A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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さて、何回"みこ"って言ったでしょーか?

ガッツリ説明回です。面白み薄めな自信があるので読み辛いようなら流し読みしちゃってください。
 


御子であり、神子となる見込みもある巫女

(おお、すごいな……宝珠にお札に……)

 

(そういえば、男の方をお部屋に入れたのは初めてかも……変なものとかなかったかしら?)

 

 かぐやの私室に案内された陸人。価値観自体は小市民な彼は豪奢な部屋に圧倒されて珍しくカチコチになっている。

 

「ふふ、見た目ほど高価な物は置いてありませんよ。肩の力を抜いてリラックスしてくださいな」

 

「あ、ごめん。いただきます──あっつ!」

 

 出された紅茶を一口。これまた陸人に馴染みのない高級茶葉の味だったが、それ以前に慌てて口に入れたせいで熱さに耐えられず噎せてしまう。そんな子供らしい所作に、かぐやはクスクスと忍び笑いを漏らす。

 

「どうかした?」

 

「いえ、すみません。勝手に思い描いていた陸人様像は、紅茶で噎せたりはしなかったもので」

 

「ハハ、ガッカリした? 残念ながらこれが俺だよ。ただ変わった力があるってだけの、普通の子供さ」

 

「そうなんですね……いえ、むしろその方がお話ししやすくて嬉しいです」

 

 かぐやは陸人がどう取り繕っても"普通の子供"の枠には収まりきらないことを知っているが、ここでは何も言わない。疑問を抱く自分自身に言い聞かせるような彼の言葉を、否定する気にはどうしてもなれなかった。

 

 

 

「最初に聞いていい? 今日は俺以外……鋼也達も呼んでるのかな?」

 

「いえ、私がお誘いしたのは陸人様だけですが、何故でしょう?」

 

「鋼也や美森ちゃんにとって、今日は大事な約束の日なんだ。先代勇者達がやっと集まる重要な……予定が変わってないなら良かったよ」

 

「ふふ、お優しいのですね。少々お待ちください…………

 ご安心を。園子ちゃん達は先程合流してお店の方に向かいました。大丈夫ですよ」

 

「……え? 今、なにを……」

 

「驚いていただけましたか? 実は私、ちょっとした魔法が使えるんです」

 

 数秒瞳を閉じただけで、見てきたかのように断言するかぐや。これが筆頭巫女たる彼女だけができる霊術、縁結び。

 直接関わって互いに心を開いた相手を対象に、現在地や様子を離れた場所から把握することができる。神樹の寵愛を多分に受けてきた彼女が、人の身でありながら単独で行使できる霊的術式の1つだ。

 

 

「先程、"筆頭巫女"と名乗りましたが、私は歴代の筆頭の中でも最高の適性を持って生まれたそうで……神樹様との対話、並びに力の一部をお借りして自分の意思で使うことができるんです」

 

 もちろん自由自在とはいきませんけどね、とおどけて笑うかぐや。実際に戦闘に特化した力を振るう陸人から見ても、あまりにも常識から外れすぎた力。散華という残酷な現実を見てきた彼にとって、見過ごせるものではない。

 

「それは大丈夫なのか? それほどの力を、なんの代償もなしに……」

 

「ご心配いただきありがとうございます……代々優秀な巫女を輩出してきた上里の歴史の中でも、私は特別なのだそうです。神様の恩恵を受け止めて馴染ませる器官のようなものが際立って強力なのだとか。物心ついた頃には神樹様とお話ができましたが、それで身体や心に支障が出たことはありません」

 

 最高の勇者適性を叩き出した友奈よりも更に上の資質を持って生まれた突然変異。神がその手で拵えた御姿よりも神聖に馴染む天然の神懸かり体質。それが今代の筆頭巫女、上里かぐやだ。

 

(そうか。一目見た時から感じてた違和感……この子は、気配が神樹様にそっくりなんだ)

 

 言ってしまえば常に神を宿しているに近い。本人の気質もあって戦闘には使えないものの、ほぼノーリスクで神の権能を引き出すことができる。その上、常に天運に恵まれ続け、呪いや言霊といった術的障害も一切受け付けない。

 

(……それともう一つ、この違和感は……)

 

 同時に、目の前の少女に引っかかる点が一つ。眩いばかりの笑顔を見せてくれているが、それが心からのものだとは陸人にはどうしても思えなかった。

 

