A New Hero. A Next Legend 作:二人で一人の探偵
「……それで、2人の容態は?」
「今はまだ眠っているけど、傷はそれほどのものではないわ。じきに目を覚ますでしょう」
ゴールドタワーの医務室。その入り口の前では、傷を負った2人を連れてきた陸人が真澄と向き合っている。しっかりと話すのはほぼ初だが、今は悠長に挨拶をしていられる状況ではない。
「助かったわ、御咲くん。あの時間の連絡に応えてくれて」
「いえ、俺は連れ帰ることしかできませんでしたから……」
G3-Xの起動を知った真澄が連絡を取ったのはもう1人のライダーである陸人だった。大社からの帰り道だった彼は、座標を聞いて即座に飛び出し、トルネイダーで乱入したのだった。
「G3-Xの記録映像で大まかな事情は把握したけど、解除後は分からない。あなたが見た限りのことを教えてくれるかしら?」
「分かりました、と言っても、俺もほとんど何も聞き出せませんでしたが……」
「アハハ、2人ともまるで死人に会ったみたいな顔しちゃって……って、それで合ってるんだっけ」
「……ぁ……え?」
「クソッタレ……なにをしやがったんだよ、お二人さんよお!」
「…………」
「それは……」
非難混じりの鋼也の追求に、哲馬も雪美も何も返さない。
自分の眼からは紛れもなく沢野香の姿が見える。しかし本人そのままと言うには、違和感が拭い去れない。生前の彼女とは少し性格が違う。こんな奔放で、言ってしまえば無責任な態度は取らなかった。
「えー? ひどいなぁ、あんなに一緒だった幼馴染を忘れたの?」
「うるせえよ、テメーが香だと? 俺の神経をこれ以上逆撫ですると、どうなるか分かんねえぞ」
「ふーん? でも志雄の方はちょっと違うみたいだけど?」
ずっと黙っていた志雄はというと、全身で混乱しきっていた。目は泳ぎ、口は半開き、呼吸は浅く、全身を細かく震わせてなんの挙動も起こせずにいた。
「おい、志雄……志雄⁉︎」
「さて、それじゃちょっとの間おネンネしててもらおっかな」
香が再び端末を構える。動けない志雄を引きずって逃げようとする鋼也だったが、そうする本人もダメージは残っている。逃げようにもそんなスピードが出るはずもない。
「変、身っ! んじゃ、おやすみ──」
「──させるかよ!」
上空から舞い降りる金色の影。トルネイダーで急行したアギトが両者の間に割り込んできた。アギトは弱った仲間達と敵対する3人を視認すると、最低限の状況把握を終えて構えた。
「おっ、出た出たアギトだ!」
「今回はあくまで様子見……こんな大物釣り上げるつもりはなかったんだけれどね」
「釣れたものは仕方あるまい。それに、少し興味もあった」
「なんだ、あなたたちは……見たこともないGシリーズに、アギトに近い力……それに、白衣のあなたの仕込みか? この周辺に配備された銀色のパワードスーツ達は」
「そうよ、"V1"は交通整理代わり。無関係な邪魔者が紛れたら困るからね。戦闘音が聞こえる範囲は人払いしておいたの」
ここに来るまで、陸人は銀色の影が警邏のように周囲を回っているのを目撃した。トルネイダーで雲の上から飛び込んだおかげで捕捉されなかったが、陸路からでは確実に見つかっていただろう。
「あれだけの戦力を保有している。鋼也と志雄を追い込むほどの実力もある……なんなんだ、あなたたちは」
「……あと半日待て。そうすれば分かる」
「……その口ぶりだと、半日以内に何かしでかすって言ってるように聞こえるな」
「そう言ったつもりだが?」
「それを聞いちゃ、見逃すわけにはいかないな……!」
「そうか」
向かい合う2人のアギト。両者は同時に足を開き、必殺の紋章が地面に浮かぶ。
「……ぉおおおおおおっ‼︎」
「スゥ────…………ムンッ──‼︎」
"ライダーキック"と"アサルトキック"のせめぎ合い。空中で正面から衝突した両者の必殺技は、周辺に破壊的な衝撃を撒き散らし、膨大なエネルギーが炸裂した。
(……っ、互角……いや、わずかに押し負けたか)
着地したアギトが顔を上げた先には、誰の影もなかった。必殺技の激突で生じた混乱に乗じて離脱していたようだ。周辺に感覚を向けると、あれほどいた見張り役のパワードスーツも全員撤退している。
組織的行動があまりに迅速すぎる。よほど良い指揮官がいるのか、革新的なシステムでもあるのか。
