A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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この作品世界において、仮面ライダーは3人だけです。他のGシリーズやアナザーアギトは仮面の戦士ではあっても"仮面ライダー"にはカウントされません。
地の文とかでそのように表現していたらそれはミスです。見つけたら教えていただけると助かります。





Give a reason

 "仮面ライダー"

 

 筆頭巫女が命名し、大社主導で浸透させ、徐々に市民権を得ていった単語であり、ある3人の戦士を表現する呼称である。

 仮面ライダーアギト。

 仮面ライダーギルス。

 仮面ライダーG3-X。

 

 半ば流されるままに担ぎ上げられた彼らだったが、いくつかの戦いを経て心境が変化していき、今ではその名に確固たる誇りと責任感を持っている。仮面ライダーだけの信念、生き様。それを共有できる彼らには、3人にしかない絆と連帯感があった。

 

 

 

 

 

「──シャラァァァァッ‼︎」

 

「どけえっ!」

 

「2人とも、一歩退がれ!」

 

 最前列でダイナミックに跳ね回って敵を翻弄するギルス。その隙を埋めるように重たく鋭い追撃を仕掛けるアギト。敵の能力発動を阻害すべく至近距離から弾丸をばら撒くG3-X。

 大規模な能力使用を封じられる接近戦に持ち込んだライダー達は、完璧に近い連携で一方的に攻め立てていく。

 

 

「燃え盛れぇっ!」

 

 バーニングカリバーを振り回し、その刀身に焔が宿る。かつて水のエルを両断した必殺技にエルロード達も警戒態勢を取るが、陸人の狙いは予想の斜め上を行っていた。

 

「鋼也、頼む!」

「──オーライッ!」

 

 振りかぶったカリバーを思い切り放り投げるアギト。その先に構えていたのがエクシードギルスのスティンガー。

 

「オラオラオラオラァッ‼︎」

 

 柄を絡め取って炎刃を受け取ったギルスは、触手を旋回させて周囲に破壊を撒き散らす。ギルスのスピードとアギトのパワーの合わせ技。エルロードの拙い連携網をズタズタに引き裂いていく。

 

(ダガ、コンナ大規模攻撃ヲ仕掛ケレバ当然仲間ニモ──)

 

「陸人!」

「そら、返すぞ!」

 

 地のエルが屈んで避けたカリバーが後ろにいたアギトに迫り、当のアギトは簡単に殴り返した。回避したはずなのに背後から倍速で返ってきた攻撃は、流石に対処できずに直撃する。

 

 

「仕方無イ……仕切リ直シテ」

 

「させるか……!」

 

 最も厄介な能力を使う風のエルには、長射程のG3-Xがマンツーマンで張り付いて動きを阻害する。1人に集中した志雄を振り切るのは容易ではない。うまく転移を使っても、簡易的な風縄で転移できる範囲には限りがある。G3-Xから離れることに気を取られた風のエルは、アギトのことを完全に考慮に入れていなかった。

 

「陸人!」

「頭隠して、ってな。見えてるぜ!」

 

「何……?」

 

 アギトの真上に転移した風のエルは、直下から飛んできた弾丸に翼を撃ち抜かれた。気づかれないようにしてアギトに譲渡されたスコーピオンが火を吹き、隙だらけの天使を狙い撃つ。

 

 

 

 

 

「チィ……何故コウモ噛ミ合ウノダ、奴等ハ」

 

「ハッハァッ! ただ効率良く合わせるだけのお前らと一緒にすんなよ!」

 

「僕達は同じ名を背負い、人々の希望を託されている同士だ。過去はそれぞれでも、見据える未来は同じ……!」

 

 仮面ライダーという概念が、いつからか確かな力を持って3人の波長を合わせている。これを言霊と捉えるか、使命感の共有によって息が噛み合っただけと見なすかは判断に悩むところだが、これだけは言える。

 

「俺達は仮面ライダー……人々の自由を守るための戦士。そのためには、まずアンタ達が邪魔なんだよ!」

 

 ゴールは3人同じ場所を見据えている。それさえハッキリすれば、共闘経験が少なくてもアドリブで合わせることはできる。

 

 

 

 

「仕上げだ、吹っ飛べ!」

 

「不味イ、散レ──!」

 

