A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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 唐突ですが番外編として、ゆゆゆい時空に挑戦してみました。

 大元は今やっているイベントのストーリーです。これ、クウガいたら盛り上がるんじゃ?という可能性を感じ、やってしまいました。

 そのストーリーをまだみていないという方は、こんな小説読んでないで、ゆゆゆいをやりましょう。

 今ならSSR率が高いお得な『大輪祭ガチャ』やってます!お得ですよ!(ステマ?)



 この番外編はのわゆ編制作中に描いた閑話です。それ以降の章の設定は無いものとした場合のストーリーとして、ご了承ください。



番外編
番外A話 命名(花結いのきらめき)


 神樹の内部で起きた神による反乱。それを収めるために時代も場所も超えてあらゆる世界の勇者たちが集められた。

 

 彼らは時に同じ勇者ともぶつかり、時に神樹内の世界の住民たちのために奉仕に励み、日々忙しなく過ごしていた。

 

 そんなある日──

 

 

 

 

「……一通り出揃ったけど、ウチの中二病患者は全員3年生だったね〜」

 

 その日の議題は『必殺技の名前』 一部の面々がセンスを光らせて割と好き勝手なネーミングを生み出すのを、陸人は笑って眺めていた。

 

「ところでもう1人の3年生は、その辺どうなの〜? 話に入ってこなかったけど〜」

 

『乃木園子』……若葉の遠い子孫である少女(そうは見えないが)が、唯一の男子生徒に話を振る。

 

「そうねぇ、クウガは特に決め技は強力だし、色も変わるし……名前つけたりとかしなかったの?」

 

 ネーミング論争で最も熱くなっていた、この集団『勇者部』の実質的リーダーである『犬吠埼風』が、同類を見つけたような顔で話に乗る。

 

 

 

「そういえば、考えたことなかったな……みんな『赤のクウガ』とか『青の力』とか呼んでたかな」

 

「もったいないわね〜。オンリーワンの力なんだから、もっと誇らなきゃ!」

 

「……名前をつけることが、誇ることにつながるのかしら……?」

 

「でも、確かにクウガはカッコいいよね! 名前つけたらもっと映えるんじゃないかな?」

 

 西暦からの仲間の声もあり、クウガのネーミング会議が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……対象がいくつかあるから、まずはテイストを決めましょうか」

 

「テイスト?」

 

「さっきの私たちみたいに和風に漢字を並べるか、洋風に横文字にするか……どっちがいい?」

 

「私は断然和風を推すわ。やっぱり日本人だもの」

 

「……う〜ん、でもせっかく名付けるなら『赤』とかから離れた新鮮なものがいいよね。となると、横文字かな……」

 

 大和撫子日本代表、というような雰囲気を醸し出す和風美少女、『東郷美森』は陸人の消極的却下に肩を落とす。

 ちなみに彼女、『空我(クウガ)』の漢字表記が大和趣向的にどストライクだったらしく、教えた時は乙女としてどうかというような多幸感溢れる反応をしてくれた。

 

「残念だわ。陸人さんもクウガも、護国思想を体現した大和男児の見本のような存在なのに……」

 

「えっと、あ、ありがとう……?」

 

「無視していいわよ、合わせると調子に乗るから。この国防芸人」

 

「ひどいわ夏凜ちゃん……」

 

 完成型勇者を自称する強気な少女『三好夏凜』が、東郷の国防魂に水をぶっかける。

 

「じゃあ、横文字で考えるとして……レッドフォーム?」

 

 高嶋友奈に酷似した少女、『結城友奈』が首をひねりながら挙げる。あまり英語に強くないらしい。

 

「日常的に使う言葉は別としても、あまり授業で英語は学びませんからね」

 

 小動物を思わせる雰囲気を持つ風の妹『犬吠埼樹』が小さく呟く。

 

 四国の外に人類の生存圏が無くなった神世紀において、英語の重要度はかなり低く、学校教育のカリキュラムにもほとんど組み込まれていないのだ。

 

「……というわけでここは、西暦の先輩方に頑張ってもらお〜」

 

 園子の言葉に微妙な表情で顔を見合わせる西暦組。途中で通常の義務教育から外れた、形式上は小学校中退の勇者たちの英語知識が試されることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりイメージから連想する言葉がいいよね」

 

「……となると赤は……格闘、バランス型、オールマイティ……おお! これよくない? オールマイティ!」

 

 北海道で戦っていた眼鏡の少女『秋原雪花』が自分の発想に驚きながら挙げる。

 

「じゃあ、縮めてマイティ……赤は、『マイティフォーム』にしようか」

 

