A New Hero. A Next Legend 作:二人で一人の探偵
章構成がわすゆ編にそっくり……自分の引き出しのなさにビックリしてます。
流れを構成する都合上、原作イベントはほとんど描写しないことに決めました。既に終えているか、描写していないところで進んでいると思ってください。時系列とか関係性とかまで気にするとストーリーが出来上がらなかったんです、申し訳ない……
「おー痛ぇ……降りることまで考えてなかった」
「君は相変わらず無鉄砲だな。あんな無理な体勢で動けば危険なことくらい分かるだろうに」
「バカで悪かったな。他の手が思いつかなかったんだよ」
「だから大人を呼んでくると言ったのに……おかげで僕まで頭を打ったぞ」
まだ彼らが普通の子供でいられた頃、いつものように鋼也と志雄が言い合っている。
外で遊んでいた時、風に飛ばされた帽子が木に引っかかってしまった。取ろうとした鋼也が渋る志雄を踏み台にして何とか回収……したまでは良かったが、勢い余って転倒。2人仲良くタンコブをこしらえて涙をこらえている。
「まぁまぁ。結果的に帽子は取れたんだし良かったじゃない。ねぇ亜耶ちゃん」
「うん! ありがとう、こうやくん! おにいちゃん!」
2人の口論を慣れた様子で宥めているのが
戻ってきた帽子を被りなおして満面の笑みを浮かべているのが志雄の妹、国土亜耶。
「気にすんな。汚れてねーか?」
「うん、だいじょうぶみたい!」
「良かった良かった。ほらお兄ちゃんも、いつまでもむくれてないの」
「やめてくれ、香にそう呼ばれると気味が悪い」
帽子越しにやや乱雑に亜耶の頭を撫でる鋼也。
顔を赤らめつつも楽しげに悲鳴をあげる亜耶。
憮然としている志雄の頰を突いてからかう香。
煩わしそうに香の手を払って溜息をつく志雄。
この頃の彼らは何も知らずに今を楽しんでいた。これから先も、変わらない時間が続くと信じて疑わなかった。
「……夢か」
国土志雄が目覚めて最初に目に入ったのは、見慣れない天井と爽やかな朝の日差し。ゴールドタワーに用意された彼の自室だ。
(久しぶりに亜耶と会ったからか……懐かしい夢を見たな)
身だしなみを整えて手早く準備をする。訓練場を1人で使えるのは早朝ぐらいしかないので、急がなくてはならない。
(……今日も仮面は問題なく被れているな……行くか)
鏡で自分の無表情を確認して小さく頷く。共に過ごすことになった以上、より気をつける必要がある。
最後に写真を入れられるロケットを首に下げて、服の内側にしまいこんで部屋を出る。いつの間にか、暖かかった夢の景色のことは頭から抜け落ちていた。
「あの! おはようございます……お兄様」
「……おはよう」
挨拶1つでやたらと力んでいる妹と、どこまでもそっけない兄。とても兄妹とは思えない距離感の2人は、今日もやはり目が合わない。より正確に言うと、兄の方が意識的に目を逸らしている。
「お兄様もこれから朝食でしょうか? だったらご一緒に――」
「悪いな、今済んだところだ」
「あっ……」
食堂に向かう道で、明らかな嘘をついてその場を離れる志雄。彼がゴールドタワーに来て数日。一度も妹とまともに話そうとはしなかった。
「お兄様……」
「あやや、大丈夫?」
「何ともそっけないですわね。ご兄妹だというのに……」
「いえ、きっと私が何かお兄様の気に障ることをしてしまったんです」
誤魔化すように笑顔を浮かべる亜耶。しかし悲しみや寂しさを隠しきれていない。部隊全体の清涼剤である彼女の笑顔を曇らせる志雄への不満はそこここで沸いている。
「……でもあの人、他の防人には結構親切……」
「え? そうなんですの?」
「訓練場でアドバイスされたって子が何人か……私もこの前落とした手帳届けてもらった……」
