにそうだったね。それがどうしたの?」

「気になったんすけど、赤星さんはずっとプラネタリウムに居たという話だったと思うんすけど、それならその機械音声も聞こえなかったのかなぁと。そうじゃなくてもエグイサルが萬屋くんを運んだ際も音が鳴っても不思議じゃないので...それも聞こえなかったのかなぁと」

「何も聞こえなかったよー? 野々葉の放送はプラネタリウム内のモニターから聞こえたけど、それ以外は何も」

 

 

あの機械音声は確かにそこそこな音量で流れていた。あの場にいれば、まず気が付かないことはない。だけどあのプラネタリウムだけは違った。あの案内にある通りなら赤星さんが気が付かないのも無理もない。

 

 

 

 

–––証拠提示–––

 

 

 

プラネタリウムの遮音性←

 

 

 

「赤星さんが気付かなかったのは当然だよ。だってあのプラネタリウムは完全防音だったんだよ」

「完全防音?」

「案内にそう書いてあったね。アレが嘘じゃないなら外の音が聞こえなかったってのは本当って考えて間違いないと思うけど」

「流石に嘘は書かねーだろうな。つうことは赤星がプラネタリウムに夢中になってる間に犯行は行われていたということになるな」

「うぅ...ぼくの癒し空間をそんな犯行の一部に使うなんて...」

 

 

赤星さんがプラネタリウムにいる間に萬屋くんの死体を天文台に運び込んだ。工場内にあったエグイサルを使って。

 

 

「誰なの...? そんな酷い事をする黒幕の手先...もとい犯人は...!」

 

 

犯人。萬屋くんを殺したクロ。

 

それは一体誰なのか。議論は重ねても指名とまではいかないこの状況、どうにかしないと。何か、手掛かりはないか。

 

僕は縋る思いでモノパッドに保存してある証拠一覧を指でスクロールし、凶器の画像を開く。

絶望ヶ淵学園の校旗。これで萬屋くんは刺突され、殺された。それをやったのが今回のクロ。この悪趣味な校旗で......って...ん?

 

 

「どうしたの? クルト」

「あ...いや.......」

 

 

この校旗を縛ってる紐。よく見ると特徴的な結び方をしている。元々こんな結び方だっけ? しかもこの結び方...前にテレビとか動画とかで見たような気がする。

 

少し、考える。

 

犯人は萬屋くんを殺すためにこの校旗で心臓を刺突し、殺した。じゃあ、この校旗はいつから犯人の手に? ...もしかしたら萬屋くんを殺す直前に校旗を支える紐を千切ったのか? そして、その後に元に戻す為に校旗を紐で結び直した。だとしたら...。

 

 

そこまで思考して、その結び方の名前を思い出した。

思い出してしまった。

 

 

 

嘘だ......。

 

 

 

気付きたくなかった。

思わず息を止めてしまう程の無情な事実に。

 

 

 

僕は再び思考する。あの人が犯人のハズない。

殺しなんて、そんなことするハズない。

殺しなんてするハズ...。

いや、だからこそ、だとしたら...?

 

ある可能性に気が付いた。

そして、仮にそうだとしたら今回の犯人は...まさか...。

 

 

「もしかしたら、今回の犯人は自分が殺人をしたという自覚がないのかもしれない」

「自覚がねぇだと!?」

「え?」

「それは...どういうことぜよ」

「犯人は...もしかしたら煙を吸って"絶望"になった可能性があるかもしれない」

 

 

無自覚。

紫の毒薬から発生した煙を多く吸い込んだ人間は一定時間の記憶が欠落する。そして、その煙は精神に何らかの異常をもたらす。その異常の中に"絶望"になってしまう症状もあったとしたら...。

 

 

「平子さんの言っていた通りだと思う。多分、黒幕の手先と今回のクロは別々の人物。黒幕の手先が紫の毒薬を使用し、それを吸ったクロが"絶望"の精神状態に陥った。そして、萬屋くんを殺した。僕らの希望だった萬屋くんを。...そうなるともう容疑者は一人になる」

