A New Hero. A Next Legend 作:二人で一人の探偵
全体の流れはオリジナル、アギト要素を増やしつつ、伏線回収と最終ゴールの提示を目標としています。
イメージとしては劇場版。ただしメインストーリーにがっつり食い込みます。
まだ全体仕上がってないので、変わったらごめんなさい。
三位一体の
ギルスの爪が閃き、G3-Xの銃が火を噴く。狙いは同じく、黄金に光るアギトの身体。
「──シャラァァァッ‼︎」
「そこだっ!」
(目まぐるしく飛び回るギルスと、頭上から弾をばら撒くG3-X……しかもこの2人、やたらと息が合ってる……!)
空を飛び跳ねるギルスと飛翔するG3-X。いくらアギトでも、頭上のデッドアングルをチラチラ気にしながらギルスを振り切るのは容易ではない。G3-Xの射線を切るために、ひとまず森林地帯に逃れる……が、閉所での戦闘はギルスの得意分野だ。
「オラオラオラァッ! どうしたアギト⁉︎」
(……身体が柔軟で反応も早い。殴り合いでは不利だな……!)
木々を飛び跳ねて爪を立てるギルス。野生的で先が読めない攻撃に防戦一方。アクロバットじみた派手な挙動と、敵の虚をつく無軌道な攻撃が彼の持ち味だ。
「戦い方が固いんだよ、それじゃ着いてこれねーぜ!」
そう言ってギルスは上下反転、なんと逆立ち状態で回転蹴りを打ち込む。首を刈り取る軌道で振り抜かれる両脚を必死に避けるアギトの背後から、スラスターの起動音が響く。
「僕も混ぜてもらおうか……!」
2人まとめて狙ったケルベロスの斉射。組み合っていた2人は弾かれたように離れて弾丸の雨をやり過ごす。射程という面で絶対的なアドバンテージを持つG3-Xを倒すには、グランドフォームでは相性が悪すぎた。
「志雄、今俺ごと狙いやがったな!」
「別に協力するとは言ってない」
事あるごとに幼稚な口論を始める2人。束の間の休息を取れた陸人は、息を整えながら振り返る。
(まったく……なんでこんなことに……)
事の起こりは3日前。突然大社に呼び出されたあの日から始まった。
「模擬戦パフォーマンス?」
呼び出されて向かった先で合流した3人。実は鋼也から見ると陸人は初対面なのだが、満足な挨拶の時間も得られずに説明が始まった。
3人の誰とも面識のない大社職員。彼女が言うには、噂の矢面に立った3人に依頼という形で提案がなされたらしい。
「僕達が戦う姿を四国中に放送して、その力を改めて理解してもらう……なるほど、それで余計な詮索を封じようってことか」
真実の一部を明かし、何ら心配ないというスタンスを表明した大社。しかし誰もがそれで納得するほど、神世紀の四国は危機感が欠如した社会ではない。
そこで人知れず全てを守ってきた使徒様の力をアピールして、これまで通り"神樹様のおかげだ"、"これなら大丈夫"と思わせるためのパフォーマンスが必要となった。
「つまり何だ? 俺たちに"神樹様の使徒"ってやつを演じろってか……あの笑える噂の通りに?」
仮面の戦士──仮面ライダーは、勇者や防人と比べて人間離れした容姿をしている。これを利用して、全ての戦いは人の域を超えた存在が何とかしてくれる、と思わせることができれば成功だ。西暦時代、勇者を前面に押し出す方針は結果として、同じ人である勇者への不信へと繋がってしまった。
これを踏まえて、今回は最初から人外同士の争い……悪く言えば次元違いの話だと刷り込ませることにした。それが正しいかどうかは、まだ誰にも分からない。
「僕は立場上受けることになるな……2人はどうする? 依頼という以上、断れないことはないと思うが」
「俺は構わないよ。今の説明で、それが必要だってのは納得できたからね」
「俺も引き受けるぜ。この際だ、お互いの実力をはっきり示しておくのもアリだろ」
そうして話はまとまり、数日後に開催されることとなった。
しかし──
「裏が取れない?」
「ああ。今回の模擬戦、誰が発案したのかを僕の上司達が確認しようとしたんだが、どうもはっきりしないらしい。理屈が通っていたとはいえ、本部の差し金だったとしたら……」
「何か狙いがあるかもしれないってか? たかだか模擬戦1つに」
「ずっと眠っていた君には実感がないかもしれないが、今の大社は何をしでかすか分かったものじゃないんだ。警戒はできる限りしておくべきだろう」
「なるほど……なら、奥の手まで解禁するのは避けたほうがいいかもな」
そして当人達の間でそれぞれの切り札は使わないというルールが追加された。アギトはバーニング及びシャイニングフォーム。ギルスはエクシード化。G3-XもEXCEED起動はナシ、という縛りだ。
