A New Hero. A Next Legend 作:二人で一人の探偵
お久しぶりです。就活が少しだけ落ち着いたのでとりあえず1話投稿します。
前置きしすぎたせいで整合性の取り方に悩まされているくめゆ編、始まります。
Guardian
乾いた銃声が鳴り響く。暗く密閉された一室は連続する銃声と薬莢が落ちる音だけが続き、硝煙の匂いに満ちていた。
奇抜なヘルメットを被り、身体にいくつかの機械部品を装備した奇妙な出で立ちの少年。まだ義務教育も終えていない年頃にも関わらず、手慣れた調子で弾丸を装填して再び射撃。今度はセミオートでの連射を試してみる。
「終了よ。国土くん……命中率96.6%。上々ね」
「そうですか……今日は終わりでしたね?」
「ええ。記録はこちらで纏めておくから、今日はもう上がって――」
上司の言葉を遮るように、少年が手にした端末からけたたましい警報音が響く。仕事の合図だ。
「――と言いたいところだけど、残業発生ね。『G3』出撃よ」
「了解、準備します」
間違いなく緊急事態なのだが、少年の顔に動揺は見られない。やるべきことをやる。その意志を固めた今の彼には、この程度は日常の一部に過ぎないのかもしれない。
「へ〜、あややにはお兄さんがいるんだね」
「はい! お役目の関係でしばらく会えていませんが、自慢のお兄様です」
大社管轄の施設、通称ゴールドタワー。勇者候補として集められ、その後運命の数に選ばれなかった少女達が過ごす場所だ。
ここにいるのは勇者の選定に漏れ、その後少しの時を経て再び召集された者達。その適性を有効利用するために充てがわれた予備役のような立場……『防人』と呼ばれる少女達だ。
勇者と比べてはるかに劣る『
大社における彼女達の今の立ち位置はそんなものだ。
その防人部隊の中でも中心的と言える5人の少女達が食堂で話に花を咲かせている。話題はそれぞれの家族について。
「亜耶ちゃんのお兄さんか……確かに亜耶ちゃんは妹って感じがするわね」
32人の防人を束ねる隊長である
「分かる分かる。あややからは守ってあげたいオーラ? みたいなのが出てるよねー……いやでも私もめっちゃ出してるからね守ってオーラ! メブ、感じてくれてる⁉︎」
亜耶や芽吹を愛称で呼ぶ少女は
「隙あらば擦り寄ろうとするのはいい加減お辞めなさいな雀さん。同じ防人として情けなくて仕方ありませんわ」
カツオの叩きを食しながら優雅に髪をかきあげたのが
「……加賀城のアレはもう不治の病、言うだけ無駄……それより、国土の兄ってどんな人……?」
ラーメンの器を置き、静かな口調で毒を吐いたのは
「お兄様はそれはもう素晴らしい人です。いつも思慮深くて冷静で。だけど決して冷たいわけではなくて、私にもすごく優しくて色々なことを教えて下さるんです! 些細なことでも気づいて指摘してくれて、私がお掃除に慣れたのもお兄様のおかげです」
熱量高く語るのは
(……言葉だけ聞くと完璧超人みたいだけど……)
(あややのことだからな〜。また無自覚に過剰評価してるかも)
(亜耶ちゃんの言葉。それを踏まえて改訂すると……)
(頭でっかちで神経質な小姑タイプ……会ったこともない相手に失礼ですが……)
((((……めんどくさそう……))))
防人としてチームを組んでしばらく経つが、初めて4人の意見が一致した瞬間だった。
「皆さん? どうかしましたか?」
「あーいや、なんでもないよなんでも――っとぉ⁉︎ 召集だ! お呼び出しかかったよメブ、みんなも!」
「そ、そのようですわね。食事も済みましたし、参りましょうか!」
敬愛する兄君に対して失礼な想像をしてしまったことを言うわけにもいかず、タイミング良く届いた召集連絡を利用して、その場を乗り切った防人達。
一時間後、彼女達は身を以て実感する。
『噂をすれば影がさす』という言葉が真理であることを。
「壁の内側に用事なんて珍しいね、メブ」
「確かにね。生身ではできない壁外の調査をやらされることが多かったけど……」
「"今回は見るだけ"とも仰っていましたわね。街外れに向かっているようですが……」
「……新しい装備……新しい敵、かも……?」
防人担当官から告げられた本日の任務。ある場所に行き、あるものを見る、という曖昧すぎる指示を受けて車で移動中。端末は念のために持っていけと言われたものの、いつものように装着はしていない。今回の任務はこれまでとは毛色が違うものらしい。
そうこうしているうちに、車が停まる。特に何もない山道。草木生い茂るこの場所で、いったい何が見られるというのか。
「各員、耳をすませてください。戦闘音が聴こえますね?」
担当官の言葉に、全員が聴覚に意識を向ける。すると確かに、奥から銃声やぶつかり合う音が聴こえてきた。樹海でも壁外でもないこの地で、誰かが戦っているのか。
「視認できる場所まで移動を――する必要はなかったようですね」