「……そうだ、鋼也、志雄!」
先の衝撃で意識を失った鋼也と志雄。陸人はひとまず2人を乗せて超特急でゴールドタワーに帰還した。
「そう、改めて助かったわ。あなたが来てくれなかったら今頃どうなっていたか……」
「いえ……あのアギト、相当な実力者です。俺も全力を出したわけではありませんでしたが、それは向こうも同じでしょうし」
(そしてあの失敗作をあちらは制御している。あの"沢野雪美"が敵に回ったとなると、他にもまだカードがありそうね)
防人や満開を実現レベルまで引き上げた発展研究のエキスパート、沢野雪美。彼女なら雛形たる設計図さえ手に入れればどうとでもできるだろう。数ヶ月前、真澄の研究施設に侵入したのは彼女と見て間違いない。
(作ってはみたけどすぐにボツにしたG4……盗られたデータは他にもあった。それに……)
「姉さん、御咲くん、緊急事態です!」
高速で回り出した真澄の思考を止めたのは、妹である真尋の呼びかけ。珍しく焦りに焦ったその声は、並々ならぬ事態を予感させる。昔からこの妹は自分で思っているほど感情の制御がうまいタイプではないのだ。
「大社本部が、制圧されました!」
ほらやっぱり、と真澄は頭を抱える。こういう時の知らせというのは、大抵ロクなもんじゃない。
「状況を整理するわよ」
作戦会議に参加しているのは僅か3名。小沢真澄、安芸真尋、御咲陸人だけ。陸人と並ぶライダーである篠原鋼也と国土志雄はまだ目を覚まさない。そして他の力を持つ少女達だが……
「最初から狙っていたとしか思えません。相当数の離反者がいるとみて間違い無いですね」
「確かに……決行のタイミングも、ここまでの手際も。ポッと出の反抗勢力じゃない。最悪な予感が的中しちゃったわね」
まず現役の勇者。彼女達は現在システムを手放し、勇者としての役目を外れている。戦力と数えることができない以上、今回の件には巻き込まない。陸人の強い主張で、現状を伝えない方針に決まった。
次に挙げられるのがこのゴールドタワーに常駐している防人部隊。しかし彼女たちもまた今回は戦力として含めない。防人システムを無力化されたからだ。
本部の意向からは多少外れて行動の自由が広く認められている防人だが、その代償としてシステムの管理者権限を本部にも持たせる形でお互いの妥協点としていた。それを利用して、敵は全防人の端末をダウンさせた。
管轄外である防人に関しては、いかな真澄といえど短時間で復活させることは難しい。そして現状はそんな余裕を許さないほどに切羽詰まっていた。
「大社本部で狙うとしたら、なんだと思いますか? 安芸さん」
「私が天の神側であれば、真っ先に神樹様ですね。本部には御神体直通のルートがあります。逆にその道以外は絶えず強固な結界で覆われている。直接狙うならそこが一番の急所です」
大社本部の敷地は神樹の本体を覆い隠すように面している。数十年前の大改築によって、その唯一の道も筆頭巫女が許可しなければ開かないように作られている。
「神託を受ける巫女達でさえ、御所とは壁で隔たれた滝で修行を行います。今の時代で直接御目通りをしたことがあるのは、お歴々の数人と筆頭巫女様だけでしょう」
筆頭巫女の役目の1つは、神樹に近づく人間の選別。逆に言えば、かぐやを確保して従わせることができれば、ノーリスクで御所に入れるということでもある。
「……まずいな、かぐやちゃんが危ない」
「筆頭巫女様がいる最上階の警備は厳重ですが、その警備を担当する者達の内こちら側でいてくれるのが何人いるか……」
「本部が堕とされた、と聞きました……」
「それ、マジな話か? だとしたらのんびりしてらんねえぞ」
微妙に動きがぎこちない身体を引きずって、会議室に入ってきた2人。行き交う職員の話を聞いて、いてもたってもいられなかったのだ。
「鋼也、志雄……」
「2人とも、怪我はもう平気なの?」
「国土志雄、問題ありません……いつでも出れます」
「右に同じくだ。本部には銀達がいる、ほっとくわけにゃいかねーだろ」
「! そうだ、巫女の合同鍛錬として、亜耶も昨日から本部に……!」
「オイオイ、ヤベエじゃねーか!」
焦りを隠さず、考え無しに飛び出そうとする鋼也と志雄。しかし陸人はそれを見過ごせない。素早く入り口の前に割り込んで足止めする。
「……陸人、どいてくれ」
「無策で動いても助けられない。ひとまず落ち着いてくれ」
