A New Hero. A Next Legend 作:二人で一人の探偵
申し訳程度の世界観説明と、後々原作から剥離する(予定の)展開のための露骨な伏線張り回です。
特に面白く書けた気もしないので、なんならスルーしちゃってください。
3年前、謎の白い異形──バーテックスが、世界中で大量発生した。
人類に見切りをつけ、全てを滅ぼさんとする神々の集合体「天の神」が遣わした破壊魔によって大人も子供も、男も女も、皆等しく殺された。
この世の地獄としか言いようのない事態の中、いくつかの特別な存在がその力を目覚めさせた。
人類を守ろうと天の神の敵に回った土地神の力を授かった存在『勇者』
土地神の声を暗示のような形で聞き受けることができる『巫女』
超古代の遺物に土地神の加護を合わせた亜種勇者のような戦士『クウガ』
彼らの奮闘により、ごく一部の地域でのみ、人類は生き残ることができた。
バーテックスの襲撃の波が引いた隙に、土地神たちは集結して樹木『神樹』となり、四国を守るように壁を形成した。その結果四国は限定的な安全地帯となり、神樹の加護の元、どうにか生きていけるようになった。
四国を除いた地域はほぼ壊滅し、一部残った地域も日夜激しい襲撃に苛まれている。今や四国こそが人類の希望と言ってもいい。
そんな四国を守るために設立された組織『大社』
神樹の加護を有効に使い人類を守るための、四国内で大きな権限を持つ組織である。勇者たちもその指揮下に入り、訓練や武器の研究などが行われている。
その大社の研究機関が最も頭を悩ませる要因たるクウガ。
クウガの力を宿した少年、伍代陸人は、大社本部に呼び出されていた。
「失礼しまーす」
「おー、来た来た、待ってたよ。陸人君、久しぶり」
「久しぶり、真鈴さん。最後に会ったのが紫の力が目覚めた時だったから……1か月ぶりぐらいかな?」
「そうだったねぇ。あれ以来どう? 何か変わったことはない?」
「特にないかな。俺の体感的には、クウガの色は最初の白を含めてこの5色で打ち止めなんじゃないかな?」
「そっかぁ、まあまたなんかあったら連絡してよ。いつでも話聞くからさ」
安芸真鈴。3年前の襲撃の際、陸人たちと共に巫女として多くの人を救った1人だ。
大社が設立してからは、何故かクウガについての神託を受け取ることが多かった彼女は、クウガについての研究室の室長となった。他の勇者の武器との関連や過去の遺跡調査の資料などから謎の多いクウガについての情報を集める部署だ。一般企業でいう部長職に就いた驚異の中学生である。
「まったく毎日仕事が多くてイヤになるわー、なんだって神樹様ってば私にばっかクウガ関連の神託送ってくるのかしら? しかも妙に抽象的だし」
「うーん、最初に俺と接触した巫女だから、とか?」
「そうは言っても今じゃひなたちゃんのほうがよっぽど一緒にいる時間長いっしょー? いっそあの子に送ってくれたほうが早くない?」
「いやー、でもひなたちゃんは勇者全体に付いてるわけだから、腰を据えて研究するには真鈴さんが適任だよ。いつもお世話になってます。それで、今日はどうしたの?」
会うたびにぶちまけられる愚痴を慣れた様子で流して、本題を聞き出す。すると彼女は「見たほうが早い」と、地下室に陸人を先導する。
たどり着いた地下実験場で、陸人はなんと表現すればよいかわからない異物と対面した。
「何、これ……?」
そこにあったのは、人間より二回りほど大きな、金色のクワガタのような何かだった。
「それが分かんなくて困ってんのよー。ある日突然壁の外から飛んできたらしくてね? 現存する鉱物とは違う何かでできてるー、とか調べるたびに謎が増えちゃってさ。で、昨日神託で『ゴウラム、馬の鎧』って来たのよ」
「馬の鎧?」
「ワッケ分かんないでしょ? でも私に来たってことはクウガに関係あるのかなーって思ってダメもとで呼んでみたわけ」
「うーん、分かった。とりあえず変身して触ってみるよ。真鈴さんは一応離れてて」
こうして今日の実験は始まった。
変身したクウガは改めて謎の物体を観察する。巨大な角のような何か、手足に見える部分もある。何より一番気になったのが、中央にある緑の宝玉。どうしても既視感があった。
(もしかして……『アマダム』?)