 翻弄され、誘導されていると知りつつも合流した3人のエルロード。彼らの中心にカリバーが投げ込まれ──アギトの能力でその焔が瞬時に炸裂、大爆発を起こす。

 

「──しゃあ!」

「直撃だ。うまくハマってくれたな」

 

 爆風に呑まれて姿を消す天使達。全てはこれを直撃させるための連携、ライダー達は一切のアイコンタクトも無しにパターンを確立させて敵を嵌め倒した。

 

 

 

 

 

「……いや、やはりあの程度じゃ無理か」

 

「少々肝ヲ冷ヤシタ……ガ、ソノ程度ダ」

 

 爆風が晴れた先には無傷の3人。その体表には先程までなかった怪しい光が宿っていた。

 

「ゲッ……おいおい、さっき裂いてやった傷まで消えてやがるぞ」

 

「翼の穴も癒えている……ここからが復活した奴等の本領というわけか」

 

「忌々シイガ、本気デ掛カル他無イカ」

 

「与エラレタ我々ノ真価……貴様等デ試サセテ貰ウゾ」

 

 テオスの加護と罪爐の闇。ふたつの力を加えられたエルロードには、これまでにない新たな階梯がある。アギトで言うバーニングやシャイニング、ギルスで言うエクシードに近い。

 完成した存在を自称していたエルロードが、プライドを捨てて手に入れた新たなる力。ここからがようやく全力勝負だ。

 

「コト連携ニ於イテ、奴等ガ上ダ。ソレハ認メザルヲ得ナイ」

 

「フン……下位存在ガ無駄ナ足掻キヲ」

 

「ナラ、話ハ簡単ダ……行ケ」

 

 

 

「──うおあっ⁉︎」

「なにを……⁉︎」

 

「鋼也、志雄!」

 

「仕切リ直スゾ。貴様ハ私ノ獲物ダ」

 

 足元が隆起し、空高く打ち上げられたギルス。正面から旋風が巻き起こり、飲み込まれたG3-X。

 土壁と突風に不意を突かれて、仲間が彼方へと飛んでいった。2人を追うように、地と風の天使も姿を消す。一手で数分前の一対一に盤面を立て直した。

 

「今ハ私シカ見テイナイ……モウ強ガル必要ハ無イゾ」

 

「見抜いてて分断したのか……ハッ、腹の立つ奴だな」

 

 ──ガシャン!──と電源を落としたように崩れ落ちて膝をつくアギト。体の動きは鈍く、息は荒い。仲間の手前やせ我慢で動いていたが、すでに気力ではカバーしきれないほどに心身ともに追い込まれていた。

 

「罪爐ノ闇ガ貴様ノ強サヲ引キ出シテイル……ガ、同時ニ消耗モ早メテイル。普段ノ感覚デ動ケバ、ソノ分限界モ近ヅク」

 

「どうかな?……俺のしつこさは、アンタも知ってると思うけど」

 

「ソウダナ……デハ油断無ク手早ク無駄無ク、引導ヲ渡シテヤロウ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「落チロ、羽虫ガ……」

 

「こっちのセリフだ!」

 

 弾丸と矢が飛び交う空を、ふたつの影が飛翔する。戦闘機のドッグファイトのように宙で交差し、激突を繰り返しながら互いにダメージを重ねていく。

 改造を重ねた今のG3-Xは航行速度、航続時間共にエルロードに劣らない。相手を蹴落とすように頭上を取り合い、至近距離で射撃の殴り合い。

 

 

 

「──そろそろ邪魔させてもらうわよ」

 

 そのドッグファイトは、地上から飛んできた弾丸に邪魔されて終わりを迎えた。2人の間を正確に抜けていった射撃。横槍の下手人は、仲間の防人を後ろに従えて二丁拳銃を構えていた。

 

「あの声は……芽吹? それに、後ろのみんなも」

 

「新手カ……面倒ナ」

 

 地上に降りた2人。G3-Xの元に集まる仲間達。数ヶ月前と同じ状況。最たる違いは、リーダーが纏う武装か。

 

 

 

「芽吹、だよな? それは……」

 

「あの人にいきなり渡されたの。G3-M、あなたのサポート機らしいわよ」

 

「そう、か。えっと……」

 