 

 

「でも、これはこれで苦労も多いのですけれどね。特に幼い頃は力の制御もままならず、騒ぎを起こしたことも何度かありました」

 

 人の心の内を読み取り、偽りを見破る千里眼。限定的な未来予知と言ってもいい占術。現世を彷徨う死霊を宿して対話ができる憑依術。

 周りを舞う蝶達も、彼女が宿す神聖によって使役される使い魔のようなもの。元来"死者の魂がこの世に舞い戻った姿"とされてきた蝶。神樹に近い魂を持つかぐやに惹かれて集まっているのだ。

 

 他にも様々な人知を超えた能力を使うことができる。それもなんの修行もすることなく。上里の家名も含めて、かぐやは産まれた瞬間から通常の社会では生きられないことを定められていた。

 普通なら何かしら人格が歪んでもおかしくない……むしろそうなる方が自然と言ってもいい環境だ。彼女が今のように極めて清廉な人物に育ったのは、一番の話し相手だった神樹の影響も大きい。

 

「実演してみますね、たとえば──」

 

 周囲を舞う蝶に向けて指を伸ばす。ふわりとその先に止まった羽を暫し見つめると、何か得心したように頷いて小さく笑う。

 

「陸人様は昨日、一緒に暮らしている東郷美森様とお話をされていました。やはりあのメディア戦略はお気に召しませんでしたか?」

 

「……驚いたな。まるで見ていたみたいだ」

 

「昔はこれの制御が効かなくて、周りの人の秘密を覗いたりバラしてしまったりと大変でした……

 あ、ちなみに東郷様ですが、本当にあの写真を飾るおつもりのようですよ。家に帰ったら抜き取られた写真がないか、確認することをお勧めします」

 

「えぇぇ……分かった、ありがとう、かぐやちゃん。本当にすごいね」

 

 聞いておいて良かったが、できれば聞きたくなかった秘密を知った陸人は参ったように頭を振る。あまり望ましくない結果で、かぐやの能力が実証された。

 

 

 

 

 

「それで、かぐやちゃんの力はよく分かったけど、本題はこれじゃないよね?」

 

「はい。陸人様のことは色々聞いていて……園子ちゃん達から」

 

「さっきも名前を出してたね。大社がらみの知り合い?」

 

「ええ。乃木と上里は大社の二柱。歳も同じですし、良いお友達ですね」

 

 園子が勇者に選ばれてからはしばらく会えていなかったが、彼女が祀られてからは同じ本部で過ごす間、度々話をしてきた。陸人のことを園子に教えたのもかぐやだ。特殊な環境に産まれた2人は、唯一の同じ立場の友達として、幼い頃から互いに頼り頼られる良好な関係をずっと続けている。

 園子にとってもかぐやにとっても、相手が最初の友達だ。それもあって、園子の心を守ってくれた陸人のことを、かぐやは初対面から好意的に見ていた。

 

「それから神樹様からも、よくお話を聞かせていただきました」

 

「神樹様が、俺を……?」

 

「そのことも含めて、私は陸人様の過去を一通り知っています。お伝えすることもできますが……」

 

「いや、やめとくよ。この前園子ちゃんに聞いたけど、一度あの子からも昔のことを教えてもらってるらしいんだ。だけど結局俺は暴れて、その記憶ごと頭からかき消してしまった。少なくとも、人に聞いてどうにかなる問題じゃないんだと思う」

 

 困ったように笑う陸人。思い出すべきなのか、このままにしておくべきなのか。思い出したいのか、忘れたままでいたいのか。自分のことなのに、彼はまだ何一つ決められずにいた。

 

 

 

「そうですか。では、そのことには触れずに本題をお話ししますね……この世界を蝕む悪意について……さらに言えば、この戦いの元凶についてです」

 

「……! 元凶……それは天の神じゃないのか?」

 

「確かに天の神も奥に潜む存在の一角です。ですが、それと並び立つ存在が他に二つ……我々が打倒しなくてはならない敵がいるのです。

 ……長い話になります。内容的に難しいかもしれませんが、力を抜いて、ゆったりと聞いてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ人という種が生まれるよりも前、はるか過去のこと。世界は数多の意思が融合した唯一神が管理していた。一つとなった神の中で、数えきれない意思がぶつかり合い、それでも最終的には結論を見出して世界に被造物を増やしていった。