『アマダム』クウガのベルトの中心にある、力の源。起源も原理もすべて不明。掘り起こされる以前に土地神の力に触れ、ほかの勇者の武器と同じ、神樹の加護を受けられるようになった、ということしか分かっていない。
もしこれがアマダムなら、クウガに反応してもおかしくない。深呼吸したのち、クウガは宝玉に触れる。
その時、まるで命が芽生えたかのような、暖かい光がゴウラムを包んだ。
その光が収まると、ゴウラムはまるで生きているかのように、羽らしき部位を広げ、飛び上がった。
それと同時にクウガは、目の前のゴウラムから、意志のようなものが聞こえるのを感じた。
「君は……俺の力になる、って言ってるのか……?」
肯定するかのように手、らしき部位をこちらに向けてくるゴウラム。しばし逡巡した後、クウガはその手を取った。
「ちょっ、陸人君……?」
「ごめん、真鈴さん。でも一緒にいれば、何か分かると思うんだ」
ゴウラムにつかまり、高く飛び上がるクウガ。だが彼は重大なことを忘れていた。
ここは地下、空を目指し飛び上がるゴウラムは当然──
施設を盛大に破壊して飛び出していった。
地下6階分のフロアに穴を開け、1階の窓をぶち破り外に飛び出たゴウラムとクウガ。戦ってもいないのに疲労困憊である。
「……あー、やっちゃったな。どうしようか?」
後のことを考えため息をこぼすクウガをよそに、ゴウラムはさらに加速する。
「──っ‼︎ ヤバイ、そっちは──‼」
ゴウラムはクウガを吊り下げたまま、壁の外に飛び出した。
「──これ、は……」
見渡す限り無事な建物はない。人の気配の代わりに、あちこちにバーテックスが蠢いている。
分かっていたつもりだった。いつか来るであろう壁外調査のために、できる範囲で調べていたのだ。それでも、直接目の当たりにすると、絶句するしかなかった。
これが神の意志。人類殲滅の方法。
(これ以上は、やらせない……‼)
クウガの決意を改めて固めさせるには十分すぎる光景だった。
ゴウラムも特に目的地があった訳ではないらしく、ふらふらと飛び回っているうちに、バーテックスに捕捉された。クウガは慌ててゴウラムに引き返すように指示を出す。ここで初めてゴウラムとはテレパシーのように意思疎通が図れることに気づいた。
振り返り際、遠くに四国結界に似た光が立ち上っているのが見えた。
(あれが、諏訪の……)
全てが荒廃した地にポツンと残った希望の光。クウガの目には、それがどうしようもなく尊く映った。
それと同時に、何故か体内のアマダムが、大きく脈打つような反応を示した。
ゴウラムと共に地下施設に戻った陸人は、真鈴をはじめとした大社職員数名にありがたいお説教を受け、何を見たか、敵がいたか、そんな質問を受け続け、解放さえた時には日が暮れていた。
とりあえず新たな収穫があるほど外を観察したわけでもなく、本題のゴウラムも、戦闘に使えそうなこと、クウガとはコミュニケーションが取れる事が分かると、後のことは研究室に任せることにしたようだ。いつものことである。
(あの時……)
陸人が思い出すのは、諏訪を見た時の感覚。
あの時確かにアマダムは諏訪のナニかに反応していた。
(諏訪の結界に惹かれたのか? ……それとも……)
ゴウラム、壁の外、アマダム、諏訪。
頭を疑問符で埋め尽くしながら寮に戻った陸人は、玄関で彼を待っていた球子と杏を見つけた。
「あーっ‼ やっと帰ってきたな、陸人! もう晩御飯の時間だぞー」
「お帰りなさい、何かあったんですか? ひなたさんに大社に連絡してもらったら、説教中だって……」
予想外の出迎えに虚を突かれた陸人は、しばし放心してから答える。
「いや、何でもないんだ。実験中にちょっと事故が起きてね……」
「事故? ケガとかは……」
「変身してたし、何ともないよ。心配させてゴメン」
「ならいいけどさ、あんまり変なことするなよ? 大社の命令だって、ほんとに嫌なら断ってもいいんだからな?」
いつもの3人、いつも通りの会話をしながら、陸人はいつもの自分を取り戻す。
(不安は尽きない。だからこそ、目の前の大切なものを見失うな……)
2人に手を引かれながら、陸人は日常に帰宅した。
とまぁ、こんな感じです。
ゴウラム君ですが、クウガと若干設定変えました。あの姿は金属を吸収してなるもので、力を持たないときは石っぽくなっているんですが、あまりに描写しにくくなるので、ずっとあの戦闘モードとしました。
こんなのばっかりだなぁ、この作品。
次回はちょっと間が空きます。いつ書けるかは未定です。
今週中には上げたいところですが、もっと空くかも…申し訳ない…
次回もお楽しみに。