「なに、その反応。もっと言うことないの? せっかく約束守るために来てあげたのに」

 

「あ……」

 

 ── あなたの隣には私がいて、私の背中はあなたに預けてる。それを忘れないで──

 

 仲間であり、相棒であり、それ以外の想いもある。そんな複雑な芽吹の覚悟がこもった言葉を志雄は思い出した。

 芽吹達は勇者ではなく、志雄もアギトの系譜ではない。それでも、天上の存在から見れば半端者でしかなくとも、やれることはある。それを証明するために、これまでずっと並んで戦ってきた。少し形は変わったが、やることはいつもと変わらない。

 

「頼むよ、芽吹……みんなも」

 

「あ、良かった〜。完全に2人の世界作っちゃってたから、もしかして見えてないのかと」

 

「なっ……なにを言ってるの雀!」

 

「フフン、まあ私の力を借りたいと思うのは当然のこと。存分に頼りなさいな」

 

「早く終わらせて、楠と国土の続きも見たいし……」

 

「しずくまで……ああもう、全員集中! ここは戦場なんだから」

 

 

 

「──ソノ通リダナ」

 

 親しき仲の合流に緩んだ雰囲気が、突風で消し飛んだ。見れば風のエルの周辺には、人間大の風の塊が数えきれない数並んでいる。

 

「私ニ屈辱ヲ与エタ者達ガ丁度揃ッタ。何トモ幸運……イヤ、貴様等ニハ不運カ」

 

「フン、逆だ馬鹿め。僕達が全員揃ったんだぞ? これでもうお前の勝ち目は完全に消えた。たった1人に、負けてる場合じゃないんだよ」

 

「ホウ、1人デハ不足ト言ウカ。ナラバ増ヤシテヤロウ……フム、二百モ集メレバ満足カ?」

 

「何……?」

 

「刮目セヨ……我ガ秘術ノ真奥ヲ!」

 

 風のエルが天空に向けて矢を射る。天蓋の奥まで伸びた一閃は、やがて幾百もの光の雨となって地上に降り注ぐ。

 

「今度はどんな手品……だ……?」

「ちょっと、あれは……」

 

 風の塊が光を浴びて膨らみを持つ。頭を持ち、腕を持ち足を持ち、翼を持った白い異形。"風のエル"そのものの姿で実体が形作られていく。その数200。これまでに倒した凡百のアンノウン達とほぼ同じだけの人数を、風の天使は一瞬で生み出してみせた。

 

 

 

「サア、後悔ノ時間ダ。人ノ身デ私ニ歯向カッタ愚行ヲ呪エ……!」

 

「お得意のまやかしでビビらそうってか? ナメんじゃねーよ!」

「っ! 待ちなさいシズク!」

 

 先陣を切って飛び出したシズクに、200の矢が集中する。恐るべきことに、その全てが痛みを与える実体の攻撃。志雄達もフォローに回るが圧倒的に手が足りない。

 

「クッソ……だったらぁ!」

 

 スラスターで急上昇、射撃の範囲から外れたG3-Xがケルベロスで反撃。数多いる分身を8体一気に撃ち抜いた。

 

「よし、これで──」

「甘イナ」

 

 撃破した分身が解けるように姿を消し、突風が吹き荒ぶ。一瞬の後に、その風が再び収束してG3-Xの背後に新たな風のエルが8体形成された。誰もいなかったはずの方向から飛んできた矢に撃ち抜かれてG3-Xは墜落していく。

 

「そんな……どうして⁉︎」

 

「風ハ何処ニデモ存在シ、誰ニモ捕ラエラレナイ……常世ノ摂理ダ」

 

 風さえあればどこにでも分身を生み出せる。風さえあれば何度でも再生できる。尋常な手段では数を減らすことすらできない、敵に回すには厄介過ぎる超能力。風のエルがテオスと罪爐の洗礼を受けて手に入れた新たな術式だった。

 

「纏メテ、弾ケロ!」

 

 全ての矢が一箇所に収束し、巨大な風の塊へと収斂していく。尋常ではない圧力と緻密な風力操作によって強引に原子を分解、電離させた。

 

「なに、あのバチバチしたヤツ……?」

「まさか、気体を無理やり電離させている……?」

 

