ダンガンロンパExtraWorld 〜砂漠のコロシアイ学園生活〜   作:magone

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第1章 非日常編 捜査

『ピンポンパンポーン!』

 

『死体が発見されました。オマエラ、死体発見現場の砂漠まで急いで集合してください』

 

 

 

 

 

 

 

 

え? 何? この放送は何? シタイって...何? ハッケンゲンバって......何?

 

 

 

 

「なにこれ」

「……死体発見アナウンス?」

「…という事はやはりその人…死んでるのか…?」

 

 

 

死んでる? 何で? 何で? 何で? どうして死んでるの?

 

 

 

「ク、クルト…その死体って、小田切、よね」

「……どうして、こんな事に」

 

数分後、さっきの放送を聞いた小田切くんを除く全員が砂漠に集まった。

 

「何だよッ! さっきの放送は!? ……え? それ…まさか…」

「小田切…くん?」

「小田切様!?」

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア」

「ありえない。こんなの…ありえない」

 

驚愕し、絶叫し、唖然とし、絶望する者たち。

 

「そんな…嘘じゃろ? あの小田切が?」

「死んじゃったんすか...?」

「何でや...何でこないな事に...」

 

信じられない。信じたくない。こんな事あってはいけない。夢か何かだと思いたい。そんな僕の思いを踏み躙るように不愉快な笑い声が砂漠に轟き始めた。

 

「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃー!」

「モ、モノクマッ!」

「やーっとコロシアイが起きてくれたね! ボクはもう待ちくたびれたよ。ここ数日オマエラの青春ライフばっかり見ていたからこっちはもうハンカチ片手に嫉妬の嵐だよ!」

「何しに出て来たんだよ!」

「何ってそりゃもちろん。...オマエラに小田切クンを殺したクロを見つける学級裁判に参加してもらう為だよ」

「が、学級裁判!?」

「ちゃんと説明もしたでしょ? オマエラの中で殺人が起きれば学級裁判を開く。モノパッドの校則にもあるでしょ?」

「あなたは私たちの中にその犯人がいると言ってるの?」

「当たり前じゃん? オマエラの中に確実に潜んでるよ。...小田切クンを殺したクロがね!」

「......お前だろ?」

「はにゃ?」

「お前なんだろ! モノクマ!」

 

僕は怒りで我を忘れ、気付くとモノクマに怒鳴っていた。

 

「お前がッ! 小田切くんを殺したんだろッ!」

「...クルトクンはもう少しシャイなキャラだと思っていたんだけどなー」

「答えろよッ! モノクマ!」

「それは万に一つも億に一つも那由多に一つもございませーん。ボクは紳士的な動物だからね、ヒトなんて理由もなしに殺さないよ。それに校則にもあったでしょ? ボクは殺人に関与する事はないんだよ!」

「そんなのお前が勝手に決めたルールじゃないか! 信用できる訳ないだろッ!」

「まあ信用できるできないなんてボクにとってどうでもいいんだけど、何にしろオマエラにはゼッタイに学級裁判を開いてもらうからな!」

 

するとその様子を見ていた繭住さんが口を挟んだ。

 

「私たちがそんなのに参加するとでも? 何の力もないアンタにどうして私たちが従わなくちゃいけないの!」

「うぷぷ...」

「何笑ってるのよ」

「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃー!」

「だから何笑ってるのよ!」

「そりゃ笑うでしょ。かなり大爆笑でしょ。オマエラは本当にボクがあれだけの戦力しか持ってないとでも思ってたの? うぷぷ。そんな事ある訳ないのにね。ヘーイ! カモーン!」

 

モノクマがそう言うとどこからともなくあの機械のバケモノ"エグイサル"が10数体現れた。

 

「うぎゃあああああああああ!!」

「ぐりゃあああああああああ!? 」

「どうして? あれらは小田切電皇が残らず倒したはず」

「そ、そうや! あのバケモノたちが倒されていくのを俺はこの目で見たぞ」

「うん。倒されたよ? あの場に居たのはね?」

「あの場?」

「言い忘れたけど、このEXISAL Mk−X(エグイサル マークテン)は、"量産型"なんだよね! だから何体倒されても代わりが出てくるだけなんだよ」

「...そんな」

「だから正直言って小田切クンにいくら倒されてもボクは痛くも痒くもなかったんだけど、ボクがやられた方が何か面白くなるかなーって思って今の今まで出てこなかった訳でして、ハイ」

「...もし学級裁判をボイコットしたら?」

「そりゃもちろん、このエグイサル達に粉微塵にされちゃうよね?」

「どうやら従うしかないようね...」

「そ、そんな...」

「ふざけやがって...」

「......」

学級裁判? 小田切くんを殺したクロを見つける? ......。

 

「これからオマエラには捜査をしてもらう。小田切クンを殺したクロに繋がる証拠や証言を集めてもらうんだよ。あ、ここで捜査を怠って学級裁判でクロが勝つような事があれば、その他のシロ全員にはおしおきを受けてもらうからね? ゼッタイだからね!」

「おしおきってやっぱり...」

「そう! 処刑だよ!」

「......ッ!?」

「うぷぷ。ようやく理解したようだね! 自分たちが置かれている状況をさ」

「...まじかよ」

「やるしか、ないようね...」

「やる気になってくれて先生は嬉しいよ〜。それじゃあ頑張って捜査してチョーダイなッ!」

 

 

 

ーーー捜査開始ーーー

 

 

 

「それじゃあボクからささやかなプレゼントを贈るよ〜! ザ・モノクマファイル〜!」

「何それ」

「オマエラはまだ捜査に不慣れだからね。死体に関する最低限の情報を公開してやろうというボクの粋な計らいだよ」

「自分で粋とか言っちゃう系なんだ...」

「それじゃあ後は頑張ってね。僕は裏でスタンバってるからさ、何かあれば呼んでよ。ではではこれにて、バイナラ〜」

 

そう言うとモノクマとエグイサル達は何処かへ消えていった。

 

「捜査って言うてもどないすればええねん...」

「と、とりあえずそのモノクマファイルを見るっすよ!」

「えーと...」

 

みんなそれぞれモノクマファイルの中身を確認している。でも僕はとてもそんな気分になれなかった。

 

「モノクマファイルによるとじゃな。『被害者は"超高校級のヒーロー"小田切電皇。死体発見場所は砂漠。死亡推定時刻は昨日の午前5時50分頃。死因は記述なし。前頭部に打撃痕が見られる』...らしいのう」