亜耶への態度だけを見れば他者に無関心な冷血漢とも取れる……が、行動の端々から善良な部分も見えている。何とも掴みづらい人物だった。
「変な人ね……亜耶ちゃんはどうしたい?」
「それは……昔のように仲良くしたいです。お兄様に話したいこと、たくさんありますから」
「あ、本人がダメなら他の人に聞いてみたら? お兄さんと一緒に来た女の人! あの人なら何か知ってるかも」
雀の提案で今日の自由時間の予定が決まった。
物言いたげな妹の視線を振り切り、志雄は外出許可を得てゴールドタワーの外に出ていた。道中で簡単に食事を済ませ、辿り着いたのは瀬戸大橋。アトラクションのような勢いで橋が反り返り、奇怪なオブジェのようになってしまったかつての決戦跡地。志雄の親友が全てを懸けて戦った証でもある。
(鋼也……僕はちゃんとできてるかな。君が起きていたらやっていたであろう役目を……代役を務められているだろうか。力を持たない僕に)
志雄は度々この地を訪れ、自分の存在意義と親友の偉大さを再認識している。本人が大社本部で眠りに就いているのは知っているが、面会許可が下りるとも思えないし会うつもりもない。
長い間顔を合わせなかったこともあって、志雄の中で篠原鋼也という人物は絶対的な英雄となっている。自分が1人腐っていた間にも、望まずして手に入れた力を正しく使って人を守っていた。我が身も顧みずに戦い続け、最後には起きることもできなくなった漢。そんな彼の代わりを務めようと立ち上がったのが今の志雄だ。
(亜耶と顔を合わせて、少し気が緩んだか……もっと気を張らないと)
全ての私情を切り捨てて、ただ戦うこと。それが志雄が自身に課した罰だった。
G3ユニットの研究室。亜耶達が向かった時、先客が入室していくのが見えた。防人の担当官である大社職員、安芸真尋だ。
「……失礼します」
「はいはいどなた――って、真尋じゃない。どうしたの?」
「お互いやっと手が空いたようですし、事情を聞いておこうと思いまして。国土志雄のこと……そして、なぜあなたが大社に戻ってきたのかということです……
扉に張り付いて様子を伺っていた防人達は驚愕する。突如浮上してきた血縁関係は、国土兄妹だけではなかったのだ。
「あなたにそう呼ばれるのは久しぶりね。でも今の私は小沢真澄よ。安芸真澄ではないわ……大社には戻ってもその名前は変わらないわ」
「そうですか……では改めて聞きます。異端の研究成果を披露して大社を放逐されたあなたが、なぜ戻ってきたのですか? それもG3などという技術を持って」
小沢真澄。旧姓、安芸真澄。彼女は元々大社信仰下にある安芸家の生まれだった。幼少期から天才的な頭脳を発揮し、いずれは大社の中枢を担う研究者になることを期待されていた。
僅か9歳で勇者システムの開発部を凌駕する知識量と発想力を持っていた彼女は、当時技術発展に行き詰まっていたシステムのブレイクスルーに大きく貢献した。それほどの天才であった彼女だが……
「"いずれ神樹様は限界を迎える。神に頼らない手段を模索すべき"……当時の大社でそんな主張をすれば、追い出されるのも仕方ないわよね」
「やはり、承知の上であの案を出したのですか。なぜそんなことを?」
「頑固に神様に縋り続ける上の連中に一発かましたかったのと……大社から離れて研究に没頭したかったからかしらね。家が家だから、よほどの理由がないと離れられないでしょ?」
何かに呪われているかのように歪み始めた大社に危機感を感じて大社を離脱した真澄。その後母方の旧姓を名乗り、外部機関で研究を進めてG3を設計した。
「あの時真尋も連れて行こうとしたけど……あなたは首を縦に振ってくれなかったわね」
「当時の私にとって、父や母、そして大社は絶対の存在でしたから。あなたの行動は気が触れたとしか思えませんでした」