担当官が指示の途中で頭上を見上げる。呻き声を上げながら、人外の異形が一同を飛び越えるように吹き飛んでいった。
「ぅええええっ⁉︎ なになになに、なんなの今の⁉︎」
「アレはアンノウン。貴方達が防人として活動するよりも以前から、散発的に人類を襲っているもう1つの脅威です。そして……」
吹き飛んだ異形を追うように飛んできたもう1つの影。青と銀を基調とした機械的なフォルムの戦士は、同様に防人達を飛び越えて、彼女達とアンノウンの間に着地した。
「……戦闘エリアに複数の民間人を確認。どういうことですか?」
『あー、その子達は大丈夫よ。ほら、大社の人間がいるでしょう? 例の"防人"の子達だから』
「なるほど。では、アンノウンの撃破を優先します」
小声で通信していた戦士は、連絡を終えると背後の防人達に振り返る。見渡した複数の少女の中に、彼にとって懐かしい顔を見つけた。その一瞬だけ動揺したが、すぐに取り繕って一言だけ告げる。
「話は聞いている。怪我をしたくなければ――」
『GM-01 active』
戦士がベルトの側部に触れると、機械音声が流れる。よく見ると防人達のものと同様の端末が据え付けられていた。
次の瞬間、戦士の手元には光と共に現れた拳銃が握られ――
「――そこを動くな」
戦士はすかさず銃を真後ろに向けて発砲。背後から強襲しようとしていたアンノウンの頭部に直撃。再び昏倒させた。
(今、敵を見てすらいなかった……!)
(音と気配だけで、正確に眉間を撃ち抜いたんですの⁉︎)
尚も起き上がろうとするアンノウンの頭部を連射し、動きを封じながら接近していく。足音ひとつ取っても機械的で、異物感が強い印象を与えてくる。
「今の声って……あの方は?」
亜耶が震える声で問いかける。戦士の声は若い少年のものだった。それも、亜耶には聴き覚えがあった。
「防人とは別のアプローチで勇者以外の戦力を確立する。そのプロジェクトの成果です。『G3』と呼ばれるパワードスーツ。資格の有無を問わずに誰もが扱える新たな形の戦士です」
『GENERATION 3』
神樹の恵みとそれに連なる技術に特化し、また神聖視もしている大社では異端とも言える存在。
勇者服とも、自分達が使う戦布ともまるで雰囲気が異なるG3の存在感に圧倒される一同。接近戦に移行した両者のぶつかり合いは、これまでの厳しい任務や訓練が遊びだったのかと思うほどに苛烈だった。
(動きが遅い。力も大したことはない……戦闘力が高い個体ではなかったか)
様々な武術を取り入れたオリジナルの格闘術で敵を圧倒するG3。敵の動きはどんどん鈍くなる。これまで倒してきた相手の中でも、比較的御し易いタイプだと結論づけた彼はさらにペースを上げる。格付けが済んだ敵に用はないのだ。
再び専用拳銃『GM-01 スコーピオン』を呼び出して至近距離で連射。アンノウンを追い詰めていく。
(調整にもならないな。終わらせよう)
『GG-02 active』
続けて駄目押しの一手、『GG-02 サラマンダー』を呼び出す。スコーピオンと連結して使うグレネードランチャー。G3の装備でも最高の破壊力を誇る武装だ。
「消えろ……!」
サラマンダーが直撃、胸部が炸裂して吹き飛ぶアンノウン。G3は手応えから次の一撃で倒せると確信した。次弾を構えて狙いを定める。
しかし距離を開けたのは失策だった。亀型のアンノウン『テストゥード・テレストリス』は背中を向け、自慢の甲羅を前面に出す。サラマンダーは弾かれ、本体には些かのダメージも届いていない。
(強固な亀甲……見掛け倒しでは無いか)
背中を向けたまま突っ込んでくるテレストリス。次弾も弾かれ、甲羅をぶつける体当たりでG3の身体は大きく吹き飛ばされた。
「あぁ……!」
(くっ、私達も加勢を……)
自分のことのように顔を曇らせる亜耶。それを見た芽吹が端末を取り出すが……
『必要ないわ。そのまま見ててくれない?』
後方から大型トレーラーが近づいてきた。防人達が乗ってきたものと同型の車体には、大社の紋が刻まれている。
『あの程度、G3にとっては危機でもなんでもない。見てれば分かるわ。今後組む相手としても、あなた達にはよく理解しておいてほしいの――私達の実力と目的をね』
通信越しの声からは溢れんばかりの自信を感じ取れた。G3の性能、そしてそれを使いこなす装着者への全幅の信頼がそこにあった。
形成逆転して愉快そうに嗤うテレストリス。その声が癇に障ったG3は、即座に立ち上がってサラマンダーを格納した。
「調子に乗るなよ……少し硬いくらいで、人間に勝てると思うな!」
再びスコーピオンを構えて走る。やはり銃弾は全て弾かれるが、G3は構わず連射。テレストリスの周囲を円を描くように走り込みながら撃ち続ける。
(死角を狙ってる?……でも、だとしたら絶えず撃つのは悪手……)
(何をしようと……あら? 少しずつ近づいているような?)