「死因は? どうして書いていないの?」

「うぷぷ。それは学級裁判でオマエラが解き明かすべきものだからだよ」

「うわっ! さっきバイナラとか言ってたのに秒で出てきたよ、コイツ」

「必要とあらば参上するスタイルだからね」

 

そう言って再び消えるモノクマ。

 

「えーとこれによると、小田切氏は...砂漠越えをしていたと思われる頃には既に亡くなっていたと言うのですか?」

「そう、なるね」

「何と言う事でしょうか...」

 

昨日? 僕と繭住さんがハサミを探しに外に出た時、既に小田切くんは死んでいたの...? だとしたら僕はどうして...気付けなかったんだ! そんな思いが僕を自己嫌悪の奈落に突き落とした。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーーモノクマファイル1

 

 

僕はどうしていいか分からなくて小田切くんの亡骸の横でただ呆然と立ち尽くしていただけだった。

 

「クルトくん」

「...え」

 

話しかけてきたのは、平子さんだった。でもそれは決して僕を慰めるようなモノではない事は彼女の表情が物語っていた。

 

「どいて」

「...平子さん」

「捜査の邪魔よ」

 

普段の彼女からは想像もできないほどの剣幕。時折難しい顔をする事もあったけど、今回はその比じゃなかった。

 

「小田切くんの死体を調べたいの、どいて」

 

平子さんは僕を押し退け、小田切くんの死体を前にするとポケットから白い手袋を取り出した。それを着けると徐に彼女は小田切くんの死体を調べだした。

 

「ひ、平子さん...」

「何?」

「どうして、そんな簡単に切り替えれるの?小田切くんが死んじゃったんだよ? 僕らを助けようとしてくれたあの小田切くんがっ!」

「それがどうしたの」

「......え?」

 

思い掛けない返答。それはとても冷たく、彼が死んだ事も意に介さない、そんな事を含んだ言葉だった。

 

「クルトくんは私たち全員と心中したいの?」

「...え......そ、そんな事はないよ」

「だったらもう話しかけないで。ここでクロを見つけないとみんな処刑されてしまうのよ」

 

そう言われてしまった僕は引き退る他なかった。学園を覆うドームの壁まで行くと膝から崩れ落ち、壁を背にして座り込んだ。

 

「......」

「......はあ。足立くん!」

「あ、あたし?」

 

平子さんが不意にマオさんを呼び付けた。

 

「検死、お願いできる?」

「け、検死?」

「この中で貴方の検死が一番信用できると思うの。だからお願い」

「...前にも言ったけどあたしは獣医よ? 専門は動物、ヒトなんて診たことないし、まして検死なんて...」

「お願い」

「......わ、わかったわよ。そんな真剣な目で言われたらやるしかないわね...。でもあまり期待しないでね」

「ありがとう、頼むわね」

 

マオさんは渋々小田切くんの検死を請け負った。僕はというとそれをただ呆然と見ているだけだった。

 

「どうすればいいの? これから」

「どうするって捜査するしかねーだろ...」

「...クルトは」

「放っとくしかねーだろ。ああなっちゃもう無理だろ」

「でも...」

「それにクルトだけじゃねえ、他の奴らも大なり小なり参ってやがる。ここは動ける奴が動くしかねーだろ」

「そうだね...」

 

僕はもうダメだ...。立ち上がる気力すらない。このまま殺されたとしても僕はもう...。

 

 

 

 

 

 

 

「...ト」

 

 

 

 

 

小田切くんとの約束...果たせなかった...

 

 

 

 

 

「...ルト」

 

 

 

 

 

助けてもらった恩も...何も返せてない...

 

 

 

 

 

「ルト」

 

 

 

 

 

僕は...僕は...僕は...僕はッ! 何もできはしな−

 

 

 

 

 

「クルト!」

 

え?

 

「まゆ...ずみ...さん?」

「パチンッ!」

「痛っ」

 

気がつくと目の前には繭住さんがいた。その瞬間、両頬に痛みが走る。繭住さんに両手でビンタされたのだ。

 

「アンタ! それでいいの?」

「繭住さん...」

「小田切が殺されて、アンタそこで黙ってるだけなの!?」

「僕は...」

「...始めてここで会ったアンタは昔のアンタとは違ってたよ。でも今のアンタは昔のアンタそのまんまだよ。...気弱で泣き虫......変わったって思ったけどあれは私の気のせいだったの!?」

「ま、繭住さんはどうしてそんなに僕の事を気にかけてくれるの?」

「どうしてって...ここじゃあアンタしか素性を知らないし...それにアンタが一番信用できると思ってるからよ!」

「信用...?」

 

繭住さんは僕を信用してくれている? それなのに僕は何をしているんだ? ここでただ止まっているだけで何もしていない。それでいいのか? 本当にそれでいいのか? ......繭住さんの信用を裏切っていいのか? それは...それだけは...できない。

 

「わかったよ、繭住さん」

「クルト?」

「僕、やってみるよ。どうして小田切くんが死ななきゃいけなかったのか、その真相を暴いてみせるよ!」

「大丈夫なの?」

「うん。繭住さんのおかげで目が覚めたよ。ありがとう!」

 

僕はスッと立ち上がると大きく深呼吸した。心臓を落ち着かせると小田切くんの方を見た。

 

「小田切くん...」

「クルト、一緒に捜査しない?」

「一緒に?」

「私も捜査なんてした事ないし、それにまだクルトの事も心配だしね」

「そっか...心配してくれてありがとう! 繭住さん!」

「お、お礼なんていいから。さあ、さっさと行こう。みんなもそれぞれ捜査しに行ったし」

「うん!」

 

僕は繭住さんと共に捜査することになった。

 

「まずはやっぱり小田切くんの死体だよね...」

「本当に大丈夫なの?」

「うん。平気じゃないけどやるしかないと思うから」

「クルト...」

 

小田切くんの死体は既に検死中のマオさんと捜査中の平子さんがいた。

 

「平子さん...」

「...何の用かしら?」

「僕らに調べさせてほしいんだ。その...小田切くんを...」

「...さっきも言ったわよね? 素人に現場を荒らされたくはないの。わかったら向こうに行ってなさい」

「大丈夫。荒らしなんてしないよ。それに僕らは死体の第一発見者だ。僕らの証言も平子さんの捜査に含まれるんじゃないの」

「...はあ。いいわ。でもまずはそっちの話を聞かせなさい」

「う、うん」

 

平子さんは事件が起きてからというもの当たりがキツくなったように思える。小田切くんが死んだのに少なからず責任を感じているのだろうか。

 