そうして姉妹は別れ、姉は国土志雄と出会い、妹は篠原鋼也と出会った。
「私についてはこの辺でいいでしょう……本題の国土くんのことだけど――あなた達、そこじゃ聞こえにくいでしょ? 入ってきなさい」
扉の前で数人の慌てたような足音がバタバタと聞こえ、観念した亜耶達がおずおずと入ってきた。
「あなた達、聞いていたのですか……」
「ごっ、ごめんなさい! 私もお兄様のことをお尋ねしたくて……」
「まぁいいじゃない。むしろ気づかなかったあなたの失態よ、真尋」
最初から気づいた上で聞かれても問題ないように言葉を選んでいた真澄に言われると、真尋も返す言葉がない。
「お兄様とは2年前から会えなくなりました。その頃、何があったのですか?」
「そうね。妹さんには話しておくべきでしょう……他の子達もまあいいわ。ついでに聞いていきなさい」
国土志雄。彼の人生はどこまでも"普通の人間"であることの苦痛が付いて回る。ある意味神に選ばれるよりも残酷で逃れようのない現実との戦いの繰り返しだった。
小沢真澄が国土志雄と出会ったのは3年前。役目を降ろされた彼は大社に席こそ置いているが、特に仕事に加わることもなく普通の学生として過ごしていた。ずっと努力してきた成果を誰のせいでもない悲劇で奪われたこと。そして何より、兄妹のように育ってきた幼馴染を失ったことで以前の勤勉さからは考えられないほどに無気力な毎日を過ごしていた。
両親や友人もかける言葉がないのか、腫れ物に触るように扱われ続けた。唯一の例外だった妹の亜耶とは、巫女としての素質が開花したことで会える時間が目に見えて減った。この頃の彼は、間違いなく一人ぼっちだった。
小沢真澄と出会ったのは彼が11歳の頃。自分の殻に籠って誰の顔も見ようとしない志雄とは、最初は話をするにも苦労した。
「……ギルス?」
「やっぱり知らなかったのね。あなたのお友達は今も必死に抗ってる。そこにどんな気持ちがあるのかは私には分からないけど」
「鋼也は、力が残ってたから……でも僕には……」
「そういう資質の有る無しで全てを定める大社が嫌で私は抜けたの。今のあなたのような人にこそ、私の研究を使ってほしいと思ってるわ」
鋼也が築いた壁を壊したのは今も戦う"友"と、脱落した自分でも手が届く"力"の存在。
「……『G3システム』?」
「神樹様の恩恵を直接利用することなく、それに限りなく近い力を引き出せるパワードスーツよ。かつての英雄やあなたの友達のデータを使って組み上げた、"誰でも扱える"戦士の姿」
クウガやギルスの力を徹底的に解析、大社の研究も利用して神性を人為的に再現した。アンノウンはもとより、通常兵器が通用しないバーテックスにも対抗し得る人類の新兵器。それこそが真澄が家名を捨ててまで創り上げた『Gシリーズ』の構想。
そしてその内の1つ、安全性と信頼性を重視した『G3』を鋼也に託そうというのだ。
「いつか人は神の庇護下から巣立つ時が来る。そのために……」
「なるほど、まさに僕はうってつけの人材だ」
次代の英雄としての訓練を最後までやり遂げた経験を持ち、今の自分の無力に打ちひしがれている志雄。
神に選ばれずとも運命に逆らうための力を生み出し、それを正しく使える人物を求めている真澄。
完璧な形で需要と供給がかみ合っている2人。まさに理想的な出会いだった。
「あなた達に何があったのかは記録上のことしか知らないわ。だから今の思いも、想像することしかできない……だけど、少しでも今の自分を変えたいと思っているのなら、そのキッカケとして私とG3を利用してくれて構わない」
俯く志雄にそっと手を差し伸べる真澄。この先は茨の道、選ぶのはあくまで自分の意志でなければ意味がない。
(……あの日、僕は何もできなかった。香を守ることも、壊れた鋼也を止めることも……当事者の1人だったはずなのに、全ての悲劇を傍観するだけだった)