「んなこと言ってる場合かよ⁉︎ こうしてる今も──」
「分かってる! だからこそ迅速に確実にみんなを助ける手段を見出そうとしてるんだ! いいから一回座って、傷を診てもらうんだ」
らしくない荒い声を上げた陸人。その剣幕に、2人の頭に登った血が急速に降りていく。力無く席に座ったライダー達を見て、真澄が再び会議を主導する。
「ハイハイ、頭冷えたならこれを見てちょうだい。念のために本部に内密に仕込んでおいた隠しカメラの映像よ」
スクリーンに映し出される本部の状況。明らかな問題発言だったが、この非常時にそこに突っ込む者はいなかった。
「見張りは……例の銀色が何体か。思ったより少ないな」
「いや、屋外に戦力を回してるみたいだ……あのバイク、まさかG2か?」
本部の敷地を囲うように展開しているパワードスーツ。全体の数は確認できないが、50体以上は確実だ。しかもその全てが奇妙なバイクに跨っている。細部は異なるが、Gシリーズの自立機動兵器によく似ていた。
「なるほど……G4と一緒にG2のデータも持っていって、強化開発に量産までこの短期間で……相変わらず器用な人ね」
操縦者を擁することで制御の安定化と性能の向上を図る。こうした発展、改造が研究者沢野雪美の得意分野だった。
「なあ、俺達は香の母親ってことしか知らねーけど、そんなにすげえ人なのか?」
「ええ。私が抜ける前だから、10年ほど前になるけれど……私が口出しした勇者システムのブレイクスルー、アレをより実践的な形に整えたのはあの人だったはずよ。精霊バリアや満開の基礎理論なんかは彼女の頭から生まれたものなの」
「調べたところ、その危険性を訴えて採用を見送らせた直後に娘の事故が起きて……そのまま姿を消したとあります。姉さんとは別種の才覚の持ち主と言えるでしょうね」
「あの人は眼が良いのよ。現存するもののどこが不要で、どこを伸ばせば良いか、それを見抜くのが異様に早くて正確だった」
小沢真澄を0から1を生み出す天才だとするならば。
沢野雪美は1を1000に伸ばす天才だと言って良い。
その彼女が作り上げた一大戦力。アナザーアギトやG4だけに気を取られていてはそこまで辿り着くのも難しいだろう。
「そしてG4……私がG3-Xよりも前に設計した欠陥兵器。アレは人間が扱えるシステムじゃない、むしろシステムが人間を扱う、最悪のマシンよ」
「G4……そうだ、真澄さん。あの装着者、あれは……」
「……記録映像から調べたけど、反応はアンノウンであることを示していたわ。他者の姿を写し取るような能力を持っているのか、それとも……」
少し躊躇しながら説明する真澄。
何故死んだはずの沢野香が生きてあの場にいたのか。
何故人間には耐えられないはずのG4を使いこなしていたのか。
簡単な話だ。"人間ではない"という一言を前提に挟み込めば、全ての不条理はまかり通る。
……いったいどんな心境で死んだ娘の現し身を連れているのかは、誰も理解できなかったが。
「……やっぱそうか」
「篠原くんは感知していたのね?」
「ああ。他のアンノウンと比べるとかなり気配が薄かったけど、変身解いた瞬間に分かった。それ以外にもおかしなところはあったしな。志雄もそうだろ?」
「そうだな……まず香の死は僕達がこの目で確認している。それに、生前の香とは、うまく言えないが、何かが違った。雰囲気というか、言動というか……時折驚くほど似ていたが、時折目を疑うほどに差異があったんだ」
死者は蘇らない。鋼也も志雄も、そんな摂理は最初から理解していた。だからこそ、このまま引き下がることはできない。大切な友達の死と生を冒涜するようなやり方を見過ごせるほど、2人は達観してはいないのだ。
(だけど、1つ引っかかることがある……どんな手段で、
真澄は生前の沢野香の写真を見たことがある。昨夜の映像と照らし合わせて、確かに鋼也や志雄から見ればあの姿は紛れもなく成長した香に映るのだろう。しかし、もしそうだというのなら。
何故誰も知らない成長後の姿を模倣することができるのか。あの年恰好の彼女はこの世にいたことはない。誰の記憶にも存在しない。アンノウンの超能力、の一言で片付く問題なのかどうか。もっと大きな力が働いている。真澄の鋭敏な第六感は、新たな危機を予感していた。
画面は切り替わり、最も広い講堂が映る。そこには本部に残っていたまだ染まっていない職員達が集められていた。