「発見したのは、僕、繭住さん、萬屋くんの3人。あの巨大な扇風機のような装置を調べる為に砂漠に来たんだ。そこで小田切くんの死体を見つけたんだよ」

「...なるほどね。まあ今とりあえずそれだけでいいわ。さあ調べてもいいわよ」

「う、うん...」

 

改めて小田切くんの変わり果てた姿を見る。その姿はかつてエグイサルを倒した時のような覇気はなく、まるで今まで接してきた小田切くんは幻なんじゃないかと思ってしまった。

 

「クルト...」

「大丈夫。...さあ調べよう」

「うん」

 

よく見ると小田切くんは"バックパック"を背負っている。きっと砂漠越えの為の用意がそれには入っているのだろう。

 

「平子さん、このバックパック...」

「中身を知りたいの?」

「うん」

「...いいわ。教えてあげる。バックパックの中身は水の入った1.5ℓペットボルが12本、非常食が3個、タオルが3枚入っていたわ」

「12本もペットボトルが?」

「確かに多いと思うけど、彼ならそれぐらい軽々と持っていけたんじゃない?」

「それもそうだね」

 

ペットボトル...確か一昨日の夜に小田切くんと会った時にウォーターサーバーからペットボトルに水を入れていたっけ。その時のモノだろうか。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーーバックパック

 

 

「他に気になる事はある?」

「そうだね...あっ!」

「...貴方も気付いたようね。小田切くんがいつも身につけているモノがなくなっている事に」

「何よ? それって」

「アレだよ! 両手両足に装着していた強化アーマーが無いんだよ」

「そう。彼は常時そのアーマーと言われるモノを装備していた。だが、死体の周りを調べたけどそう言ったモノはなかった」

「どうして?」

「さあ、それはまだ何とも...」

「そう、だよね」

「...代わりにこんなモノを見つけたわ」

 

平子さんは懐から赤い布を取り出した。

 

「それは...確か...」

「多分、小田切くんがいつも首に巻いていたマフラーよ」

「ああ、あの何故かいつも棚引いているように見える謎のマフラーか」

「...このマフラーは近くの砂に埋もれていた。このマフラーの機能上自然と外れたとは思えない」

「つまり、犯人が外したって?」

「さあそこまでは...もしかしたら自分で外したのかもしれない」

「...うーん」

 

小田切くんはいつもマフラーを着けていた。僕が最後に会ったあの時も。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー小田切のマフラー

 

 

「まだこれだけじゃ何とも言えないね」

「そうね」

「...そう言えばマオさんが検死をしているんだっけ?」

「そうよ。でもまだ何もわかってないの。後でまた聞きにきてくれたら何かしらわかってるかもね」

「...それじゃあマオちゃんには後で話を聞くとして、私たちは他の所を捜査しましょう」

「そうだね」

 

僕と繭住さんはとりあえず小田切くんの死体を後にした。近くを捜査しようと思っていたら目の前に萬屋くんが現れた。

 

「...あっ...」

「萬屋くん...」

「...もう大丈夫なの...?」

「うん。とりあえずね」

「...そう。良かった...」

「萬屋くんも大丈夫? あの時酷く驚いていたようだったけど...」

「...う、うん。僕は大丈夫...」

「そ、そう? なら良いんだけど...」

「それより萬屋は何か気付いた事ない?」

「...気付いた事、そう言えば一つだけ...」

「それは、何?」

「...砂山だよ...」

「砂山?」

「...外扉の両脇にオブジェクトのように盛られた砂山があったんだ。それも対照的に。それが事件後は対照的じゃなくなっていたんだ...」

「確か僕が危うく崩しそうになった砂山の事だよね?」

「...そう...」

「それが事件と関係あるの?」

「...わからない...」

 

確かに事件前と事件後で変化がある事は気になる。とりあえず頭に入れておこう。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー非対称的な砂山

 

 

「それで萬屋くんはここで何しているの?」

「...元々僕はここに"これ"を調べに来たんだ...」

「これってあの巨大な扇風機?」

「扇風機じゃないよッ! あれは学園に搭載されている"クリーン装置"なんだよ!」

「そうなんだ。...って!」

「モ、モノクマ!」

 

あまり自然な流れのせいでつい相槌を打ってしまった。そこにはひょっこり現れたモノクマが両手を上げて怒ってるポーズをとっていた。

 

「...クリーン装置...?」

「この砂漠はよく砂嵐が起こるでしょ? そのせいで砂が邪魔して外扉が開かなくなったら大変でしょ? その砂を除去するための装置だよ」

「だから扇風機型なのね。風圧で砂を払うために」

「はい。その通りでございます! 疑問が解消されたなら僕は消えるよ〜」

「ああ、消えてくれ」

「ショボーン。少しくらい引き止めてくれたっていいのになあ」

 

そう言うとモノクマは消えていった。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーークリーン装置

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー砂嵐

 

 

この辺りはもう調べるものはないな。次は何処に行こうか。

 

「クルト、扉の中に人が集まってるようだよ?」

「扉の中って...内扉と外扉の中にある小さな通路の事だよね?」

「そう。見てみない?」

「そうだね」

 

その小さな通路を覗いてみるとそこには赤星さん、貴志さん、勅使河原さんがいた。

 

「あ、クルトー! もう大丈夫なの?」

「...うん」

「そっかー、でも無理したらダメだからね?」

「うん。赤星さんありがとう」

「で、アンタらはこんな狭い所で何やってるの?」

「捜査よ」

「何かあったの?」

「これ見てよ」

 

貴志さんが指差しているのは、どうやら外扉の内側のようだ。それを確認してみる。

 

「扉は開けたままでいいよ〜。その方が見やすいし〜」

「そう? じゃあそうするね」

「......」

「これだよ」

「...これは?」

「凹み?」

「こんなモノなかったよね?」

「確かになかったかもしれない。気付かなかったよ」

「何だろうね、これ」

「...この鉄の扉が凹むほどの衝撃が与えられたと考えられるね」

「捜査の役に立ったー? ぼくが見つけたんだよー! 褒めてくれてもいいんだよ〜」

「うん。赤星さんのおかげだよ! お手柄だよ」

「...そう正直に言われると照れるよ〜」

 

赤星さんが見つけてくれたこの凹み、何か重要かもしれない。頭に入れておこう。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー外扉の凹み

 

 

「赤星さんはどうするの?」

「もうちょっとこの扉を調べておくよー」

「そっか。頼んだよ赤星さん」

「ラジャーでーす」

「さて、僕らはどうしようか」

「...うーん」

「私は眠くなって来たから一旦宿舎に帰って仮眠してくるわ」

「...こんな時でも眠いんだね、勅使河原さん」

「学級裁判で起きておく為だよ。じゃあまたね」

 