「風ハ何ニデモ変ワル……総テヲ凪グ盾ニモ、全テヲ貫ク矛ニモナ!」

 

「──っ! 全員逃げろ‼︎」

 

 全宇宙の大半を占める物質の第4形態──プラズマがその破壊力を解放した。維持が極めて難しい電離状態のまま、防人達目掛けて飛んでくる眩い光球。物質を悉く消し飛ばす破壊の塊が灼熱の大地をさらに上から焼き尽くした。

 

 

 

 

 

 

 核兵器でも落ちたのかと思わせる惨状。あらゆるものを吹き飛ばした巨大なクレーターの奥に、5人の戦士が倒れていた。

 

「無事か……みんな」

 

「いったぁ〜……ギリギリ、ってところかなぁ」

 

「情けないことに、力が入りませんわ……」

 

「クソッタレ……なんなんだあの冗談みたいな威力」

 

(今すぐ動けるのは……私と志雄。Gの装甲に助けられたわね)

 

 触れた対象を熱エネルギーで破壊する電離気体。志雄の声掛けで直撃は避けたものの、地表に触れて炸裂した膨大なエネルギーが肌を焼き、装甲を砕き、身体を吹き飛ばした。

 

「フム、マダ全員生キテイル……ヤハリ羽虫ハ直接潰ス他無イカ」

 

 風のエルの一団が少しずつ接近してくる。もう一度今の技を使われたら次は避けられない、全滅だ。今かろうじて戦えるG3-XとG3-Mでなんとかするしかなかった。

 

(賭けにもなりはしないが、奥の手を使って時間を稼ぐしかないか……)

 

 今の風のエルに唯一通用する見込みのあるG3-Xの切り札、"EXCEED"。一度使ってしまえば先の勝機は皆無になってしまうが、仲間を守るために選べる手段が他にない。

 

「待ちなさい、志雄。1人で走りすぎよ」

 

 G3-Xの肩に優しく触れるG3-Mの手。芽吹が呆れたような諦めたような声色で志雄の無茶を制止した。

 

「芽吹……」

 

「EXCEEDを使うつもりでしょ? だったらいい手があるわ」

 

 ヘルメットの奥、志雄の視界にポップアップで共有情報が表示される。"G3-Xをサポートするためのワンオフ機"というコンセプトを象徴するG3-Mだけの特殊機能。

 

「これは……君の負担も相当なものだぞ?」

 

「何度も言わせないでくれる? あなたの隣に立つのは私の役目よ。2人なら戦える……みんなと一緒なら、アイツに勝てる。そうでしょ?」

 

 敵は強大、自分たちは損傷甚大、ぶっつけ本番の出たとこ勝負。負ける要因はいくらでも挙げられるのに、勝てる要素は見つからない。それでも、負けられないから諦めない。勝つしかないから足掻き続ける。

 

 

 

「……預けるぞ、芽吹」

 

「任されたわ、志雄」

 

 

 

 国土志雄はライダーであり、楠芽吹は防人である。望む未来を掴むために運命に屈さず、"選ばれない者"のままで戦い続けた戦士達だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 風のエルの一団の正面に立ちはだかるふたつの"G"。傷ついた仲間の元には行かせない、ここで止める。その硬い意志を無言のままに表明していた。

 

「先ズハ貴様等カ……死ヌ覚悟ハ出来タカ?」

 

「どうかな。覚悟がいるのは、お前の方かもしれないぞ」

 

「私たちは進み続ける。立ち止まるわけにはいかないのよ」

 

 装甲が一部展開し、内包するエネルギーが励起していく。安全面に配慮してセーブしているシステムの全力が、今この瞬間に解放される。

 

 

 

解号(コード)──EXCEED‼︎」

 

解号(コード)──MATCHING‼︎」

 

 

 

『GENERATION3-EXTENTION』の別名でもある決戦機能、AIのフルスペックとエネルギーの全てを引き出して敵を殲滅する"EXCEED"。

『GENERATION3-MILD』の別名でもある同調機能、G3-Xと波長を合わせることで判断・行動を最適化する"MATCHING"。

 

「行くぞ、芽吹……!」

 

「ヘマしないでね、志雄!」

 

 ふたつの青が駆け抜ける。目の前の敵を全て討ち滅ぼすために。後ろの仲間を守り抜くために。

 

 

 

 

 

 

「──ウオオオオオッ‼︎」

 

(前方の3体を撃破後、8時方向からの矢を捌いて距離を詰める……そこでケルベロスを一度格納してユニコーンによる格闘戦に持ち込む……!)

