A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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ちょっと迷走してきました……読み応え薄くなってたらごめんなさい。
 


Nobody's perfect

 真澄が用意した対アンノウン用シミュレーター。この日は防人全員と志雄の合同訓練で用いられていた。

 

「判断が遅い。バーテックスのような大きな予備動作は奴らにはないぞ」

 

「クッ……護盾隊、構え!」

 

「アンノウンの中には特に素早い敵もいる。一方向に偏る陣形は適さない」

 

「うひゃぁぁ、飛び越えてきた⁉︎ メブー!」

 

「私が抑える、みんなは……!」

 

「不合格だ……あとは僕がやる」

 

 4体のアンノウンに翻弄されて陣形を崩された防人の右往左往っぷりに見切りをつけ、G3が銃を連射。内側に入り込んできた個体を撃破した。

 

「やはり君達の戦術はアンノウンにそのまま転用できるものではないな。対応が鈍すぎる」

 

「……そこまで言うなら、分かったわ。全員距離を取って注意を引いて! 私が倒す!」

 

 号令をかけて飛び出す芽吹。指揮官とは思えない脳筋思考ではあるが、仲間達はその判断を信頼しているようで乱れなく態勢を立て直していく。

 

(……分からないな。個々で見れば悪くない者もいるが……)

 

「ダアァァァッ‼︎ 調子乗ってんじゃねーぞバケモンが!」

 

 G3が一体、芽吹が一体。残る個体は山伏しずく……シズクが相手取っている。普段の彼女からは考えられない苛烈な言動と激烈な攻撃。初めて見た志雄は違和感を拭えなかった。

 

(山伏しずく……純粋な戦闘力で言えば隊内トップクラス。あの調子では指揮などとても取れそうにないが、少なくとも楠の命令は破っていないようだ)

 

「私も出ます! ここが弥勒家の誇りの見せ所ですわ!」

「ストップストップ! 弥勒さんこれシミュレーターだから! 陣形勝手に崩さないでってば!」

 

(弥勒夕海子……平凡な能力と完成された精神性を持った極めて()()()戦士。

 加賀城雀……身を守ることに限定すれば天才的。体よりも先に口が回る普通の少女。

 尖った人物が多いこの隊でも、あの2人ほどアンバランスな者はいないな)

 

「射撃を止めて……私が決めるわ!」

 

(そして楠芽吹……この不安定な集団を実力と執念で取り纏めるリーダー。彼女は別格だな。問題は頭の硬さとアンノウンのことを知らない点か)

 

 他にも光る人物はいるが、特に目立つのはこの4人。何の因果か、妹の亜耶とよく一緒にいるメンバーばかりだ。先のことを考えれば、少なくとも彼女達に死なれると志雄も困る。アンノウンに関しては全て自分で引き受けるつもりだったが、決まった話に割り込める権限は彼にはない。

 

(自分勝手を通すために、誰かのために時間を費やす必要もあるか……)

 

 

 

 

 

 

 

 連携と呼ぶには拙すぎる集団戦闘、結果はC評価。このまま実戦に出れば誰かが死ぬ。それを痛感した芽吹は1人訓練に没頭する。隊長として誰も死なせないことを己に課している彼女にとって、今日の結果は受け入れがたいものとなった。

 

(国土志雄と何が違うの……それが分からないことには……!)

 

 迷いが乗った剣にはいつものキレがない。今日はもう切り上げようかと汗を拭っていたところで……

 

「楠芽吹。今いいかな?」

 

「――っ! 国土志雄……何か用?」

 

 色々な意味で芽吹の心境の中心にいる人物が気付かぬうちに部屋にいた。気配を絶って近づいてきた彼に若干の嫌悪を込めた視線を送る。

 

「いや、済まない。集中していたようだから一息つくまで邪魔しないようにと思ってね……少し戦術面の話をしたいんだ。いつも一緒にいる面子を呼んでくれないか」

 

「いつもって……雀達のこと?」

 

「ああ。加賀城雀、弥勒夕海子、山伏しずく、楠芽吹……今回はこの4人でいい」

 

「構わないけど……亜耶ちゃんはいいの?」

 