 

 

そう言い終わると、僕は続けて発言した。

 

 

「赤星さん、六車くん、繭住さん、勅使河原さんは黒幕の手先の可能性は捨てきれないけど、煙を吸っていないから犯人ではない」

 

 

「......」

 

 

「六車くんは8時から12時まで屋上にいた。工場に行くにはその六車くんのいた屋上を通らなければならない。そして、萬屋くんが殺されたのは12時頃。つまり、8時以降で校舎内や宿舎で目撃情報がある人物は除外できる」

 

 

「......」

 

 

「平子さんは繭住さんが宿舎で接触している。古畑さんと僕も同様に繭住さんと校舎内で接触している。だとすると...犯行を行える人物はもう一人しかいない」

 

 

僕は歯を食いしばりながら喉から必死に声を出し、震える指先でクロを指した。

 

 

 

–––人物指名–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鮫島くん...君にしかこの犯行は出来ない...」

「......そうか」

 

 

 

鮫島くんは目を瞑り、静かにそう言った。

 

 

 

「は?」

「鮫島くんが...犯人?」

 

 

一様に信じられないと言った面持ち。それもそうだ。だって鮫島くんは萬屋くんと一緒に砂漠の出口を探してくれていた。そんな彼が殺人なんて。

 

 

いやそんな彼だからこそ、もし"絶望"となってしまったのなら。

 

 

「萬屋くんは僕らの希望だった。そんな萬屋くんを長く近くで見てきた鮫島くんなら...萬屋くんを殺すことで生まれる絶望の大きさも理解できていた...はずなんだ...」

 

 

息が詰まる。胸が早鐘を打つ。涙目になりながら僕はその残酷な真実を告げた。

 

 

「思えば砂嵐のタイミングを見計らえたのも萬屋千歳と共に砂漠を調査し、砂嵐の発生頻度等を知り得た鮫島海ならその犯行も容易だと言える」

「校旗という凶器も考えればいつも大漁旗を持っていた鮫島くんなら扱うのも造作もない...っすよね...」

 

 

鮫島くんがクロであると確信できてしまう話が次々と出てくる。当の鮫島くんは、腕組みをして何も反論をする様子もない。

 

 

「おい、待てよ」

 

 

そんな様子を見かねてなのか、反論をしてきたのは鮫島くんではなく、六車くんだった。

 

 

「六車くん...」

「お前らマジに言ってんのか? あの鮫島だぞ? そんなハズねーだろ。鮫島も何か言えよ! このままクロ扱いでいいのかよ!」

「......」

「おい!鮫島!」

「......」

「チッ。イライラさせんなよ。...もういい。テメェがやんねーなら俺がやってやる。そこで大人しく見とけ」

 

 

六車くんの気持ちも理解できる。鮫島くんが萬屋くんを殺したなんて、僕も信じられない。

だけど、それでも...!

 

 

 

–––反論ショーダウン–––

〔六車ミゲル〕

 

 

 

「鮫島が犯人で"絶望"だと? そりゃなんて冗談だよ。あんまりじゃねぇかクルト。萬屋と鮫島は俺らのために死ぬ思いで砂漠に出て、脱出のための道を探してくれていた。そんな奴らに向かってよぅ...クルト...俺は信じられねーよ」

 

 

 

 

「僕だってそんなの信じたくなんてないよ。でもクロは状況的に見ても鮫島くん以外にはあり得ない。萬屋くんと鮫島くんが決死の思いで砂漠に赴いてくれたことも知ってる。でもこれは学級裁判。それとこれとは別けて考えなくちゃいけない。じゃないと、残りの僕ら全員が処刑されてしまうんだよ!」

 

 

 

 

「わかってる。わかってるんだよ、そんな事ぐらい。でもどうしても信じらんねーんだよ。絶望化したなんてのも萬屋を殺したってこと以外に根拠もねーだろ?

