A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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RPGのラスダン解放後に全てのサブイベントが解放された感じ。作品時間では世界崩壊まで秒読みってところなんですが、やり込み派はここで一番時間かけたりしますよね。
 
 


絆の繋ぎ方

「陸人様には決戦までの準備期間、出来る限り多くの仲間とお話をしてほしいのです」

 

「うん?」

 

 寝乱れた格好を整えたかぐやが唐突に切り出した。焼き付いた左腕を抱きしめたまま平然と話を進めている。陸人も感覚と左側の視界がなくなっているせいでこの体勢に違和感を持っていない……傍目では恋人同士以外の何者でもない。

 

「陸人様は、罪爐が身体に呪いを残したのは何故だとお考えですか?」

 

 アギトとしての戦闘力を妨げることには繋がらず、体内に呪いが溜まることで力自体はむしろ上昇している。単に戦力を削るという目的なら逆効果だ。

 

「うーん……俺達から攻め込むのを止めるため、俺の身体を見た仲間に絶望を抱かせるため、あとは……俺個人への嫌がらせとか?」

 

「さすが陸人様、私もほぼ同意見です。その中でも特に問題なのが2つ目、陸人様を穢すことによる陣営全体の士気消沈ですね。10日という期日は絶妙なものでした。心境を整え切るには短く、目前の脅威だけに集中して過ごすには長い」

 

 この短くも長い準備期間の間、ジワジワと弱っていく陸人の姿を見せることで人類側の戦力を挫く。堂々と提示した10日という期限すらも盤外戦略の一環だとするなら、罪爐には何手先が見えているのか。

 

「そこで、陸人様が自らお話をすることで皆の気持ちを上向けていただきたいのです」

 

「普通ならそこは俺との接触を減らすところだと思うけど、逆なんだ?」

 

「罪爐の策にのっかる必要はありませんもの。それに陸人様には、人の心に熱を与える力がありますから」

 

「かぐやちゃんは俺のこと過大評価しすぎだと思うけど……まあこの身体じゃ何もできないからなぁ。暇してるし、やるよ。特に何か言えってことでもないんだろ?」

 

「はい。いつもの陸人様でいてくだされば。よろしくお願いしますね」

 

 そんな流れで、御咲陸人の決戦当日までの予定が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、それで私達が呼ばれたわけですか」

 

「大社の内情には詳しくないので人選はお任せしたんですが……ご迷惑でしたか?」

 

「いえ、必要なことだと思います。姉さんと国土博士に休息を取らせることもできますし」

 

「ん〜、やっぱり不思議ね。あなたの身体、今どうなってるのかしら……一度掻っ捌いて中覗けば多少は分かると思うんだけど、どう?」

 

「真面目な顔で物騒なこと言わないの、御咲くん顔引きつってるわよ……でもほんとに興味深いわね。この数値の上昇なんて──」

 

「申し訳ありません。2人とも徹夜明けでハイになっているだけなんです」

 

「あー……いえ、そんな常人離れした頭脳こそが今の俺たちには必要ですから」

 

 陸人のバイタルデータを閲覧して怪しげな笑みを浮かべる小沢真澄。

 そんな彼女を宥めつつも横目でデータに引き込まれつつある沢野雪美。

 陸人そっちのけで議論し始めた2人から目を逸らしつつ頭を下げる安芸真尋。

 この面子に精神面のケアが必要なのか、首を捻らせる御咲陸人。面談は初手から妙なことになっていた。

 

「姉さん、沢野博士も。御咲様のご厚意なのですから」

 

「そうは言ってもねえ、ここでなに話す必要もないでしょ」

 

「私達は出来る限りの準備をして、戦える人に託す。それだけよ」

 

 病室に入ってきてから、陸人と2人は一度も目を合わせていない。会話をするよりも身体の方に興味津々だ。こうまで対話の意思なしでは陸人といえどやりようがない。

 大人の余裕と言えば聞こえはいいが、彼女達は頭脳に優れる代わりに少々対人関係に問題がある。

 

「うーん、流石にプロですね。ブレないというか」

 

「唯我独尊すぎるだけです。これだから研究者というのは……」

 