(……だってのに、いつの間にか俺に狙いが集中してるな)
開始当初はまともな三すくみの戦いだった。しかし初めてアギトの力を身に受けて、2人は直感的に悟った。1番強いのは間違いなくアギトだと。
そしてもう一つ、彼らは互いに『コイツにだけは負けたくない』という意地があった。最も望ましいのは、1対1で白黒はっきりさせること。そのためには最も強く最も邪魔なアギトから倒したい。
そんな両者の思惑は見事に一致し、図らずも2対1の戦況が出来上がってしまっていた。
「どうしたどうしたぁ⁉︎ 動きが鈍くなってきたぜ!」
「そろそろ限界か? アギト!」
流石は同じ鍛錬をくぐり抜けた幼馴染と言うべきか。2人の連携は完璧だった。両極端な特性を持ったギルスとG3-X。2つの力を有効に使って、格上のアギトを着実に追い込んでいく。これが初めての共闘だと言っても誰も信じないだろう。
「これは一般公開されるんだぞ、この偏った戦い方は良くないんじゃないか?」
「だからこそだろ。記録にも記憶にも残る場で、志雄に負けるなんて恥を晒せねえんだよ!」
「僕も同じだ。肩を並べる仲間のためにも、こんな寝坊助には負けられない!」
「……ああ、そうかよ。だったらもういい……!」
根気良く付き合ってきたが、陸人ももう我慢の限界だ。大ジャンプで2人を振り切り、ベルトに手を添える。
「そっちがその気なら、俺も遠慮はしないぞ!」
変化するのは金青赤の三色の姿。大地と風と炎の力を併せ持ったトリニティフォーム。
「げっ、マジかよ!」
「アレは、まずい……!」
ベルトからストームハルバードとフレイムセイバーを飛ばして投擲。離れて構えていたギルスとG3-Xを一箇所に誘導する。
「先にアンフェアな手に出たのはそっちだってこと、忘れるなよ!」
2本の武器を手にして力を込める。ハルバードの風が唸り、セイバーの炎が燃え盛る。2つの力を重ね合わせて、大きな波濤を巻き起こす。
トリニティ必殺の『ファイヤーストームアタック』で、両者をまとめて吹き飛ばした。
「〜ってぇ……! あんなのアリかよ⁉︎」
「怒らせてしまったようだな……!」
「興行としてはもう十分だろ……終わらせるぞ!」
両手の武器を交差させ、鋒から炎と竜巻が奔る。吹き飛んだ2人を囲うように轟いてその動きを封じ込めた。
「──オオリャアアアアッ‼︎」
全力を両脚に込めた必殺のドロップキック『ライダーシュート』が炸裂。白熱した模擬戦に終止符を打った。
生放送のカメラが止まったことを確認して、変身を解除する3人。多少の倦怠感と爽快感が全身を包む。
「感謝してくれよ? 2人があんまりにも負けたくないってうるさいから、わざわざ同時にKOしたんだからな」
「チッ……そこまで言われちゃ認めるしかねーな。お前さんにゃ敵わねーよ、陸人」
「ああ……すまない、熱くなりすぎた。迷惑をかけたな」
「反省してくれ。俺はともかく、向こうで作業してるスタッフさんは随分慌ててたぞ」
倒れる2人の手を引いて立たせる陸人。とりあえず放送中に顔を晒すという最悪のミスは避けられたが、あの妙な流れはうまく誤魔化せたのか。解説役のアドリブ力を信じるしかない。
「ま、放送が終われば今日は解散だ。メシでもどうよ? 勝者には特別に奢ってやるぜ」
「そりゃいいや。ゴチになりまーす」
「ふむ、では外食か……近くにいいうどん屋があるぞ」
「いいけどよ……お前に奢る筋合いはねーからな?」
「分かっている。むしろ陸人の分は僕が払おう。君は自分の分だけ数えておけ、その寂しい財布の中身をな」
「バッカお前、俺の懐具合舐めてやがんな? 上等だ、全員まとめて面倒見てやるよ」
「無理はするな。二年寝太郎にたかるほど僕も鬼じゃない。多少の手当てはもらっているしな。ここは広い心で全部出してやろう」
「ハハハ……2人で割り勘って発想はないのか?」
どんな話題でも小競り合いに発展する志雄と鋼也を、楽しげに眺めて時々茶々を入れる陸人。
付き合い自体は短いが、同じ戦士として──『仮面ライダー』として、彼らの仲は極めて良好だった。
「ふふ、そんな感じだったの……鋼也くんも昔の友達相手だとはしゃいだりするのね、ちょっと意外」
「流石に本番で意地張り合うとは思わなかったけどね……観てた人達、変な反応してなかった?」
「ええ。街頭の大型画面でみんなと観ていたけど、好評だったわよ。あの2対1の構図も、解説の人が連携訓練って言ってうまく誤魔化していたわ」