 

 そんな中、神の中で己の意向を却下され続けた意思達が少しずつ世界や神そのものを呪う思念を持ち始めた。神の一部としてあってはならない"悪"の生誕だ。

 

「神々の間では、この悪の集合体を罪爐(ザイロ)と呼称しています……罪を集め、燃やし、大きな炎とする存在という意味合いでしょうか」

 

「罪の(いろり)……罪爐(ザイロ)……」

 

 罪爐は負の思念を集めて瞬く間に成長。現世に影響を及ぼすほどにまで膨れ上がった。神の被造物たる生命達を脅かすようになった罪爐を放置できず、神はついに立ち上がる。

 

 現世を壊さないためには力を落とさなくてはならない。一つだった唯一神は意思ごとに分裂して罪爐を討滅すべく現世に降り立った。

 神と罪爐は激しくぶつかり合い、その中で数多の命と、神の一部であった意思達も多くが失われた。

 

 特に、最初に"悪"感情を生み出してしまった意思達は罪爐と向かい合った途端に吸収されて敵の力へと変換されてしまった。そうして力の総数ではほぼ互角となった決戦は長く続いた。

 現世の生命の半数以上が失われ、ようやく戦いは終結。神の一撃が罪爐をカケラも残さずに消滅させたのだ。

 

 しかしその内に秘めた力は神の想定を大きく上回っていた。消滅と同時に解放された"悪"の力は、世界を構築する"壁"を千々に引きちぎった。一つだった世界は幾千幾万に別たれ、同時に分裂したままだった神の意思達もそれに引きずられるように分かれて散っていった。

 

 

 

 

「これが俗に言う『並行世界』の真実です。悪意の爆発によって、世界は"唯一絶対の一"という在り方を保てなくなりました。理論的な話は、私にはよく分かりませんけど」

 

「……開幕から飛ばすね。それで、枝分かれした先の一つが俺たちが今いる世界ってことでいいのかな?」

 

「はい。別の世界のことは神樹様もほとんどご存知ないとのことですから、割愛させていただきます……さて、なんとか"悪"を討滅して安寧を取り戻した世界ですが、失ったものも多くありました」

 

 

 

 

 そもそもの問題は神が"悪"というものがあること、己の内から生まれ得ることを知らなかったゆえに起きた。生命を壊され、力も大きく削がれた神だったが、このことを教訓にゆっくりと世界の再構成を進めた。以前のような速さには到底及ばなかったが、罪爐を生まないことに注意して、ゆっくりと世界はかつてのように……かつてを超えて生命で溢れる場所になった。

 

 数えきれない時間が過ぎて、人間と呼べるものも少しずつ成長していった。神も安定した世界に安堵して、このまま緩やかに世界そのものが成長するのを見守ろう。

 そんな結論を出そうとしていた矢先──

 

 

 

 

「人に極めて近い戦闘種族が、古代の人類を虐殺する遊戯を始めたんです……戦闘種族は『グロンギ』、標的とされた部族は『リント』……世界分裂以来の激しい戦いが続きました」

 

(……グロンギ……リント……なんだ? 何が引っかかる?)

 

「その頃には神が直接生命を創造することも殆どなくなっていました。グロンギは世界の進化に任せた結果生まれてしまった……"悪"へと繋がる生命だったのです」

 

「人によく似た、人を襲う戦闘種族……」

 

「……当然これを放置できず、神もリントに力を貸しました。現世への影響も考えて直接討滅には出向けませんでしたが、神霊の権能を授けることでグロンギを封印する戦士を生み出したのです」

 

「……それが……"クウガ"……」

 

「何か思いだしたのですか?」

 

「いや、頭に浮かんできて……ゴメン、続けて」

 

 話がグロンギに移ったあたりから頭痛が止まらない。これは思い出せという叱咤なのか、思い出すなという警告なのか。

 

 

 

「そのクウガと神々の共同戦線で、なんとか全てのグロンギを封印することができました。クウガも封印を盤石にするために同じ祠で眠りに就いたそうです。

 争乱自体はそうして終息しましたが、同時に大きな問題が発生していました。命を奪われる争いの中で、人類の感情が再び罪爐を蘇らせてしまったのです」

 

