A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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 再びの番外編です。

 日刊ランキングにのったこと。本編を書いてて心がざわざわしてきたことから、またゆゆゆい時空です。そしてまた四国組が中心です…スミマセン。

 今日のうちに上げたくていつもより多分雑です。手直しできたらするかもです。

 前回と同様、この番外編はのわゆ編制作中に描いた閑話です。それ以降の章の設定は無いものとした場合のストーリーとして、ご了承ください。


番外B話 祝宴(花結いのきらめき)

 神樹に呼ばれて集結した各時代の勇者たち。彼らがこの世界に来て1年を迎えた。

 出会えるはずのない仲間と縁を結び、思い出を作ることができたこの世界。1周年を祝して大社のダンスホールで勇者部総出でパーティーを催すこととなった。

 

 今少女たちは何組かに分かれて順番に店に行き、レンタルするドレスを選んでいる。次は若葉、ひなた、球子、杏、友奈、千景の6人の番だ。

 歌野と水都を連れて、最初に店に行っていた雪花からのメールを確認していた陸人に、球子が声をかける。

 

「おーい、陸人は一緒に行かないのか?」

 

「……ん? ああ、俺は最後でいいよ。男物は勝手が違って時間がかかるかもしれないし……」

 

「そう、ですか? 選ぶ上で男性目線も欲しかったんですけど……」

 

「よし、では行くぞ。球子、杏!」

 

「おっと、じゃあ陸人、また後でな!」

「頑張っていいもの選びますから、楽しみにしててくださいね」

 

 服選びは女性の方が長くかかる。それはどの時代でも共通の常識だ。杏は首をかしげるが、若葉の号令に慌てて教室を出る。

 

 陸人が安堵のため息をこぼしたのを、2人は見逃していた。

 

 

 

 

 

 

(危なかった。我ながらおかしな言い訳しちゃったからな)

 

 陸人はある目的のため、丸亀城の仲間と一緒に店に行くわけにはいかなかった。

 頃合いを見てひなたにメールを送る。彼女なら協力してくれるだろうという確信があった。

 送信完了を確認して、陸人は教室に残る仲間にも助力を求める。

 

「園ちゃん、みんなにも。ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど……」

 

 仲間たちは驚きながらも了承してくれた。これで後は陸人の頑張り次第だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こ、こんなのを着るのか⁉︎ タマが⁉︎ ムリムリムリ、絶対ムリだって! なあ若葉⁉︎」

 

「確かに普段と趣が違いすぎて気後れはするが……私たちだけ今更降りるわけにも行くまい。ひなたもみんなも楽しそうだ」

 

「はあ〜〜〜〜……こんなステキなドレスをタマっち先輩に着せられるなんて……」

 

「……た、高嶋さん……コレなんてどうかしら……? あなたに似合うと思うんだけど……」

 

「う〜〜ん、そうだねぇ。私には良くても……難しいなぁ」

 

 店の豪奢さに圧倒されながらも盛り上がる一行。そんな中、ひなたは端末に届いたメールを開く。

 

(あら、陸人さんから…………なるほど、これは面白そうですね)

 

 了解ですとだけ返信して端末をしまう。今日は素晴らしい日だと思っていたが、さらに楽しみが一つ増えた。

 

「ほらほら球子さん? せっかくの機会なんですから、最大限球子さんの魅力を引き出すドレスを選んで、陸人さんに見せてあげましょう」

 

「むぅ、でもなぁ……陸人だってタマのドレス姿なんて……」

 

「そんなことないよタマっち先輩! 私が一緒に選ぶから、陸人さんをびっくりさせちゃおうよ!」

 

「……あーもう、分かったよ! その代わり杏のドレスはタマが選ぶからな!」

 

 このメンバーに歌野と水都を加えた8人にとって、陸人の名前はかなり強力な魔法の呪文のようなものだ。さっきより意気込んでドレスを選び始めた仲間たちを見て、ひなたは楽しげに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、若葉たち終わったみたいよ。陸人の方も形になったし、私たちも行きますか!」

 

 風の号令で教室を出る最後のグループ……風、樹、夏凜、園子、棗、陸人。学校を出た辺りでひなたからのメールが届いた。

 

『……以上、みなさんこんな感じです。このお礼はパーティーの場で、お願いしますね♪』

 