G3が回り込むのに合わせて甲羅の角度も調整し、全ての射撃を防ぎきっているテレストリス。しかし異形は気づいていない。王手をかけるための布石が既に打たれていることに。
円軌道で撃ち続けながら徐々に距離を詰めていく。絶えず銃弾が飛んでくれば、両者の距離までは意識が向かなくなる。
ジャンプで届く距離まで近寄ったG3。敵はまだ気づいていない。
(ここだっ!)
高く跳躍し、真上から甲羅の裏を射撃する。連射しながらテレストリスを飛び越えたG3は敵の正面に着地した。
『GS-03 active』
着地と同時に端末を操作、近接武装を装備する。
『GS-03 デストロイヤー』左腕に装着して振るうソードユニット。
高周波振動するブレードはかなりの切れ味を誇り、一撃でテレストリスの腹部を貫いた。
「今度こそ終わりだな……!」
デストロイヤーの電圧をさらに強化。貫通した刃の威力を最大まで引き上げる。フルパワーでテレストリスの身体を縦一文字に両断した。
綺麗に真っ二つにされた亀の異形は、呻き声1つあげられずに爆散、消滅した。
「すごい……」
「展開が急すぎて訳が分かりませんわ」
「事前説明の時間を取らなくて悪いわね。アンノウンは突然現れるものだから」
トレーラーから降りてきた女性。通信の声の主だ。大社職員の服装ではなく、きっちりとしたパンツスーツ姿で顔も隠していない。他の職員とは異質の、人間味に満ちた容貌の女性が出てきた。
「まずは自己紹介からかしら……
快活に挨拶する真澄。彼女が名乗った瞬間、防人付きの仮面の職員が一瞬動揺を見せたが、すぐ隣にいた芽吹以外は気づかなかった。
(何かあるのかしら、この人達……確かに他の大社職員とは違うようだけど)
「ほら、
トレーラーの陰から様子を伺っていたG3が、上司の呼びかけに応えて前に出てきた。端末を操作して装備を解除。光と共に装甲が透けて消えていく。
「……え……?」
(国土くんって、まさか……!)
光が晴れた先には1人の少年。防人達と変わらない年頃の、まだまだ華奢な子供が立っていた。眼や髪の色は、彼女達がよく知る巫女の少女と同じもの。そして国土という苗字。一拍遅れて、防人達は事態に気づいた。
「G3装着員の
簡潔に名乗る彼の瞳からは何の感情も読み取れない。あくまで淡々と、目の前の少女達の顔を見渡している。
「……お、お兄様……?」
「久しぶりだな、亜耶。元気そうで安心した」
言葉とは裏腹に、その表情は全く動かない。それどころか、努めて目線を合わせないようにしているように見える。半年ぶりの兄妹の再会は、あまりにも寒々しい形に終わった。
楠芽吹
加賀城雀
弥勒夕海子
山伏しずく
彼女達32人の防人部隊。
そして巫女、国土亜耶とG3、国土志雄
特別な資質を持たない彼らの出会いは、やがて人類と世界の未来を変えるための、大きな大きな最初の一歩だった。
これは、選ばれなかった人間が描く物語。
勇者が魔王を倒して世界を救う、そんな英雄譚の裏で起きた争いの記録。
神に選ばれたからではなく、世界に望まれたわけでもない――
ただ自分の魂に従って、抗い続けた子供達――
――彼らが運命に叛逆する御伽噺――
次回は志雄くんのこれまでについてです……なんか章構成がわすゆ編そっくりだな
しばらく期間空いた癖にその間ほとんど執筆できなかったので、実はまだ手探りでくめゆ編やってます。しかしジオウのアギト編を見て、これに乗っかるとか何か理由つけて今の内に再開しないともう手遅れになりそうな予感がしたので勢いで書き上げました。多分この章は他と比較してクオリティ低めでお届けすることになるかと思われます、申し訳ない……
感想、評価等よろしくお願いします。
次回もお楽しみに