勅使河原さんが内扉を少し開けた。その時だった。

 

「ちょ、待っ−」

「え?」

「ドガーンッ!」

「うぎゃらぁぁぁぁぁあああああ!!」

「な、何!?」

「あ、赤星!」

 

なんと外扉が勢いよく閉まり、その鉄の扉が赤星さんを襲った。気付いたら赤星さんは僕の足下で目を回して倒れていた。

 

「な、何が起きた?」

「赤星さん! 大丈夫?」

「ふひゃら〜、死んだおばあちゃんが見えるよ〜、ふひゃら〜」

「ダメだ。正気じゃない」

「何だよこれは! 誰かが外から扉を蹴飛ばしたんじゃないだろうな!」

「詮索は後だ。とりあえず私がこの子を保健室に連れて行くわ」

「貴志さん...」

「私も付き添おう」

「あなた宿舎で寝るんじゃなかったの?」

「何かあった時の為だ。それに保健室にもベッドはある。そこで寝ればいい」

「...結局寝るのね」

 

貴志さんは赤星さんを背負うと勅使河原さんと一緒に保健室へと向かっていった。

 

「赤星さん、大丈夫かな...」

「あの二人がついてるし、心配はないでしょ」

「約1名寝ようとしてたけどね」

「...それにしても何だったのよ。さっきのは」

「蹴飛ばしたなら外の人が見てるはずだよ。後で聞く事にしよう」

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー砂漠への扉

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー気絶した赤星

 

 

「あ、ねえ! クルト!」

「どうしたの?」

「小田切の持っていたバックパックとか、その中に入っていたタオルとかペットボトルとかってどこから持って来たと思う?」

「えーそれは...やっぱり......倉庫?」

「クルトもそう思う?」

「多分ね? 見てないから何とも言えないけど」

「なら確かめに行こうよ。何かわかるかもしれない」

「そう、だね。そうじゃあ次は倉庫へ行こうか」

 

僕らはグラウンドを抜けて学校の中へと入った。その後、一階にある倉庫へと向かった。

 

「ガラガラ」

「うん? あっ! クルトくんと繭住さんのカップリングっす〜」

「ふ、古畑さん?」

「カップリングって言うな」

 

倉庫に入ると古畑さんがいた。

 

「ここで何してるの?」

「少し気になる事があって確かめに来たんすよ〜。クルトくん達はどこか調べて来たんすか〜?」

「僕らは小田切くんの...死体とクリーン装置と砂漠への続く扉を調べたよ?」

「クリーン装置?」

「あーそっか...古畑さんは知らないんだね。あの大きな扇風機みたいな機械の事だよ。外扉が砂で開かなくなる事を防ぐ為にあの装置で砂を吹き飛ばしてるらしいんだ」

「なるほどっす。実になるほどっす。あっ! 扇風機と言えば萬屋くんの"アレ"凄かったっすよね〜」

「アレ?」

「ほらアレっすよ〜...右手に装着した機械から射出されたロープで立体起動みたいな事をするアレっすよ〜」

「ああ..."射出型のラペリングロープ"の事だね」

「それっす!」

 

確かにアレは凄かった。萬屋くんだからこそ為せる技なのだろう。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー萬屋の射出型ラペリングロープ

 

 

「それで古畑さん、気になる事って何?」

「あ、そうそう! 小田切くんが持っていた品々ってひょっとしてこの倉庫にあったかなって思ってここに来た次第なんすよ」

「古畑さんもそうなんだ。僕らもそうなんだよ」

「なるほどやっぱりそうっすか〜、ならお探しのモノならそこにいっぱい有るっすよ〜」

 

古畑さんが示した棚には、小田切くんが背負っていた同じタイプのバックパック、袋詰めされた新品のタオル、さらに近くの棚には缶詰やレトルト食品などの非常食が置いてあった。

 

「確かにどれもこれも小田切くんが持っていたモノで間違いないようだね」

「...うーん」

「うん? どうしたの? 繭住さん」

「うん...何か足りない気がするのよ」

「足りない?」

「...あっ、もしかして"ペットボトル"?」

「そう! それだよ! 確か12本もあったね」

「実は私もそれが気になってここに来たんすよ。流石に12本は多いのかなって、いくら小田切くんでもね」

「そのペットボトルがここに?」

「はいっす。...って言うかここにしかないんすよ」

「そうなの? キッチンとかにはありそうだけど...」

「私もそう思って桐崎さんに聞いたっすけど、そんな物はなかったらしいっすよ」

「そうなんだ...でもどこにあるんだろう。見た所それらしいモノは見当たらないけど?」

「それなら...ここに有るっすよ」

 

古畑さんは倉庫の奥へ行くとビニールシートが被さった箱の前に立った。

 

「確かここの箱だったはず...」

 

古畑さんがそのビニールシートを剥がすとそこには何も入っていない箱が現れた。

 

「あれ? ここだったはずなんすけど...」

「本当に?」

「嘘言わないっす! 小田切くんが確かにペットボトルがあるって言ってたっす!」

「ちょっと待って! 小田切くん? 自分で見つけた訳じゃないの?」

「自分では見てないっすね...小田切くんが『ペットボトルを見つけた』って言った直後の出来事が印象的で、その前後の事を覚えてたってだけで...」

「出来事?」

「あ、回想した方がいいっすかね?」

「か、回想? ...よくわかんなけど頼むよ」

「はい! じゃあ回想っす〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜古畑野々葉の回想〜

 

一昨日。私と小田切くんと貴志さんと赤星さんは同じチームとして学校の一階を捜索していたんす。そこで通信機器がないか調べようとみんなで倉庫に入ったんすよ。

 

「割と大きな倉庫だな」

「これなら何があるかもしれないっすね!」

「ぼく、あっちの方を探してくるねー!」

「赤星さんあんまり荒らしちゃダメよ」

 

私たちはバラバラに倉庫を捜索し始めたんす。それなりの時間が経過して、諦めかけた時でした。小田切くんが何かを見つけたんす。

 

「...これは?」

「何それ? ビニールシート?」

「箱に被さっているようだ。何か入ってくれればいいのだが...」

「何すか! 何か見つけたんすか〜?」

 

私が駆け寄った時には小田切くんは目の前のビニールシートを取っていたんす。

 

「何かあった?」

「...いや。ただの空の"ペットボトル"だ」

「ペットボトルじゃあ脱出は無理っすね」

 