「……お礼、かぁ」

 

「お? ゴーくん、メール来た〜?」

 

「うん、これで全員分……じゃあ悪いけど、よろしくね?」

 

「うんうん〜、ゴーくんとみんなのためだもん、頑張っちゃうよ〜」

 

 目を輝かせる園子。頼んだのは陸人だが、その勢いに気圧されてしまっていた。

 

(でも、うん……楽しい時間に、したいよな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティー当日、勇者たちは各々が選んだドレスを披露し、褒め合い、写真を撮り、恥ずかしがり、子供らしく盛り上がっていた。

 

「アレ? 陸人はどこだ?」

 

「ホントだ……いないね、陸人さん」

 

 キョロキョロと陸人を探す一同。そこに妙に芝居掛かった園子の声が響く。

 

「ふっふっふ〜……勇者部唯一の男子の行方、気になっているようだね〜?」

 

 驚きざわめく勇者たち。その仰々しさに、事情を知るひなたたちは苦笑するしかない。

 

「それでは、伍代さんちの陸人くんのお披露目だ〜!」

 

 

 

 

 

 

 ホールの入り口が開き、1人の少年が入ってくる。

 黒のタキシードをバッチリ着こなし、堂々とかつしなやかに歩く姿はまさに紳士。いつもファッションにはあまり気を使わない彼の髪が、軽くパーマをかけたツーブロックでビシッと決まっている。

 毎日のように顔を合わせていた少年の正装に少女たちは揃って息を飲む。

 

「り、陸人……だよな?」

 

「そうだよ球子ちゃん。他の誰かに見える?」

 

「いや、なんていうか、見違えたっていうのか……? タマげたぞ」

 

「陸人さん、すごい……すごい、カッコいいです!」

 

「アハハ、ありがとう……衣装がいいからね。杏ちゃんこそ、とてもキレイだよ」

 

「はうぅ、そうハッキリ言われると照れます」

 

 口を開けば間違いなくいつもの陸人だ。やがてみんなも落ち着きを取り戻し、和やかな雰囲気に戻る。

 

 

 

 

「しかし驚いたぞ。なんというか、気合が入っているな……似合っているぞ、陸人」

 

「フフフ……いつもよりさらに数段大人っぽく見えます、ステキですよ」

 

「そう言われると嬉しいよ。この世界で過ごした時間は、本当に楽しかったから……せっかくのパーティー、いい思い出にしたくてね」

 

「そっかぁ。りっくんはいつもカッコいいけど、今日はまた違ったカッコよさだよ! ね、ぐんちゃん?」

 

「……そ、そうね……悪くないんじゃない……? 私も、素敵だと思うわ、伍代くん……」

 

「アメイジーング! 陸人くんって正装が映えるタイプだったのね! 元がいいからかしら?」

 

「背は高いし、足も長いし……紳士って感じがするね。見たことないけど」

 

「ありがとう、やっぱりいい服は違うね。こんなに褒めてもらえるとは……」

 

 陸人の衣装は男性の正装も身近な名家の園子に、メンズにも多少知識がある雪花も合流して3人で選んだ。

 予想以上の高評価に喜ぶ陸人。しかし彼の仕込みはこれからだ。

 

 

 

 

 

 

 大社職員が布をかぶせた配膳用のカートを押して来る。

 陸人はカートの後ろに立って仲間の名を呼ぶ。

 

「球子ちゃん、杏ちゃん、若葉ちゃん、ひなたちゃん、友奈ちゃん、千景ちゃん、歌野ちゃん、水都ちゃん……今日というめでたい日に、君たちにプレゼントを用意しました!」

 

 陸人が布を取ると、カートの上には8つの種々様々なブローチが並んでいた。

 

「……これは……」

「わあ、キレイ」

「これ、陸人が用意したのか?」

 

「うん、園ちゃんたちにアドバイスをもらって……雪花さんとひなたちゃんにみんなが選んだドレスの写真は送ってもらってたから、それに合うやつをってことで色々教えてもらってね」

 

「何……? そうだったのか、ひなた?」

「はい、サプライズでプレゼントをしたいと。どうしても協力者が必要で、私は知っていましたが……」

 

「一応みんなのドレスを邪魔しないような、普段使いもできるようなやつにしたつもりなんだけど、どうかな?」

 