 他人行儀ながらもはっきりモノを言ってくる志雄だが、妹の話題になると途端に口が重くなる。芽吹はそれが気に食わなかった。

 

「……これは戦闘時の話だ。巫女の彼女を呼んでも意味はない」

 

「そう。他の話題なら誘ってたの? そんなわけないわよね。あんな風に突き放して……」

 

「悪いが君には関係ない話だ。隊長ともなれば他人の家の事情にまで首を突っ込む必要があるのか?」

 

「そんなつもりはないわ。ただ、あなたたちはちゃんと向き合って話すべきだと――」

 

「僕は防人部隊に所属はしていないし、亜耶だって厳密には君の指揮下には入っていない。もう一度言うが無関係だ。君達に口を挟まれる理由はない」

 

 頑なな言葉に、芽吹が先に白旗を揚げた。やはり今の関係で何を言っても響かない。志雄が無視できない価値を、自分の言葉に付与させる必要がある。そのためには――

 

「悪かったわね。話を戻しましょう、こちらとしても対アンノウン戦術について聞きたいことがあったし丁度いいわ。すぐに呼んでくるから」

 

 自分と防人部隊が強くなること。それが志雄の心を開かせることにつながる。芽吹が力を求める理由が1つ増えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 ゴールドタワーの一室を借りて開かれた戦術講座。ホワイトボードを使って淡々と解説を続ける志雄は教師のようだった。当初は気乗りしない様子だった雀達も、意外と丁寧で誠実な志雄の説明に気づけば前のめりになっていた。

 

「あの、私……できるだけ攻撃を貰いたくないんだけどどうすればいいのかな?」

 

「護盾隊が言っていい言葉ではないが……そうだな、奴らの多くは接近戦しかできないから距離を取ること。遠距離攻撃ができるタイプもいるが、そういう奴には特定のパターンがある。予備動作やリズムが一定であることが非常に多いから、そこをよく見て攻撃を見極めれば危険は回避できるんじゃないか」

 

「なるほどなるほど……敵をよく見ろ、っと」

 

(もっとも、生存本能に素直になった君の防御を抜けるアンノウンがいるかは分からないが……)

 

 痛いのはイヤ、怖いのもイヤ、死ぬのなんて絶対にイヤと常々豪語している雀は真面目な顔で生存戦略を構築している。あけすけすぎる態度には志雄が逆に感心してしまった。

 

「私は功績を挙げねばなりませんの。敵にとどめを刺す際のコツなどはありませんか?」

 

「共通の弱点と言えるようなものは発見できていないが、やはり首から上を攻撃した方が手応えはあったな。特に目玉が弱いという生物共通の欠点は奴らも例外ではないらしい」

 

「ありがとうございます。頭部を狙って斬りこめば良いのですわね!」

 

(彼女の資質も加味すれば、射撃でヘッドショットを狙った方がいいと思うが、この猪突猛進ぶりでは言うだけ無駄か)

 

 決して馬鹿でも無能でもないはずなのだが、実力以上に気持ちが前に出てしまうせいで空回りしている夕海子。このままでは知らない間にひっそりやられていそうで志雄は不安だった。

 

「……丁寧に教えてもらったけど……私の身体は非常時には"シズク"が使うから、意味は無くなっちゃうかも……」

 

「だったら今日覚えたことを鍛錬で体に染み込ませればいい。君と別人格との関係は詳しく知らないが、同じ身体を共有しているならクセを無視するようなことはないだろう」

 

「あ、そっか……分かった。シズクにも教えておくね……」

 

(見たところ食の好みや歩き方は似通っている。特に問題はないはずだ)

 

 多重人格という極めて珍しい性質をもつしずく。志雄も初めてのケースであるため、他のメンツよりも注意深く観察していた。

 

「……とまぁ、大まかにはこんな具合だ。バーテックスとは対処がまるで異なるからそれを意識しないといけない。より繊細な行動が求められるわけで――」

 

 講義に熱が入ってきたタイミングで端末が鳴り響く。水を差された志雄が通知をチェックすると、アンノウン出現の報。

 