小田切くんはがっかりしたようにビニールシートをまた箱を掛け直したっす。その直後でした。ガラガラッと大きな物音がしたんす。そして感じたんす。その物音は自分の後ろから鳴っている事に。

 

「ガッシャアアアアアアアアアアアン!」

「お、おい! 貴志! 古畑!」

「あわわわわ! だ、大丈夫! 二人とも!」

「待ってろ! 今助ける!」

 

その物音が終わった後、気付いたら私は倒れてきた棚と仰向けに倒れた貴志さんにサンドイッチにされてたっす。

 

「ガッチャーン!」

「大丈夫か!」

「...あぁ」

 

小田切くんがすぐさま棚を起こしてくれたんで特別ケガらしいケガはなかったっす。それより私は自分の顔面が二つの柔らかい双丘に埋もれていた状況の事しか頭になかったっす。

 

「ふ、古畑?」

「ふぇ? ...お! こ、これ...」

「...え?」

「もうダメっすよ〜貴志さん。こんな所でしかも人前でなんて〜。それに私たちは女の子同士...いや百合物も私はイケますし、私自身そう言うモノに興味がないと言えば嘘になると言うか何というか...」

「...意味わからない事言ってないで、さっさとどいてくれるかしら?」

 

私は渋々仰向けの貴志さんから離れました。

 

「あら〜...」

「だ、大丈夫か? 二人とも」

「大丈夫よ、ケガはないわ」

「わ、私も大丈夫っすよ?」

「...で、どうしてこんな事になったのかしら?」

「さ、さあ〜? ぼくはな、何もしてない、よ?」

「わかった。あなたね、赤星さん」

「ひぃ! ご、ごめんよー! 棚を倒すつもりはなかったんだよ〜! ...体がぶつかっちゃってそのまま倒れて...ごめんなさいぃぃぃぃいいいい!!」

「はあ...もういいわ...」

「許してくれるの?」

「事故なら責められないでしょ」

「私も特に責めるつもりはないっすよ? それより貴志さん、後で二人きりになれるとこでイイコトしない?」

「ふざけないで」

 

〜回想終わり〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「回想以上っす!」

「...そりゃ忘れないね...」

「そのエピソードでアンタの性癖が垣間見えたわ。しばらく近付かないでもらえる?」

「いや私はどちらもイケるだけっすよ〜! 逆に言えばまだクルトくんにもチャンスがあるって事っすよ」

「何のチャンスかな?」

「...もうその話はいいでしょ? つまりそんな事があったから古畑はその直前にあった"ペットボトルの発見"って言うのを覚えていたって事でしょ」

「その通りっす! でも...今この箱を見たら、もぬけの殻になってたっす...」

「どうしてだろう...」

「普通に考えれば小田切が全部持っていっただけだと思うけど?」

「うん...」

 

小田切くんが見つけていたペットボトルは古畑さんが探した時には一本もなかった。普通に考えれば小田切くんが全て持っていった事にだろうけど...何か引っかかる......。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー古畑の証言

 

 

「お二人はこれからどちらに?」

「...うーん特に決めてないけど、クルトはどこか他に気になる所ある?」

「他に...気になる所...」

 

倉庫にもう用はなさそうだし、まだマオさんの検死も終わってないだろうし、他に気になる所と言えば......。

 

「...小田切くんの...個室とか?」

「小田切の? どうして?」

「確か、小田切くんの死体って彼いつも身につけていた"強化アーマー"がなかったんだ。もしかするとそれがこの事件と何か関係があるのかもしれない...」

「で、あるとすれば小田切の個室かもって事ね。いいわ、じゃあ次は宿舎に行きましょ」

「そうだね。古畑さんはどうする?」

「私はもうちょいここを調べるっす。何か見落としていたら困るっすからね」

「わかった。それじゃあまた後でね、古畑さん」

「シーユーアゲインっす! お二人とも」

 

僕らは倉庫を出るとそのまま宿舎へと向かった。宿舎のエントランスに入るとそこには椅子に座っている舞田くんがいた。

 

「あ、舞田くん...」

「うん? なんや、クルトと繭住ちゃんか」

「舞田、くん?」

「舞田はここで何してる? 捜査は?」

「捜査...捜査ねえ」

「何よ、どうしちゃったアンタ」

「どうしたもこうしたもあらへん...小田切が殺されたんやぞ?...俺なら...もしかしたら止められたかもしれへんのに...」

「それどうゆう事? 止められたかもしれないって...」

「舞田くん、それは...」

「......」

「舞田! 黙ってちゃ分かんないよ!」

「ちょっと待ってや! 俺もまだ心の整理ついとらんねん!」

「...舞田くん」

「......」

「......舞田...」

「......」

「......」

「......水」

「え?」

「水を一杯くれ。それ飲んでから話す...」

「はあ...しょうがないねぇ。クルト! そこのウォーターサーバーから水を持ってきて」

「...えーと因みにどうして僕が?」

「何って、近いからに決まってるでしょ」

「ですよね」

 

僕はウォーターサーバーまで歩くと近くに積んである紙コップに水を入れた。...そう言えば小田切くんと最後に話したのもこのウォーターサーバーの前だったな...。

 

「...そう言えば小田切くんはここの水をペットボトルに入れていた...それなのにどうして...」

 

そう独り言を呟きながら考える。あのバックパックの中にあったペットボトルには全て水が満タンに入っていた。なのにどうして...こんなにも水が減っていないのか。...モノクマが水を増やしたのか、そんな事を考えながら僕は水を舞田くんへ渡した。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーーウォーターサーバー

 

 

「はい、水だよ」

「ありがとう」

 

そう言うと舞田くんは渡した水を一息に飲み干した。

 

「はあ」

「どう? 整理はついた?」

「...少しは、な」

「なら話してくれる?」

「...いずれは話さんといかんと思ってた。聞いてくれるか、俺の無能話をよ」

「無能話?」

「あれは小田切が砂漠越えに行く前日の夜、時間は確か0時前だった。俺はその日六車に無理やり引っ張られてサッカーをしたんや」

「...それなら僕も参加したよ」

「アンタらサッカーしてたの? こんな状況なのに呑気ね」

「半ば強引だったけどね」

「俺やかて参加したくて参加した訳やないわい」

 

少し話が脱線したけど、舞田くんはそのまま話を続けた。

 

「んで、その夜の事や。俺は疲れて早めに寝てしまったんや。それでふと目が覚めると無性に水が飲みたくなって一階のウォーターサーバーまで行く事にしたんや。その道中、何や"怒鳴り声"みたいなんが聞こえてきたんよ」