 当時、悪を生み出せるのは神だけと考えられていた。しかし、神から理性と自由意志を授かった人間もまた……罪爐を生み出す素養を持ってしまった。

 神の真理の一部にまで手が届く存在に進化した人間。そして一方で堕罪を経て悪を回避することができなくなった人間は、負の宿業までも受け継いでしまったのだ。

 

 

 

 

「少し話は逸れますが、罪爐について私が知る限りをお教えします。罪爐は人間や神霊のような自身を定義する"個"がありません。だからこそ尋常な手段では討滅できず、悪感情があればあるだけその力は肥大化していきます。

 そして何より危険なのは、罪爐は個の魂や世界そのものに干渉することができる点です」

 

「魂に干渉ってのは何となく想像できるけど、世界に干渉ってどういうこと?」

 

「1番近い言葉は因果律制御、でしょうか……起こり得るいくつもの未来の可能性の中から、自分に都合の良い現実を引き寄せて自然の流れを書き換えることができます」

 

「……何だそりゃ……」

 

 身もふたもない、とはこのことか。人類が終わる未来を引き寄せられれば、その瞬間300年に渡る奮闘は水泡に帰する。生存闘争にルールはないといえど、流石に反則だと言いたくもなる。

 ……が、現実として今そうなっていないということは、敵にはそれができない理由があるということだ。

 

「もちろん無制限に何でも操れるわけではありません。罪爐が支配できるのは、自分の呪いがかかった存在にまつわる運命のみ。そして完全に堕ちた魂でなければ生死に関わるほどの大きな干渉はできないようです」

 

 個の魂に干渉して、悪の方向にその意思を傾けさせる。その支配の完成度に応じて関連する因果を操れる領域も変動する。

 平易に言い換えると、相手が呪術にハマればハマるほど、その魂に関する現実を好き放題できるようになるということだ。

 

「大社にもその魔手は伸びています。私達も対処してはいますが、全体の7割には罪爐の手が回っていると考えています」

 

 それでもギリギリで大社が堕ちていないのは、全ての職員の根底にある"神樹信仰"が踏みとどまらせているからだ。

 かぐやの術で加護を受けている上里とその庇護下にある真由美の派閥。本部から離れて独立行動をとっている防人部隊。これらの奮闘もあって、何とか大社の初志は崩さずに今日までやってこれた。

 

「これまでいくつもの不祥事や、偶然で済ませるには不自然なほど不運な事故がありました。全てを罪爐のせいにするつもりはありませんが、そのうちいくつかは呪いに堕ちた者が干渉を受けた結果なのでしょう」

 

(不運な事故……あれ? 誰かに聞いたような……)

 

 大社にまつわる過去の惨劇。何人も介した又聞きだったせいではっきりとした内容は伺えなかったが、数年前に大きな出来事があったと最近になって陸人は話を聞いていた……が、後に続く話の規模の大きさに流されて、薄ぼんやりとした記憶は再び頭の奥にしまいこんでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「以前のように世界に干渉できるほどの規模には程遠い状態でしたが、人間の感情によって復活したのは明白……神達は慎重に様子を伺いながら人間の進化を見守っていました」

 

 その後、幾星霜を超えて人間は時に新たな社会構造を生み出し、時に人類同士で争いながら成長していった。

 それと同時に、ゆっくりと、だが確実に人の感情を喰らって罪爐が成長を遂げてきた。その都度神も対処はしていたものの、根源から討滅しようとすれば、また世界全てを巻き込んだ闘争が巻き起こることになる。

 

「そして西暦も2000年を過ぎた頃、神々は意見の相違からまたしても分裂、対立することとなります。

 罪爐から世界を守るには、根源たる人間を滅ぼすしかないと考えた過激派の神々の集合体が"天の神"。

 あくまで人間は護られるべきこの世界の生命の一種であるとして人類側についた穏健派の神々の集合体が"神樹"様です」

 

 そうして起きたのが始まりの勇者達の戦い。人間の可能性を恐れたものと人間の可能性を信じるもののぶつかり合い。

 それは9割以上の人類と四国以外の地球の全土が滅びることとなり、数多の犠牲の果てに痛み分けのような形で終わりを迎えた。

 

「この戦乱を終結させた英雄は、人の身に生まれながら最終的に神の位に到達して、その力で天の神を打ち破りました……それは神々にとっては有り得ない、あってはならない事態だったのです」

