A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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この話は特に顕著ですが、原作と相違がないシーンは、ばっさりカットして行きます。本文コピペみたいになっても無意味ですし。

なので、気になる方はのわゆ原作を買ってください!(ダイマ)

一時期売り切れ続出だったそうですが、今ならAmazonとかでも買えるのかな……?




二章2話 価値

 バーテックスとの初戦を終えた勇者たち。彼らの力は十分バーテックスに勝利しうる、と判断した大社は、勇者の存在を大々的にアピールし始めた。あらゆるメディアで報道され、6人の勇者は一躍時の人となった。

 特に目立つのが、若葉と陸人。若葉は勇者たちのリーダーとして、代表して取材を受ける機会も多く、その凛とした佇まいから人気を博した。

 陸人は、勇者唯一の男子として、そういった方面(色恋沙汰)の質問を何度か受けたが、苦笑しながら適当に流していた。

 また、他の勇者とは毛色の違うクウガの姿が、子供達を中心に大人気となった。

 

「カメラで変身ポーズを撮られるのは、流石に恥ずかしかったな……」とのこと。

 そんな忙しない日々が過ぎた、ある日のこと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 丸亀城、勇者たちの教室。そこにはいつもの7人のうち、5人しかいなかった。

 

「友奈は入院中として、千景はどうしたんだ?」

 

「休暇として、地元に帰っています。球子さんと杏さんは、千景さんの次だったはずですよ」

 

「あー、そっかそっか。すっかり忘れてた」

 

「帰れるの、久しぶりだね。楽しみだな……」

 

 

 

 初陣を見事勝利で飾った勇者たち。彼らには特別休暇として、一時丸亀城を離れ、実家への帰省が許可されていた。

 家族がおらず、帰る家もない陸人と、精霊使用の負荷で入院中の友奈を除いた全員が順に帰省予定となっている。

 

「陸人も一緒に行けたら良かったのになぁ」

 

「陸人さんも地元の友達とかもいるんだし。同じ愛媛の私たちの家に行くことくらい許可してくれてもいいと思うんですけど」

 

「うーん、いきなり知らない男子を連れて行ってもご家族を驚かせるだけだし、迷惑だよ」

 

「そんなことないぞ! ウチの家族は勇者のニュースとかチェックしてるし、タマも電話で陸人のことよく話すしな!」

 

「ウチもです。次の機会には、是非一緒に来てくださいね」

 

「うーん、そうだねぇ……」

 

 球子と杏は、帰省の話が出た時に自分たちの帰省のタイミングを合わせること、陸人も共に帰ることを申請した。これまではクウガの研究の大詰めの時期だったり、個人訓練期間だったりで帰省の許可がおりなかった陸人に、初めて訪れたチャンスだったのだ。結果、前者は通ったが、後者は消極的反対、といった対応だった。

 理由は、家族も実家もない陸人には、帰らせるよりもここでクウガの研究や鍛錬に時間をあてる方が有意義、というものだった。

 その無機質的な意見に怒りを覚えた2人だったが、陸人本人がそれを受け入れてしまい、彼の帰省はお流れとなった。

 

 陸人は大社の本意に気づいている。自分が壁外に出て間もなくの襲撃。若葉の話では、諏訪の方でもバーテックスがおかしな動きをしているらしい。間違いなく今のバーテックスの行動には、クウガが関係している。今大社から離れるのは望ましくないのだろう。

 大社はこちらの考えを陸人が理解できると確信している。陸人は正しく理解できている。だが、事情を知らない球子と杏には、大社が冷たい対応をしているようにしか見えなかった。

 これ以上話を続けても曖昧な返答をするしかない陸人は、話題を変えた。

 

「そうだ、ひなたちゃん。千景ちゃんの実家って、どこだっけ?」

 

「高知の小規模な村と聞いていますが、それがどうかしましたか?」

 

「いや、大したことじゃないんだ」

 

 高知……もし離れた状況で樹海化が発生したらどうなるのか。樹海内でスタート地点から孤立した状態になった場合、非常に危険である。

 それと同時に、陸人にはもう一つ心配なことがあった。

 

(千景ちゃん、地元ではまともな扱い受けてなかったみたいだけど……1人で帰って大丈夫かな……?)