「"怒鳴り声"?」

「そうや。そんでその"怒鳴り声"が聞こえる方に行ってみると、それは小田切の個室やった」

「小田切くんの?」

「ああ。どうやらドアが半開きになっていたらしい。そしてその声はこう言ってたんや。『ふざけるな』『そんな事はさせない』『希望は負けやしない』って...」

「どうして...小田切くんがそんな事を?」

「わからへん。あん時は小田切が1人で俺たちを救う為に自分に鼓舞してたと思ってたんやけど...今から考えるとあれは誰かと"口論"しとったんとちゃうかって」

「...もしかしてその口論相手が......」

「今回犯人かもしれへんって事や」

「......ッ!?」

「やから俺があん時、少しでも気にかけて小田切の様子を見とけばこんな事にはならんかったかもしれんて...そう思って俺は...」

「舞田くん...」

「......」

「はあ、すまんな...少ししんみりさせてもうて...こんなん俺のキャラちゃうな? 俺たちが泣いてばかりじゃ死んだ小田切も浮かばれへんってモンやな」

「そう、だね...」

「よし! じゃあ俺も捜査に行ってくるわ! また後でな! 繭住ちゃん! クルト!」

「うん」

 

舞田くんはそう言うと宿舎を飛び出して言った。...それにしても舞田くんが言ってたこと、本当だとすれば小田切くんは誰とどんな口論をしていたのか。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー舞田の証言

 

 

「じゃあ僕らも小田切くんの個室に行こうか」

「そうね」

 

二階に上がった僕らは小田切くんのドット絵と"オダギリ デンオウ"と書かれたドアの前までやって来た。

 

「小田切のドアの前まで来た訳だけど...」

「鍵が...掛かってるね...」

「どうするの?」

「どうしようか...」

 

部屋の前まで来たはいいけど、鍵の事まで頭になかった。どうしようかと悩んでいるとまたしても唐突に後ろから声が聞こえた。

 

「お困りですかな?」

「グワッ! モ、モノクマ!」

「何の用よ!」

「何だとは何だよ! せっかく鍵を開けてやろうと思って来たのにー!」

「鍵を開ける? そんな事できるの?」

「もっちろん! ボクはこの学園の学園長だよ? この学園において不可能はないんだよッ!」

 

モノクマがそう言った途端、ドアの方からガチャンという音がした。

 

「え?...もしかして......」

「開けてあげたよ!」

「どうしてアンタがそんな事するの? 何が目的なの?」

「ボクはただ捜査の公平性を保っているだけだよ」

「こんな事してアンタに何の得があるのよ!」

「ボクの損得なんて考えなくてもいいよ。そんなのテキトーに何でもこじ付けられるんだからさ」

「......」

「ささ、捜査すらならさっさとしてチョーダイね! 早くしないと学級裁判が始まっちゃうからね」

 

モノクマはそう言うとまた消えていった。

 

「アイツの言うことに従う訳じゃないけど、時間がないなら早く捜査した方がいいわね」

「うん。...じゃあ入るよ」

 

小田切くんの個室に入る。もう主人が帰ってくる事のない部屋に...。

 

「......これが小田切くんの部屋」

「......」

 

僕の部屋と変わらないただの普通の部屋。ただしベッドに置かれたメカメカしいグローブとシューズを除けば...。

 

「これは...小田切くんが装着していた"強化アーマー"かな」

「ああ、アレね」

「両手両足装着型の全部で4つのアーマー。死んでいた小田切くんの手足には何もなかったからこれで間違いないようね」

「それにしてもどうして、あの小田切くんは強化アーマーを身に付けていなかったんだろう?」

「そんなの決まってるじゃない」

「決まってる?」

「忘れたの? この強化アーマーにはGPSが付いてんの。彼が出て行った後、通信機器が見つかって使えるようになった場合、この場所がわかるようにする為にわざと置いて行ったんでしょ」

「確かに...そう言ってたけど、それって全部置いて行かなきゃいけなかったのかな...?」

「さあね。その仕組みをわかってる人はもういないし。わからないね」

 

小田切くんの"強化アーマー"...どうして全て置いて行ったんだろう。何か理由があるのだろうか...。少し気になるな。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー強化アーマー

 

 

「ガチャ」

「ん?」

「あ、桐崎じゃん」

「こちらにいらしたのですね」

 

突然ドアが振り向いたそこには、姿勢を正した桐崎さんがいた。

 

「桐崎もこの部屋を調べに?」

「いえ、わたくしはクルト様と繭住様を探しにこちらに来た次第です」

「私たちを? どうして?」

「はい。わたくしがお持ちしている"情報"を共有しておいた方が良いと考え、皆様に開示して回ってるという訳でございます」

「そうなんだ。よくここにいるとわかったね」

「恥ずかしながら推察致しました。倉庫へ向かわれた事は存じておりましたので、その後に向かうであろう場所を検討し、こちらであると結論付けたのでございます」

「す、すごいね...桐崎さんのように頭の回転が早い人がいれば、学級裁判も楽勝かもしれないね」

「いえいえ、わたくしなどは皆様のサポートしか脳がないだけでございます」

「...それで、桐崎の持ってる"情報"って何?」

「はい。こちらでございます」

 

桐崎さんは胸ポケットからいつも持ち歩いてる手帳を取り出し、あるページを開けて、それをこっちに見せた。

 

「これは...」

「"予定表"ね」

「はい。この手帳には1時間単位で皆様が食堂に来られた事を記録しております。こちらのページは昨日の朝、皆様が食堂に来られた時間が書いてあるのです」

「昨日の朝ってことは...小田切が死んだ日の朝って事!?」

「その通りでございます。読み上げますと午前6時頃にわたくしと古畑様が食堂に到着。午前8時頃にクルト様、六車様、鬼頭様、赤星様、氏家様、貴志様、足立様、舞田様、鮫島様、平子様が食堂に到着。午前10時頃に繭住様、萬屋様、勅使河原様が食堂に到着。以上でございます」

「うん。ありがとう、桐崎さん! こんな詳細な情報があれば犯人のアリバイも崩せるかもしれない」

「ありがとうございます。どうぞ参考にしてください。ではわたくしはこれで」

 

桐崎さんは僕らに情報を言うと踵を返してその場を去った。他の人にもこの情報を教えに行ったのだろうか。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー事件発生時の朝

 

 

「さてそろそろ検死も終わってる頃かもね」

「かもしれないね。行こうか、繭住さん」

 