 

 最初の神と悪の争乱で分かたれた世界。その境界線である世界の壁は、事故的な流れで生まれたせいで不安定な造りをしていた。ごく稀に、一瞬世界の境目が揺らいで隣の世界との距離が非常に近くなるタイミングがある。

 何千年という長い周期で訪れるために神霊以外は気づきもしないが、逆に言えば神はそのタイミングを確実に知覚できて、その上権能を用いて他世界に干渉することも不可能ではない。

 

「そのタイミングが、恐ろしく悪かったってことかな?」

 

「はい。ちょうど英雄が現人神へと至ったまさにその瞬間、2つの世界は密着状態でした。すぐ隣の世界にいた別世界の神……"テオス"はそれを感知。なんと()()()()に転移してきました」

 

()()()()でも人間に関して何かあったのか、訪れたテオスは人間に対して過剰に警戒心を持っていた。人から神に至るという誰も考えなかった可能性を示してしまった人類。再び罪爐が蠢いている現状もあって、テオスは人類殲滅に肯定的だった。

 

「それだけならまだ良かったのですが、テオスは総体としての人類に対して愛も持っていました。しかしその愛はやがて憎しみへと変わっていきます……神が絶対に持ってはならない、"悪"の感情です」

 

 自分の世界で起きた何事かの影響、そしてこちらの世界の状況の悪さが複合して、テオスの感情をひっくり返してしまった。そして神の悪感情は、罪爐にとって人間のそれとは比較にならないほどに上質な餌となる。

 

 理性を持つものとして産み出された人間には、罪爐に力をもたらす性質がある。同時に、罪に堕ちた人間には悪感情を出さない、と己を律して貫き通すことはできない。罪爐からすれば定期的に餌を確保できる都合の良い寄生相手だ。

 

 一方で神霊は、一度犯した過ちから感情を揺らさないように己に枷をはめていた。しかし、一度でもその枷を外してしまえば、手に入る悪の力は人間の比ではない。罪爐にとっては手間をかけてでも狙うべき優先目標だ。

 

 そしてテオスは、自分の世界で起きた動乱──己の使徒の離反と、それによって神に届き得る進化をしてみせた人間達──によって心を乱されていた。

 そんな彼に追い打ちをかけるように、隣接世界で実際に神に至った英雄。更に復活した罪爐の存在によってテオスの心は限界を迎えた。乱れきった神の魂の隙をついて罪爐が憑依。不完全ながらある程度その意志を支配するまでに至った。

 

 

 

 

「これが、近年になってバーテックスと並ぶ形でアンノウン……マラークが人間を脅かすようになった経緯です」

 

「スケールでかすぎて頭痛くなってきたな……つまり、敵は天の神と、そのテオスと、元凶の罪爐ってわけか?」

 

「その通りです。天の神に関しては、テオスと罪爐が本格的に活動するまでは静観の姿勢を貫いていたのですが……呼応するように動き出してしまいました。私達は最低でもその3つを打倒しなくてはなりません」

 

 ──パァンッ!──と両手を合わせて大きな音を打ち鳴らすかぐや。その一瞬で屋内だった周囲の景色が一変。煉獄の炎に焼き尽くされ続ける壁外の光景が広がっていく。

 

「単独で世界をこんな風に変えてしまえるほどの存在が三体、敵に回っているということです。この絶望的な事実を、最強の勇者である陸人様にお伝えするために、今日はご招待させていただきました」

 

 重すぎる真実を告げるその声はわずかに震えていた。常に浮かべていた微笑を引っ込めて、厳粛な雰囲気で陸人を見つめるかぐや。周囲の炎が映る瞳の奥には陸人への期待と、隠しきれない不安や恐怖が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 




かぐやちゃんはとにかく神秘的で優美な女の子をイメージしました。これからも彼女には大事な役目を担ってもらう予定なので、できれば応援してあげてほしいキャラクターです。

そして駆け足で明かされた世界の真実。色々な哲学や自然法論をこねくり回して独自の世界観をでっち上げました。ツッコミどころは多々あると思いますが、もともと予定になかったアギトを絡めるために突貫で組み上げた背景設定なので、粗さは大目に見てもらえるとありがたいです。

感想、評価等よろしくお願いします。

次回もお楽しみに


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