 続けてマイティの必殺技……飛び蹴りの名前は……

 

「シンプルにマイティキック、がいいよ! 勇者パンチ! 勇者キック! マイティキック! って感じで合わせやすいし」

 

 友奈の案で『マイティキック』に決まった。

 

 

 

 次に青の力……

 

「……青のクウガが戦っているところを見ると、昔どこかで聞いた伝説が浮かんでくる。高く舞い上がり敵を撃つ姿が、昇り竜を思わせるんだ」

 

「昇り竜……いいじゃない! なんかカッコ良さげよ!」

 

 沖縄から召喚された褐色肌の少女『古波蔵棗』が風の言葉に満足げに小さく頷く。

 

「竜か……じゃあ、青は『ドラゴンフォーム』で。武器は、分かりやすさ重視で『ドラゴンロッド』として……必殺技、どうするかな?」

 

 頭を悩ませる勇者たち。棒による一突き。少し変換に困る技だ。

 

「確か、青のクウガの神託は、流水、という単語が入っていましたね。流水、水、ウォーター、アクア、スプラッシュ……うん、スプラッシュなんていかがでしょう?」

 

 ひなたが巫女ならではの視点で少し捻った単語を出す。彼女の聡明さが光る。

 

「じゃあ、ドラゴンスプラッシュ? いや、逆の方が響きがいいかな……うん、『スプラッシュドラゴン』で」

 

 

 

 

 ここまで意外と順調に進んできたネーミング会議だったが、緑の番になり失速した。しっくりくる表現が出てこないのだ。

 

 

 渋い顔で頭を悩ませる一同の耳に、遠慮がちな杏の声が届く。

 

「……あ、あの、私個人の印象なんですけど、緑のクウガはよくゴウラムに乗っていて、射手座の人馬が空を飛んでいるようなイメージなんです。だから、その……」

 

 そこまで言って恥ずかしくなったのか、杏の声がしぼむ。

 偶然杏に借りた小説の内容から、彼女の意思を正しく汲み取った陸人が話を続ける。

 

「ああ、なるほど。翼の生えた馬……ペガサスだね。じゃあ緑は『ペガサスフォーム』だ」

 

 自分の意思を何も言わずに読み取ってくれた陸人と目が合い、顔が赤く染まる杏。基本的に彼は聡い男なのだ。

 

 武器名も『ペガサスボウガン』に決まり、必殺技の段……再び詰まりに詰まる。

 

 

「もうシンプルに『ブラストペガサス』とかでいいんじゃないか? ペガサスがすでにかなり捻ってあるし、必殺技の方は力強い語感があれば、シンプルなくらいが……」

 

 会議に疲弊してきた若葉の案に誰も否定意見を出さず、緑のクウガは名付け終わった。この停滞感をぶった切ってくれた若葉に、みんなが感謝していたのだ。

 

 

 

 

 紫のクウガ……タフでパワフルという、分かりやすい強さが印象的な姿だ。

 

「前に、紫のクウガに庇ってもらったことがあって。その時の背中が、すごく大きく感じて……とてもでっかい人が守ってくれたんだな、って……」

 

 恥ずかしそうにしながら思い出を語る水都。

 それを聞いた全員が冷やかすような視線を陸人に向ける。

 

「そ、そっか。まあ、錯覚というか、過大評価というか……とにかく大きいイメージなんだね? ビッグ? ヒュージ? ……うーん……」

 

 気まずげな顔で話題転換を強行する陸人。無理やり話を進めて1人唸る。

 

「ん〜……巨人、なんてどうかな〜? ゴーくん」

 

 杏や水都、陸人の反応を見て何かを高速でメモしていた園子。同じ『紫』の勇者がその手を止めてアシストを出す。

 

「おお、巨人。じゃあ、タイタン……? よし、『タイタンフォーム』で決まり」

 

 その流れで武器は『タイタンソード』と名付け、いざ必殺技……というタイミングで、これまで沈黙を貫いていた千景が発言する。

 

「『カラミティ』……なんてどうかしら? 『災厄』という意味なんだけど……」

 

「さ、災厄……? 物騒な単語が出て来たね、千景ちゃん」

 

「……クウガに負のイメージがあるわけじゃないわよ……? ただ、藤森さんと同じ……私も紫のクウガには巨人のような絶対的な力強さを感じるから、広大で強大な力を連想できそうな言葉を考えてみたの……」

 

「……なるほど、悪くないわね!」

 

「さすが千景ちゃん……うん、分かった。じゃあ『カラミティタイタン』だね」

 