 陸人は明確に大人と呼べるほど歳が離れた相手との関わりはそう多くない。その上クセの強いパーソナリティの持ち主となれば、リズムを合わせるのも難儀だ。これまでは緊急時での接点しかなかったので表面化しなかったが、ゴーイングマイウェイなタイプとはあまり相性が良くないのだ。

 

「御咲様に大変な失礼を。2人には私からよく言い含めておきますので」

 

「いえいえ、そんな大袈裟なことじゃないですよ。それと口調ももっと崩してくれた方がいいかな。俺なんかに畏る必要ないですから」

 

「ですが……」

 

「苦手なんです。拝まれたり、有り難いものみたいに見られるの」

 

 陸人の過去を鑑みれば、その言葉にも実感がこもる。誰も知らない遠い昔の話だが、もともと彼は英雄にも神様にも、戦士にだってなりたくなかった普通の少年だったのだから。

 

「……そうで──そう、気をつけるわ」

 

「ふふっ、真尋の方が困らせてるじゃない」

 

「うるさいですよ、そこ!」

 

(安芸先生か。美森ちゃんと園子ちゃんが、今もまだ慕うのも分かるな)

 

 教師時代の癖か、ビシッと指を突きつける真尋。美森達の思い出の恩師。その時の名残がまだ彼女にも残っている。それが知れただけでも陸人は嬉しかった。

 

「もっと肩の力を抜いた方がいいわよ、真尋。この機会だってそのためのものでしょう?」

 

「それは……」

 

「ちゃんと分かってるつもりよ。私達の働きが如何に重要なのかも、それを考慮してこちらのコンディションに気を遣ってくれてるのも」

 

 バイタルデータの主なところは目を通したのか、端末を手放して顔を上げた真澄。その日初めて2人の目線がかち合った。

 

「この私がお膳立てして、この子達が実践するのよ? 何も不安がることなんてないじゃない」

 

 一切の迷いなき断言。そこには自分の才への自信と、その天才が勝利を確信できるほどの、絶対的な仲間への信頼があった。

 

「……ですね。俺も特に心配はしてませんよ」

 

「あらあら、さりげなく私を省いてくれたようだけど……今のところ作業の到達度はこちらが上ではなかったかしら?」

 

 揶揄うような目線で真澄を煽る雪美。自分を取り戻した本来の彼女は、他人を揶揄う癖があるらしい。

 

「あらそう? そういうこと言っちゃう? いいわ、今すぐ再開よ。見かけの完成率では測れない、緻密な計算の上で成り立つ効率的な作業の美しさを教えてあげるわ」

 

 数少ない自分と同じ目線で会話ができる相手からの挑発。稀代の天才はあっさりと乗り、足音を響かせて病室を後にしていった。弄り甲斐のある後輩の後ろ姿をクスクス笑って眺めていた雪美は不意に陸人の手を取った。

 

「こんな姿になってしまったことは残念だけど、会えて良かったわ」

 

「俺もです。雪美さんが前を向いてくれて、本当に嬉しい」

 

「前準備も後始末も大人に任せて、目の前のことに全力を注ぎなさい。きっとそれが、あなたの力を1番引き出せる方法よ」

 

「そのつもりです。任せてください」

 

 前回会った時よりも表情と言葉に自信が乗っている。陸人もまた、人のと触れ合うことで心の力が増していく。英雄の前向きな変化を確かめた雪美は、陸人の手を労わるように撫で続けた。

 

「とりあえず命を救われた分の働きはするわ。大船に乗ったつもりでいなさい」

 

 大人として、母親として、人としてできることをやる。娘と変わらない歳の少年に、雪美は誓いを立てた。

 

「それじゃ私も失礼するわ。あなたの端末は預かります。大社との連携用に手を加えて、明日には返せるはずよ」

 

「あ、そうだ。頼みたいことがありまして」

 

「あら珍しい、なにかしら?」

 

「大社が回収してるなら、俺に回してほしいものがあるんです──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 大社職員のうち何人かとの面談を終えた陸人。次は2日をかけて32人の少女達と顔を合わせた。最後の一組になった頃にはすっかり日が暮れていた。

 

「大変ね。教師でもなんでもないのに一日中面談続きなんて」

 

「この身体だと退屈でね。ずっと人が訪ねてきてくれるから俺としては助かってるよ」

 