東郷家のリビング、多忙な日々の中で久々に帰ってきた陸人。美森はお茶を淹れてゆったりと団欒の時間を取っていた。
流石に大社も生放送という博打を打つに際して、最大限準備していたのだろう。口が上手い人物を解説に用意したようだ。
ちなみに神の使徒が人語をペラペラと話すのはイメージ戦略的にNGとの事で、音声はカットして放送された。あの少年っ気全開の会話は世間にお届けされずに済んだという事だ。
「先代の4人で集まるのって、明日だっけ?」
「そうよ。正確にはもう1人……当時の担当官で、担任の教師でもあった安芸先生も一緒に」
「そっか。直接顔を揃えるのは久しぶりだろう? 楽しんでおいで」
「ええ、ありがとうリク」
陸人といる時は基本ご機嫌な美森だが、今日は特に雰囲気が明るい。それだけ明日が楽しみなのだろう。
散華した供物が返還されてから1ヶ月以上が経過した。この間、勇者達は復活した機能を安定させ、勇者になる前の日常を取り戻そうとしていた。それぞれのリハビリがある程度落ち着いたということで、明日の約束までやっと漕ぎ着けたのだ。
「リクも、明日は久しぶりのお休みでしょう? ゆっくり羽を伸ばしてね」
「そうさせてもらうよ。ここ最近、今までにないタイプの疲労感がひどくてね……」
仮面ライダーとして市民に支持を得るために、数日ほど大社に宿泊させられていた陸人。
アギトをはじめとした仮面ライダーのイメージを固めさせる作業。
それに基づいた今後の立ち回り……戦い方にまで口を挟まれて辟易した集中講義。
更にはあくまで偶然の産物に見せかけて、なおかつ美しく威厳のある1枚を目指して行われた撮影会。
何をやっているんだろう、と仮面の奥で自分を見つめ直すこと幾百度。あれほど心を無にして過ごす時間は後にも先にもこれっきりだと断言できる。
「本当に大変だったのね、お疲れ様……でも、成果はあったんじゃない? リクがもらってきた写真。ほらこれとか、素敵だと思うわ。広げて部屋に飾ろうかしら」
「勘弁してくれ……家にまでそんなのがあったらいよいよ泣くぞ俺……」
「あら、残念ね」
なんだかんだ苦労は多くとも、あの決戦から一月、戦闘が起こることはなかった。世界全体で見れば平和な時間が過ぎていった。
「今日は約束があるんだろう? 時間はいいのか?」
「あー、昼からだから大丈夫だよ。それに、俺はずっとサボってたからな。お前は毎月来てたのに……」
「仕方ないさ。僕だって自己満足に過ぎないことは自覚してるしな」
翌朝、鋼也と志雄は墓地に来ていた。2人の親友、沢野香の月命日。志雄は欠かさず訪れていたが、志雄は数年ぶりの墓参りだ。
「綺麗にしてあるんだな」
「当然だ……ほら、君の花も」
不慣れな鋼也に志雄が手を貸しながら、いつものように清掃と黙祷を行う。ようやく2人揃って彼女の前に顔を出すことができた。
「俺はここから直接待ち合わせ場所に行くけど、志雄はどうすんの?」
「僕はいつも通りだ。タワーに帰って訓練を」
「カーッ、ようやくあのモデルの真似事みてーな苦行から解放されたってのに訓練かよ。もうちょい日々を楽しんだらどうだ?」
「余計なお世話だ。あそこには家族も友達もいる……それで十分なんだよ────っと、失礼」
墓地の出口で人とすれ違う。ぶつかりかけた謝罪を口にしながら、何気なく相手の顔を伺う。サングラスをかけて、全身黒で統一した大人の男性。年の頃は36〜37といったところか。
鋼也も志雄も、何故かその顔に見覚えがあったような気がして、思わず凝視してしまう。
「……何か?」
「あっ、いや……」
「不躾に申し訳ありません……どこかでお会いしましたか?」
「いえ、覚えはないですね……今日は墓参りに来たのです、失礼しても?」
「……重ね重ね失礼しました。それでは……」
まだ引っかかるのか、首を傾げながら去っていく鋼也と志雄。そんな子供達が見えなくなるのを待ってから、男は目的の墓石に向かう。
先程まで2人がお参りしていた、香の墓へ。
(この花、あの2人のものか……)
2人が供えていった花を捨てて、自分が持ってきた花に差し替える男。サングラスを外して瞳を閉じる。
(もうすぐだ。世界に問いかける時が来る……)
黙祷を終えた男の懐で端末が鳴る。画面に表示されたのは、簡素なメッセージ。彼が待ち望んでいた合図。
"事前準備は全て完了。予定通りに決行"
(私の選択を超えられないなら所詮そこまで……その果てに世界が終わろうが、知ったことか……!)