僕らは小田切くんの個室を出てマオさんが検死をしている砂漠へと戻ってきた。

 

「...戻ってきたね」

「クルト...大丈夫か? 無理せず学園内に戻っても構わないよ?」

「うん...ありがとう繭住さん。でもこれだけは自分で聞かなきゃいけない気がするんだ」

「そう...わかったわ...」

 

再び小田切くんの死体を前にした僕は、言い表せない感情に襲われていた。それは、悲しみなのか、怒りなのか、寂しさなのか、わからない。でも確かなのはこの感情から逃げちゃいけないって事、これだけは不思議とはっきりわかったんだ。

 

「...マオさん」

「あっ、クルトちゃんに藍子ちゃん、ここに来た理由はわかるわよ。検死の結果を聞きに来たんでしょ?」

「うん。そうだよ。何かわかったかな?」

「そうね...一つ確かな事はわかってるわ」

「それは何?」

「...電皇ちゃんは"窒息死"したのよ」

「窒息死?」

「ええ。窒息死に共通する症状が出ているわ。ま、本当に専門的な事なんでこれ以上の事は言えないけど。それに首にもヒモ状の何かで締められた痕跡があったわ」

「それって...」

「索条痕よ」

 

僕とマオさんの話を聞いていたのか、後ろから平子さんが会話に割り込んで来た。

 

「さくじょうこん?」

「索条痕っていうのは、つまりは首を頑丈なヒモ状のモノで締められた際に残る痕跡の事よ」

「それって、まさか...」

「小田切くんは首を絞められて殺されたのよ」

 

小田切くんが首を絞められて殺された? そんな事が出来たか? あの小田切くんを首を締めて殺すなんて事が...?

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー足立の検死結果

 

 

「ちょうどいいわ。あなた達に聞きたい事があったのよ」

「聞きたい事?」

「ええ。一昨日の小田切くんの行動で何か不審な言動は見受けられたかしら?」

「不審な?」

「どう言う事よ」

「小田切くんは確実に誰かに殺されているわ。なら殺されるだけの動機があったはず...」

「動機...?」

「あの時の私たちは彼のおかげでモノクマの提示したコロシアイには参加しなかったわ。そんな中で彼は殺された。だとしたら彼が殺された理由はなんだったのか、それはこの中の誰かに殺意を抱かれたからよ」

「小田切くんに...殺意?」

「ありえない話じゃないでしょ、クルト。舞田が言ってた例の話はここに繋がるんじゃないの?」

「舞田くん? 詳しく聞かせて」

 

僕らは平子さんに舞田くんが聞いた怒鳴り声のことを話した。

 

「口論、ね...」

「犯人が小田切と何かで揉めて言い争った末に殺したとしたら...辻褄は合うわね」

「そうね。可能性はあるわね。...他に何かないかしら?」

「他にと言っても...」

 

僕は今までの小田切くんの言葉を思い出していた。ここに来た時の初めての会話、助けられた後の食堂での会話、二日目の朝の会話、ウォーターサーバーの前でした最後の会話。その全てを思い返す。すると、一つ不可解なモノを思い出した。それは二日目の朝、小田切くんがみんなに聞いた質問だった。

 

「二日目の朝...小田切くんは確か、機械に精通している人を探していたよね?」

「ああ、それなら私も聞いてたけどあれは通信機器を作るとか言う話じゃなかったか?」

「本当にそうなのかな? 何か引っかかるんだけど...」

「まあ怪しいと思うなら頭の隅にでも入れておくのね」

「怪しいって事はないけど...」

 

小田切くんはどうして機械に精通している人を探していたんだろう。繭住さんの言う通り、通信機器を作れる人を探していたのだろうか。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー小田切がした質問

 

 

「そう。最後にあなた達にもう一つ聞きたいのだけど」

「なに?」

「小田切くんが書いたと思われていたあの"置き手紙"、どこにあるか知らない?」

「置き手紙ってクルトが見せてくれたあの?」

「あっ! それなら僕の部屋にあると思う...」

「どうして、クルトくんの部屋にあるの?」

「無意識にズボンのポケットに入れていたようなんだ。捨てるのもなんだったんで机の引き出しに入れたままなんだよ」

「そう。なら今すぐ取ってきてもらえるかしら」

「い、今?」

「そうよ。捜査時間が終わったらどうするの。あれも重要な証拠品なのよ」

「わ、わかった! 今すぐ取ってくるよ!」

 

その時だった。その声はいつも突然聞こえてくるのだ。

 

 

 

 

『さーて! お待ちかねの学級裁判の時間だよ! オマエラ、学園内のグラウンド中央までちゃっちゃとお集まりくださーい! うぷぷ...』

 

 

 

 

え? もう終わり?

 

「早くするのよ! クルトくん! 今ならまだ間に合うかもしれないわ!」

「う、うん! わかったよ!」

「クルト!」

「繭住さん達は先に行ってて! すぐに戻ってくるから!」

 

そう言うと僕は全速力で宿舎に向かった。多分生きてきて一番早く走った瞬間だろう。宿舎に着くと一目散に二階に駆け上がり、自分の個室の前まで行くと、鍵を外して、部屋に入った。そして、置き手紙を入れた机の引き出しを勢いよく開けた。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ、...あった!」

 

僕は安堵して置き手紙を手に取る。改めて見てみると、これは恐らく部屋に備え付けられている紙に黒いボールペンで書かれたものだと言う事がわかった。それだけ確認して僕はその手紙をポケットに入れると、また部屋を出て走り出した。

 

 

[コトダマ ゲット]

ーーー置き手紙

 

 

僕は宿舎を出て、そのままモノクマが指定したグラウンドの中央に走った。そして、何とかみんなが集まっている場所へと辿り着いた。

 

「遅いですぞ! クルークハルト氏!」

「ご、ごめん! ちょっと用があって...」

「手紙は?」

「うん。はあ、はあ、持ってきたよ...」

 

普段運動していない弊害がこんなとこにまで...。

 

「それで、わしらがここに集められた理由は何ぜよ...」

「それが分かれば苦労はしないんだよ、鮫島」

「は、はい。繭住さん、すみませんです」

「海ちゃんはこんな時でも女性には弱いのね」

「仕方ないじゃろ...そう言う体質なんじゃ」

「鮫島の事はどうでもいい。それより私たちをここに集めた張本人はどこにいるのだ」

「いつまで人を待たせんだよ。てかこんなとこで裁判すんのか? 青空裁判てか?」

「この青空も偽物なんやけどな」

「そう言えば赤星さん、大丈夫?」

「あ、ぼくなら大丈夫だよー。頭にちょっとコブが出来て痛いけど、何とか一命は取り留めたよ!」

「そこまで峠じゃなかったでしょ...」

「...う、うーん...あんまり寝れなかったわ。学級裁判中に寝たらごめんなさい......」

「赤星さんの横でぐっすりと寝ていたじゃない...」

「貴志さんも大変だったんだね...」

「......」

「て言うか本当にいつまで待たせるつもりっすかね。そろそろ来てもいいと思うんすけど...」

 