 

 千景から聞いたわけではないし、本人以外から聞きだすことでもない。それでも陸人は、千景の態度や時折見える傷跡などから、千景の過去をある程度想像できていた。

 人為的にしか付けられないような傷も多くあった。どれだけ話しても家族や友達との思い出話が一向に出てこなかった。

 

(千景ちゃん、この前の初陣ではなんだか吹っ切れた顔してたけど……心配だな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸人の心配をよそに、翌日千景は何事もなく帰ってきた。

 

「お帰り、千景ちゃん。何にもなかった? 疲れたりしてない?」

 

「……ただいま……なんともないわ……むしろ好調よ……」

 

 その言葉の通り、千景はいつもと比べて陰鬱な雰囲気が薄い、生気にあふれた顔をしている。

 予想と違う反応に拍子抜けした顔の陸人を見て、千景は薄く笑う。

 

(……やっぱり、心配してくれていたのね……彼は私の過去を分かってて、それでも優しくしてくれてたんだ)

 

 地元では壮絶なイジメにあっていた千景。教師も親も厄介者扱い。あそこに千景の居場所はなかった……勇者になるまでは……

 

(勇者になれば、お父さんもお母さんも……村のみんなも私を愛してくれる……私の価値を認めてくれる……高嶋さんや伍代くんに会えたのも勇者だから……とびきり優秀な勇者になれば、2人に並べる私になれる……)

 

 前回の戦闘と今回の帰省で、郡千景にとっての勇者の意義が変わった。『自分の価値全て』へと。

 

 

 

 

 笑う千景に一瞬危うげな雰囲気を感じた陸人が声をかけるより早く、世界は静止した。

 

「……樹海化……!」

 

「来たな。千景、戻って早々悪いが……」

 

「……分かってるわ……勇者のお役目、だものね……」

 

 千景の目に、これまでにない好戦的な光が宿るのを、陸人だけは気づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前回よりも数が多い敵を相手に、千景は積極的に前に出ていた。

 

(誰よりも多く敵を倒して……私が1番活躍する……! そうすれば……)

 

 突出する千景の背後からバーテックスが迫る。気づいた千景が振り向くと同時に、その小型は桜色の衝撃に吹き飛ばされていた。

 

「た、高嶋さん⁉︎……入院してたんじゃ……」

 

「えへへ、時間が止まってたもんだから、来ちゃった。みんなが戦ってるの分かってて、ジッとしてられないよ」

 

「……やっぱり、高嶋さんはすごいね……」

 

「そんなことないよ! ぐんちゃんこそすごい! バンバンやっつけてるし、カッコイイよ」

 

「……そうね……でもまだまだいけるわ……ここからよ……」

 

「おおっ、張り切ってるね、ぐんちゃん!」

 

 並んで構える2人の前に、融合を果たした進化体が現れる。

 

「……あいつは、私が殺す……!」

 

 今の千景は、負担が大きい精霊の使用もためらわないほどに戦意を高めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その形状は、小型の意匠そのままに巨大化したようなものだった。その中でも特徴的な口から何かが射出されようとしているのを見て、クウガは赤から紫に姿を変え、千景と友奈の前に出た。

 

 次の瞬間、クウガを襲う大量の矢の雨。クウガはたまらず膝をつく。1発1発は紫の装甲を傷つけるほどの威力はないが、装甲に覆われていない部位にも大量に矢を受けてしまったのだ。

 

「りっくん!」

 

「──ッ! 全員走って! 止まったら狙い撃ちだ!」

 

 クウガの言葉に駆け出す一同。

 

("アレ"の正式採用が間に合っていれば……! 人を抱えたゴウラムじゃ、確実に躱せるか分からないし……)

 

 この進化体の脅威は面制圧力だ。速度に優れていても、遮蔽物がない上に、ゴウラムに頼る以外に躱す手段がない空中で相手取るには相性が悪く、通常の勇者たちの速度で躱せる攻撃でもない。

 可能性があるとすれば青のクウガだが、先ほどの攻撃で足にダメージを負った彼では、あの矢を振り切るスピードを出せるかどうか……そこまで考えて、クウガはとりあえず耐えられる紫のまま、囮を務めつつ杏と球子に狙ってもらおう、と急ごしらえの作戦を伝えようとするが……この進化体は、判断が早かった。

 

 一度でクウガに攻撃が効かないことを悟り、自らに背を向け距離を取る千景に狙いを定めたのだ。

 千景に迫る矢の雨……躱そうとする千景をあざ笑うかのようにあっさりと、矢はその体を貫いた……

 

「──ッ! そんな……」

 

「ぐんちゃんっ! ぐんちゃぁぁぁん!」

 

 

 

 

 直後に、バーテックスの背後から現れた千景が、その鎌の刃を突き立てた。そして他の方向からも、次々と千景が現れ、バーテックスに突っ込んで行く。

 

「えっ! アレッ⁉︎ ぐんちゃんがいっぱい⁉︎ 何で⁉︎」

 

「……これは……そうか……これが千景ちゃんの精霊の力……」

 

 

 千景の精霊は『七人御先』その能力は、『7つの場所に同時に存在することができ、その全てを同時に殺されなければ死なない』

 