「そう。それでどうだったかしら? 私の仲間たちは」

 

「みんな個性的だったね。仮面ライダーファンだっていう美杉さんは俺よりもアギトに詳しかったなぁ……あ、榊さんがいずれ隊長の座を奪い取るって言ってたよ。楠さんも気が抜けないね」

 

「……驚いた。もしかして全員の名前と顔覚えてるの?」

 

「まあそれくらいはね。忙しい中時間を縫って来てくれたんだから」

 

 防人第一小隊。楠芽吹、加賀城雀、弥勒夕海子、山伏しずく。それぞれ個性が尖りまくった人材が奇跡的なバランスで噛み合っている防人部隊最強の小隊。

 

「いや〜、御咲さんのおかげで訓練から抜け出せたよ。ほんとにありがとうございます、できたら明日以降もお声がけいただけると……」

 

「雀さん! これはあくまでお役目の一環、サボりの口実に使おうなどと許されませんわよ?」

 

「でもさ〜、こうして御咲さんの近くにいられれば訓練免除で戦場にも出なくて済むかも──」

「いや、敵側に1番マークされてるのは俺だろうから、かえって危険なんじゃないかな」

 

 強者としての風格を感じ取ったのか、露骨に陸人との距離を詰めようと仕掛ける雀。しかし今の状況で最も危険なのは、他ならぬ彼の隣であることは間違いないだろう。

 

「ほら見なさい。次で勝てば終わるのですから、いいかげんシャキッとなさいな」

 

「私達はともかく、部隊外の人に迷惑をかけるのはやめなさい。雀のせいで防人全体のイメージが悪くなるでしょう」

 

「3人ともうるさい……ここ病室」

 

 よほど訓練が嫌なのか、平身低頭で擦り寄ってくる雀。芽吹と夕海子が慣れた手つきで彼女を引き剥がしにかかる。この少女のネガティブと腰の低さは平常運転なのだと陸人もすぐに理解した。

 

「ん〜……なんつーか、想像してたより華奢だな。もっとガチムチなのかと思ってたぜ」

 

「えっと、山伏さん?……ああ、君がシズクさんか。志雄から聞いてるよ、本当に自然に移るんだね」

 

「あん? 国土のヤロー事前にネタ明かしてたのかよ。つまんねーな」

 

 俯きがちに小声でツッコミを入れていた少女が、突然無遠慮に顔を近づけて覗き込んできた。二重人格という希少な性質を持つしずくとシズクは、英雄・御咲陸人に興味があるようだ。

 

「聞く限り、アンタも相当な環境で生きてきたんだろ? よくもまあそんな真っ当なツラしたまんまでいられたな」

 

「……真っ当なツラってのがどう見えてるのか知らないけど、俺は自分がマトモだとは思ってないよ。マトモなままじゃ、なにも守れなかったからね」

 

 至近距離で見つめ合う陸人とシズク。互いの瞳の奥に確かな闇が残っていることに、両者が同時に気がついた。

 

「……へぇ、やっぱ噂なんてアテにならねーもんだな。御咲陸人、二つに分かれたオレたちよりよっぽどぶっ飛んでるぜ」

 

「褒め言葉として受け取っておこうかな」

 

「……シズク、さすがに失礼。もう退がってて」

 

 表層に戻ったしずくが気まずそうに頭を下げる。相方の気性が荒いせいで苦労することもあったのだろう。しかし、その全ては守るべき存在であるしずくのため。一つの身体を共有する2人の、理想的な関係があった。

 

「山伏しずくさん。今更俺なんかが言うことじゃないだろうけど、相棒を大事にしてあげてくれ。それは君たちだけが持てる、大切な絆だから」

 

「……ん……ありがとう、御咲」

 

 自分の経歴故か、陸人は昔から過去に傷を持つ者を見分けるのが得意だった。戦場ではしずくのような精神の乖離が出る例も稀にあった。

 

(でもこの子は違う。あの頃の俺には作れなかった、仲間を思い合う環境がここにあるんだ)

 

 こんなご時世、悲惨な出来事はどこにでもいくらでも転がっているし、そのうちの大半は当事者達が自然と解決していくものなのだ。

 全ての悲劇を勝手に背負おうとしていた過去の自分が、改めてバカらしく思えた陸人は恥ずかしそうに小さく笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「そっか。みんな元気なんだね」