 

 圧倒的な速度で戦場を飛び回り、幾多の天使を蹂躙していくG3-X。その真下には牽制と援護を徹底する縁の下の力持ち、G3-Mがいた。

 

『GENERATION3-MATCHING』の本領は、G3-Xとの完全な同調にある。AI同士の連携はもちろん、装着者の脳波も同期させることで両者の思考を完全なシンクロ状態に移行する。1秒先のビジョンを共有することでG3-Xの行動をG3-Mが完璧にフォロー、同時にG3-X側の負担を減らすことができる。

 

「散れ、散れ散れチレチレェェェッ‼︎」

 

(景気良くぶちまけちゃって……! 本当にEXCEEDって面倒なのね)

 

 倒した先から再臨していく風の分身を片っ端から撃ち抜いて回るG3-X。後先考えていない勢いで残弾が減っていく。それを補うのがG3-Mの仕事だ。

 

 ふたつの高性能AIで同時演算することでシステムの負担を減らし、同時に援護や補給といったバックアップで行動面でも消耗を防ぐ。これによりEXCEED最大の欠点である稼働時間を大幅に引き延ばすことができる。

 徐々に装着者の理性を削っていく危険性も、安定状態のG3-Mが隣にいれば十分フォローが効く。

 

(志雄、マガジン交換!)

 

「──ッ、オオオアアアッ!」

 

 何の合図もなしに、G3-Mが後ろ手でマガジンを投げ上げる。1秒後、当たり前のようにG3-Xが飛行ルート上のマガジンを受け取って弾丸を装填する。

 

 G3-Xが進みたいルートを阻害する敵を牽制し、残弾が危なくなればありったけ用意してきたマガジンを受け渡して補給させる。スペックは及ばず、飛行もできないG3-Mだが、相方がどう動くかを把握していれば手は回せる。最高状態のG3-Xには到底及ばないスピードでも、先回りで動くことで完璧に噛み合った連携を見せる。

 

「そこだっ!」

 

(2秒後に志雄が急降下する……それを待って──)

 

 洗練されたペアダンスのような、2人で1つを形作る理想的な連携の在り方。今の志雄と芽吹は、コンビプレーの究極を体現していた。

 

 

 

(想定ヨリ強クナッタ……ダガ!)

 

 思わぬ反撃に対応し切れていない風のエル。EXCEEDの制限時間の短さを考慮して策を練っていた彼にとって、MATCHINGの力は完全に予想外だった。

 しかしそれでも、自身の勝利は疑わない。ただ闇雲に数を減らすだけでは一生かけても倒し切ることは不可能。力押しでは風の天使は倒せない、その自負がエルロードの眼を曇らせる。

 目の前で踊る2人以外の敵の存在を、この時完全に思考の外に追いやってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吹き飛ばされた衝撃からようやく回復してきた3人。まだ動きは悪く、EXCEEDの戦場に割り込んでも邪魔にしかならないのは明らかだった。

 

「く、ぅ……私達も、なにか……!」

 

「俺だって行けるもんなら行きたいけどよ、今の身体じゃあの速度にはついてけねーぞ」

 

「……ぅ!……ぅひぃっ⁉︎……ひゃ〜」

 

「うるっせーぞ加賀城! さっきから何にビビってんだお前⁉︎」

 

 チラチラと戦場を見ては怯えた声を上げる雀。彼女が怯えているのはいつもの事だが、ただ単に風のエルに恐怖しているにしては途切れ途切れの反応が奇妙だ。

 

「いや、あの〜……なんか存在感が違うのがいるんだよね。あのソックリさんの中に」

 

「はい? どういうことですの?」

 

「なんだろ……際立って怖いっていうか、見てて寒気がするヤバい個体がいるんだよ。しかも見る度にその気配を感じる相手が変わってるような……」

 

「相変わらず訳のわかんねーことを……」

(待って、シズク……加賀城の自己防衛本能は異常。もしかしたら、鋭すぎる恐怖へのアンテナが無意識に本物を察知してるのかも……)