「……講釈だけでは退屈だろう。復習も兼ねて実戦だな。1匹だけのようだし、5人で行こう。今回は僕の指示で動いてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 警報に従って現着した河原には、以前撃破したカメ型と同種の『テストゥード・オケアヌス』がゴールドタワーに近づいてきていた。周囲の人払いを完了させ、G3を含めた5人が交戦に入る。

 

「各員敵を囲い込み、円状に走って一斉射! 加賀城は一歩退がって反撃に備えろ!」

「さあ、撃ちまくりますわよ!」

「弥勒さん、前に出ないで! 包囲が崩れます!」

 

 G3、芽吹、夕海子、しずくの4人で円形に敵を包囲。的を絞らせないように周回移動しながら射撃で追い込む。円の中心に敵を固定して一斉射。防御が硬いオケアヌスに対して有効な戦術を志雄はすでに構築していた。

 

(そして奴らは総じて堪え性がない……手も足も出せなくなればすぐにでも)

 

 志雄の予想通り、包囲を無理やり突破するためにオケアヌスは跳躍。夕海子目掛けて突進する。

 

「加賀城、止めろ!」

「はっ、はいぃ〜‼︎」

 

 壁役として残っていた雀が前に出る。盾の防御力と雀本人の技術で、完璧に防ぎきった。

 

「加賀城と弥勒で敵を押さえ込め! 楠、山伏、斬り込むぞ!」

「ハッ、えっらそーに! 遅れんなよ!」

「いいから行くわよ、シズク!」

 

 デストロイヤーを装備したG3。芽吹とシズクと3人で斬りかかる。雀と夕海子が羽交い締めにしたことでガラ空きの胸部に同時に一閃。✳︎を刻むように深々と斬り裂かれたオケアヌスは爆散、あっけなく消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シミュレーションでは全員でも手こずったのに……」

 

「随分あっけなく終わりましたわね。これが……」

 

「正しく戦術を立てればこの程度の個体は問題にはならない。これで僕の実力は証明できたかな?」

 

「……そうね。少なくとも戦力としてのあなたは認めるわ。けど、それと亜耶ちゃんのことは別問題よ」

 

「しつこいな、君も……好きに思えばいいさ。だが君に他人を気にする余裕はないぞ。これから隊長の楠には僕が培った対アンノウン戦術を全て覚えて使いこなせるようになってもらう」

 

「え……全て⁉︎」

 

「当然だろう。防人全体が従うのは君なんだ。ならば僕と君でまったく同じことができなければ意味がない。早く戻ろう。課題はすでに用意してある」

 

「……やるしかないか」

 

「頑張れ〜メブ〜!」

 

 肩を落とす芽吹を中心に帰路に着く防人達。その中で1人、志雄の言葉に疑問を持った者がいた。

 

(まったく同じこと……そこまでする必要があるの……?)

 

 しずくが引っかかったのはその一言だ。今後協力していくなら、いずれG3と志雄の実力は部隊に知れ渡ることになる。そうなれば自然とアンノウン戦における志雄の立ち位置も確立されていくのは間違いない。それならば部隊の指揮権の一部だけでも芽吹から預かればそれで済む。わざわざ一から教え込むよりずっと効率がいいはずだが……

 

(……頭が良いのは話しててよく分かる。だけど、合理的に見えてどこかチグハグで危なっかしい感じ……)

 

 仲間との連携はしっかり取れている。戦闘時にも危ういところは見られない。しかし何処か自分のことを軽視しているような、いなくなることを前提にしているような行動が端々に見られる。

 

(……なんだろう、何がしたいのか……どんな未来を見ているのかが、いまいち分からない人……初めて会うタイプかも)

 

 人格を分けるという方法で精神のバランスを保っているしずくとシズクにとって、志雄は心のバランスがうまく取れていないように思えた。

 

(気にしておいた方がいいかもしれねぇな……妹のこともある。国土志雄……お前は何でここにいるんだ?)

 

 しずくが感じたのは違和感。シズクが嗅ぎ取ったのは危機感。

 大社と通話しながら歩く志雄の後ろ姿を見つめる。足取りはしっかりしているのに、その背中は迷い子のように弱々しく見えた。

 

 

 

 

 




少しずつ話が進んでいきます。

感想、評価等よろしくお願いします。

次回もお楽しみに

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