 

「ええ。陸人は事故で入院中って話になってるわ。端末返されたら通知だらけになってるかもよ?」

 

 1人ではベッドからも出れなくなった陸人のために、勇者部は学校や勇者部活動で馴染みのある地域に顔を出して様子を見てきた。彼らのホームである観音寺市は、決戦の際には避難地域に指定されている。慌ただしくなる前に、日常を忘れないためにという配慮で1日だけ自由行動が認められていた。

 

「そういえば、風先輩は受験とか大丈夫ですか? もう年末ですけど」

 

「うっ……それを言わないで。今は考えないようにしてるの」

 

「あー……まあ仕方ないですよ、これだけの事件が続けば」

 

「違うんですよ陸人さん。おねえちゃんったら2年生の園子さんに受験勉強見てもらってたんです」

 

「ええ?」

 

「その情けなさと後輩にすがるしかない余裕の無さで追い詰められてるわけ。風って案外脆いところあるわよね」

 

「なるほど……じゃあ全部片付いたら俺も勉強付き合いますよ。違う視点がある方が捗るでしょうし」

 

「ホント⁉︎ 園子と陸人がついてくれれば……って! アンタも後輩じゃないの〜……でもお願いします、助けて〜」

 

「泣きながら突っ込んで懇願して……忙しいやつね」

 

「ごめんなさい。おねえちゃん本当にギリギリなんです」

 

 風にとって年度末に待ち受ける受験戦争は、来週の決戦と並ぶ強敵だった。荒れ狂う部長を落ち着かせるのに数分の時を要した。

 

「これで今日からは訓練と会議の日々ね。2人共存分に楽しめた? 当分学校とも家ともお別れよ?」

 

「大丈夫だよ、お友達とちゃんとお話できたから。頑張ろうって気合も入りました!」

 

「私も。樹海を破る術が相手にある以上、神樹様の力を温存する必要がある……私たちが抜かれればみんなにも危険が及ぶ。絶対に退けない勝負になるわね」

 

「ああ。一緒に戦ってきたみんなの強さは、俺が1番よく知ってる……頼りにしてるよ。夏凜ちゃん、樹ちゃん、風先輩」

 

 陸人が掲げた右拳に、3つの拳が重なる。

 犬吠埼風は勇者であり、犬吠埼樹は勇者であり、三好夏凜は勇者であり、御咲陸人も勇者である。胸の勇気を滾らせて、重ねた手から熱を合わせる勇者達だ。

 

「フフン、そこまで言われちゃあ仕方ないわね! 先輩として部長として、珍しく頼ってきた後輩に力を貸すのは当然、ドーンと頼りなさい」

 

「そこまで言ってないんじゃないかな……私がいて、陸人さんがいて、おねえちゃんがいて、みんながいる。それが私にとっての日常で、当たり前の光景なんです。私はそれを失いたくない。だから……絶対に負けません」

 

「完成型勇者に不可能はない……アンタと私達が組めば、ますます無敵よ。これからもこれまでも変わらない。邪魔する奴をぶっ飛ばして、みんなで学校に帰るんだから、忘れんじゃないわよ陸人」

 

 時に意見を違え、拳を交えたこともあった。そんな過去を乗り越えたからこそ、今の勇者部は歴代のどの勇者にも劣らない結束力がある。

 

「そういえば、他の3人はどうしたの? 今日は顔見てないんだけど」

 

「ああ、あの子達は1人ずつ話がしたいんだって。後日時間作ってあげて」

 

「はぁ、それは構いませんけど……」

 

「……陸人さん、女の子に恥をかかせないでくださいね?」

 

「無駄よ樹。陸人のコレは病気だもの」

 

「あーいやゴメンゴメン、分かってるよ。ちゃんと分かってる。みんなの気持ちとしっかり向き合うから。約束する」

 

 今までとは違う、恋愛絡みの話でも認識がちゃんと噛み合っている陸人の言葉。恋する乙女側の1人相撲っぷりを見てきた仲間達が、ずっと待ち望んでいた返答だ。

 

「……なんか変わったわね。陸人、アンタそういうのはホントにダメなんだとばかり思ってたわ」

 