男の背中から、禍々しき黒い炎が立ち昇る。人の魂を闇に寄せる凶兆が、人類の生命線たる大社に牙を突き立てようとしていた。
同時刻、陸人は呼び出しを受けて大社本部に訪れていた。休む予定だったのだが、結局彼には自分の都合で頼みを断ることなどできなかったということだ。
(まったくこき使ってくれる……いや、逆か? 俺がメール1本でホイホイ出てくるから軽く見られてるのか?)
少しは強気に出るべきなのか。そんなことを考えながら誘導に従って進んでいくと、いつもとは違う神聖な雰囲気の広間に通された。
色彩や装飾も独特だが、室内にも関わらず数頭のアゲハチョウが舞っていて、空間の異質な雰囲気を助長していた。
(なんだ、ここ?)
「ふふ、気になりますか? 私の体質なんですよ。屋内でも時々蝶が寄ってくるんです」
「──っ⁉︎」
唐突に背後から少女の声。陸人は一切の気配を感じ取れなかった。
振り返るとそこには、柔らかく微笑む巫女服の少女。かなり小柄だが、包み込むような大きく暖かい雰囲気。所作の1つ1つが優美かつ穏和。見るからに華奢な少女なのに、陸人は人間と向かい合っている気がしなかった。
「君は……?」
「あら、申し訳ございません。ご挨拶が先ですね」
いつの間にか部屋の奥に立っていた少女。入口は陸人の側にしかないのだが。不思議極まる彼女は、楽しげな笑顔でゆっくりと歩み寄ってくる。蝶の髪留めでハーフアップにまとめられた濡れ羽色の長髪が、歩みに合わせて柔らかく揺れる。
「上里家当主、大社神事部の長を務めております……筆頭巫女の"上里かぐや"と申します。よろしくお願いしますね、御咲陸人様!」
弾むような声で名乗る上里かぐやなる巫女の少女。握手を求めて伸ばした右手を振って催促する様は年相応……むしろ少し純真すぎるくらいに見える。
しかし、事情に詳しくない陸人でも聞き流せない肩書きを連発された後では反応も難しい。そして何より……
(上里……上里?)
「どうかなさいました? 陸人様」
戻らない記憶の底にいる
神妙な表情で固まる陸人。細い肩に蝶を乗せたまま小首を傾げるかぐや。その可愛らしさに、緊迫した空気は数秒で霧散してしまった。
――各ライダーの支持率について――
アギト……きっかけとなった動画や「助けてもらった」という証言が多数出てきたこともあって、総合的には1番人気。
ヒロイックな容姿と色鮮やかなフォームチェンジなどが好評で、特に女性、子供からの人気が高い。
アイドル風に言うと人気投票1位ライダー。
もっと言うと激単推しライダー。
ギルス……一見怪人チックだが、それはそれでアリという声も多いアグレッシブ系。
野性味溢れる容姿と戦闘スタイルが特徴的。ワイルドさに惹かれた中高生男子や社会人の男性からの支持が厚い。
アーティスト風に言うと若者のカリスマライダー。
もっと言うと今キてる超エモいライダー。
G3-X……とにかく機械的で、実は人間が作ったロボットなんじゃ? と真実の一部を突かれつつあるメカニカル系。
その見た目や武器、戦闘スタイルからミリオタや二次元好きなど、いわゆるマニア層の組織票が付いていたりする。
オタク風に言うと今期の覇権ライダー。
もっと言うと安定の優勝ライダー。
教育が行き届いた神世紀でなければ、発表直後のネットは大変なことになっていたでしょうね。
美森ちゃんあたりは放っとけば良いのに、無闇に突っ込んで炎上とかしてたかもしれません。
感想、評価等よろしくお願いします。
次回もお楽しみに