 

 

 

 

 

 

 

六車くんは良い意味で変わったと思う。最初に会った時の六車くんならこんな反論はして来なかった。自分ではない、友人のための反論なんて。

 

僕らは失い過ぎた。それは六車くんだって同じだ。

だからこそ、六車くんは...。

 

 

でも...それでも僕は...僕らは進まなくちゃいけないんだ。

それが屍の道だろうとも。

 

 

 

 

 

プレスされたエグイサル−論破→根拠もねーだろ?

 

 

 

「根拠ならまだあるよ」

「なんだと?」

「工場にはプレス機があったんだ。とても大きなプレス機がね。そこでエグイサルが壊されていたんだ」

「それがどうしたんだよ」

「あのエグイサルには他のエグイサルと明確に違う点があった」

「搭乗できるか否か、そうね?」

「そう。壊されていたエグイサルは初代エグイサル。他のエグイサルはAI化されて搭乗できない作りになっているんだ」

「何が言いたい?」

 

 

 

初代エグイサルを破壊した理由。それは。

 

 

 

「砂漠越えに使わせないため。それが唯一搭乗可能なエグイサルをプレス機で破壊した理由だと思う」

「砂漠越えに?」

「そのエグイサルがあれば砂漠越えも楽に出来てしまうかもしれない。つまりあのエグイサルも僕らの希望に成り得た。だからこそ壊したんだ。"絶望"だったがゆえに」

 

 

 

"絶望"は希望の芽を摘み取る行動を取る。萬屋くんを殺害したのもエグイサルを破壊したのも、全ては絶望のため。

これなら今回のクロが"絶望"化したという根拠になり得るハズだ。

 

 

「だとしてもよぅ、俺は...俺は...!!」

「六車くん、もう」

「うっせぇえ!! 確かに状況を見れば鮫島以外に殺れる奴がいねーことはわかる。だがな!! まだだ!! まだ俺は信じるぞ!! 鮫島が"絶望"化して人を殺したなんて...俺は...まだ信じねーぞ!!」

 

 

もはや反論とも呼んでいいのかもわからない。

だけど、誰も六車くんの行為自体は否定しようとはしない。それは多分、六車くんが僕らが思っていることを代弁してくれているからだと思う。

 

でもそろそろ終わらせないといけない。

 

こんな苦しくて悲しい裁判、終わらせなきゃいけない。

 

 

僕はトリガーに指を掛けた。

 

 

 

–––理論武装–––

 

 

 

 

「俺は信じねぇぞ!」

 

 

 

 

「鮫島が萬屋を殺したなんて...!」

 

 

 

 

「そんな残酷な事が」

 

 

 

 

「真実だなんて」

 

 

 

 

「俺は信じねぇぞ!!」

 

 

 

 

「萬屋は俺たちの希望だった」

 

 

 

 

「鮫島だって同じだ」

 

 

 

 

「コイツらは俺ら全員の為に命を張った」

 

 

 

 

「そんなコイツらが殺し合ったなんて」

 

 

 

 

「俺は認めねーぞ」

 

 

 

 

「鮫島がクロだと主張すんならよう」

 

 

 

 

「証拠を出してみよろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

証拠と言えるかはわからない。

 

でも、これでこの悲しい話し合いが終わるなら。

 

 

僕はトリガーを引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『漁師結び』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ、そりゃ...」

「この校旗の写真を見てほしいんだけど、紐で括られている箇所があるでしょ? そこの結び方を見て欲しい」

「結び方...?」

 

 

みんながモノパッドに表示されている校旗の写真に視線を落とす。

 

 

「これは...」

「漁師結びね。その中でもこれは完全結びと呼ばれているもの。主にサルカンやルアーに手早く結べるノットとして知られているわ。プロの漁師も使うことからこの呼び方がされているね」