「うん、清潔感あるし、私服でも合わせられるかも……って、これレンタルじゃないの⁉︎」

 

「え? うん……プレゼントだって言ったよ?」

 

 こちらの世界の大社は何人かを異常に恐れている態度だった。園子然り、若葉然り、ひなた然り……その中でも特に畏怖されているのが陸人だ。

 戦時中に呼ばれた彼には後の時代に残る自分のことは分からない。それでも彼らにとって陸人はとんでもないことをした人物らしく、色々と融通を利かせてくれる。月々の生活費もかなりの額を渡されており、陸人の生活様式では溜まる一方だったのだ。

 

「この1年使い道もなく溜まってたから……こういう時くらい使わなきゃね。そんなに高いものじゃないし、遠慮せず受け取ってね」

 

「うーん、さすが陸人くん! でも畑に着けてったら無くしちゃうかもしれないわね……」

「うたのん、それ着けて農作業はないよ。でも、ありがとう陸人さん……すごく嬉しい」

 

 幸せそうな顔でブローチを付ける少女たち。改めて写真を撮り合い、盛り上がっている。

 陸人はその姿を見ながら園子たちのもとに向かう。

 

「色々とありがとう、おかげでうまくいってるよ」

 

「私も見てて楽しいよ〜男女の組み合わせは周りにあまりいなかったから、想像が捗るよ〜」

 

「ん、私もいつもと違うおしゃれを考えられて、楽しかったよ……メンズも真剣に探すと奥が深いね」

 

 協力者たちも楽しそうだ。概ね順調に進んでいる。

 

「それじゃ最後にアレでしょ? 男の子の見せ場よ、頑張りなさい!」

 

 風に背中を押されて陸人は再び球子たちのところに戻る。

 緊張を払うように咳払いを1つ。

 

「コホン……それじゃ最後のサプライズだ。ミュージック、スタート!」

 

 陸人が指を鳴らすとホールにワルツが響き渡る。雰囲気はまさしく舞踏会そのもの。

 驚く少女たちに手を差し出し、精一杯格好を付ける。

 

 

 

「お嬢様方、私と踊っていただけますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸人は少女たちと順にペアを組んで踊ることに。最初は若葉だ。

 

「おお、陸人は社交ダンスもできたんだな」

 

「いや、1人で演るものはともかく社交ダンスはさっぱりだったよ」

 

「そうなのか? すごく慣れてるように感じたが……」

 

「みんなが服選びに行ってる間に、ちょっと、ね!」

 

 みんなの幸せな時間のためにいつもよりカッコつけている陸人が、若葉には気高く見えた。

 

 

 

 

 

 

 次は水都。おどおどしながらも陸人を信じて少しずつ動きを合わせる。

 

「そっか、園子さんに教わったんだ?」

 

「うん、乃木家っていうのは300年で本当にすごい家になるんだね……なんでもできるすごい人だよ、園ちゃんも、園子ちゃんも」

 

「陸人さんも人のことは言えないと思うけどなぁ……」

 

 友達のことならいくらでも語れるくせに自分を知らない不器用な陸人が、水都には微笑ましく見えた。

 

 

 

 

 

 続いて歌野。曲が聞こえないかのように勢いよく動く歌野に、陸人がついていく。

 

「あの短時間で身につけたってワケ? 相変わらず器用ね!」

 

「まぁそれが取り柄だからね……でもそれっぽく見せてるだけ、まだまだだよ」

 

「フフフ、練習するなら付き合うわよ、やってみると楽しいわ、これ!」

 

 普段見せない少年らしい表情でイキイキとしている陸人が、歌野には凛々しく見えた。

 

 

 

 

 

 千景の番。うっかり陸人の足を踏まないか、千景はそればかり心配していた。

 

「……私が……こんな風にきらびやかな服で踊る日が来るなんてね……」

 

「やろうと思えばこれからも機会は作れるさ。こっちでも、元の時代でもね」

 

「……そうね……そんな未来があるといいわね……」

 

「みんなで頑張って作ろう……千景ちゃんみたいな可愛い子が、おめかしして踊る日が当たり前にある世界を」

 

 恥ずかしいセリフを臆面もなく言い切る陸人が、千景には美しく見えた。

 

 

 

 

 