 

 シズクの内側で冷静に状況を俯瞰していたしずくが思考を巡らす。他者に関心が薄いように見えて、その実彼女は周囲の人間をよく見ている。雀のビビリは裏返せば身に迫る危険への鋭敏な感覚でもあるということもちゃんと理解していた。

 

「……加賀城、端末のレーダーでその"ヤバい個体"を識別することってできる?」

 

「なにそれ? いやまあ、眼で見た位置とレーダーを照らし合わせればできると思うけど……」

 

「加賀城がビビってる奴は敵の本体かもしれない……それを見極めることができれば、きっと勝てる……!」

 

「ええっ⁉︎ そ、そんなこと言われても……私なんかの感覚が、そんな正確なんてワケ……」

 

 これまでほとんど経験のない頼られ方をした雀は、どうしても尻込みしてしまう。自分に自信がない彼女にとって、自分の感覚ほど信用できないものはない。

 

「雀さん!」

 

「うひゃっ⁉︎ み、弥勒さん?」

 

「あなたの臆病さと生き汚さは人並外れています。それについてだけは、あなたも自信を持っていいはずです。この弥勒夕海子が保証いたしますわ」

 

 褒められているようには聞こえない言葉だったが、夕海子が雀を心から認めた初めての激励だった。それは雀が防人になる前から求め続け、半ば諦めていた言葉でもある。

 

「加賀城……どの道今のままじゃジリ貧。国土達の切り札が切れたらそこで終わる……だったら不確実でも加賀城の感覚に賭けたい」

 

「失敗したって別にお前のせいになんてしねーよ。みんなで戦ってんだろうが」

 

「私達も、芽吹さんも、志雄さんもあなたを信じています。これでもまだ不足ですの? 雀さんは欲張りすぎですわ」

 

「しずく……シズク様……弥勒さん」

 

 雀は自分を信じられたことが一度もない。今だって自信があるわけでもない。それでも、ここまで言ってくれる仲間の信頼には応えたいと思った。

 臆病で否定的で自分の安全が何より大切なのは確かだが、仲間意識も人一倍強いのが加賀城雀だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(マズいわね、この速度で数を減らしても向こうは一切堪えていない。このままじゃ先に力尽きるのは……!)

 

 空を駆ける暴れ馬(G3-X)の手綱を握りながら、芽吹は手詰まりを感じていた。そんな状況を切り開くのは一発の銃声。はるか後方から飛んできた狙撃が、風のエル達の動きを一瞬封じ込めた。

 

「よっし、当たりましたわ! 雀さん、どうですの?」

 

「ダメ、また移った……次はコレ!」

 

 狙撃体勢で構える夕海子の隣、雀が端末のレーダー反応を眼で追いながら指示を出している。一際強いプレッシャーを感じさせる個体──すなわち本体の魂を宿した風のエルの位置を常に指し示している。

 

「狙撃の直後は確かに動きが悪くなる……しずくさんの読みは当たっているようですわね」

 

「それに加えて、前線の2人に本体の位置も知らせられる……弥勒、外したらダメだよ……」

 

「承知しておりますわ! 私に任せなさいな!」

 

 風のエルの分身、その本領は本体が別の個体に移れることにある。風の天使の強大な魂は、同じ形をした器のどれにでも自由に憑依できる。200体もいればどのタイミングでも安全地帯にいる個体は必ず存在する。そこに移り続ければ本体が侵されることはまずない。

 

「さっきのやつの奥、今飛ぼうとしてるのを狙って!」

 

「アレですわね……行かせませんわ!」

 

 しかしこうして絶えず的確に本体を狙われ続けては、魂の移動に専念しなければ逃げ切れない。あくまで本体の制御下にある分身の動きは確実に悪くなる。

 

「ソコカァァァァッ‼︎」

 

「グッ、振リ切レン……!」

 

 更に仲間達の策を把握した芽吹が、AIの演算にその条件を追加入力。G3-Xまで本体を追い込むように動き出した。

 狙撃を避け、G3-Xを遠ざけ、魂を安地に移す。処理要件が減って安定したG3-Xと対照的に、風のエルがこなすべき措置はどんどん増えていき、追い詰められていく。

 

(小兵ガ……目障リダ!)