あの日まで大人達に褒めそやされてきた資格を持った者だったのに、結局何もできずに全てを失った。その無力感が数年もの間、志雄から活力を奪い続けてきた。
(今からでも出来ることがあるなら……鋼也と同じ場所に立てれば、もう一度向き合うことができるのかな……)
そうして志雄は真澄の手を取った。今もまだ戦い続けている友達と向き合うため。この時の志雄にとって、戦う理由はそれだけだった。
「それから本格的に実験と調整の日々が続いたわ。バーテックスが本格的に動き出した頃には、まだ実戦配備は間に合わなくてね」
「その頃からお兄様はあまり家にも顔を出さなくなって……それでも以前よりもずっと明るい表情をしていました」
当時、亜耶は兄に事情を聞こうとしたが志雄は話さなかった。大社に籍を置きながら外部の研究機関に入り浸り、大社の研究成果をも利用して兵器を開発していたとは流石に教えられなかったのだろう。
「変わらず生真面目で堅苦しかったけど、友達に近づいている実感があったんでしょう。仕事以外の時間では年相応な顔も見せてくれてたわ」
「なんだか嬉しそうね。何かあったの?」
「小沢さん……あの、今度鋼也と会うことになりまして……」
「あら、良かったじゃない! 聞いた話じゃ戦況も少し落ち着いてるそうだし、そういうことなら予定を開けることも――」
「いえ、予定通り行けば6日後には大社との契約も含めて全ての準備が完了します。どうせなら、僕達の成果を手土産にアイツを驚かせてやりたいんです」
「なるほど、これからは一緒に戦えるって証を引っさげて再会するのね? いいと思うわ。トラブルなくスケジュールを片付けていきましょう。私も協力するから」
「はい、ありがとうございます!」
「妹さんには伝えたの?」
「いえ、亜耶はギルスのことを知らされていないので。鋼也の事情を把握してから話をするつもりです」
この時の志雄は少年らしい対抗心を抱いていた。ずっと対等だった友との再会、やはり同じ立場に立っていたい。それだけの微笑ましい意地が、2人の距離を大きく隔てることとなってしまった。
それから僅か数日後、瀬戸大橋の決戦が終わった。
「国土くん、ギルスのこと……」
「……家に連絡がありました。咄嗟のことで、妹をごまかすこともできませんでしたよ」
「知られてしまったのね」
「絶対に泣いてほしくない、そう思ってたんですけどね……」
最大規模の侵攻を抑えるために、勇者達はほぼ壊滅。ギルスも倒れてしまった。命こそまだ保っているが、回復する保証はない。
あと一歩のところまで近づいたその時、唐突に足元が崩れ落ちて全ては台無しになった。志雄が夢見た、2人が肩を並べて戦う光景は訪れることなく終わってしまったのだ。
「国土くん、あなたは……」
「安心してください。G3から降りる気はありませんから……ギルスの記録を見せてもらって分かったんです。今のアイツには守りたいものがちゃんとあって、それを守りきったんだって」
自分が足踏みしている間に、鋼也は大切なものを見つけていた。命を懸けるだけの理由をもって、彼は最後まで諦めずに戦い抜いた。
「間に合わなかった以上、僕にできることは1つだけ。アイツの代わりに守ります。鋼也の仲間も、家族も、アイツが生きた世界も……そのためにも、僕は今G3を失うわけにはいかないんです……!」
2度の喪失は志雄のナニカを奪い取ってしまった。罪悪感と強迫観念。どれだけ硬く、どれだけ強くとも、決して熱くはなれない2つの心理。それだけを胸に、国土志雄は力に手を伸ばし続けている。
(この世界は、懸命に尽くした人間から倒されていく……なら、次こそは誰にも背負わせない。鋼也の役目は僕が……僕だけが引き継げばいい)