「不確定要素を一箇所に固めようとしている……つまり、敵はまだ目的を達していないということになるわ」
「全体を把握したい、カメラを切り替えてもらえますか?」
講堂全体を見通す陸人達。各自見知った顔を探して状況把握に努める。
「かぐやちゃんがいない……まだ逃げてるのか、別のところに捕まってるのか……」
「銀は……いた。大人しくしてるな。でも園子がいねえ、アイツらがはぐれるなんて……」
「……亜耶もいたな」
(あの子は下手に動くと怪我をしそうだから、むしろ安心か……ん? あれは三好さんか。あの人がいるならひとまずは大丈夫だな。急ぐ必要はあるだろうが……)
どうやらまだ敵は本部の全てを掌握しきれていないらしい。今ならまだ間に合うかもしれない。
緊迫した空気を吹き飛ばすように陽気な着信音が鳴り響く。陸人が端末を確認すると、画面には"乃木園子"の文字。慌ててスピーカーで応答すると……
「繋がった! りくちー、今どこ?」
いつもの間延びした口調とは違う園子の声。それだけ事態が逼迫していることを物語っている。
「園子ちゃん、良かった。本部のことは大体分かってる。今は鋼也達と作戦を立ててたんだ。そっちの状況を教えてくれ」
「ほんと? ちょっと安心したよ。今かーやんと2人で隠れてるんだけどね」
「かぐやちゃんが一緒なのか?」
「はい、ご心配おかけしました。私は無事です。どうやら狙われているようですが……」
園子とは異なる少女の声が届く。陸人以外はかぐやの声を聞くのは初めてだったが、話の流れで彼女が件の筆頭巫女だということはすぐに分かった。
「乃木さん、安芸です。あなたがいる場所と、見てきた限りの状況と経緯を話してちょうだい」
「あ、せんせー。分かりました、えっと〜……」
園子の話では、夜中に事態を察知した篠原真由美が2人を叩き起こして逃がしてくれたのだそうだ。その途中で真由美は足止めに別れ、本部から出ようにもすでに出口は全て塞がれている。とりあえず資料室に隠れて追っ手をやり過ごしているのが現状だ。
「それで、職員の大半が黒い影に覆われて、そのまま挙動がおかしくなったのね?」
「そうなんです。正常な人達が時間を稼いでくれて私達は逃げられたんですけど」
「そして侵入者に従うようになった人員にV1を装着させて部隊を展開、か……見たところ主犯はほんの数人みたいね、舐められたもんだわ」
「大分状況が掴めてきたわ。ありがとう、乃木さん」
「いえいえ〜、すみません。勇者の力が手元にあれば……」
「そんなことないよ、2人が無事で本当に良かった。これで俺達も動ける」
「りくちー……えへへ、ありがと〜」
あまりにも手際良く制圧された理由はここにある。年単位の呪術的侵攻によって、大社の警戒網は意味を成さないレベルで無力化されていたのだ。
「陸人様、お気をつけください。先程から何故か神樹様と繋がることができなくなっています。巫女として生きて十余年、このようなことは初めてです」
「前に話してくれた、超常の存在の仕業かもしれないってことか」
「はい。本部全体を覆う影が濃くなっております。今までは職員に取り憑いている程度だったのですが……」
(大物が直接出張ってきた可能性もある、か。新しいアギト、新しいGシリーズ、敵の首魁……考えること多くて嫌になるな)
敵の目的は神樹への直接攻撃。そのためには本体を守護する結界を解除できるかぐやを狙っている。そして当のかぐやは包囲を抜けられず、敵陣地と化した本部の中にいる。まさに土俵際だ。
「ありがとう、状況はよく分かった。俺達が必ずなんとかする。2人は自分たちの安全を最優先してくれ」
「りょーかい〜」
「分かりました、よろしくお願いいたします」
「……そうだ、園子ちゃん。今日の約束は、君の部屋に17時で合ってたよね?」
「え?……それで合ってるけど、急にどうしたの〜?」
かぐやにかかりきりになっていた最近の陸人が面白くなくて、園子が珍しく強引に取り付けた逢瀬の約束。2人だけで夕食を共にして、ゆっくり話をする予定だった。
「今は9時15分……約束の時間までに全部片付けて、必ず君に会いに行く……だから、信じて待っててほしいんだ」
「っ! りくちー……君は本当に、律儀で優しくて……変な人だよね〜」
これほどの一大事だ。園子自身約束のことは言われて思い出したくらいだった。それなのに。