 友奈は普段と違う動きに戸惑いながら、いつものように陸人と呼吸を合わせていた。

 

「うーん、武道とはちょっと違うね。でもリズムを合わせるって楽しい!」

 

「そうだね。俺たちももう長い付き合いだし、呼吸を合わせるのは慣れてるから」

 

「そっか、そう考えると連携訓練に近いのかも。だからこんなに楽しいのかな」

 

「ダンスも訓練に組み込むのもアリかもね。動きを合わせる上で役に立ちそうだ」

 

 こんな時でも使命を忘れない生真面目で責任感が強い陸人が、友奈には頼もしく見えた。

 

 

 

 

 

 球子に変わる。自分の時だけ陸人の動きが他のパートナーの時と微妙に違うことに彼女は気づいた。

 

「あのさ、陸人……踊りにくくないか? タマ、背が低いから」

 

「大丈夫、パートナーの身長に合わせて踊るコツも教わって、樹さんや棗さんにも付き合ってもらったんだ」

 

「陸人……タマのために? ……ありがとな!」

 

「みんなが楽しい思い出を残せるように。それが今日の俺の目標だからね」

 

 いつだって友達のためを思い優しさを忘れない陸人が、球子には輝いて見えた。

 

 

 

 

 

 杏はウットリとした顔でホールを見回し、目の前の陸人を見つめる。ポーッとしすぎて転ばないか心配なくらいだ。

 

「こんな物語のような経験ができるなんて……夢みたいです」

 

「今回のサプライズは、杏ちゃんの小説からもアイデアをもらったからね。気に入ってくれて嬉しいよ」

 

「陸人さん……ありがとうございます、幸せです」

 

「俺じゃ不足だろうけど、今だけ精一杯王子様役やらせてもらうよ、お姫様?」

 

 珍しく芝居掛かった言い方で自分が好きな世界を再現してくれる陸人が、杏には小説よりもずっとカッコよく見えた。

 

 

 

 

 

 

 最後は『パーティーでのお礼』の権利で大トリを希望したひなたと踊る。

 

「フフフ、私にももう1つのサプライズを用意していたんですね……驚きました」

 

「ゴメンね。計画を整えた時点でメンバーが決まってたから、誰か1人には協力してもらうしかなかったんだ」

 

「謝ることはないですよ。むしろ嬉しかったです……私を信じてくれたんでしょう?」

 

「ん、まあ……サプライズとか得意そうなのはひなたちゃんかな、って」

 

「そうですか……どんな形であれ選んでくれて嬉しいですよ、私は」

 

 なにやら積極的なひなたに気圧されながら踊る陸人。ひなたはいつも通り、いつも以上に楽しげに笑っている。

 

 

 

 曲の終わり、ステップを止めてポーズを決める。その瞬間、ひなたは誰にも見られない角度で陸人の頰に一瞬だけのキスを残した。

 

「──っ⁉︎……ひ、ひなたちゃん⁉︎」

 

「フフッ、ブローチと、サプライズと、諸々のお礼です……2人だけの秘密ですよ?」

 

 唇に人差し指を当てて囁くひなた。陸人は混乱の結果なにも言えなくなる。そんなウブで年相応な陸人が、ひなたには可愛らしく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後1時間ほどかけて回復した陸人に、他の勇者たちもダンスをせがみ、ひなたと陸人の様子に何かを悟った杏と球子が2回目を要求し、陸人は数時間パートナーを変えながら踊り続けた。

 

(男女比1対19の舞踏会は、無理があるよな、やっぱり……!)

 

 翌日陸人は重度の筋肉痛に悩まされることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 この物語は本編とは異なる世界線の出来事であることをご了承ください。

 これ書いておけば多少キャラ変わっても平気かなって。陸人くんについては今回意識してカッコつけてもらいました。少女たちについては、勢いで書いたとしか言えません、ごめんなさい……

 ちなみに園ちゃんが中学生園子、園子ちゃんが小学生園子の陸人くんの呼び方です。

 自分は舞踏会にも正装にもヘアスタイルにも社交ダンスにも詳しくありません。ちょろっと調べたこととあとは想像です。ツッコミどころがあれば、笑って流すか、指摘をいただければ幸いです。

 感想、評価等よろしくお願いします。

 次回もお楽しみに

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