みんなが口々に話していると、やはり突然あの声が聞こえてきた。

 

「やっほ〜! オマエラ、やっと集まったようだね! モノクマライダー参上だよッ!」

 

僕は"その"モノクマの登場にいつも以上に驚愕した。なぜならそこに現れたモノクマの頭には小田切くんがジークとして活動していた時のフルフェイスヘルメットを被っていたのだ。

 

「何の...真似だよ...」

「何って、小田切クンは死んじゃったし、もう彼には必要のないモノだからさ、ボクが再利用してあげたんだよ〜!」

「ふざけるなッ! それはお前みたいなモノが被っていいものじゃない! これ以上小田切くんを冒涜するのはやめてくれ」

「全くテンション下がるな...モノクマライダーなんでもう見られないのに...」

「何も乗ってないのに、ライダーってどう言う事や」

「舞田くん、冷静にツッコんでる場合じゃないわ」

「ならもういいや! 飽きちゃったし! こんなのなんてポーイしちゃおう!ポーイ! そして! ヘーイ、カモーン!」

 

 

 

モノクマは被っていたジークのヘルメットを放り投げると、そこにエグイサルが現れてそのヘルメットを粉々に粉砕した。

 

 

 

「......え?」

「何てヒドイ事するの、あなたは」

「胸糞悪いわ」

「これはさすがに...直視しかねます」

「...どうして」

「クルト?」

「どうしてッ! そんな事が出来るんだよッ! そのヘルメットは小田切くんがヒーローである証だったんだぞ! 小田切くんが残した形見だったんだぞ! それを壊すなんてお前はどうしてッ!」

「うぷぷ。ヒーローね。本当にヒーローなら何でオマエラは今ここにいるのかな?」

「それは...」

「オマエラがここにいるって事はそれは彼がヒーロー失格だったからじゃないかな? そんな似非ヒーローが付けていたヘルメットなんてゴミクズ同然じゃな〜い?」

「違うッ! そんな事ないッ! 小田切くんは−」

「やめなさい!」

 

怒り狂う僕を一喝したのは、平子さんだった。

 

「クルトくん落ち着いて...ここでそれ以上の事をすれば奴の思うツボよ。ここは一旦冷静になって」

「ひ、平子さん」

「あなたもよ、モノクマ。こんなくだらない事してないで、さっさと学級裁判を開きましょう」

「久々の登場だったから、インパクトは少しでもあった方がいいかなって思ってやったんだけど、まあいいや、ボクにはまだ楽しみが残ってるし」

「さあ早くしなさい」

「わかったよ。そう急かしなさんな。...出でよ! 巨大エレベーター!」

 

モノクマがそう言った途端、何やら地響きのような揺れがして、グラウンドが少しづつ盛り上がって来た。それは徐々に姿を現し、気付くとそこにはモノクマの言った通り巨大なエレベーターのような箱が目の前にあった。

 

「これが...エレベーター?」

「エレベーターとしたらこれからどこに連れて行くつもりっすか!?」

「うぷぷ。オマエラが今から行くのは"地下裁判場"だよ!」

「やっぱり地下なのね」

「乗るしかねえのか...」

 

みんな渋々エレベーターに乗っていく。僕も何とか冷静になってエレベーターに乗り込んだ。エレベーターは全員が乗ったのを確認したように勝手に動き出した。機械音を上げながら地下に下がっていくエレベーターの内部は誰も話そうとはしなかった。みんなおそらく不安なんだ。もしかしたらみんな処刑されるかもしれない。そんな不安が頭を過る。周りを見るとみんなの顔は疑心暗鬼を絵に描いたような事になっていた。恐らくモノクマはこれを求めていたんだろう。仲間同士で疑い合うこの状況こそモノクマが求めたモノなのだろう。...だとしたら僕はどうすればいい? この中に小田切くんを殺した犯人がいるという事は...本当なのか? だとすれば僕は...。そんな事を考えているとエレベーターが止まり、扉が開いた。そこには、見慣れぬ裁判場があった。

 

「ここが...裁判場?」

「私の知ってる裁判場とは随分違うようだが?」

「そりゃあそうだよ? これはコロシアイで起きた殺人のクロを見つける特別な場所だからね。シャバのヌルい裁判場と一緒にされたら困るよ」

「本当にこんな所で、小生たち自身で小田切氏を殺したクロ氏を見つけるのですか...」

「こんな事して楽しいの? 私たちが苦しんでるのを見るがそんなに楽しいの?」

「そりゃあ楽しいよ! 楽しいに決まってんじゃん! 人間の生き死にが掛かったゲームほど楽しいものはないよ!」

「相当なクソヤローだな、お前は」

「何とでも言えばいいよ! ボクはそんな言葉じゃへこたれないよ!」

「何で被害者ヅラしてるのか、甚だ疑問だわ」

「はいはい。クソめんどくさい前置きはこの辺で終わりッ! ちゃっちゃと自分の名前が書いてある席に着きやがってください」

 

モノクマに言われるがまま、僕らは自分の名前が書かれた席に着いていく。その最中、僕は思う。死んでいった彼のことを...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"超高校級のヒーロー"小田切電皇くん。

 

 

またの名をジークという彼は僕らをエグイサルから助けて、さらに一人で砂漠越えをするという決意をした本物のヒーローだった。

 

 

そんな彼が殺された...。

 

 

僕らを救おうと戦った彼を殺した犯人が...僕たちの中に潜んでる?

 

 

いやそれはまだわからない。小田切くんが殺されたなんて僕は未だに信じられない。

 

 

だからこそ知らなきゃいけない。彼が死ななきゃいけなかった理由を...。

 

 

そして生き残らなくてはいけない。きっと小田切くんだってそれを望んでいるはずだから...。

 

 

 

 

 

 

必ず真相を見つけてやる。

 

 

 

 

 

 

 

真実と嘘が交差し

 

 

 

 

 

 

 

希望と絶望が入り混じる

 

 

 

 

 

 

 

この命がけの学級裁判でッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第1章捜査パート終了です。

次回の論破の色文字悩み中。

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