 

 数体の分身を狙撃手の方向へ飛ばす。足元にも及ばない立場でチョロチョロ動く小物から潰さなければ封殺はできないと判断した。

 

「うっへぇ……こっち来てない?」

 

「来てますわね、確実に……」

 

「あっちは私達に任せて……2人は本体を狙うことに集中。これ、副隊長命令……」

 

 差し向けられた刺客に、しずくが1人立ち向かっていく。格上の存在を複数相手取って、無理を承知で時間稼ぎに徹する。

 

「チッ──弥勒はまだしも、まさか俺達が加賀城を守るために身体張るハメになるとはな」

(加賀城の感覚は貴重で必須……あの2人がやられたら私達に勝ち目はなくなる)

 

「分かってんよ。別に文句はねえさ、勝つためだ……全員で生き残るためだからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──そこよ、志雄!」

「モラッタァァァッ‼︎」

 

「ッ! オノレ……!」

 

 夕海子の狙撃で縫い止められた風のエル本体。一瞬で背後に張り付いたG3-Xが、ユニコーンの一振りで翼を斬り落とした。

 術式を維持できない程のダメージを受けて、とうとう200の分身が消失した。

 

「──ふっ、ようやく追いついたぞ、卑怯者!」

 

「何故諦メナイ……何故コウマデ食ライツクノダ、貴様等ハ!」

 

 同時にEXCEEDが切れたG3-X。訓練を重ねて解除後即座に動けるように鍛えた志雄が、勢いのまま風のエルを押し倒して両腕を踏み抑える。

 

「お前達は先に進んだ生命体なのかもしれない……けど、そこで立ち止まった時点でお前の器は知れた!」

 

 倒れた風のエルの顔面に向けられるケルベロス。最後のマガジンを装填、これで残弾は120発。目の前の天使を撃ち砕くには十分な数だ。

 

 

 

「僕達は前へ進む……お前如き相手に足踏みしている暇はないんだよ!」

 

 

 

 破壊的な銃声が響き、エルロードの全身に風穴が開いていく。使命感、責任感、恨み辛みその他諸々を込めた斉射が、あっという間にスクラップをひとつ生産していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「志雄……やったの?」

 

「……いや、これは……! やってくれる、諦めが悪いのはそっちだろうが!」

 

 風となって解けて消える風のエルの亡骸。ここまでの負傷と負担で怯んだ一瞬の隙に、幻覚と入れ替わって逃走していたのだ。

 

(どこだ……どこにいる……上か!)

 

 G3-Xのセンサー範囲を広げて天使を捜索。3時方向はるか上空に、ボロボロの身体を引っ張って不安定に飛ぶ風のエルを発見した。

 

「まだ射程内、いける────な、にっ?」

 

 最大火力を持つ最終兵器、GXランチャーを展開した瞬間、ここまでの無理のツケが回ってきた。武器も仮面も装甲も瞬時に格納、生身の国土志雄に戻ってしまった。

 

(エネルギー切れ……こんな時に!)

 

 それでも諦めず、端末に残された1%未満のエネルギーの残滓を使ってGXランチャーと右手のマニピュレーターだけはなんとか展開できた。しかしそこまで、生身のままではG3-Xの武器は使いこなせない。

 

(重すぎる……しかも、ヘルメットの照準も使えない。これで当てられるか?)

 

 ランチャーの重量は約7Kg。システムのパワーアシスト無しにブレを抑えて構えるのは至難の業。そして生身の視力で捉えられない程度には、標的との距離は開いている。敵も傷ついて速度が出ていないとはいえ、この状態で撃つのは神頼みに近い。

 

 

 

 

「総員集合、G3-Xをフォローしなさい!」

 

『──了解っ!』

 

 

 

 消耗が限界を超えて装備が解除された4人の仲間。今のG3-Xと同じく無力になった少女達は、それでも諦めずに志雄の傍に集まっていく。

 

「──重っ、くぅ〜……弥勒さん、どっち⁉︎」

 

 雀が砲身を肩に乗せて照準の高さを固定する。

 

「仰角はこれで良し……シズクさん、もう少し右ですわ!」

 