「漁師結び...という事はやっぱり超高校級の漁師の海が...」

「待て! 待てよ! そんなの結び方を知ってただけじゃねぇのか!? 誰かが鮫島に罪を着せようと」

「もう良いぜよ、六車」

「鮫島...」

「こん結び方は間違いなくわしがやったに相違ないぜよ。わしにしかわからん癖が出とる」

 

 

鮫島くんは落ち着いた様子で六車くんを諌めた。

 

 

「六車、すまんかったな」

「何...謝ってんだよ。テメェは自分が殺した自覚ねぇんだろ? だったら」

「いや、わしはもしかしたら自分がやったかもしれんと思っちょったぜよ。気が付いたら工場の前におったからのう。違うと信じたかったが...やはりわしが萬屋を殺したんじゃな」

 

 

そう言った鮫島くんの顔は今まで見たことないぐらい悲しげだった。

 

 

「もしかしたらそうだと思ってたなら、何で凶器を私たちに見つけさせたの? 隠すことだって...」

「そうじゃなぁ。それも出来たかもしれん。じゃがのう、わしはおまんらを殺してまでこっから出たいとは思えんかった。それ以上の理由はないぜよ」

「鮫島...」

「おまんらには済まんことをしたな。すぐにでも自首できれば良かったんじゃが...。わしにもわし自身の事がわからんかった。だから無闇にわしがクロだとは言えんかった。おまんらを道連れにするワケにはいかんかったからのう」

「鮫島...アンタ...」

「鮫島くん...」

「チッ! クソが!!」

 

 

嗚咽混じりの声が裁判場内に満ちる。

 

 

「でも...何で漁師結びなんて...。"絶望"化した鮫島はどうして自分が犯人である証拠を残すような真似を......」

「それも"絶望"が故か」

「勅使河原?」

「敢えて犯人だと疑われる証拠を作ることによって、自らすらも"絶望"しようと画策していたとしたら...?」

「自らすらも...?」

「資料を読む限りでは"絶望"は、他者だけではなく自身すらも絶望の対象。江ノ島盾子も最後は自らの計画が破綻した瞬間、絶望を感じ、悦びを得ていたとされている。今回の"絶望"もそう言ったモノなのかもしれない」

 

 

自分すら絶望するために敢えて証拠を?

 

 

 

「そういえば萬屋くんの死体を移動させたのもただただ謎を複雑化させるためにしたもの。だとしたら"絶望"化した鮫島くんは、はじめから逃れるつもりはなかった?」

「欲していたのは絶望のみ、ということっすか?」

「萬屋くんを殺し、僕らを絶望させ...更に犯人である証拠を残すことで自らすら絶望させる。それが"絶望"...」

「なるほど、だからわしはあの結び方をしたのか。一番わしの癖が出る結び方を」

「鮫島くん...」

「クルトよ、最後に終わらせてくれんか。わしが犯した罪を白日の下に晒してくれ」

「僕...が...」

「頼む。最後の頼みぜよ」

 

 

最後だなんて...そんな...。

 

 

「頼むぜよ」

 

 

そう言った鮫島くんの声色はまるで小さな子を相手にするように柔らかく優しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

–––クライマックス推理–––

 

 

 

 

 

 

ACT.1

事の始まりは、食堂が封鎖されたことに僕らが気付いたことからだった。それをモノクマとモノラクダに問いただすと人が死なないとこの封鎖は解除されないと聞かされ、僕らは絶望した。しかも封鎖は食堂だけには留まらず、砂漠へ通じる扉やオアシスドーム、更には水道まで止められていたんだ。

僕らは、コロシアイの恐怖と同時に餓死の恐怖とも戦わさせられることとなったんだ。

 

 

ACT.2

翌日、午前7時。起床した生徒たちはいつものように食堂へ集まっていた。メンバーは僕、平子さん、古畑さん、萬屋くん、そしてクロの計5人。集合してから間もなく、平子さんが謎の煙の存在に気付いた。急いで窓を開けたけど、もう遅かった。煙を吸った僕らは、精神異常を引き起こしてしまったんだ。