 納得の表情で頷く陸人にホッと安堵する千景。印象に残るようなネーミングを考え、最後という絶好のタイミングで出せたことに満足していた。

 未だにコミュニケーションに余計な考えを差し込んでしまう彼女は、こんな雑談の場でも、陸人によりよく思われたいと狙っていたのだ。

 

「じゃあ最後に黒の力ね! これは私にいい案があるの!」

 

「……えっ……」

 

 そしてその狙いを、白鳥歌野(天然娘)がぶち壊す。この場合悪いのは、特別枠的な扱いである黒の存在を忘却していた千景か。特に何も考えず大トリを持っていった歌野か。

 

「あの黒を見た時、心の底からビックリしたのよ! ビックリするくらい強いし、ビックリするくらい私も強くなってるし! だからこの驚きを表現して『アメイジング』! どうかしら?」

 

「なるほど……じゃあ『アメイジングマイティ』とか、そういう形になるかな?」

 

「なら必殺技は『アメイジングマイティキック』? ちょっと長くなっちゃったけど、うん、カッコいいよ!」

 

 

 こうして一通り命名を終えた一同。彼女たちがここまで熱心に考えたのは、陸人が意外にもこの話に乗り気だったからだ。彼にとってクウガの力は色々な意味で特別なもの。名前をつけることでその愛着を形にしているのだろう。

 

 それに気づいた勇者たちも、できる限りで協力した。特に四国組は何度も救ってくれたクウガへの思い入れは強い。最終的には全員が熱を上げ、それなりに納得の行く結論にたどり着き、満足していた。

 

 

 

 

 何も思いつかず、発言できずに唸り続けた、球子を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん……」

 

「球子ちゃん、もしかして気にしてる? さっきの命名会議」

 

「そりゃあ、な……タマだってクウガに何度も助けられたし、カッコいいな、って思うから……いい名前つけてやりたかったんだけど」

 

 寮への帰り道、球子はまだ唸っていた。

 陸人は苦笑しながら球子の頭に手を乗せて宥めるように言う。

 

「まあまあ、そんな気にすることじゃないよ。球子ちゃんの苦手分野だったってだけさ」

 

「何だよお、陸人もタマは物を考えられないバカだって言うのか? 確かにそうだけどさぁ……」

 

 球子が自虐的な言葉を吐くのは珍しい。本気で気にしているらしい。

 

「そうじゃなくて……」

 

 陸人は球子の前に回り、目線を合わせる。

 

「球子ちゃんはいちいち考えなくても直感で正しい道を選べるから。選んだ先で一生懸命頑張れる子だから。ちょっとモノを考えるのが苦手なだけだよ。それは球子ちゃんの長所だと、俺は思うけどな」

 

 その言葉に顔を赤くする球子。

 純度100%の褒め言葉は、時に心を刺す凶器になりうる。

 

「それでも気になるなら、そうだな……みんなが考えてくれた名前は大事にしたいし……そうだ、白いクウガの名前を考えてみよう、2人で」

 

 白いクウガのことは球子と杏以外はほとんど記憶していないだろう。西暦世界でも数えるほどしか発現せず、それも衰弱した状態で一瞬顕れたりするだけだ。こちらの世界で出会った面々は存在すら知らない。

 

 

 楽しげに言い合う陸人と球子。やがて球子にいい案が浮かんだようだ。

 

「コレなんてどうだ⁉︎ グロッキーフォーム!」

 

「それは流石になくない? 球子ちゃん」

 

 始まる前から負けていそうな名前を食い気味に却下する陸人。

 

 

 最終的には合流した杏との協議により、なるべく球子のアイデアを残した形として『グローイングフォーム』に落ち着いた。

 

 

 

 

 

 

 




 というわけでゆゆゆい時空だというのに西暦組ばかりでごめんなさい……

 正直これ以上手を広げると、同じような扱いにまとめちゃうキャラが出てくるんですよね。私の描写力不足ですが。

 この作品のキャラはそれぞれ個性的な魅力溢れる子ばかりなので、拙い表現で一緒くたにするくらいなら手を出さないほうがいいな、という判断です。

 特にわすゆ組ごめんなさい……この番外編を続ける予定は今のところありませんが、機会があったらちゃんと描きたいと思います。

 因みにこの命名は本編時空で陸人くんたちが使うことはありません。
 だからこそこういう回を書いたので……

 話は変わりますが、先日初めて誤字報告をいただき気づきました。
水都→水戸ってずっと書いてました……黄門様かよ……

 報告も利用させてもらいつつ、全て直したつもりですが、また何かあるかもしれません。「しょうがねえなこいつ、教えてやるか」という慈悲深い読者様がおられましたら有難いです。

 感想、評価等よろしくお願いします

 次回もお楽しみに


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