 夕海子が志雄の眼となって狙いを定める。

 

「人使い荒いぜ……どいつもこいつも!」

 

 シズクが志雄の右側に回り、砲の角度を調整する。

 

「全員踏ん張りなさい……反動で外したなんて笑い話にもならないわ」

 

 芽吹は背中に回って志雄の体勢を支える。五人一組(ファイブマンセル)で構える必殺技。防人第一小隊全員の意志が込められた砲弾が、風のエルに照準を合わせた。

 

「……ハハッ……やはり君達は最高だな……これで決めるぞ!」

 

「当然よ!」

 

 

 

 

『GXランチャー……発射(ファイア)‼︎』

 

 

 

 

 G3-X最大最強の必殺技、"ケルベロスファイヤー"が5人の力で発射される。その軌道は清々しいほどに真っ直ぐで、遥か彼方の白い翼を迷いなく追っていく。

 

「コレデ……──ッ! 何ダト⁉︎」

 

 風のエルが気づいた時にはもう手遅れ。5人の執念に追い詰められた風の天使には、この一撃を凌ぐ余力は残っていなかった。

 

 

 

「私ハ"風"……人間如キニ────‼︎⁉︎‼︎⁉︎」

 

 

 

 

 異様な色彩に染まる壁外の空を、鮮やかな爆風が彩る。世界のどこにでも手が届く悪魔的な風の天使は、花火となって天空に散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やった、か……)

 

 発射と同時に吹き飛ばされた志雄達。標的の撃破だけはかろうじて確認できたが、それが限界。ランチャーの反動がトドメとなって、身体の芯から力が抜けていく感覚。脱力感に呑まれて閉じかけた志雄の瞳に、迫り来る大きな影が映った。

 

(アレは……車? G、トレーラー……?)

 

「お兄様! みなさんも、しっかりしてください!」

 

 その声が聞こえれば、国土志雄は立て直せる。いるはずのない最愛の妹がそこにいた。

 

「亜耶……どうして」

 

「私のお役目です! V1の方と共に、前線の支援に向かえと……」

 

「そういうことだ。最低限の補給環境は整っている。君と仲間の安全は保証しよう」

 

「その声……三好さん?」

 

「そうだ。君は一度眠るといい。まだ戦いは終わっていないからね。今はとにかく休むんだ」

 

「お兄様、ご立派でした。この場は私達に任せてください」

 

「そう、か……なら、任せる……よ」

 

 信頼できる大人と愛する妹の言葉に甘えて、今度こそ志雄の意識が落ちた。アギトでもギルスでも勇者でもない、神様から何も与えられていないただの人間。神の遣いを撃破した、偉大なるただの人間も寝顔は年相応に幼いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ニ損ナイガ……消エロ!」

 

「っ!……ぁ、が……」

 

 シャイニングカリバーを模した双剣が、アギトの胸を貫いた。エルロードの水の力と、ダグバの炎の力をそれぞれに秘めた黒い双刃。アギトの体内で対照的なふたつの属性が融合、昇華して新たな力として炸裂する。

 

「コレデ最後ダ、アギト!」

 

 お得意の水蒸気爆発を敵の体内で発生させるという荒技。回避も防御もできない文字通りの必殺技が、アギトの内から立ち上がる力を奪い取った。

 

「……こんな、ところで……!」

 

「サラバダ、アギト……偉大ナ邪魔者ヨ」

 

 刃を抜かれて、力無く崩れ落ちたアギト。精魂尽き果てても変身が解かれないのは、それだけ"御咲陸人"が呪いに侵された証か。

 

(梃子摺ッタガ、最大ノ障害ハ取リ除カレタ。後ハコノ身体デ神樹ヲ潰シテ終ワル)

 

 横たわるアギトに目を向けることなく、白のエルが結界に向かう。神樹を守れる戦士が倒れた現状、その歩みを止められる者は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 




描いていた時は自覚なかったのですが、読み返して気づいた事実。

風のエル「圧縮圧縮……空気ヲ圧縮ゥ!」

志雄「コネクティブ芽吹!」
芽吹「アクセプション!」

パクリと追求されれば言い訳のしようがない仕上がりになってしまいました……反省せねば。

感想、評価等よろしくお願いします。
次回もお楽しみに

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