 千景が1人でも残っていれば、瞬時に新たな千景が出現する。半ば不死身状態だ。

 千景の戦いを見て、その能力をおおよそ理解したクウガは、千景に声を飛ばす。

 

「千景ちゃん! 念のために1人、敵から離しておいて! その代わりは俺が務めるよ」

 

「……! ……伍代くん……」

 

 陸人はどんな時でも自分を心配してくれる……そのことが嬉しかった千景は、指示通り自分を1人、友奈たちの近くに配置した。

 それを確認した陸人は、自分の端末を召還。負傷した足の代わりに、頼れる相棒を呼び出した。

 

「……来い、ゴウラム‼︎」

 

 自分のもとに飛んで来たゴウラムの角に飛び乗り、クウガは最も弾幕の厚い正面から進化体に突っ込む。専用武器『タイタンソード』を構築し、気合いとともに構える。

 

「千景ちゃん、合わせて!」

 

『……任せて……!』

 

 同時に進化体を取り囲むように接近する6人の千景。どれを狙うか迷うように、バーテックスの弾幕は精彩を欠いていた。

 

「オオリャアァァァ‼︎」

 

『これで……終わりよ……!』

 

 ゴウラムの勢いも合わせた必殺の突き『カラミティタイタン』と、千景の6発同時斬撃。攻撃特化の進化体に、耐えられる威力ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、陸人は差し入れを持って訓練場の前に立っていた。

 

 ──私は、この前の戦い、ぐんちゃんが1番活躍したと思うよ──

 

 ──ありがとう……高嶋さん──

 

 

 

 そこには千景と友奈がいて、図らずも陸人は2人の話を聞いていた。

 陸人は千景の様子に違和感を覚えていた。急に勇者のお役目に積極的になったことだ。もちろん悪いことではないが、陸人が心配だったのはその理由だ。陸人視点、あまり前向きな感情の発露には見えなかったのだ。今やっている訓練もそう。何事も急に張り切っては、危険なことにもなりかねないのだ。

 

 思いつめやすい千景のこと、なにか自分を追い込むような考えに至ったのなら、その心をどうにか解きほぐせないか、とお手製うどんを持ってやってきたのだが……

 

(今、千景ちゃんの心は安らいでいる……俺が何か言うことはないか……)

 

 声を聞けばわかる。千景は今幸せを感じていて、それは陸人ではなく友奈の言葉のおかげなのだ。

 心配なのは変わりないが、千景のことは、ある意味出会った時から心配し通しで、今更なことである。

 

(今顔を合わせると、余計なことを言っちゃいそうだな……)

 

 今は2人にしておくべきだろう、と思った陸人は、お盆を床に置き、入り口の扉をノック。素早くその場を後にした。

 

 

 

 

 

 ノックの音に気づいた千景と友奈が扉を開けると、そこには誰もいなかった。

 

 

 代わりに、陸人が千景と自分の分に用意した、2つの釜揚げうどんがお盆の上に置いてあった。

 

 

 

 

 

「りっくん、来てたんだね。入ってくればいいのに」

 

「……伍代くん……」

 

「伸びちゃうと悪いし、いただきますしよ、ぐんちゃん!」

 

「……ええ、そうね、高嶋さん……」

 

 千景の心に影はない。大好きな友人が隣にいて、大切な恩人が自分を見ていてくれる。

 

(……私はもう……大丈夫……)

 

 それだけで、千景の心は晴れやかだった。

 

 

 

 

 

 




はい。ここは原作と大差がないので、味気ない文になってしまいましたね……反省。カットするべき部分はカットするにしても、他でちゃんとメリハリをつけなくては……

2度目となる後書きの設定資料……

今作のクウガは、ゴウラムを呼び出すのに端末が必要です。なぜならクウガは、他の勇者と違って端末なしでも変身できるからです。万一の場合に備え、クウガの戦力の一端でもこちらで制御できるようにしたい。そういう大社の思惑の結果です。ちなみに真鈴さんは反対しましたが、陸人本人が了承したため、そのように調整しました。この時の真鈴さんの複雑な心情が後々の伏線になる…かもしれません

戦闘時は樹海化に反応して、自動で召喚許可がおります。普段の訓練や実験の際は許可を取ってからでないと呼び出せません。

ちなみにゴウラムは神樹様のお力と大社の技術で量子化されて普段は陸人の端末内にいます。ここが1番強引な設定だな……

変身時の端末の呼び出し方は、ゆゆゆアニメで風さんや東郷さんがやっていたのと同じ感じです。小さく光って手元に現れます。


以上、本文に入れろよ……設定資料でした。

次回もお楽しみに。

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