それ以来、志雄は取り憑かれたように熱心に訓練と調整に打ち込むようになった。まだ子供である彼が兵器の扱いに時間と情熱の全てを注ぎ込む異様さに流石の真澄も思うところはあったが、彼女の言葉は志雄の内側に入り込むこともできなかった。
やむなく志雄の望むままにG3の開発を進めるしか彼女にできることはなかった。
「エントリーコード、ですか?」
「ええ。量産の目処がつくまではG3はあなたのワンオフ機として扱うことになるわ。G3の起動キーである端末自体にもロックをかけてあなた以外使えないようにはしているけど、念のために展開プロセスにも声紋認証とパスワードを組み込むの。単語はなんでも構わないわ。ここで記録した声と言葉でコードとして登録するから」
手渡された端末を片手に考え込む志雄。彼は戦士となるべく鋼也……ギルスの戦闘記録を穴が空くほどに観てきた。その中で友が意識を切り替えるために口にしていた言葉。それが不意に浮かんできた。
(鋼也……君の強さを俺にくれ。君が守りたかったもののために)
「――――」
紡ぎ出すは4つの音。受け継がれる戦士の言霊。
この日、志雄は改めて覚悟を決めた。戦士として、その命を燃やし切る覚悟を。
「ここから先は想像通り。鬼気迫る様子で実験と実戦に明け暮れた彼のおかげでG3は無事完成……結果を出して大社の信用を得て、今はあなた達と組むことになった」
望んだ特別は手に入らず、力を欲したその瞬間、彼は2度とも無力であった。その結果共に過ごした2人を失い、今また自分の道をも見失ったまま……立ち止まることだけはできずに彷徨っている。
「私、何も……知らなくて……!」
「亜耶ちゃん……」
それでも妹のことはまだ気にかけているのか、彼女には何も伝えず姿を消した。大事なものこそ離れたところに。2度の喪失で志雄はそう決めてしまったのかもしれない。
「私も今のままでいいとは考えていない……しかしこちらでは最低限のメンタルケアしかできない。だから今回の任務、防人との合流を引き受けたの」
「それは、国土さん……妹さんがいるからですか?」
「ええ。彼は自分を篠原鋼也くんの代わりと定義している。そんな彼に残っている"国土志雄"に触れられるのは、ずっと大切な存在であり続けた亜耶さんしかいないと思ったの……だけど予想外ね。むしろ避けるようになるとは」
「お兄様にとって、私は邪魔なのでしょうか……?」
知らないところで失くし続けてきた兄の過去を知った亜耶。すぐ近くにいたはずなのに完全に部外者になっていた事実は、すっかり彼女から自信を奪い取っていた。
「……国土くんにとってはそうなのかもしれないわ」
「姉さん……!」
「だけど、それであなたは納得できるの? お兄さんに構うなと言われて、それで本当に全て忘れることが正しいと思うの?」
亜耶は元々誰かの望みに沿うように生きてきた人種だ。いつだって自分の気持ちは二の次に。そんな彼女に真澄は問いかける。自分が信じるものは何かと。
「お兄さんの考えとあなたの望みは違うでしょう? まだ若いんだから、もう少しワガママに生きても誰も文句なんて言わないわ」
「私は……私が望むのは……」
「亜耶ちゃん、素直に言っていいわよ。あなたには私達もお世話になってるもの」
悩む亜耶の肩に、芽吹の手が優しく添えられる。後ろに立つ雀達も同意見らしく、亜耶の言葉をじっと待っていた。
「私は……お兄様と、昔のようにお話がしたいです。もう一度、お兄様の笑顔が見たいです……!」
「……決まりね。第一小隊の次の任務、それは国土志雄の眼を醒まさせること。すぐ側で泣きそうになっている妹と向き合わせて、きっちり頭を下げさせる……意見のある者は?」
隊長の芽吹の言葉に、無言で頷く防人達。亜耶のため、志雄自身のため。本当の仲間になるために。
「芽吹先輩……」