「俺は約束は絶対に守るよ。それだけは自分を誇れる……譲れないところなんだ」
「……ふふっ、分かったよ。それじゃあ園子さんはりくちー達を信じて待ってるから……」
緊迫していた園子の心がほんの少し、だが確かにほぐされたことを、隣で見ていたかぐやの眼にはっきりと見て取れた。
「なるべく早く来てね? りくちー、約束だよ」
「ああ。"仮面ライダー"の名にかけて」
心からの誓いを最後に、通信が切れる。
出会うたび、戦うたびに背負うものは増えていく。そしてそのたびにより毅く進化するのが、御咲陸人という勇者だった。
「ヒューッ、言うじゃねえの色男」
「あんな無茶なことを言い切って、本当に大丈夫なのか?」
「俺は自分の言葉は曲げない。できないことは最初から言わないし、一度交わした約束は絶対に守る」
微笑を浮かべて断言する陸人。その眼には一切の迷いがない。自分の力に自信があるのではなく、何がなんでも諦めない不屈の誓い。それこそが今日まで陸人を陸人たらしめてきた心の光だ。
「なら、俺も手ぇ貸すぜ。やらなきゃならねえこともあるしな」
「僕達が負けたからこんな事態に陥った。そのケジメはつける」
「……いいのか?」
「ああ、今度は負けねえ。本気を出せば……」
「その本気を出せるのか? 俺は大まかなことしか聞いてないが、迷いを抱えたままでは連れて行けないぞ」
「……やれる。陸人も言ってただろう? 仮面ライダーの名にかけて、って。僕達も同じだ。ヒーロー気取りの若造、などと思われるわけにはいかないからな」
陸人に負けじと強い瞳で見つめ返す鋼也と志雄。それぞれ、ケジメをつけなければならない相手がいる。それは男の意地、の一言で片付くようなものではあったが、同じ男である陸人には2人の気持ちが正しく理解できた。
「……分かった。それなら、外の戦力は俺が引き受けよう」
「いいのか? 俺達にとっちゃありがてーが」
「適材適所さ。例の2人はどちらも屋内にいるし、こっちは3人しかいない。役割分担としては妥当だろ」
「すまん、助かる……必ず勝って、全てを守ると約束する」
「ああ。それじゃ行こうか……死ぬなよ、2人とも」
2人に向けて拳を突き出す陸人。同性の仲間というのが初めてなこともあり、いつもより少し楽しげだ。
「心配すんな、俺は不死身だ」
「このバカの世迷い言は置いといて、僕はそんなヘマはしないさ」
「んだとコラ志雄!」
「ハハッ、調子出てきたんじゃないか?」
拳を合わせて必勝を誓う3人。こうして、世界の明日は少年たちに託された。
同じ頃、誰も知らないところで別の思惑も参戦しようとしていた。
(なるほど。この頃妙に静かだと思えば、人間を操って姑息な策略を進めていたわけか)
本部から少し離れた高層ビルの屋上、そこには1人の異形が佇んでいた。つい先月、アギトと死闘を繰り広げ、最後には真っ二つにされて敗北したカブト型のアンノウンだ。
(しかし、俺はほとほと奴と巡り合わせが悪いらしいな。傷を癒して、再戦を申し込もうとした矢先にコレか)
──自分のことしか考えられず、力無きものには見向きもしない。誰かのことを慮ることすらできない!──
──そんな視野の狭い、器の小さい奴に……負けるわけにはいかないんだよっ‼︎──
あの言葉と必殺の刃に斬り裂かれたことで、奥底にくすぶっていた魂が覚醒。
そして一月、これまでの自分の行いを恥じながらも調子を取り戻すために壁外で1人時を過ごしていた。
(
今度こそ向こうが気兼ねしない状況で1対1の勝負を挑むつもりだったが、さすがにこの状況ではそれどころではないのは彼にも分かる。
(さて、どう動くか……一応はマラークの1人。その役目を果たすか……傍観に徹するか……)
らしくなく次の行動に悩む自身を鼻で笑い、異形は屋上から飛び立つ。自分の望みを果たすためにできることは何か。悩むべきはそのための手段であって、根底の目的について今更考える必要などない。
「決まっている……俺はいつだって、自分の望むままに動くのみだ……!」
かつて英雄に嫌悪された、己のことしか考えられない自己完結した怪物らしいパーソナリティ。しかしそれは、裏を返せば善悪に囚われずに本質を追い求めることができる資質とも言える。
本格的にまたたきの章、始まって参りました。
感想、評価等よろしくお願いします。
次回もお楽しみに