その煙の正体は、モノクマ特製のオリジナルポイズンの一つである紫の毒薬だった。

そして、この毒煙を仕掛け得たのは、予め効能が知れた未だに正体不明の黒幕の手先のみ。

僕らは、黒幕たちに踊らされていたんだ。この煙を吸ったせいで今回のクロは、"絶望"の精神状態に陥ってしまった。

 

 

ACT.3

紫の毒薬を吸った僕らは、それぞれ散開していった。クロはまずは天文台へと向かった。その道中、赤星さんと会ったけど、"絶望"の片鱗は見せなかったようだ。

天文台にてクロは、天体観測用の天井開閉ボタンを押し、天井を開いた。その後に工場へと向かった。そして、入れ違いになるように赤星さんがプラネタリウムに入った。

同時刻、六車くんが萬屋くんと出会い、"砂漠に出たい"という言葉を聞いている。その後に萬屋くんはクロのいる工場へと歩みを進めた。

 

 

ACT.4

萬屋くんがどういった意図を持って工場でクロと会ったのかは判らない。煙に侵されたせいで思いも完全には汲み取る事は難しいかもしれない。それでもここで萬屋くんが殺された事実だけは揺るぎない真実だろう。

クロは萬屋くんを校旗で刺突し、殺害。全ての封鎖が解除され砂漠へ通じる扉を開けたクロは、エグイサルに搭乗し、萬屋くんの死体を持ち、砂漠へと出た。何故そんな事をしたのか、それは死体を移動させるためだったんだ。

 

 

ACT.5

エグイサルに搭乗した最大の理由は、学園を包むドームの最上階の天文台に外から近付くためだった。

予め開けておいた天井から萬屋くんの死体を遺棄した。時間が経つと砂嵐が発生し、天井は砂嵐接近感知装置によって、ひとりでに閉じられることになる。

その後、犯人はエグイサルを工場のプレス機で破壊。それは"絶望"であるが故の行動に他ならない。搭乗型のエグイサルがあれば砂漠越えも楽になってしまうと考えたからだと思う。

そして、最後に犯人は自身がクロである証拠を敢えて残した。校旗を括り付けていた紐を漁師結びにしたんだ。そうする事によって、自身すら絶望できる状況を作ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒幕の手先によって"絶望"化してしまった今回の犯人...それは」

 

 

「鮫島くん......君にしかこの犯行は成し得ない...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クルト、辛い役回りを任せて済まんぜよ」

「.......こんなの...酷い......鮫島くんに萬屋くんを殺させるなんて......」

「起きてしまったもんはしょうがないぜよ。それに贖罪はせんといかん。わしはわしの犯した罪に向き合わんといかんぜよ」

「贖罪だなんて...鮫島くんは何も悪く...」

 

 

そうだ。鮫島くんは強制的に"絶望"にさせられてしまっていただけだ。悪いのはモノクマたちと鮫島くんを"絶望"化させた黒幕の手先だけなんだ。

 

 

 

「お! 区切りがついたメルね! それじゃあ、そろそろ投票タイムに移るメルよ〜!」

 

 

投票タイム...。押さないといけないのか、鮫島くんのボタンを...。指先が震える。こんなことあっちゃいけない。だけど、これを押さない限り僕らは生き残れない。

 

 

......。

 

 

......。

 

 

ああ...。

 

 

 

「投票の結果、クロになるのは誰か!? その答えは正解なのか不正解なのかー!?」

 

 

ルーレットが回り出し、やがて止まった。

正解を示す表示と共に。

 

ここまで胸を抉る思いになったルーレットもなかった。

 

 

「やはり、おまんらの推理が合っちょったか。うむ。ひとまずは良かったのう! これでおまんらは助かったぜよ」

 

 

鮫島くんはこれから処刑されてしまう。

 

 

 

なのに...

 

 

 

どうして...

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして...そんな優しい顔が出来るの...?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙色の声無き声が裁判場に小さく響く。

 

 

 

 

 

 

 

–––学級裁判 閉廷–––

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。