「協力するわ、亜耶ちゃん。私達としても共に戦う相手とは本音で向き合いたいしね」
「グスッ……あんまり荒っぽいことは避けてくださいね?」
「確約はできないわね」
「まあメブだもんねぇ」
「聞いてしまった以上放置もできませんしね」
「力尽く……楠の得意技……」
選ばれなかったことに絶望したまま堕ちて行こうとしている志雄。
選ばれなかったままで終わらないために足掻いている防人達。
似ているようで決定的に違う両者は、この日初めて本当の意味で出会った。運命はまだ、決まってはいない。
心を新たにした彼女達の端末から響く警報音。市街近くにアンノウンが出現した報せだ。
「――! 敵襲警報……アンノウン?」
「行くわよ。すぐに出れる人員と私達で――」
壁外の危険地帯に何度も飛び込んだ場慣れからか、行動が早い芽吹達。即座に退室して現場に駆け出して行った。
(……国土くんが……また、あそこに行っていたのね)
1人部屋に残った真澄がレーダーを確認すると、警報から1分足らずで志雄が現着していた。彼がよく行く場所のすぐ近くだったと思い出す。
「彼の頭の硬さは筋金入りよ……お手並み拝見させてもらおうかしら、防人の皆さん」
志雄の心を前向きに変える。自分にはできなかったことをやろうとしている少女達に一縷の望みをかけて、真澄は自分の仕事を再開する。今より良い装備を提供する。研究者である彼女の本分はやはりそこに集約するのだから。
瀬戸大橋のほど近くに出没したアンノウン。進路を塞ぐように立ちはだかった志雄が、ゆっくりと端末を敵に向ける。
(人を傷つけるお前達を……一匹でも多く消去する。それこそが……!)
『G3 All safety release』
端末を操作して戦闘モードを起動する。銃のように異形に向けた端末を引き、マイク部分を口元に持ってくる。
「……変身……!」
『Acception』
エントリーコードを認証し、端末から光が溢れる。志雄を囲むようにG3の装甲が転送、順に装着されていく。光が晴れた先には1人の戦士。全身を青と銀の装甲と黒の特殊スーツで覆った科学技術の結晶。
顔の横に構えた端末を手放し、ベルトの側部にマウントする。それで変身プロセスは完了。G3の橙色の瞳が輝き、正面の敵を見据える。
「G3……
友を失ってなお自分だけが生き残った意味を求めて、機械仕掛けの戦士は武器を構える。
ゴールを定めずに始めたマラソンほど辛く果てしないものはないと、誰もが知っているはずなのに。
やっぱりわすゆ編に近いな……似たような話の焼き直しになったらごめんなさい……
ここからはオマケ、作者の自己満足なので読み飛ばしてもらって大丈夫です。
〜G3変身プロセス〜
①端末を右手に持って敵に向ける
②画面をタッチして変身モードに移行する(この時『G3 All safety release』の音声が流れる)
③右手を引いて、端末を顔の真横、左側すぐ近くに持ってくる
(ここまでのイメージはスナイプの変身が近いかも)
④端末に届くようにエントリーコード「変身」を発声する
(この時の電子音声は『Acception』構えはカイザに近い。より手前側、口の近くにマイクが寄るように持つ)
⑤装甲を装着したら端末を離す。落下した端末は真下にあるベルトのソケットにマウントされる。この時に両目が光って変身プロセス完了。
以上、本編より細かく変身解説。クウガ、アギト、ギルスではできなかった平成ライダー感を出したくて機械音声を挟んでみました。作者個人的なくだらないオリ要素全開です。G3ならオリジナルを挟む余地がたくさんあるなと思いやってしまいました……
音声の方は、テンポが悪くなるので基本的には初出のものと描写的に目的がある場合以外はいちいち書きませんのでご安心を。
感想、評価等よろしくお願いします。
次回もお楽しみに