「いつまでも逃げてるわけにはいきません。俺もみんなも、これから先ずっとこの世界で生きていくんですから」

 

 自分の命を軽く見ていた頃とは、見ている景色が違う。今の陸人は戦いの先にある未来を正しく見据えることができていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして、御咲陸人様。防人付きの巫女、国土亜耶と申します」

 

 折り目正しくお辞儀する国土亜耶。敬虔な神樹教徒である彼女にとって、伝説の英雄である陸人もまた憧れの存在だった。

 

「はじめまして、亜耶ちゃん。志雄から話は聞いてるよ、すごくよくできた妹さんだって」

 

「おい、陸人……」

 

「お兄様が……えへへ、嬉しいです」

 

「ハハッ、志雄は否定してっけど相当なシスコンだからなぁ」

 

「うるさい、兄妹として普通のことだろう」

 

「気持ちは分かるけどなー。亜耶ちゃんめちゃくちゃ可愛いし」

 

 国土志雄、篠原鋼也、三ノ輪銀。いずれも陸人とは独特の縁を持つ3人が、緊張していた亜耶に付き添う形で同伴している。亜耶の可憐さにやられてしまった銀がその小さな身体を抱きしめて擦り付いていく。なんとも微笑ましい光景だ。

 

「鋼也は分かるけど、三ノ輪さんも亜耶ちゃんと仲良いんだね」

 

「ん? ああ、アタシは鋼也の側付きみたいなもんだからな。防人や亜耶ちゃんともよく一緒になるんだよ」

 

 勇者部の美森や園子の親友でもある銀。実は誰よりも広い人脈を有していたりする。

 

「亜耶はずーっと陸人に会いたいって言ってたもんな?」

 

「あぅ……鋼也くん、恥ずかしいですよ」

 

「あーもう可愛いなぁ亜耶ちゃんってば!」

「ひゃう、銀さぁん……!」

 

「程々にしてやってくれ、銀。亜耶が茹で上がりそうだ」

 

 揶揄い、じゃれつき、宥める。色々とあった4人だが、こうしている今はまるで家族のようだった。幼少期の4人組──銀の位置に沢野香がいた組み合わせの時も、きっとこのように一緒に過ごしてきたのだろう。

 

(友達、仲間、家族……どれにも当てはまってどれとも違う関係があるんだろうな)

 

「陸人様、私達巫女も非力な身ながら出来る限りの援護をさせていただきますね」

 

「ああ、巫女の祈りは神にも届く。君達にしかできない役目が必ずあるはずだよ……怖くはない?」

 

「少し怖いです。だけど、防人の皆さんも鋼也くんもお兄様も……私の大切な人が戦うのですから、私もせめて心は共にいたいのです」

 

「……本当に、よくできた妹さんだね志雄」

 

「ああ、まったくだ。兄妹なのに僕とは正反対。正しく優しい女の子だ」

 

 自分を卑下するように笑う志雄。亜耶はそんな兄に近寄ってその手を握る。

 

「本当ですか? 嬉しいですお兄様、やはり私達は兄妹ですね!」

 

「……ん?」

 

「亜耶、どういう意味だそれ?」

 

「だって"正しく優しい"の反対は"優しくて正しい"でしょう? まさにお兄様そのものです!」

 

 トンチのような亜耶の発言。本人は真面目に言っているのだろうが、聞いていた4人はその純心すぎる言葉にすっかり脱力してしまった。

 

「……アッハハハハ! いやまったくその通りだ、本当にすごいね亜耶ちゃん」

 

「こりゃあ一本取られたな、おにいちゃん?」

 

「……うるさい、まったく……亜耶、ありがとう。君の言葉を裏切らない兄であり続けることを約束するよ」

 

「いい子だよなー亜耶ちゃん。ウチの弟もこれくらい素直だったらなあ」

 

 元は仲間達の不安を晴らすために始まった面談だったが、結果陸人の方がほっこりしてしまった。こんな純心な命が産まれていくこの世界を守る。その使命の意義を改めて実感した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




クライマックスに向けてあらゆる縁を結んでいく回。少々味気なかったかもです。

感想、評価等よろしくお願いします。

次回もお楽しみに

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